★2016/7/7 有効求人倍率が上がったのがアベノミクスのおかげも嘘 理由は?
★2016/4/16 有効求人倍率の推移ではわからない日本の雇用情勢の近年の悪化
★2013/3/2 失業率と有効求人倍率、既に改善に転換 雇用状況は今後好転するかも
★2012/9/28 2012年の時点でパートの時給は軒並み上昇中だった
★安倍晋三自民党の賃上げ要請は見事 実際の給料上昇は昨年以下 2013/4/5
★アベノミクス賃上げ公表企業、3月が最後で8社 全体はマイナス 2013/6/20
★2013/11/20 アベノミクスの効果はほぼなし 賃上げは大失敗、2015年ゼロ成長
★アベノミクスでは日本人の給料は上がらない 景気回復しても無理 2013/9/25
★証券会社でアベノミクス批判禁止令 「買うなら今」と売り時として活用 2013/4/4
★2014/1/14 GDPプラスでも国民の給料は上がってない 実質雇用者報酬マイナス
★2016/7/7 有効求人倍率が上がったのがアベノミクスのおかげも嘘 理由は?
●有効求人倍率は景気とも関係する意味のある指標
2016/7/7:
実質賃金は過去数十年間最低 法人税減税分を庶民が消費税で肩代わりでは、アベノミクスの成果とされる株価と倒産件数は指標として意味ないよという話を書きました。さらに実質GDPの変化で見ると、むしろ安倍政権の方が悪いという話もしています。
【実質GDPの変化】(単位:10億円)
2009年 489,588.40 → 2012年 519,216.80 (+6.1%) 2009/9/16から民主党
2012年 519,216.80 → 2015年 530,041.81 (+2.1%) 2012/12/26から自民党
でも、今日ある記事を読んでいたら、有効求人倍率が上がったのは自民党の成果だと認めなくてはいけないと書かれていました。すっかり忘れていていましたわ。安倍政権支持者が持ち出す株価や倒産件数と違って、有効求人倍率は意味のある指標でもあります。
有効求人倍率 ~ インフォバンク マネー百科
有効求人倍率とは、有効求職者数に対する有効求人数の割合のことです。(中略)
求人数は好況期に増加し、不況期に減少します。一方、求職者数はこの逆の傾向を示します。そのため、有効求人倍率は好況期に増加し不況期に低下します。(中略)
有効求人倍率は景気の動きにほぼ一致して変動することから、景気動向指数一致系列の1つとして採用されています。
●有効求人倍率が上がったのがアベノミクスのおかげも嘘 理由は?
ところが、これもやっぱりアベノミクスのおかげとは言えないのです。というのも、有効求人倍率は政権交代前から上昇が続いていたため。
民主党政権のときに下がっていたとか、横ばいだったとか、上がったり下がったりだったとかなら良かったんですけどね。実際には上がり続けだったんですよ。(なお、民主党政権前の自民党政権時代は上がったり下がったりでした)
【有効求人倍率の推移】
年度・月 有効求人倍率/実数(倍)
2005年度 0.98
2006年度 1.06
2007年度 1.02
2008年度 0.77
2009年度 0.45 2009/9/16から民主党
2010年度 0.56
2011年度 0.68
2012年度 0.82 2012/12/26から自民党
2013年度 0.97
2014年度 1.11
2015年12月 1.34
2016年4月 1.24
(
有効求人倍率 ~ インフォバンク マネー百科より)
●アベノミクスの成果と強弁も可能そう
一応、3年間同士で比較してみると、安倍政権の方が良いと言えそうではありますので、この指標をアベノミクスの成果と強弁することは可能そうに見えます。
【有効求人倍率の変化】
2009年 0.45 → 2012年 0.82 (+0.37) 2009/9/16から民主党
2012年 0.82 → 2015年 1.34 (+0.52) 2012/12/26から自民党
なお、先ほどの推移を見てわかるように、2016年になって有効求人倍率が下がっています。感覚的にも今景気が悪化しているというのは納得するものと思われます。
【有効求人倍率の推移】
年度・月 有効求人倍率/実数(倍)
2015年12月 1.34
2016年4月 1.24
しかし、実は2015年も春のあたりは下がっていました(2015年の場合は5月が底)。この動きを見ると、4月の有効求人倍率低下は季節性の変動である可能性があります。このまま悪化が続くとは限らないかもしれません。
2016年の有効求人倍率について言及するのなら、ちゃんと年末の値が出るのを待った方が良いでしょうね。
★2016/4/16 有効求人倍率の推移ではわからない日本の雇用情勢の近年の悪化
●有効求人倍率の推移ではわからない日本の雇用情勢
"安倍政権が推し進めるアベノミクスの効果で、有効求人倍率が約24年ぶりの高水準となり、日本の雇用情勢は良くなったと言われている"が、指標によってはそうではない…という記事を読みました。
ただ、有効求人倍率の上昇がアベノミクスの効果というのがまず問題含みです。これは後述しますので、先に別の指標の話から。
人材ミスマッチ率は中国の2倍?日本企業が採用難に苦しむ真の理由|News&Analysis|ダイヤモンド・オンライン ダイヤモンド・オンライン編集部 2016年3月4日
世界33ヵ国で人材サービスを提供する英国ヘイズの日本法人、ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン株式会社(以下ヘイズ・ジャパン)が昨年11月に発表した『ヘイズ・グローバル・スキル・インデックス2015年 世界31ヵ国労働需給効率調査』の中に、その実態をうかがい知ることができる興味深いデータがあるので、ご紹介しよう。
同調査は、同社と英オックスフォードエコノミクスが共同で、世界31ヵ国の労働市場における人材の需要と供給のバランスがよいか悪いかを、7つの指標(教育の柔軟性、労働市場への参加、労働市場の柔軟性、人材ミスマッチ、全体的な賃金圧力、ハイスキル業界における賃金圧力、ハイスキル職業における賃金圧力)を基に評価・分析し、それぞれ0~10のスコアを施したもの。スコアが5.0を下回るほど人材確保が容易、逆に5.0を上回るほど人材確保が困難な状態を表す。日本は前述の7指標のスコアを平均した「総合スコア」で6.1となっている。31ヵ国中7番目の水準で、人材確保が困難な国であることが推察される。
●先進国ほど悪くなりやすい労働需給効率
日本以外の上位を見ると、アメリカ、スウェーデン、スペイン、ドイツ、ハンガリー、イギリスといったところ。先進国ほど高度な人材をほしがるために、比較的誰でも良い発展途上国より不利であることが予想されますので、ここらへんは仕方ないでしょう。
なので、「人材ミスマッチ率は中国の2倍」としていた元記事のタイトルはそりゃそうだろうという話であり、これ自体は日本が悪いわけじゃないと思われます。
ただ、日本と同じG8でもカナダが13位、フランスが15位などと全然悪くない先進国もあります。この違いは気になりますね。
●日本の雇用情勢の近年の悪化
この全体の数値だけでも、+0.1と僅かですが日本は悪化していました。ただ、特に激しく悪くなっているのが、「人材ミスマッチ」という観点です。何と最高得点を記録してしまいました。満点です。
最大の課題は前述の7指標のうちの1つ、「人材ミスマッチ」の高さである。日本は、2年連続で人材の需要と供給のミスマッチが悪化しており、2015年の同調査では最高値である10.0を記録したという。
●日本で雇用情勢が悪化しやすい理由
ヘイズ・ジャパンビジネスディレクターの高井健さんによると、日本でこうした悪化が起きているのは、私が予想した求める人材の高度化以外にも理由があるそうです。
2つめの理由は、日本の労働市場の柔軟性が低いことだ。日本では依然として正社員の雇用が守られているため、労働者は一度採用されると解雇されることが少ない。働かない人、成果をあげられない人までもが潜在失業者として会社に残るケースが多く、人材の流動性が起こらないのだ。これは、諸外国と比べて日本がホワイトカラーの生産性で遅れをとっている原因でもある。
そして3つ目は、賃金上昇圧力の低さだ。(中略)日本は全体的な賃金上昇圧力は高いが、前述の理由もあり、ハイスキル職業、ハイスキル業界における賃金上昇圧力は高くない。自己の高い能力に見合った給料を求める、ハイスペックな求職者のニーズに応えられないことが、人材の獲得を難しくしている側面もありそうだ。
●有効求人倍率の上昇がアベノミクスの効果ではない理由
さて、「有効求人倍率の上昇がアベノミクスの効果というのがまず問題含み」という話。これは民主党政権時代は悪かったという思い込みを利用したものです。民主党政権時にも実は良くなっていたのにも関わらず、まるでアベノミクスのせいで良くなったかのように言う…といったやり方です。
他のサイトを見ると、「パートタイムを含む有効求人倍率」を使っていることが多いので、この近年の推移を見てみましょう。
年 有効求人倍率
2006年 1.06
2007年 1.04
2008年 0.88
2009年 0.47
2010年 0.52
2011年 0.65
2012年 0.8
2013年 0.93
2014年 1.09
求人倍率 - Wikipedia 以上のように、有効求人倍率は安倍政権になる前から上昇傾向でした。なので、まるで民主党時代は上がっていなかったか、上昇分すべてがアベノミクスの成果であるように言うと、騙してしまうことになります。
自殺者数に関する嘘は、この系統で騙した悪質なデマでした。(関連:
民主党政権が自殺者を増やしたはデマ、高橋洋一の捏造 逆に低下している)
また、GDPに関してはむしろ最近の方が上がり方が悪くなっています。(関連:
日本の株価は高すぎる バフェット指標で見ると日本株は過大評価だった)
この手の詭弁が近頃は多いので、十分に注意してください。
★2013/3/2 失業率と有効求人倍率、既に改善に転換 雇用状況は今後好転するかも
何かきっかけがあっただろうか?と思いますが、完全失業率は昨年の時点で既に好転していたそうです。
2013年2月5日 出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役社長] ダイヤモンド・オンライン
失業率も有効求人倍率も改善、雇用は好転へ 将来的には女性の就業率向上が鍵
総務省は2月1日、労働力調査(基本集計)2012年平均(速報)結果を公表した。(中略)
2012年の完全失業率は4.3%と、対前年比0.3%の改善となった。男女別にみると、男性が4.6%(0.3%改善)、女性が4.0%(0.2%改善)である。
http://diamond.jp/articles/-/31503
また意外なことに
この10年来のピークは、過去最高をマークした2002年の5.4%、ボトムは2007年の3.9%となっている。
ということで、2008年のリーマン・ショックより前が最悪だったみたいです。景気が悪くなった実感と異なりますね。
また、失業率の算出の仕方が異なると言われているものの、海外と比べて良好に見えるようです。
国際比較すると、米国が8.1%、英国が8.1%、ドイツが5.9%、フランスが9.3%(英国、ドイツ、フランスは2011年)なので、わが国の就業状態は先進国の中では比較的良好であるといっていい。
しかし、
年齢階級別にみると、15歳~24歳が8.1%、次いで25歳~34歳が5.5%と、若年世代の失業率が高いという世界共通の問題を抱えている。
とのこと。これは痛いですね。
同じく「若年世代の失業率」ということで、学卒未就職者を見てみると、
学卒未就職者 16万人(6%)
となっている。就活で何かと騒がれている学卒未就職者は、対前年同数の16万人となったが、ここ10年来のピークは2003年の20万人、ボトムは2008年の11万人であった。
となっています。
こちらは人数であり割合じゃありませんが、学卒未就職者が多かったのはむしろ失業率の低かったであろう2003年、少なかったのがリーマン・ショックの2008年という不思議な数字になっています。
少子化傾向のため率にすると多少違うと思いますけど、これも何か妙な感じですね。
次に有効求人倍率です。
2月1日、厚生労働省が、ハローワークにおける求人等の状況を取りまとめた一般職業紹介状況を公表した。これによると、2012年の有効求人倍率は0.80倍と、対前年比では0.15ポイントも改善した。底をつけた2009年の0.47倍から3年連続の改善である。
こちらは実感と同じくリーマン・ショック後の2009年が一番悪いです。
その後は何と"3年連続の改善"。まあ、酷すぎたところからの復活とはいえ、
ここ10年来のピークは、2006年の1.06倍であったが、80年代の単純平均が0.76倍、90年代が0.83倍、2000年代が0.76倍であることを考え合わせれば、2012年の0.80倍という水準は決して低いものではあるまい。
ということで、かなり回復してきたといえるのかもしれません。
「新規求人倍率」も同じく改善しています。
新規求人倍率(新規求人数÷新規求職申込件数)も1.28倍と、これまた3年連続の改善となった。わが国の雇用状況は、まだ薄日がさしてきた段階ではあるにせよ、好転の報告に向かっていることだけは確かなようである
暗い話が最近多かったですので、何よりなことです。
★2012/9/28 2012年の時点でパートの時給は軒並み上昇中だった
パート履歴書の書き方 “たかがパート”の心構えはNG(女性セブン2012年9月27日号)を読んでみたら、<働こうと思っている主婦にとって絶好のチャンス到来! 実は今、日本全国でパートの時給がぐんぐんアップしている>とありました。
その分正社員が減ってるのでは?という気もしなくはないですが、お給料的には全ジャンル総負けでもおかしくない不景気ですので、素直に驚いて良さそうな気がします。
検索すると同じ女性セブン2012年9月27日号にまだパートの時給についての
記事がありました。雑誌では一連の特集だったのかもしれません。
パートの時給が軒並みアップ 外食産業の新規出店増加が要因
(略)リクルートが三大都市圏で実施する『アルバイト・パート平均時給調査』によると、この1年間で「テレフォンアポインター」の時給が1069円から1100円へと、「営業」の時給が1035円から1066円へと31円アップ。続いて「飲食店の洗い場」が時給901円から926円へと25円増、「販売員」が時給20円増、「食品製造」は時給17円増と軒並みアップしている。キャリアカウンセラーの上田晶美さんが解説する。
「時給アップが目立つのは販売や飲食系ですね。昨年の東日本大震災でいったん消費が落ち込みましたが、その後は順調に回復しています。このため、コンビニ、スーパーや、外食産業の新規出店が増えて人手が足りなくなり、企業が人を集めるためにパートの時給を上げているんです」
(中略)牛丼店『すき家』は8月から東海地区の約200店で全パートの時給を一気に50円も引き上げるなど、“時給増ラッシュ”が続いている。社会保険労務士の諸星裕美さんは、「最低賃金が上がったことも理由のひとつ」と言う。
「国の政策でここ数年、最低賃金(法律によって定められた賃金の最低基準額)が大幅に引き上げられています。最低賃金で1か月働いた場合の収入が、生活保護費を下回らないようにするためです。
それに伴い2007年に時給719円 だった東京都内の最低賃金は今年10月から時給850円に引き上げられる予定。5年間で130円も上昇し、あわせてパート時給もアップしています。つまり主婦がパートを始めるチャンスではありますね」(諸星さん)
理由の一つは最低賃金だったようです。最低賃金は目安であり、あまり効果はないのかな?と思っていましたが、これを見ると効果ありそうですね。"今年10月から時給850円に引き上げられる予定"ですから、まだ上がるかもしれません。
★安倍晋三自民党の賃上げ要請は見事 実際の給料上昇は昨年以下 2013/4/5
賃上げに関する自民党案の話は最初、実際の効果というところでちょっと期待したんですけど、時間が経ってくるとその効果と関係ないところで「うまいなぁ」と感嘆するものでした。
以下の文章は
証券会社でアベノミクス批判禁止令 「買うなら今」と売り時として活用で使ったものと同じ記事からの引用。
2013年4月1日 週刊ダイヤモンド編集部
経済好転は本物か? 給料はいつ上がるのか?徹底検証 アベノミクスの“裏側”
トヨタ自動車、一時金約205万円の満額回答。日産自動車、同5.5ヵ月の満額回答。ホンダ、同5.9ヵ月の満額回答──。
春闘の大手企業集中回答日となった3月13日、自動車メーカーなどを中心に一時金の満額回答や昨年実績を上回る回答が相次ぎ、“賃上げラッシュ”への期待が高まっている。(中略)
こうした流れだけを見れば、安倍首相の発言がマジックのように浸透し、一連の賃上げを引き起こしたように思える。しかしタネを明かせば、そこには2つの誤解がある。
http://diamond.jp/articles/-/34006 大きく一つ目の誤解は以下。
まず、賃上げはまだ一部企業に限られているということ。円高による輸入物価低下で追い風が吹いていた流通などの内需企業や、円安で早期に業績回復が見込める自動車など、業績のいい企業から賃上げが始まっているだけで、しかも上がっているのは業績に連動する一時金の部分。ベースアップを実施する企業はごくわずかだ。
また、3月14日時点の春闘第1回回答集計結果を見ると、賃上げ額、賃上げ率共に昨年実績より減少しており、安倍首相の発言が、昨年以上の賃上げをもたらしているわけではないことがわかる。
ただ、
Jカーブ効果で円安のメリットまだ見えず 今はまだデメリット多しで書いたように、世界的には経済が回復基調ですし、日本の2012年1年間の諸数値も以前見たように好材料が見えます。
このまま昨年以下ということにはならないんじゃないかと思います。
まあ、給料がすごく上がるぞ!という、世間のイメージとは全然違うってのは本当なんでしょうね。
もう一つの誤解。
もう1つの誤解は、業績がいいからといって賃金はすぐには上がらないということである。
内閣府がまとめた「平成22年度年次経済財政報告書」の資料によれば、米国や英国などでは企業業績と一緒に賃金も増えていくのに対し、日本では業績の好転から2年たっても賃金は前年比でプラスに転じていない。
今回も同じようなトレンドをたどるとすれば、円安への大転換で企業業績が回復に向かったとしても、賃金に反映されるのは3年後の15年度ということになる。
これはインフレ率との関係もあるんですかね?
といった感じで、今のところ賃上げ要請はイメージ先行で中身の伴ってないもののようです。
しかし、自民党安倍晋三政権としては良い印象を国民に植え付けることができました。実際には上がらなくたって大成功です。
これは何がうまかったのか?というと、
証券会社でアベノミクス批判禁止令 「買うなら今」と売り時として活用において安倍政権と証券会社が共犯関係にあったのと同じく、賃上げ企業と安倍政権が共犯関係にあるという構図です。
賃上げ企業としてみれば、従来通りの上昇、予定していた上昇であったとしても、「厳しい中頑張った」とすれば手柄になりますし、それだけでマスコミが報道してくれてものすごい宣伝効果になっています。
この宣伝効果を考えれば実際に給与を上昇させる価値もあるかもしれません。その分来年以降で帳尻を合わて今年の給与上昇分を帳消しにすることが可能ならば、企業にとっては丸儲けもできます。
いやぁ、うまいものだなぁと本当感心します。
★アベノミクス賃上げ公表企業、3月が最後で8社 全体はマイナス 2013/6/20
"安倍晋三自民党の賃上げ要請は見事 実際の給料上昇は昨年以下"は途中経過でしたが、終わってみれば……という話。 報道したのは週刊ポスト。
日本の新聞・雑誌・政党は保守系となると、ほぼ例外なく親自民・親米なのですが、NEWSポストセブンはそのどちらとも距離を取っている珍しいところです。
しかし、最近のいわゆるアベノミクスに対しては総じて好意的な印象があり、「アベノミクスを批判するな」というヒステリックな論調の擁護まで見えていました。
ということで、ここは「いつも安倍政権批判をしているわけじゃないですよ」といった予備知識を持って、以下です。
NEWSポストセブン|安倍首相の賃上げ企業公表 8社にとどまり3月11日以降なし
安倍首相は今年の春闘にあたって財界に賃上げを要請した。大手企業の労使交渉がスタートした3月には、賃上げやボーナスアップを決めた一部の企業が大きく報じられ、あたかも「賃上げ時代」が到来したかのように宣伝された。首相は5月17日の講演で、
「今年の春闘では、たくさんの企業がよく応えてくださったと思います。報酬が上がることは、消費を拡大し、景気を上昇させて、企業にもメリットがあります」──そう成果を強調した。では、春闘の結果、給料はいくら上がったのか。
連合が5月末に発表した春闘結果(第6回集計)によると、平均賃上げ額は前年比で「月額24円」のマイナス、非正規労働者の時給引き上げ額も前年比マイナスだ。連合総合労働局は、〈労使で真摯な議論を重ねてきたが、十分な回答を引き出し得たとは言えない〉と総括している。
安倍首相の掛け声は空振りに終わったのである。
※週刊ポスト2013年6月21日号
http://www.news-postseven.com/archives/20130610_193180.html うーん、結局マイナスで終わったようです。
私は
安倍晋三自民党の賃上げ要請は見事 実際の給料上昇は昨年以下の時点で、実は下がっているのに「安倍晋三首相が上げた」というイメージを与えたのは見事だったと書きました。
ただ、以下のように期待も示していました。(新興国はやや低調だったものの、世界中で株式市場が荒れるような展開は、ごく最近のことです)
ところが、結局マイナスのまま変わることはなかったという、たいへん残念な結果になりました。(ただ、ニュース検索してみると最終集計じゃなさげですので、まだ上がる可能性を残しています)
それにしても、この実際の全く反対のことを宣伝してそのまま終わりってのは、困ったものですね。
安倍晋三首相「雇用4万人増加」の嘘 4万は求人で本当は28万人減で書いた件も、安倍晋三首相の「雇用を増やした」は大嘘で本当はむしろどんどん減っているという話でした。これらはあまりにも違い過ぎます。
安倍政権が巧みだというのは、もちろんあると思いますよ。
たとえば、以下の件。
首相官邸のホームページには、賃上げ騒動の残滓が残っている。官邸は安倍首相の要請に応じて賃金アップを決めた企業を“表彰”するかのように、ホームページで企業名と賃上げ内容を順次公表してきたが、3月11日のニトリを最後に更新はなく、賃上げ企業数はわずか8社で止まっている。これが安倍首相のいう「たくさんの企業」の実数だ。
こうやって発表したせいで、マスコミが大々的に報道して、事実とは正反対のイメージを植え付けてそのまま逃げ切りました。見事なものです。
ただ、実際には違うという結果になったときに、今度は押し黙って報じないというのは、マスコミの怠慢です。
ネットでは、「マスコミは自民党に厳しく、自民党に都合の悪い報道ばかりして、良い情報は流さない」と言っている人たくさんいます。しかし、以上のように全くそんなことはありません。
むしろこの結果だけ見ていると、全く逆に見えるくらいです。
でも、まあ、私はそういう変な陰謀論的なものよりは、単に仕事をサボっているのかなぁと思います。
とりあえず、大嘘垂れ流してそれで終わりってのは、どこの党が政権取っていようが全く良い話じゃありませんので、マスコミにはきちんと仕事してほしいと思います。(前述のように最終集計じゃなさそうですので上昇に転じる可能性がありますし、マスコミが大々的に報道するタイミングもこの後なのかもしれません)
★2013/11/20 アベノミクスの効果はほぼなし 賃上げは大失敗、2015年ゼロ成長
目下株価は久しぶりの回復傾向で、本当かなぁ?と思う話ではあるものの、こういうものがありました。
日刊ゲンダイ|アベノミクスの終焉が克明に…クレディ・スイスの戦慄リポート 2013年11月14日 掲載
http://gendai.net/articles/view/news/145925 日刊ゲンダイなのであれなんですが、ゲンダイが言っている……というものではなく、クレディ・スイスのチーフエコノミスト白川浩道さんの「日本経済分析」が主体です。
クレディ・スイスは投資関係を手広くやっている会社であり、
証券会社でアベノミクス批判禁止令 「買うなら今」と売り時として活用での人たちと同じように、本来ならアベノミクスを持ち上げて金融商品を売り込もうとするはずです。
ところが、「
エコノミストとして、長期の金融投資はお勧めできなくなりました」なんてことを言っていたましたので気になりました。
ポイントはこんな感じです。
タイトルは「急激な低下のリスクがある2015年の成長率」。来年以降、アベノミクスの金融政策も財政政策も完全に行き詰まるという分析だ。
(中略)このリポートが意味するところは、外国人投資家に対して、「日本株は来年中に売れ」ということだ。安倍バブルでも1万4000円程度の株価(日経平均)は、来年以降、暴落の運命となる。改めて、白川浩道氏に聞いてみた。
「2015年度はゼロ成長になる。雇用は減少し、賃金は伸び悩み、デフレに逆戻りの懸念がある。世の中、相当暗くなると思います。なぜかというと、試算したとおり、アベノミクスの財政、金融政策でこの先、景気を上向かせるのは無理で、もう打つ手なしだからです。アベノミクスの当初のシナリオは金融、財政政策で景気を底上げし、その間に成長戦略で、景気を回復軌道に乗せる戦略だった。その第3の矢が分からないうえに、来年4月からは消費税が上がる。瞬間的に消費は落ち込み、しかし、その後、消費は少しずつ戻ってくる。でも、それは長続きせず、2015年になると、ドーンと落ち込むと思います」
日刊ゲンダイではもう一つ、クレディ・スイスのネタを書いていますが、こちらはタイトルから内容を想像できそうです。
日刊ゲンダイ|クレディ・スイスが衝撃リポート 「アベノミクスで日本の富580兆円が消えた」 2013年10月22日 掲載
http://gendai.net/articles/view/news/145407 たぶん単に円安でドル換算の数字が下がったってだけじゃないですかね? それなら本質的な問題ではありません。
アベノミクスで日本の富の20%が消えた――!?
こんな衝撃的なリポートが話題を呼んでいる。クレディ・スイスが毎年発表している世界の富に関する報告書「グローバル・ウェルス・レポート」の2013年度版だ。
この報告書によれば、日本の富裕層はアベノミクスで激減。12年6月から今年6月までの1年間で、100万ドル(約1億円)の純資産を持つミリオネアの数は130万人も減ったというのだ。日本に次いで富裕層が減ったのはブラジルだが、減少数は約1万2000人だから、日本の減り方は異常と言える。(中略)
ショッキングな数字にはカラクリがあって、アベノミクスで大幅な円安に振れたためだ。日本人は資産を円で預金している人がほとんどだが、同じ1000万円でも、円の国際価値が下がれば、世界的に見た財産は目減りしてしまう。それで、富裕層の数も激減したのだ。
やっぱりそうですね。あまり関係ありません。
記事では他に"過去最大の赤字"、ドル換算のGDP成長率減少にも触れています。私自身はこれらもあまり気にし過ぎても仕方ないと思っているのですが、貿易黒字はリフレ派が本当は重視していたものですし、政府はGDPを別の数字に変えようとしているなど、私と違って気にしているみたいなので突かれると痛いところかもしれません。
関連
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GNI(国民総所得)やGDPは景気実感と乖離 市場GDPだと日本は回復していない この2つ目の記事はあんまりだなぁというものですけど、最初の記事とちょうど同じ日に読んだプレジデントオンラインの以下の記事にはショックを受けました。
昇給・ベア:小売業界先行、自動車・電機・鉄鋼は及び腰 どうなる「給料、物価、税金」:PRESIDENT Online - プレジデント
2013年11月15日(金) PRESIDENT 2013年7月1日号 著者 ジャーナリスト 溝上憲文
http://president.jp/articles/-/11160 ああ、でも、今気づきましたが、オンライン掲載が最近というだけで、初出はかなり前なんですね。
13年春の賃上げ額は前年比でわずか月額74円(連合の5月8日時点の集計=3143組合)。デフレ脱却を掲げる安倍晋三首相の経済界への異例の賃上げ要請で小売業を中心に賃上げ報道が相次いだ。だが、いざ蓋を開けてみれば、ただの空騒ぎだったわけだ。
月額74円だと年間で900円弱。リフレ効果は皆無に等しい。
最近やっているボーナスシリーズでわかるように、自動車業界はボーナス支給額で唯一大きく伸びており、調査企業数の少ない経団連調査なんかでは全体の数字を大きく引き上げています。
関連
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2013年冬のボーナス・業種別平均支給額ランキング 自動車・電力など ■
2013年冬のボーナス平均支給額 経団連の調査だけ激増の理由 ところが、"賃上げの牽引役であるトヨタ自動車の労組をはじめ大手自動車労組や電機労組が4年連続でベアの要求を見送った"とのことで、好調の自動車ですらベースアップには至らなかったようです。
なぜか。依然、デフレ下にあることが最大の理由である。1955年から75年の高度成長、75年から90年代初頭の低成長時代の春闘の賃上げでは「定昇相当分+物価上昇率分+生活向上分(純ベア)」の要求方式が定番だった。物価上昇が賃上げを牽引し、当時は前年比10%、15%増の高い賃上げを獲得してきた。ところが90年代後半以降、デフレに突入し、賃上げの根拠を失ったのだ。
"23の産業別組合のうち、前年度と比べて上昇したのは9"というので、微増になった方が不思議なくらいです。
また、今後の見通しも厳しそうです。
精密機器会社の人事部長は「仮に物価上昇率が2%になれば、賃上げせざるをえなくなるが、2%賃上げしても現状の生活レベルを維持するのがやっと。生活向上を図るには4%引き上げる必要があるが、とても引き上げられる額ではない」と指摘する。
また、機械メーカーの人事部長は「業績に貢献しているのは海外の売り上げであり、国内の寄与率は低い。海外従業員の人件費も高騰しているのに、日本人社員だけ高い賃金を払う時代ではない。よほどのことがない限り、上がることはないだろう」と予測する。
ボーナスと比べて賃金が上がっていないどころか、実は昨年より下がっているというのは、
2013年冬のボーナス5年ぶり増加も、所定内給与額は昨年より悪化でも見えて、ショックを受けました。
前半で引用した記事のような予測はあまり当てにならないだろうと個人的には思っているのですが、実際のデータでもこのように悪いものが見えている点は気になります。
●アベノミクスでは日本人の給料は上がらない 景気回復しても無理 2013/9/25
2013/9/25:タイトルではズバッと断定した書き方にしていますけど、論者はやわらかい言い方をしています。
景気が回復しても日本の給料が増えない4つの理由 雇用・賃金の改善を阻む古い経済構造の本質的課題――杉浦哲郎・みずほ総研副理事長に聞く|ぼくらの給料は上がるのか|ダイヤモンド・オンライン
――アベノミクスで、景気回復への期待が高まりつつあります。そんななか、企業で働く社員の最大の関心事と言えば、「自分の給料は上がるのか」、また「上がるとしたらいつ頃から上がり始めるのか」ということです。近い将来、実際に給料が上がる見通しはあるのでしょうか。
これまでの経緯を見ると、すぐには難しいかもしれません。(中略)1997年から2012年までの時間軸で見ると、この15年間に実質GDPは9.4%成長しています。
この期間、雇用者数も増えています。ただしその内訳を見ると、正社員が472万人も減った一方で、非正社員は逆に661万人も増え、雇用者全体の3分の1超に及んでいます。
こうして、雇用者全体の中で賃金の低い非正社員が占める割合が増えた結果、ピークだった1997年からの15年間で、名目賃金は12.8%減少。実質賃金も9.2%減りました。
http://diamond.jp/articles/-/39984 GDPは成長しているものの、賃金は下がっています。
こうして見ると、雇用機会の減少や賃金の低下は、構造的な問題と言えます。これまでなぜ賃金が下がり続けたのかをよく分析しないと、「アベノミクスで給料が増える」という見通しは、一概に立てられません。
とおっしゃっていますが、安倍政権ではむしろこの給料低下の傾向を加速しかねません。
私は必ずしも反対ではなかったのですけど、安倍政権では「雇用規制緩和」を検討しています。
上記の経緯を見ると、「アベノミクスで給料を上がらない」どころか、かえって「アベノミクスで給料は下がる」となりそうですね。うーん。
(下書きを終えた後に、
解雇特区、残業代もゼロ ホワイトカラーエグゼンプションに再チャレンジの話も出てきました)
――足もとの状況は変わりつつあるのでしょうか。景気回復期待もあり、今年の春闘では、定期昇給、ベースアップ、一時金の引き上げなどに動く企業が増えた印象があります。
安倍首相が大企業に対して賃上げの要請をしたため、電機、自動車、造船、機械、小売りなどの一部の企業が春闘で定期昇給、ベースアップ、一時金の引き上げに応じましたが、今後もこうした企業が継続的に増えるかどうかは不明です。
あれ? 結局、上がったんですかね? 以前見たときはむしろ下がっていました。
■
アベノミクス賃上げ公表企業、3月が最後で8社 全体はマイナス ただ、上がっていたとしてもからくりがあるようです。
それに、春闘で一時的に賃金が上がっても、労働者の実際の賃金が増えるとは限りません。実は、1980年以降の春闘の賃上げ率と、法人統計ベースの1人あたり人件費の推移を比べて見ると、この15年間、累積の春闘賃上げ率は30%前後増えたのに対して、企業の1人あたりの人件費は15%前後も減少しているのです。
景気がよくなると「春闘で賃上げ率を上げよう」という動きが出ますが、企業は非正社員を増やすなどして他の部分でコストカットをしているので、全体として賃金は上昇していないということです。
つまり景気と賃金の連動性は、一時金などを除けばすでにかなり緩くなってきている。だから、労働分配率(企業が新たに生産した付加価値全体のうち、そのための労働の提供者に分配された比率)が下がっているのです。「景気が良くなれば給料が増える」という考えは、今や当てはまらなくなっています。
"賃金がなかなか増えない構造的な問題"としては、主に4つの要因があるとのことです。
マクロの問題から見ると、第一にグローバリゼーション、技術革新、新興国との競争、デジタル革命などによる経済構造の変化があります。こうした流れの中で、先進国では中間層の雇用が機械に置き換わり、低賃金の雇用しか生まれなくなっている。最近では中国でも同じ状況が起きており、世界的に見て賃金が上がりづらい状況です。
経済は分厚い中間層が生まれないと、なかなか安定的に成長しない。野田前内閣や米国のオバマ政権は、「分厚い中間層をつくる」と唱え続けて来ました。これは正しい認識だと思いますが、安倍政権になってからこの言葉が出て来ません。
中国の人件費は「上がってるぞ」という話ばかりでしたけど、傾向変わったんでしょうか?
第二に、市場要因。よく「日本企業はお金を溜め込み過ぎ」「内部留保を投資や雇用に回せば、企業も経済も成長する」と言われますが、それはロジックが逆です。不確実性が高まるなか、お金を手元に置いておかなければいけない状況だからこそ、企業は投資も雇用も絞って、内部留保を厚くしてきたわけですから。
リフレ派はここらへんを「デフレ下では現金を溜め込んだ方がいいから」と説明していました。
上はマクロな要因2つ。残りはミクロな要因2つです。
まずは制度要因。これまで中堅・大企業では、中高年正社員の雇用を守るのが大前提になっていた。これは正社員の既得権益であり、なかなかなくなりません。その中で労働コストを下げるために、若者の採用を抑制する、非正社員を増やす、という選択肢が出てくる。そうなると、いつまでも非正社員が増え続け、全体の賃金は減り続けます。一方で正社員も、厳しい人事評価や能力給が導入され、賃金が下がっていく。賃金の下押し圧力はこうして続きます。
米国のように、自分のスキルを生かして自由に転職できる環境があればいいですが、日本は転職市場を支えるインフラが不十分。その人の経験や能力などのスキルを客観評価する仕組み、企業が必要とするスキルを身につけるための職業訓練や職業紹介の仕組みが十分とは言えない。また、欧州のように同一労働・同一賃金が確立されておらず、正社員と非正社員の賃金格差はすごく大きい。企業にとっては、安い労働力をフレキシブルに使えるわけだから、非正社員が減る兆しはありません。
この辺りが私がさっき言った「雇用規制緩和」には必ずしも反対ではなかったという理由です。
ただ、上記を見ても日本の場合は「雇用規制緩和」を単体で実行すると、弊害ばかり出てしまうかもしれません。
2つ目は古い労働力観です。日本企業の多くは、いまだに労働力を「抑制すべきコスト」と捉えています。以前は賃金を含むコストに適正利潤を乗せて、モノやサービスの価格を決めていました。ところがグローバル競争が激しくなってからは、最初にグローバル市場で競争できる価格を実現することが求められるようになった。
そこから適正利潤を引いて、その結果コストをいかに減らすかという発想になりました。そのため最大の労働コスト、すなわち賃金がどんどん削られるようになったのです。
今窮地に陥っている家電業界の例を見てもわかる通り、その背景には、潜在能力を生かすビジネスモデルをきちんと構築して来られなかったことがあります。競争の激化でモノづくりから生まれる付加価値がどんどん低下しているにもかかわらず、「モノづくり」に過度に依存したビジネスを続けたため、世界でナンバーワンの製品をつくり続けても低収益に甘んじています。
たとえば、大手から製品を外注し、ロボットを使って製造の効率化を目指す台湾のホンハイ(鴻海精密工業)などは利益率が下がっていますが、彼らにiPadやiPhoneの製造を外注し、自分では開発に集中し、実際のモノづくりをしないアップルの利益率は上がっています。
つまり、モノづくり自体よりも「モノづくり+α」「モノの価値を高めるα」から生まれる付加価値が、製造業の儲けの中心になってきた。その結果、旧来のモノづくりの現場で働く人たちの賃金は安くならざるを得なくなりました。
(中略)付加価値を生み出すのは、働く人の「頑張り」「知恵」といった人材の力。そこに高い報酬を払うべきです。「付加価値を生む源泉はヒト」という認識を失った日本企業の労働力観こそ、実は賃金低下の最大の要因だと思います。
ここ力入っていますね。長いですし、省略しきれませんでした。
あと、私は「ものづくりが大事」思想に疑問を持っているので、賛同してしまう話でもあります。
長いのでなるべく飛ばしたいですが、私がさっき書いていた安倍政権の政策は逆効果かもという話。
米国では「大学で取得した学位」「前職での経験」「前職の上司や同僚のレコメンド(推薦)の内容」といった客観的な基準で個人の能力を判断するので、転職し易い。それに比べ日本では、社内で蓄積されたスキルがどのようなものか、外部からはわかりにくい。また米国では、個人が自ら事業を起こすことも容易です。日本と比べれば、やはり労働市場の柔軟性は大きい。
日本も同じように労働市場の柔軟性を高めていけば、雇用や賃金の構造も変わって行くでしょうが、ホワイトカラーエクゼンプションや解雇規制緩和の話が出ると、労働組合などの反発が高まるなどして、なかなか改革が進まない。
また実際にも、労働市場の改革は様々な制度や慣行も同時に変え、転職市場の整備なども進めていかないと、かえって歪みが生じてしまう恐れもあります。「終身雇用」「退職金」といった概念や、それを支える制度や仕組みもあわせて変えない限り、難しいでしょう。
やはり「解雇規制緩和」だけを進めてしまうと、いわゆる片手落ちになりそうです。
あと、私が再三批判している国家主導の経済にも苦言。
成長戦略については、政府の提言は産業政策的な発想が強すぎるのではないかと思います。そのため、「これから医療や農業が伸びるから、そこに重点的に力を入れよう」といった議論になりがちです。医療や農業が成長産業になり得ることは間違いないとしても、成長産業に肩入れすれば経済全体が伸びるという考え方は、いささか単純すぎる気がします。
そもそも、「5年先、10年先にこの産業が伸びる」と、政府が今から決めつけること自体がおかしいし、そんなものがわかるはずもない。(中略)
わかり易い成功例は、クリントン政権時のゴア副大統領が進めた米国の「情報スーパーハイウェイ構想」でしょう。政府はお金をあまり出さずに、情報ネットワークが経済を牽引するというアイデアだけを提示して、それまで国防省が独占していたインターネットというインフラを民間に開放しました。
その結果、異業種の人材や多彩な専門分野の人が集まり、「これは面白い」と様々な分野に応用し始め、ネットをベースとする市場や技術が急速に普及した。政府がやったのは、技術やインフラを民間に開放する、規制をしないということだけでした。2000年代に入ってITバブルは崩壊しましたが、新しい産業をつくることには成功したわけです。成長産業は、そのようにして生まれるべきものです。
国家社会主義と国家資本主義の違い 国家主義や全体主義との関係もも参考にどうぞ。
これで終わりでいいかな?と思いましたけど、最後に若者を擁護していたのでそちらも。
円安によって輸入製品やエネルギー価格が上がる中で、輸入産業や中小企業の収益は悪化しています。彼らは、雇用や賃金を増やすことができないでしょう。(中略)
――こうした持論を唱えられている理由は何でしょうか。
ひとことで言えば、日本企業に対して一種の無責任さのようなものを感じているからです。日本が経済成長できなくなった理由を円高、不十分な金融政策、公共投資の抑制などのせいにする経営者は少なくないですが、国に責任転嫁をしているだけで、努力をしていない企業も多いと思います。
(中略)繰り返しになりますが、経済を引っ張るのは、市場で厳しい競争をして、リスクを取って新しい可能性に賭ける企業です。その気概が日本から失われたこと、それを埋め合わせるために雇用や賃金にしわ寄せをしたことが、最大の問題でしょう。
それを考えると、日本の若者が保守化するのも当たり前です。これまでの不況のツケを回され、賃金が下がり続け、正社員になることさえ難しい。これでは絶望するしかありませんよね。今の若者は根性がないという人もいますが、若者に辛い思いをさせているのは実は我々の世代であることをしっかり認識すべきです。
最初にやわらかい言い方と書きましたが、後半になるにつれて厳しくなってしまいました。
まあ、それだけ内容が深刻ということかもしれません。
●証券会社でアベノミクス批判禁止令 「買うなら今」と売り時として活用 2013/4/4
2013/4/4:マスコミが大物スポンサーを批判しないようなものですかね?おもしろい話がありました。
2013年4月1日 週刊ダイヤモンド編集部
経済好転は本物か? 給料はいつ上がるのか?徹底検証 アベノミクスの“裏側”
「アベノミクスをレポートで批判しないように」──。 ある大手証券のエコノミストは、安倍政権の経済政策に水を差さないよう社内に大号令がかかっていると明かします。証券会社にしてみれば、大胆な金融緩和に端を発した
株高は、投資家の取引を活発化させ収益を拡大させる要因であり、大歓迎だからです。 安倍政権が掲げている経済政策は、決して目新しいものではありません。それにもかかわらず、円安と株高が進行し、一部企業では賃上げも始まりました。まさに「安倍マジック」です。
しかし、マジックには必ずタネがあり、見えていることと実際に起きていることは違います。鵜呑みにすれば思わぬ落とし穴があるかもしれません。
一見順調に思える今こそ、一度立ち止まって、冷静にアベノミクスの効果と弊害を整理し理解しておく必要があるのではないでしょうか。
http://diamond.jp/articles/-/34006 利益になるから批判しない、むしろ持ち上げる……わかりやすい話です。
いわば安倍晋三政権と証券会社は共犯なのです。相手を悪く言うはずもありません。
他にもこういう話あるかな?と思って、ちょっと検索。
ちらっと書いているものならありました。
ただ、週刊ダイヤモンドみたいなはっきりとした書き方をしているものはありませんね。
これだけだとちょっと短いので、残りは関連してこの機会を利用してしこたま儲けてやろうという証券会社さんの話を。
30万円から始めるアベノミクス投資
2013.03.31 日刊スパ
アベノミクス投資で注意すべき点は何か?
「特に投資初心者は、
円安だからとやたら証券会社や銀行などが勧めてくる、よくわからない海外の投資信託や生命保険に注意が必要です。確かに円安が進めば儲かるのでしょうが、そのぶん手数料も高い。それなら手数料が安く、まだまだ株価が安い個別株。とりあえず他人が勧めてくる商品は、手数料が高いのでは?と疑ってみるべきです」(櫻井氏)
http://nikkan-spa.jp/408692 私は
ウォーレン・バフェットの投資アドバイス「専門家は疑え」など投資を勧める人たちに関する話をしつこく書いていますけど、いやぁーな感じです。
この手の話はまだあります。
アベノミクス便乗「下心」の見分け方
執筆者:豊島 逸夫 更新日:2013年03月27日
不動産、高級宝飾品、呉服、外車、ゴルフ会員権などの値段が上がり始めています。気の早い週刊誌などは「安倍バブルか?」などと書きたてていますが、要は、アベノミクス効果で株が上がったので懐が暖かくなり、気前よく買い物もする人たちが増え始めたのでしょう。
でも、それはほんの一部の人たちに限っての話。大多数の人にしてみれば、給料が上がった、ボーナスが増えたなど、株高の波及効果を感じられないでしょうね。
http://allabout.co.jp/gm/gc/414696/ これは「資産効果」というようです。"アベノミクス・円安の副作用・悪影響 食品・光熱費などの物価上昇が庶民を直撃"の産経新聞社の記事で紹介しました。
先日の日曜、両国国技館に4600人の投資家を集めた投資信託セミナーが、ネット証券4社共同で開催されました。セミナーで勉強することはとてもいいことだと思って見ていましたが、最後に全員が起立してシュプレヒコールみたいに拳を上げ、「エイエイオー、倍増するぞーーー」とやっていたのには、さすがに引いてしまいました。
証券会社の社長が「買うなら今ですよーーー」と興奮気味に語りかけている風景にも、証券会社の顧客戦略の匂いを感じました。
商売上手ですな。
たしかに、最近は株高ということで株取引を行っていない人たちがムズムズしていて、あたかも「自分たちはせっかくのチャンスに乗り遅れているのでは……」と感じられる現象も見受けられます。
この「乗り遅れ感」は、とても危険な発想です。人が儲けているのを見て、なんとか自分もやらねば損と感じることに危うさを感じるのです。投資とは、あくまでマイペースで、自分の身の丈に応じた金額を少額から始めることが大切です。
特に日本人は集団で群れて行動する民族なので、お隣さんの動向ばかりが気になるのです。「友人が株で大儲けしたらしい。私も頑張らねば!」これが、いけない発想なのです。
騙されないように皆さんも気をつけてください。
★2014/1/14 GDPプラスでも国民の給料は上がってない 実質雇用者報酬マイナス
どこで見たか忘れましたが、実質雇用者報酬なるものが下がっていると聞いたので確かめてみようと思っていました。
「雇用者報酬」および「実質雇用者報酬」の説明は以下。
統計局ホームページ/C 国民経済計算
雇用者報酬:
生産活動から発生した付加価値のうち労働を提供した雇用者への分配額をさす。雇用者とは,産業,政府サービス生産,対家計民間非営利サービス生産を問わずあらゆる生産活動に従事する就業者のうち,個人事業主と無給の家族従業者を除くすべての者であり,法人企業の役員,特別職の公務員,議員等も含む。
実質の雇用者報酬は,名目雇用者報酬を家計最終消費支出(除く帰属家賃)デフレーターで除して算出した参考値。
http://www.stat.go.jp/data/getujidb/2c.htm これが出ているもの…と探すと、内閣府の以下のページにPDFがありました。
国民経済計算(GDP統計) - 内閣府
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html(PDF) 2013(平成25)年7~9月期四半期別GDP速報 (2次速報値) 内閣府 経済社会総合研究所 国 民 経 済 計 算 部 DATE 2013.12.9
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf 実は過去に以下のようなものを書いていたのである程度予想できたのですが、実際確かめてみるとショッキングです。GDPは上がっているのに、雇用者報酬は下がっていると全く逆の動きをしているのです。
■
GNI(国民総所得)やGDPは景気実感と乖離 市場GDPだと日本は回復していない実質 2013/7~9 前期比 2次速報値
国内総生産(GDP) 0.3% [年率換算 1.1%]
雇用者報酬 -0.6%
実質で見た方がいいと思いますが、名目で見ても同様です。
名目 2013/7~9 前期比 2次速報値
国内総生産(GDP) 0.3% [年率換算 1.0%]
雇用者報酬 -0.2%
ただ、このシーズンはいつも下がるみたいなのもあるかもしれません。そこで、前年の同時期も見てみよう…と思ったらいっしょに載っていたのは年間のものでした。
実質 2012 前年比 2次速報値
国内総生産(GDP) 0.7%
雇用者報酬 0.9%
うーん、同じ時期じゃないとなーともう少し下まで読んでみると「四半期別の実質成長率(季節調整系列)」というのがありました。これは良さげです。ついでにGNIも載せます。
四半期別の実質成長率(季節調整系列)
2012 2012 2013 2013 2013
7~9 10~12 1~3 4~6 7~9
国内総生産(GDP)
-0.8% 0.1% 1.1% 0.9% 0.3%
国民総所得(GNI)
-0.4% 0.2% 0.7% 1.7% -0.2%
雇用者報酬
1.1% -0.4% 0.5% 0.3% -0.6%
うーん、これ見ると雇用者報酬は2012年7~9月期に良かったものの、それ以降はパッとしないですね。ずっとよくありません。
不思議なのは国民総生産は雇用者報酬と全く逆で2012年7~9月期に悪く、それ以降で伸びている感じであることです。よくわからないですね。
ただ、実質雇用者報酬が下がっていて嬉しいということはないと思いますので、こちらを重視した方がいいでしょう。
GNI(国民総所得)やGDPは景気実感と乖離 市場GDPだと日本は回復していないと同じく、GDPを見ていても実感とは違うよという話でしょうか?
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