医療分野での人工知能(AI)に関する話をまとめ。IBMのAIワトソンは当初の期待と異なって失敗したとも言われていますが、医療分野で快挙を成し遂げたことがありました。グーグルやハーバード大など他のAIも驚くべき結果を出しています。
そうなると、人間の医師はいらないのでは?といった声が出てくるもの。インタビューを受けていた医師は当然「人間の医師は必要」と説明。ところどころ本当かな?と思う説明があるものの、医療分野に限らず基本的にはAIと人間は対立せず、人間がAIを利用したり、棲み分けしたりする形になると思われます。
2016/8/5:
●人工知能ワトソンが診断 医師に薬変えるよう助言し患者の命救う
●血液がんの分野が人間の医師に難しい理由
●人工知能のワトソンの由来はシャーロック・ホームズのワトソン博士?
2017/12/28:
●医療でもAIが圧勝する衝撃的な結果に
●医療AIよりはるかに悪い人間の医者はもういらない?
●人間のお医者さんがAIに勝てるのは人間らしさ?
2019/01/15:
●苦戦が伝えられるIBMのワトソン、医療分野では有望?
2020/01/04:
●医療分野にもグーグルのAIが進出、乳がん検診の間違い率は?
【クイズ】人工知能ワトソンの名前の由来は?
(1)IBMの事実上の創立者の名前から。
(2)推理小説『シャーロック・ホームズシリーズ』の登場人物ワトソン博士から。
(3)DNAの分子構造における共同発見者の一人の名前から。
●人工知能ワトソンが診断 医師に薬変えるよう助言し患者の命救う
2016/8/5:
人間を超えるIBMの人工知能ワトソンのできること、さらに増えるでやったワトソンがまた快挙。
お医者さんが誤診していたというわけではないのですが、より詳しい病名を診断し、薬を変えるようにアドバイスしました。えらいことになってきましたね。
東京新聞:膨大な医学論文を学習のAI、名医の働き 診断難しい白血病見抜く:社会(TOKYO Web) 2016年8月5日
使われたのは米国のクイズ番組で人間のチャンピオンを破った米IBMの「ワトソン」(中略)
女性患者は昨年、血液がんの一種である「急性骨髄性白血病」と診断されて医科研に入院。二種類の抗がん剤治療を半年続けたが回復が遅く、敗血症などの危険も出た。そこでがんに関係する女性の遺伝子情報をワトソンに入力すると、急性骨髄性白血病のうち「二次性白血病」というタイプであるとの分析結果が出た。
ワトソンは抗がん剤を別のものに変えるよう提案。女性は数カ月で回復して退院し、現在は通院治療を続けているという。
●血液がんの分野が人間の医師に難しい理由
別記事では、"専門の医師でも診断が難しい特殊な白血病を僅か10分ほどで見抜き、治療法を変えるよう提案した"としていた他、別の患者らにも役立っているといった話が載っていました。
そういや、この前、
技術が仕事を奪う!既にネオ・ラッダイト運動でロボット販売終了も?という話も書いていました。
ただ、白血病などの血液がんの分野では、どうも把握しなくてはいけない情報が多すぎて、人間では診断が難しいということになっているみたいです。そういう意味では、ワトソンの活躍には最適の分野だったと言えそうで、やや特殊かもしれません。
人工知能 病名突き止め患者の命救う 国内初か | NHKニュース 8月4日 19時10分
東京大学医科学研究所の附属病院は、アメリカの大手IT企業IBMなどと協同で、人工知能を備えたコンピューターシステム「ワトソン」に2000万件に上るがん研究の論文を学習させ、診断が極めて難しく治療法も多岐にわたる白血病などのがん患者の診断に役立てる臨床研究を進めています。
(中略)女性患者の1500に上る遺伝子の変化のデータを人工知能に入力し分析したところ、人工知能は10分ほどで女性が「二次性白血病」という別のがんにかかっていることを見抜き、抗がん剤の種類を変えるよう提案したということです。女性は、治療が遅れれば、免疫不全による敗血症などで死亡していたおそれもありましたが、人工知能が病気を見抜いた結果命を救われ、無事退院しました。
こうした病名の診断は、現在、複数の医師が遺伝情報のデータと医学論文を突き合わせながら行っていますが、データが膨大なため必ずしも結論にたどり着けるかどうか分からないということです。東京大学医科学研究所附属病院では、この女性患者以外にも医師では診断が難しかった患者2人について、人工知能が特殊な白血病だと見抜き、治療方針が決定されるなど合わせて41人について、治療や診断に役立つ情報を人工知能が提供したということです。き、治療方針が決定されるなど合わせて41人について、治療や診断に役立つ情報を人工知能が提供したということです。
●人工知能のワトソンの由来はシャーロック・ホームズのワトソン博士?
ワトソンと言うと、私はシャーロック・ホームズのワトソン博士(ジョン・H・ワトスン)のイメージが強く、名前の由来じゃないのかな?とずっと気になっていました。
彼は医師であり、今回の話題はまさにお医者さんに関するもの。ちょうど良い機会なので調べてみました。すると、ワトソンの名前は、IBMの事実上の創立者であるトーマス・J・ワトソンから取られたという話。残念、シャーロック・ホームズは関係ないんですね。
【クイズ】人工知能ワトソンの名前の由来は?
(1)IBMの事実上の創立者の名前から。
(2)推理小説『シャーロック・ホームズシリーズ』の登場人物ワトソン博士から。
(3)DNAの分子構造における共同発見者の一人の名前から。
【答え】(1)IBMの事実上の創立者の名前から。 ((3)はジェームズ・ワトソン。
ノーベル賞と人格は無関係 人種差別発言のジェームズ・ワトソン氏、科学界から追放で書いた人です)
まあ、よく考えてみたら、シャーロック・ホームズのワトソン博士はすごい!というキャラクターではなく、ちょっと間が抜けた感じですものね。人工知能の名前としては不適そうです。
●医療でもAIが圧勝する衝撃的な結果に
2017/12/28:乳がんの転移を調べるための画像判定にAIが挑み、11人の医師と成績を比べたコンテストについての論文が、JAMA(アメリカ医師会雑誌)に掲載されました。これはAUCという値で比較されています。AUCとは「転移をどれだけ見逃さなかったか?」と「転移がないものをないと判断できたか?」という2つの要素から導き出される数値だそうです。
人間代表である11人の医師は、AUCの平均値が0.810でした。うち1人は研修医なのでちょっと下がったんじゃないかと思うのですが、実際に臨床の現場で病理医として働く医師たちで、平均で16年ほどの経験を持っていたとのこと。まあ、現実には新米医師も存在するわけで、妥当なところかもしれません。
一方、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学の研究チームが開発したAIのAUCは0.994。人間は0.810でしたので、全く勝負になっていません。圧勝です。
11人の医師は、臨床現場で実際にかけている時間(129枚に2時間程度)と同じ時間で判定を行っていました。実験では、時間に関係なくとことん見た結果も見ているのですが、AUCは0.966と大幅に上昇し、優勝したAIともそん色ない成績になりました。とはいえ、それでもAIの0.994に負けた言った方が良いかもしれません。
しかも、かかった時間は30時間であり、現実にはそんなことは不可能という話。AIは秒単位で判定を下せるということでしたので、実用性が高いのはダントツでAIの方です。
(
AIが医師に「圧勝」の衝撃 医療は変わる?医師の見解は 市川衛 | 医療の「翻訳家」 12/17(日) 8:00より)
●AIよりはるかに悪い人間の医者はもういらない?
では、人間の医者は必要ないか?というと、インタビューを受けていた救急科専門医の沖山 翔さんは、そうは考えていませんでした。医師の仕事の多くが取って代わられることはないとのこと。
AIの用途としては、人間が確認したものをAIがダブルチェックする、またはその逆といった形を想定。人間の医師がAIをいわば「補助者」としてうまく使いこなしていくという形になると考えていました。これは医療分野以外でのAI利用でもよく言われる説明であり、うなずけます。
ただ、ところどころ同意できないところがありました。まず、理由としては、現状のAIは、単一の仕事は得意であるものの、複数のことをこなすことが難しいという説明。珍しすぎてAIが学習できるだけのデータが揃えられないものも無数にあり、そういった病気も含めて、初めて見る例外にもそれなりに対応できるのが人間の脳の優れているところだとしていました。
しかし、本当に現在の人間の医師が皆そんな珍しい病気に対応できているか?というのは疑問。中にはそういう医師もいるでしょうが、誤診や見逃しはよく聞く話であり、上記の説明をそのまま受け入れるのは難しく思いました。
●人間のお医者さんがAIに勝てるのは人間らしさ?
沖山医師は、診察現場のような、患者さんが直接かかわる場面で言えば、それほど変わらないのではないかとも想像していました。薬と情報を提供するだけならAIでもできるものの、子どもに話を聞いてもらうといったことは難しいだろうという説明。患者さんと解決策を一緒に探していくといったことが、人間の医師のアドバンテージだとしていました。
こちらも概ね賛成はできるものの、さっきと同じく現在多くの医師ができていないのではないかと思う話。例えば、
子宮頸がんワクチンの回復情報、被害者連絡会が圧力や隠蔽工作では、現在の医師の冷たさが悪影響を及ぼしているのではないかというエピソードが出てきました。
さらに、
医者が冷たいと感じるのは当然 感情的にならないようにと教わっているためでやったように、そもそも現在のお医者さんに人間らしさが足りないというのは一般的な認識のようです。こちらの意味でもAIに対し大きなアドバンテージを得られない医師が大勢いるのでは?と思いました。
●苦戦が伝えられるIBMのワトソン、医療分野では有望?
2019/01/15:その後もAIの活躍は続いているのですけど、IBMのワトソンに限って言うと期待はずれだとも言われています。このことについては、
IBMのAIワトソンのできること、さらに増える 弱点はないのか?に追記しました。
ただ、このページの投稿で書いたように、医師に薬変えるよう助言し患者の命救った実績があったことを思い出しました。なので、医療分野では有望なのかも…と思って、検索してみたんですよ。ところが、こちらでも芳しくない模様。
IBM「ワトソン」、行き詰まる医療診断への応用 - WSJ(2018 年 8 月 15 日 13:04 JST )など、ネガティブな記事がたくさん出てきました。
患者の情報と最新の医学論文とを照らし合わせ、各患者に合った治療法を推奨するといったワトソンの医療分野での利用には、すでに数十億ドルもの資金が費やされたようです。ただ、IBMの十数のパートナーや顧客がワトソンのがん関連のプロジェクトを中止または縮小しているということで、成功とは程遠い感じでした。
失敗の理由は様々。診断が不正確な場合もあれば、珍しいがんや再発したがんでデータ不足のために行き詰まったケースもあります。また、治療法の進歩が速く、人間の教育係によるワトソンの更新がそれに追いついていけないといったことも起きています。ワトソンが患者の治療結果を向上させたことを示す調査論文は発表されていないとのこと。
なお、AI全般の話でいうと、有望な医療分野とそうではない分野があるみたいですね。苦手なのは、各個人に合った医学的治療法の推奨といったところ。
一方、放射線医や病理医によるエックス線や生体検査画像の分析では、AIソフトウエアを補助的に使い始めているようです。また、不安やうつなどの精神衛生上の問題にセラピー式の会話で対処するテキストベースのチャットボットの開発が企業や臨床医によって進められているとのことでした。
●医療分野にもグーグルのAIが進出、乳がん検診の間違い率は?
2020/01/04:医療分野でのAIの話での追記。グーグルは、乳がん検診で使われるマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)の画像で、人工知能(AI)のシステムが、専門家より高い精度で乳がんを識別できたと発表しました。
グーグルは、英米の9万人超の画像データでAIに学習させ、乳がんを見分けるシステムを開発。英国で2万5千人超、米国で3千人超の画像データの診断したところ、英国で乳がんの見落としが2.7%減少、米国で9.4%減少したとのこと。つまり、人間の医師よりも乳がんを見逃さなかったってことでしょうね。
また、誤って乳がんと識別した比率も減ったともされていました。こちらは逆に乳がんではないのに乳がんだという思う間違いについても、人間の医師よりも減少したということでしょう。事実なら実用化ができそうなテスト結果ですけど、その後音沙汰なくなるのもよくあること。このケースでは、どうなるでしょうか?
(AIの乳がん識別、専門家上回る グーグル発表、マンモ画像検診で 共同通信 / 2020年1月3日 4時23分より)
https://news.infoseek.co.jp/article/kyodo_kd-newspack-2020010301000618/
【本文中でリンクした投稿】
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