タイトルの通り、運動不足が原因で死ぬ人が年間530万人もいるという話。しかし、そうであるにも関わらず、必ずスポーツのような激しい運動が必要だとは言えないという内容です。さらに「激しい運動はそもそも効率悪い 病気リスクを大きく下げる活動量は少なくて良い」という情報を加えています。
【クイズ】2008年の世界の生活習慣病による死亡で割合が高い48%なのは?
(1)がん
(2)心疾患
(3)糖尿病
●運動不足が原因で死ぬ人年間530万人 でもスポーツをする必要はない理由
2016/8/9:
毎年運動不足が原因で死んでいく530万人へ…ゆるい新改善プランが発表|ギズモード・ジャパン(2016.08.08 11:07)という記事が出ていました。以前からやってるみたいなのですが、運動不足のせいで早死する人の数を算出しているのを見たは初めてですね。
<五輪・イヤーに合わせ、4年ごとにシリーズで調査結果の公表が行なわれている同論文(引用者注:ケンブリッジ大学のUlf Ekelundさんらの論文)によると、運動不足が原因で早死にしている人の数は、毎年世界で530万人! 座ってばかりで、ほとんど身体を動かさない生活習慣は、肥満や喫煙が健康にもたらすダメージに匹敵し、心臓発作や腎臓病、ガンなどの発症にもつながると警告されています>
私が気になったのは上記の数字のところですが、記事のメインは運動不足解消法。運動=スポーツと思う人が多いものの、運動不足ならスポーツをしろ!という話にはなっていないのです。運動不足な人はむしろ無理をすると怪我をしやすいですし、激しい運動は負担がきついので長続きしません。なので、私は最初のうちはむしろスポーツ禁止をおすすめします。
<100万人を超える調査対象者から明らかになったことは、たとえ1日8時間座ったまま仕事をしなければならない場合でも、毎日60~70分の運動をすれば、それほど座っているわけではないものの、運動不足気味の生活スタイルの人より非常に健康的な生活を送れるとされています。仕事などが理由で長時間座り続けることは避けられなくとも、そのマイナス面の影響を運動で打ち消すことができると実証された形です>
毎日1時間は運動するというのでもかなりきつく聞こえて、無理だと思う人は多いでしょう。しかし、今回の研究で言う運動というのは、軽いウォーキングやサイクリングなど。これは職場まで歩いて行ったり、自転車で通うだけでも達成できるとされているそうです。
●年間530万人という数字は多い?少ない?世界の総死亡数は年間5,700万人
ところで、年間530万人という数字は多いでしょうか、少ないでしょうか?検索してみると、「2008年の世界の総死亡数は5,700万人」ですから、1割程度。こう見ると、結構多い気がしてきます。一方、「生活習慣病による年間死亡数は3,600万人」。普通に生活習慣病の方が多いですね。やはり生活習慣病の問題は大きいです。
<世界保健機関(WHO)が発表した「2012年世界保健統計」によると、2008年の世界の総死亡数は5,700万人で、そのうちの63%にあたる3.600万人が、脳卒中や癌、心疾患、糖尿病、高血圧症、動脈硬化などのNon-communicable disease:NCD(生活習慣病)が原因で死亡しています。 (中略) 生活習慣病による死亡で割合が高いのは、「心疾患」(48%)で、次いで「がん」(21%)、「慢性呼吸病」(12%)と続きます>
(
生活習慣病による年間死亡数は3,600万人、2030年には5,500万人に 2012年世界保健統計(WHO) | 生活習慣病の調査・統計 | 一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 2012年06月07日より)
【クイズ】2008年の世界の生活習慣病による死亡で割合が高い48%なのは?
(1)がん
(2)心疾患
(3)糖尿病
【答え】(2)心疾患
なお、運動不足による早死もかなりこの生活習慣病の死者数の中に含まれていると思われます。肥満や高血圧に運動不足が関係するためです。ただそう考えると、530万人という見積もりはちょっと少なすぎに見え、もっと多くても良いような気もしてきました。
●激しい運動はそもそも効率悪い 病気リスクを大きく下げる活動量は少なくて良い
2017/02/19:似たような話かな?と思う記事を見つけたので、ここに追加しておきます。見つけたのは、
特別な運動は不要? 日常生活の工夫で病気リスク減少|ヘルスUP|NIKKEI STYLE(2017/2/18 大西淳子)という記事でした。記事の元になっているのは、米ワシントン大学のHmwe H Kyuさんによる、2016年8月9日付の英国BMJ(the British Medical Journal)誌電子版の論文です。
ワシントン大学のHmwe H Kyuさんらは、1980年以降に報告されていた174本の論文の結果を解析。すると、日常的に体を動かすレベルの身体活動量でも疾患リスクは減少することが明らかになりました。ただ、本当に驚くのは、この後の話。なんと積極的な運動を追加しても、上乗せされる利益は小さいことが明らかになったとしていました。つまり、運動量を増やして激しい運動をしても、あまり効率的ではないということです。
研究では、総身体活動量の単位として、スポーツジムでおなじみのMET分を使っています。METは、椅子に座った安静状態を1として、特定の活動の運動強度がその何倍かを示したも。例えば、普通の歩行は3METで、仮に平日の歩行時間が30分、土日は歩かない人がいた場合、その人の1週間の歩行による身体活動量は、3×30×5=450MET分/週になります。
著者らは、1週間当たりの総身体活動量が600MET分/週未満(6000ではないことに注意)の人を「不活発」とし、8000MET分/週以上の人は「非常に活発」に分類しました。不活発な人に比べ非常に活発な人では、乳がんリスクが14%低く、大腸がんリスクは21%低く、糖尿病リスクは28%低く、虚血性心疾患リスクは25%低く、脳梗塞リスクは26%低くなっていました。
●階段を上る・掃除機で掃除・庭仕事・徒歩・自転車という運動で良い
ところが、前述の通り、「非常に活発」な運動をする必要はないのです。この研究は、活動量増加によって得られる利益は、直線的に増加するわけではない、つまり、活動量が多ければ多いほど疾患リスクが直線的に低下するわけではないことも明らかにしました。
利益が大きいのは、活動レベルが低めの、3000~4000MET分/週までの段階で、それを超えると、身体活動量が一定量増加当たりのリスク減少は小さくなりました。具体例で言うと、毎日「階段を上る時間が10分あり、掃除機を使った掃除を15分、庭仕事を20分、ランニングを20分、徒歩または自転車での移動を25分する」といった暮らしが、1週間の総身体活動量が3000MET分になる生活に相当します。
運動嫌いな人はこれだけでもキツイと思いそうですが、先ほど言ったとおり、活動レベルが低いところでの活動量の増加分は、効率良く疾病のリスクを低減させることができます。少し増やすだけでも大きな効果があるのですから、無理せずちょっとずつ増やしていくだけでも意味があります。
なお、この投稿の後にもいくつか似たような話を書いていました。
運動不足な人はむしろスポーツはするな!1日1万歩も健康に悪い理由や
あなたの運動不足解消法は間違い 疲れる運動はむしろしない方が良い理由というものです。ハードルを上げると、それだけでやる気が無くない上に、そもそもハードルを上げる根拠が無いのですから、できる範囲で少しずつやっていきましょう。
【本文中でリンクした投稿】
■
運動不足な人はむしろスポーツはするな!1日1万歩も健康に悪い理由 ■
あなたの運動不足解消法は間違い 疲れる運動はむしろしない方が良い理由【関連投稿】
■
歩くスピードで寿命がわかる?歩くことで血圧を下げる効果など ■
健康サンダル、本当は不健康?効果は?痛いは悪いところがある証拠? ■
死亡リスク低下という貧乏揺すりの意外な効果 座りっぱなしの悪影響を低減か? ■
「座らない」健康法 スタンディングデスクで立って仕事しよう! ■
座り仕事より立ち仕事の方が悪い?疲労の自覚症状なく回復に時間 ■
医療・病気・身体についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|