シナジー効果は不透明だが全領域に関わる――ソフトバンクがARM買収で目指すもの - ITmedia Mobile 2016年07月18日 23時51分 更新[田中聡,ITmedia]
では、ソフトバンクがARMを買収したことで、どんなシナジー効果が表れるのだろうか?
孫氏は「ソフトバンクは、インターネットのインフラを提供している。あらゆる製品にARM(ベースのチップ)が入っていくことは、少なくともIoTがネットにつながるときに、ソフトバンクのインフラとARM内蔵製品は、シナジーを持ってつながり合う」と説明するが、これは買収をしなくても実現する、ごく当たり前のことだ。
「ARMはチップの設計だけでなくて、(ハッキングなどを防ぐ「TrustZone」という)セキュリティ(技術)も提供しているので、そういうサービス部分とソフトバンクグループのサービス部分で何らかのシナジーを将来的には持つことがあるかもしれない」と孫氏は続けるが、具体的なシナジーの創出は、まだ先のことになりそうだ。
一方、孫氏はARMとのシナジーはソフトバンクグループが関わる全領域に影響を及ぼすとみる。「今日も朝、(アリババの)ジャック・マーから電話がかかってきて、『ぜひ、中国でアリババがARMのパートナーになりたい』と熱望された。アリババは中国のスマートフォン(Meizu)向けにOSを提供しているし、アリクラウドやアリペイでも関わってくる」
ソフトバンクグループはこれまで、PCのソフト流通、PCインターネット、PCブロードバンド、モバイルインターネットという「10年に1回のパラダイムシフト」(孫氏)に対して、投資を行ってきた。そして「人類史上の最も大きなパラダイムシフトはIoT(モノのインターネット)になる」とし、その入口での投資が、今回のARM買収だったと明かす。
世界中のスマートフォンに使われているプロセッサのライセンスを提供しているARMがソフトバンクグループ傘下になることで、モバイル業界における中立性が保てるのかという懸念もある。極端なことをいえば、ソフトバンク端末に優先的にARMベースのプロセッサを搭載する――といったこともあり得る。孫氏は「ソフトバンクだけに優先的にということはない。Yahoo!のサービスもソフトバンクに限ったものではない」と話し、ソフトバンクの自社製品にとって優位にビジネスを展開することが目的ではないことを示した。
(中略)孫氏は「チップメーカーに対しては、中立性を保ちたい」と話す。
「ソフトバンクは一切のチップを開発していない。Apple、Samsung、Huawei、HTC、シャープ、ソニーなどあらゆるスマートフォンのメーカーもARMを使っているが、われわれは、それらの会社が作った製品(スマートフォン)を最終製品として買っているし、われわれが競合している会社(ドコモやKDDI)も買っている。ソフトバンクグループになったからといって、そこに差別化が生まれるわけではない。ARMからみても、そこは中立な立場でさまざまなチップメーカーに提供し、チップメーカーは(プロセッサを)最終製品のスマートフォン、ノートPC、家電に提供していくと思う。他のキャリアに売ってほしくないということは考えていない」
ソフトバンク、「レバレッジ経営」を加速 英アーム買収 :日本経済新聞 2016/7/19 0:01
英半導体設計のアーム・ホールディングス取得は、日本企業による海外企業買収で過去最大の規模となる。ソフトバンクの代名詞である、借金をテコに成長をめざす「レバレッジ経営」が一段と加速する。(中略)
買収資金の一部を調達するためみずほ銀行と借入限度額1兆円のつなぎ融資(ブリッジローン)契約を結んだ。13年の米携帯事業者スプリントの買収で急拡大した負債規模はさらに増えることになる。ソフトバンクグループは16年3月末時点で、自己資本の4.5倍に相当する12兆円弱の負債を抱える。外資系の格付け会社からは「投資不適格」級の格付けしか得られていない。今回の買収発表前に外資格付け会社のアナリストは「ソフトバンクが大型買収案件に動けば、格下げの可能性がある」とみていた。一段と格付けが下がれば今後の資金調達にも影響を及ぼしかねない。投資家の不安を払拭するために、ソフトバンクグループは今回の大型買収を通じた成長展望を明確に示す必要がありそうだ。(竹内弘文)
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