冒頭に追記
2022/06/27追記:
●猛反対にあってソフトバンクがエヌビディアへのアーム売却断念 【NEW】
●「買収は必ず成立」…またしても嘘になった孫正義会長の言葉 【NEW】
【クイズ】任天堂・ダイドードリンコ・やおきんなどがファブレス企業として知られています。では、以下のうちファブレス企業だとされているのはどこでしょう?
(1)キーエンス
(2)ニトリ
(3)ユニ・チャーム
●猛反対にあってソフトバンクがエヌビディアへのアーム売却断念
2022/06/27追記:すっかり忘れていてそんな話あったっけ?と思ってしまったエヌビディアによるアーム買収の話。いつの間にか断念されていたようです。以下は、
米半導体エヌビディア、アームの買収断念か 米報道: 日本経済新聞(2022年1月25日 23:37 )というタイトルの記事ですが、その後、正式に断念したことが発表されています。
<米ブルームバーグ通信は25日、米半導体大手エヌビディアが英半導体設計アームの買収計画を取り下げる準備に入ったと報じた>
<ブルームバーグが関係者の話として報じた内容によると、エヌビディアは取引先に対して買収が成立しないとの見方を伝えた。当局の承認を得るための手続きにほとんど進展がないとしている>
エヌビディアはすでに素晴らしい企業である上に将来有望。得意分野は異なりますが、アーム社も同じ半導体業界での優良企業。実現すれば、強い有望企業同士が手を組む、夢のようなコンビでした。ただ、逆に言うと、強いところ同士がくっつくことは問題。以前書いた中立性が特に問題となったようです。
<米半導体大手のクアルコムやインテルなどは、競合企業であるエヌビディアの傘下にアームが入ることで価格面などで不利益を被りかねないと懸念している。
買収が成立するには、米国、英国、中国、欧州連合(EU)の当局の承認が必要だ。(中略)
FTC(引用者注:米連邦取引委員会)は21年12月に買収の差し止めを求めてエヌビディアなどを提訴した。車線維持や衝突回避といった自動車の運転支援に使う半導体のほか、アームの設計技術を使うデータセンター用CPU(中央演算処理装置)などで健全な競争を阻害すると指摘する。エヌビディアがアームを通じて半導体各社の開発計画を知り、自社に不利な取引に消極的になるとも懸念している。訴訟は22年8月に始まる見通しだ。>
●「買収は必ず成立」…またしても嘘になった孫正義会長の言葉
蛯原健・リブライトパートナーズ 代表パートナーの解説によると、ソフトバンクの孫正義会長は「ARMのライセンスは従来通り広く多くの会社に提供していくこと、両者の事業領域はまったく重なっていない為業界の集中度合いが高まるわけではない事、この2点を理由に買収は必ず成立する」と説明していたといいます。
ただ、見通しが甘かったようで、多数ある孫正義さんの嘘のひとつとして加わってしまうことに…。一方、ソフトバンクグループは、売却が成立しなかった場合、アームを上場させることを検討…と記事では書いています。もともとアーム売却はソフトバンクの投資失敗が理由ですから、なんらかの手段で資金を確保したいのかもしれません。
実際、こちらもその後正式に発表があり、例によって孫正義会長が嘘くさく大げさにアピール。ただ、蛯原健さんは「発表当時から2倍近く上がったエヌビディア株式との交換を織り交ぜたスキームゆえソフトバンクGにとってこの影響はかなり大きく、単独IPO(引用者注:新規上場)も現下の市況では厳しいだろう」としていました。
●ソフトバンクがまさかの英ARMホールディングス買収へ
2016/7/18:ソフトバンクは、アリババ株の売却、ガンホー株の売却と最近やけにお金を集めていました。ガンホーの場合は単に見切りをつけたのでは?とも言われましたが、何かヤバイことがあるのでは?、アメリカで買収して失敗したスプリント対策ではないか?などといった憶測も出る状況でした。で、ここに来てまさかの英ARMホールディングス買収という話が出てきてびっくり。
ソフトバンク、ARMホールディングス買収で合意に近づく-NYT紙 - Bloomberg 2016年7月18日 10:56 JST
ソフトバンクグループは英半導体設計会社ARMホールディングスの買収で合意に近づいている。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が事情に詳しい複数の関係者の情報を基に報じた。
協議は最終的なものではないとNYTは伝えた。
●性質が異なるアーム買収の意味…ソフトバンクが転業する?
ソフトバンクは基本いろいろ手を出していて、買収しては大ぼらみたいな威勢の良いことを言うというやり方をしてきました。失敗した米スプリントもそうですね。
ただ、今回の英ARMホールディングスというのはかなり性質の違う企業なので、やはり驚きがあります。うちでは、
イギリスアーム社(ARMホールディングス)はインテルを倒すか?というので紹介したように、ファブレス企業であり一般的な製造業とはちょっと違うものの、サービス業主体でやってきたソフトバンクとはかなり性質が異なることは確かです。
(ファブレス企業は、
意外に有名企業があるファブレス企業・メーカー 任天堂・ダイドードリンコ・やおきんなどを参照)
今回は以下の別記事を持ってきましたけど、半導体設計に強みのある企業なのです。
スマホ支える英アーム 低コスト・省電力でシェア9割 :日本経済新聞 半導体設計に特化、低コスト・省電力が武器 2013/11/3 7:00
スマートフォン(スマホ)の急速な普及など、IT(情報技術)機器の進化には高性能な半導体が欠かせない。英アーム・ホールディングスはCPU(中央演算処理装置)の設計に特化し、スマホ向けでは9割の世界シェアを握る半導体業界の黒子ともいえる存在だ。モバイル向けで培った低コスト、省電力などのノウハウを武器に、サーバーなどに事業領域を広げ、半導体最大手の米インテルとのつばぜり合いも激しくなってきた。
「デスクトップパソコン並みの性能を実現した」――。米アップルが9月下旬に発売した「iPhone5s」のハード面の最大のトピックスはスマホ初の64ビットCPUを搭載したことだ。発表会の席上、フィル・シラー上級副社長が紹介した最新CPU「A7」は「アームアーキテクチャー(基本設計)」を採用している。韓国・サムスン電子なども、来年にはアーム設計のCPUを搭載した64ビット対応機を発売することを目指しており、最先端スマホでも牙城は揺るぎそうにない。
(中略)気がつけば、iPhone、アンドロイド端末の両陣営ともアームに頼っており、パソコンにおける「インテル・インサイド」を思わせる状況になっている。
【クイズ】任天堂・ダイドードリンコ・やおきんなどがファブレス企業として知られています。では、以下のうちファブレス企業だとされているのはどこでしょう?
(1)キーエンス
(2)ニトリ
(3)ユニ・チャーム
【答え】(1)キーエンス
キーエンスは良い会社なので、他も好きな企業を並べてみました。ユニ・チャームは普通に製造業で、ニトリも変わっていて、製造までやる小売業です。(関連:
内需型でデフレ円高勝ち組のニトリが、インフレ円安でも強い理由)
こういう個性はおもしろいですね。
●「IoT」(モノのインターネット)需要を期待した買収との解説
15時10分追記: 前述のように、一応スマホ繋がりではあるとはいえ、かなり異質な買収でメリットってどんなものなんでしょうね? 良い会社なのは間違いないのですが、「ソフトバンクが」となると、正直ピンと来なくて気になっていました。これについて、日経新聞は「IoT」だの関係という説明です。
ソフトバンク、英アームを3.3兆円で買収へ 海外メディア :日本経済新聞 2016/7/18 12:41
買収額は3兆3000億円程度とみられる。アーム社は携帯電話などモバイル機器向けに強く、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の時代が訪れると様々な機器に需要が広がるとみて買収に乗り出したもよう。
本業とのシナジーというか、単純に儲かりそうだからってこともあるかもしれませんね。
●投資がドヘタだった孫正義社長、優良アーム社を手放すことに…
2020/09/15:アーム社はシナジー効果はともかく良い買収だと思ったのですけど、その後の孫正義社長の投資は素人丸出しのドヘタなものが多く、アームやアリババへの投資は「まぐれ」だったっぽい感じがあります。で、投資の大失敗が響いて、優良企業であるアーム社の株も手放すことなりました。
ソフトバンクG、半導体アームをエヌビディアに売却へ (写真=ロイター) :日本経済新聞(2020/9/13 7:05 (2020/9/14 0:06更新))によると、ソフトバンクグループ(SBG)が傘下の英半導体設計アームを米半導体大手エヌビディアに売却する方向で最終調整に。SBGがエヌビディア株を取得するなど、売却に株式交換を組み合わせる方向で調整しているそうです。
売却額は4兆円規模となる見通しであり、3兆円超の買収からプラスにはなりましたので、アーム社買収自体は成功でしょう。ただ、この売り方には賛否あります。成長著しいエヌビディアの株主になれるから有利という見方と、エヌビディアの株価が今高すぎのためタイミングが悪いとの見方です。
売買タイミングとしてはもっと良い時期があるのでは?というのは納得感ある指摘。ただ、ソフトバンクに余裕がないので選択肢はないのでしょう。また、エヌビディア自体は素晴らしい会社であり、日本に今存在するどの企業より価値が高いのではないか?と思いますから、結果的には良いんじゃないかと思いますね。
●4兆円は嘘?ソフトバンクによるエヌビディアへのアーム売却金額
なお、これでソフトバンクがエヌビディアを支配できてアーム社も引き続き保持できる…と言っている人もいますがデマ。
ソフトバンクG、英アーム売却発表 米エヌビディアに :日本経済新聞によると、出資比率はたった7、8%しかなく、子会社にも関連会社にもできないレベル。支配なんてできません。
また、売却額とされた400億ドル(約4兆2千億円)というのは、飽くまで「最大」の数字でいろいろ条件があるみたいですね。まず、ソフトバンクGと10兆円ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」には、現金100億ドルとエヌビディア株215億ドル分だけ。ここだけだと315億ドルで買値とほとんど変わりません。
これ以外は、契約時にアームに20億ドルとされていました。この説明の仕方だと、20億ドルは、ソフトバンクグループには行かない…ってことですかね。また、従業員に対し15億ドル相当の株式報酬を付与ともありました。これらの数字をソフトバンク分の売却額にするというのは妥当なんでしょうか。
それから、業績に応じ対価の一部を後払いする「アーンアウト」として、最大50億ドルを現金かエヌビディア株でソフトバンクGとSVFに支払うとのこと。これは確かにソフトバンク系への支払いとなりますが、たぶん買収後のアーム社の業績が良ければ…ということなのでしょう。例によってソフトバンクが大げさに宣伝している感じはありますね。
●ソフトバンクによるエヌビディアへの売却でアームが破壊される理由
一方、米半導体大手エヌビディアへのアーム社売却は、アーム社がとってきた中立性というビジネスモデルを崩壊させるものだという声も出ています。例えば、
エヌビディアへの売却は「最悪」、事業モデル崩壊=アーム創業者 | Reutersがそういうものです。
アーム・ホールディングスの共同創業者ハーマン・ハウザーさんは、売却許可を判断できる英政府に対し、売却に際して、「アームのオープンなビジネスモデルの維持」などを要求していて、これはよくわかりませんでした。ただ、「売った創業者がとやかく言うな」「儲けたくせに」といった批判まであって、これらは変な批判ですね。
売ってしまった以上、創業者が命令する権利がないのは確かでムリな話なのですけど、創業者ではなくても、それこそネットであれこれ言っている皆さんのように、問題を指摘することはできます。半導体の一企業に、それも半導体企業が多いアメリカの企業に、中立性を保っていた企業を吸収されることに懸念を示すこと自体は妥当でしょう。
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