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ハゲタカ偽学術誌SCIRP利用の日本の大学ランキング 驚きの1位は?


 ハゲタカ出版社・ハゲタカジャーナルなどの話をまとめ。<金さえ払えば何でも掲載 悪質なハゲタカ学術論文誌SCIRPは中国系>、<偽学術誌SCIRP利用の日本の大学ランキング 驚きの1位は?>、<日本人研究者はハゲタカ誌に騙されただけ?日本医学会が注意喚起>などをまとめています。

冒頭に追記
2022/09/17追記:
●一部ではなく全文盗用!あの国の研究論文207本が盗用、世界一か? 【NEW】


【クイズ】以下の大学の中で、中国系の悪質な学術論文誌SCIRPへの投稿数が最も多いところはどこでしょう?

(1)アメリカのハーバード大
(2)中国の精華大学
(3)日本の東大


●一部ではなく全文盗用!あの国の研究論文207本が盗用、世界一か?

2022/09/17追記:科学系に強く研究不正問題も熱心な毎日新聞がまたハゲタカジャーナルについての記事を書いていました。今回は幸い(?)海外のケース。粗悪な学術誌に盗用論文207本 インドの研究機関所属の複数研究者 鳥井真平 毎日新聞 2022/9/16などの記事が出ていました。

<インド東部オリッサ州の6研究機関に所属する複数の研究者が、全文を盗用した疑いのある論文を少なくとも207本、同じ国際学術誌に掲載していることを毎日新聞が確認した。(中略)専門家は「一つの学術誌では世界最大規模の全文盗用」と指摘する>
<この学術誌は工学系の「インターナショナル・ジャーナル・オブ・リサーチ・イン・エンジニアリング・アンド・サイエンス(IJRES)」。2013年設立とみられ、出版社の所在地は明かされていない>

 学術誌は、ずさんな審査(査読)で論文を掲載する粗悪誌「ハゲタカジャーナル」(ハゲタカ誌)とみられます。ただ、ひょっとしたら研究者らと共犯…という可能性も…。<6研究機関の研究者がどういう関係かは明らかになっていないが、組織的に盗用を繰り返している可能性もある>としていました。

 全文を盗用というのはずさんであり、わかりやすいもの。盗用がバレないように細工していた方がより「悪質」でしたが、逆に言うとまだ見つかっていないものがあるかもしれません。春に日本人研究者から「論文の全文を盗用された」という情報が毎日新聞に寄せられたことがきっかけで調べていたみたいですね。3395本の論文を調査したといいます。

 同じ毎日新聞の別記事・「科学をやる資格ない」憤る日本人被害者 インド研究者の論文盗用 鳥井真平 2022/9/16 1によると、盗用が確認された日本の論文は6本。兵庫県立大の石垣賢卯(けんと)特任助教(物性物理学)の東京大物性研究所の博士課程時代の論文などが盗用されたそうです。


●金さえ払えば何でも掲載 悪質なハゲタカ学術論文誌SCIRPは中国系

2016/7/28:悪質な学術論文誌について説明された【追記あり】海外のエセ論文誌に一番多く寄稿している日本の大学はどこ? : ギズモード・ジャパン(2015.12.10 22:30)という記事がありました。記事によると、お金さえ払えば正式な学術論文として掲載してしまう悪徳出版社が増えているとのこと。なかには査読を偽装したり、著名な研究者を無断で編集委員として記名するといったより悪質な事例まであります。

 そのような出版社はハゲタカ出版社(Predatory Publishers)と呼ばれているとのこと。コロラド大学の図書館司書、Jeffrey Beallさんは、「Beall’s List」というハゲタカ出版社のリストをまとめていることで知られています。そこにリストアップされているScientific Research Publishing(SCIRP)は、特に悪名高い出版社のひとつなんだそうです。

 ただ、このギズモードの記事自体が最初剽窃状態だったという問題もあって、物議を醸していました。この記事の何が問題だったか?と言うと、最初の投稿時には以下の記述がなく、ギズモードの独自調査のように見せかけていたことだそうです。

<じゃあ、日本国内の大学で一番寄稿数の多い所はどこだろう? という疑問から、SCIRPのデータを解析して問題提起をしたのが、和歌山大学の和田俊和教授でした。そして、彼のアイデアに、より精度の高い解析データを補足したのが名古屋大学宇宙地球環境研究所の奥村曉氏です>

 和歌山大学の和田俊和教授がしたという問題提起というのは、フェイスブックの2015年11月1日の投稿のことだそうです。SCIRP(Scientific Research Publishing)は、中国系の出版社という情報もありました。


●偽学術誌SCIRP利用の日本の大学ランキング 驚きの1位は?

で、奥村曉さんが、集計し直したというのが「まともではない論文誌」への投稿数が最多の日本の大学は? - 宇宙線実験の覚え書き( 2015-12-08 )です。ランキングになっていました。

【偽学術論文誌を悪用している日本の大学ランキング】
順位 大学名 論文数
1位 東京大学 107
2位 九州大学 99
3位 東北大学 94
4位 北海道大学 90
5位 新潟大学 84
6位 京都大学 78
7位 金沢大学 77
8位 日本大学 72
9位 大阪大学 71
10位 名古屋大学 69

 また、深刻なのはこれらの数字が海外の有名大学から見ても非常に多いということ。以下の中で最も多い偽学術誌の地元中国の精華大学ですら、日本ならベストテンに入れない少なさでした。

大学名 論文数
米 MIT 16
英 ケンブリッジ大学 23
英 オックスフォード 15
米 ハーバード 40
米 スタンフォード 28
中 精華大学 57


【クイズ】以下の大学の中で、中国系の悪質な学術論文誌SCIRPへの投稿数が最も多いところはどこでしょう?

(1)アメリカのハーバード大
(2)中国の精華大学
(3)日本の東大

【答え】(3)日本の東大


●日本の偽論文が多いのは単に人口が多いから?割合で見ると…

 上記でハーバード大が多めなことについて、医系の研究者のせいではないか?という解説がありました。日本ですと、私立大が10位に入っていないのはそういう理由もありそうです。奥村曉さんは早稲田大学が大したことなくて予想外と書いていましたが、ここは医学系が非常に弱かったはずです。

 また、私は研究者数の多さそのものの影響が大きいはずだと思いました。奥村曉さんも研究者数の割には東大はそう多くないことを指摘しており、8位の日大の方がかなりマズイといったことを言っていました。

 ただ、こういう単純な量ではなく比率ということで言うと、日本の大学が全般に悪いというのも言えてしまうようです。

 以下は、奥村曉さんのデータを元に、人口あたりの偽論文の多さを日本を比較したもの。1より多いと日本より偽論文を投稿する確率が高く、1より小さいと少ないというもの。結果、ほとんどの国で1を下回りました。つまり、日本より偽論文が多い国はほとんどないということです。

国名 論文数 人口 (億人) 日本を1とした場合
日本 3160 1.3 1.00
米国 5776 3.2 0.74
カナダ 1093 0.4 1.12
イタリア 1095 0.6 0.75
イギリス 874 0.6 0.60
フランス 867 0.7 0.51
ドイツ 863 0.8 0.44
中国 5193 13.6 0.16
韓国 655 0.5 0.54


●論文数から見ると日本は少ないと言える?

 ただし、これは全体の論文数と比較した方が正確です。人口の割に論文数が多い国と少ない国があるためです。生の数字がないグラフしか私は知らないので計算できないんですが、トムソン・ロイターInCitesで調査した2012-1014年の3年間の平均の論文数のランキングは以下。

1位 アメリカ
2位 中国
3位 イギリス
4位 ドイツ
5位 日本
(いったい日本の論文数の国際ランキングはどこまで下がるのか!! - ある医療系大学長のつぼやき 2015年05月01日 豊田長康)

 上記のうちアメリカと中国はダントツに多いです。したがって、アメリカと中国は上記の印象よりずっと偽論文への投稿が少ないと考えられます。また、3位と4位のイギリスとドイツは日本より多い論文数でありながら、偽学術誌への投稿は4分の1程度。やはり比較にならないほど、偽論文が少ないと考えられます。

 ちなみに何かと叩かれる韓国は5万くらいで偽論文が655、日本が7.5万くらいで3160ですから、これもまた日本の完敗。そもそも日本は人口の割に論文の投稿が少ない国でもあるので、先ほど比べた人口比だと実はかなり有利に出ていました。

 今回のものは飽くまで代表的な偽学術誌1個のデータに限ったものなわけですが、日本の大学で不正の類が極めて多いことを示唆する内容になっており、たいへん深刻です。

(追加:日本の論文数の少なさについて、科学技術立国が聞いて呆れる 日本の人口当り論文数ランキングの低さで補足しました)


●日本人研究者はハゲタカ誌に騙されただけ?日本医学会が注意喚起

2019/03/13:「ハゲタカ出版社」という言葉が最初でも出ていたのですけど、日本医学会が、所属する医師や研究者にハゲタカ誌への論文投稿を控えるよう注意喚起していました。内容を見ると、日本の研究者が意図して悪用している…というニュアンスではなく、被害者だというスタンスのようです。

 ハゲタカ誌を「悪徳雑誌」と表現し、「著者から徴収する掲載料収入のみを目的とし、論文の質の管理が粗雑」と批判。論文投稿先を慎重に選ぶよう呼びかけていました。以下のような特徴と問題点を列挙した他、「ホワイトリスト」と呼ばれる健全な学術誌をまとめた海外のサイトも紹介していたそうです。

<特徴>
・有名誌に似た雑誌名を付ける
・掲載料や編集方針を明確に公表しない
・十分な査読(内容チェック)を経ず論文を掲載し、掲載料を請求する
・研究者に投稿を勧めるメールを頻繁に送付する

<悪影響>
・想定よりも高額な掲載料を請求される
・著者や所属機関が否定的な印象を持たれる
・論文データベースに収録されず、論文が広く流通しない
・投稿後に怪しい学術誌と気づいても、取り下げられない
(「ハゲタカジャーナル」投稿控えて 日本医学会、加盟129学会に注意喚起 毎日新聞2019年3月12日 21時55分(最終更新 3月12日 23時10分)より)

 なお、日本の研究者が皆被害者であり、悪用している人がいないかというのは疑問。というのも、日本の研究論文の特徴として、不正論文の割合が他の国より高いというのもあるため。研究不正大国日本 撤回本数世界一など、トップ10の半分が日本人でやっているように、不正論文が多い研究者ランキングも上位は日本人ばかりです。意図して使っている方が結構いらっしゃるんじゃないでしょうか?

 ただし、不正の一貫としてやっていたのか、騙されただけなのかに関わらず、今回の注意喚起そのものは良い試みだと言えるでしょう。偽学術誌・ハゲタカジャーナルの情報が広まれば、業績水増しのために利用したい人なども利用しづらくなると考えられるため。どちらにせよ、大歓迎の注意喚起です。


【本文中でリンクした投稿】
  ■研究不正大国日本 撤回本数世界一など、トップ10の半分が日本人
  ■科学技術立国が聞いて呆れる 日本の人口当り論文数ランキングの低さ

【関連投稿】
  ■論文・臨床研究の捏造大国日本 ノバルティスのディオバンだけじゃない
  ■科学論文ニュースに注意!チョコレートダイエットの嘘に世界が騙される
  ■有名な心理学研究の60%に再現性なし 医療分野では70~90%も
  ■日本の研究不正・論文捏造に甘い アメリカでは懲役57カ月の実刑判決も
  ■研究不正疑惑についての投稿まとめ

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