2016/8/10:
●中国製による危機から復活で、今は中国人爆買いの今治タオル
●大前研一氏「今治タオルが成功例だなんて日本は低レベル」
2019/09/21:
●中国人爆買い今治タオル、実は外国人実習生が作ってた?
2022/04/12追記:
●今治市のタオル工場で働いたことがある今治市民の話によると… 【NEW】
●中国製による危機から復活で、今は中国人爆買いの今治タオル
2016/8/10:日本はすごい!って話を好むレコードチャイナが、今治タオルについても中国人が大好きだという話をやっていました。
中国人が日本の製品を大量購入するわけは?―中国メディア - Record Chinaという記事です。これによると、中国人観光客は日本で買い物をするとき、特定のブランドを好むそうで、その例として、タイガーのステンレスボトルと今治タオルの名前を挙げていました。
この記事でも触れていたのですが、今治タオルの成功はある意味中国のおかげなんだそうな。 今治のタオルは安い中国産タオルのせいで一時は危機的な状況だったのですが、その危機ゆえにブランド化することを試みたという経緯があるそうです。今治タオルがブランド化したのは中国産タオルのおかげといった感じなんですね。
こうした話があったのは、
「今治タオル」復活にみる地場産業再生の道|財部誠一の現代日本私観|ダイヤモンド・オンライン(2012年7月3日 財部誠一 [経済ジャーナリスト])という記事。まず、かつて愛媛県今治市周辺はタオルの産地として全国にその名を知られたもののが、廉価な中国産に押され、存亡の危機に瀕します。
●中国製タオルにセーフガード発動すれば日本製は復活する?
ここらへんは普通に「中国産のせいでピンチ」というですね。生産量のピークは1991年の5万456トン。その後は安い中国産になどに押され、減少に次ぐ減少。2009年には5分の1以下の9381トンに。76年に504社を数えた今治産地のメーカーは、7割強が倒産や廃業で姿を消したといいます。
今治タオルについて報じた朝日新聞の記事によると、06年に国の補助金を受け、11項目にもわたる独自の品質基準をクリアした認定商品にだけ「今治タオル」の統一ブランドマークの使用を許可。また「品質を維持するために10万枚ごとにサンプル検査をする」といった対策も行いました。
2001年から2003年ほどのあいだ、産地は繰り返しセーフガードの発動要請をしており、セーフガード頼りだったそうです。「中国製タオルにセーフガード発動すれば日本製は復活する」という考え方なんですね。ただし、政府はセーフガード発動を認めてくれませんでした。
「セーフガードの要請に尽力するよりも、品質で勝負する新しいビジネスモデル構築に血道をあげるべきだ」と言った作者には、四国タオル工業組合の関係者から猛抗議がきたそうです。苛烈な現実も知らずに無責任なことを言うな!といった内容だったとのことでした。
●保護貿易主義では築けなかったブランドとクオリティ
ただ、結局、一時凌ぎにもならぬセーフガードに拘泥することをやめ、必死に生き残りをかけて産地の産業構造全体を変えてしまうイノベーションを起こしたことの方が正解に。筆者の指摘の方が、当事者よりも正確であったようです。
円高のせいだから仕方ない…などと他人のせいにしていてはこうはならなかったでしょう。中国に限らず、海外の安価な製品が入ってくることは一般的であり、日本で生産するのであれば、それらとは違う買いたい製品を作らねばいけません。
この記事自体は保護貿易を批判して自由貿易を推奨する流れのものですし、仮にセーフガードを発動していれば今日の今治タオルのクオリティも評価もなかったであろうというニュアンスですね。うちの過去の話ですと、
経済学者もやりまくりな比較優位の誤解と産業育成政策が失敗しやすい理由あたりが関係しそうです。
●大前研一氏「今治タオルが成功例だなんて日本は低レベル」
なお、ちょうど最近読んだ記事では、今治タオルなんか全然大したことない、イタリアの小さな村はもっと稼いでいる!ってのもありました。大前研一さんの
大前氏「日本の地方はイタリアの村を見よ!」 小さな村が自力で1500億円稼ぐのもザラ 東洋経済オンライン / 2016年6月5日 8時0分という記事です。
大前研一さんによると、「地方創生」が政治課題になる国は日本だけ。日本は「政治がゆがんでいて、地方の票が大きいから」とされていました。これによって日本の地方再生が国頼りになる一方で、イタリアでは自分たちで再生について考え、なおかつその方がうまく行っているとされています。
<イタリアではほとんど誰も国を信用していないといいます。それどころか、国は迷惑なものだと思っています。(中略)
ターゲットは世界のマーケットです。そのような都市が、イタリアには1500あります。「国破れて山河あり」ではないですが、イタリアの場合、国が破れても地方都市は生き生きしています。途上国の勢いに押されて苦しいとき、生産基地をルーマニアなどに移すことになっても、ブランドとデザインだけは絶対に手放しませんでした。自分たちはこれで勝負する、という強みを明確に意識しているからです。彼らは、自分たちの製品がなぜこれほどの高値で世界に売れるのか、その理由をよく理解しています。
日本という国は、今非常に迷走しています。「3本の矢」などという意味不明な話は相手にしないで、個人、企業、また地方は自分たちでどうすればいいかを自分の頭で考える。これが最も大切です>
「今治タオルが成功例だなんて日本は低レベル」というのが、いろいろ見てきたほとんどすべての村のビジネスが1500億円規模だという理由。正直言うと大前研一さんの言説はあんまり信頼していなんですけど、今治タオルとしてはこのあたりで満足するのではなく、もっと上を目指していってほしいとは思います。
<愛媛県の今治市などは、これから今治タオルを日本発の世界的ブランドにしていくと言っていますが、おそらく100億円の規模にしかならないでしょう。世界を相手に100億では規模が小さすぎますし、普通にやると100億円ですら難しいと思います。イタリアのように、世界を相手に1000億など、大きな視野で地方創生を考えなければ駄目なのです>
●中国人爆買い今治タオル、実は外国人実習生が作ってた?
2019/09/21:中国人爆買いの今治タオルなんですけど、実は外国人が作っていた?というニュースがありました。
実習生の不当労働報道で揺れる今治タオル:日経ビジネス電子版(藤中 潤 日経ビジネス記者 2019年6月27日)というものです。
今治タオルに対し、SNSで不買運動的なコメントが多数出ました。下請け企業での外国人技能実習生の劣悪とも言える実習環境を取り上げたNHKの番組がきっかけだとのこと。タオル製造の下請け企業で実習生らが朝方まで働かされている現状や、渡航時に背負った借金の返済が低賃金のため滞っている現状が紹介されたそうです。
ただ、今治タオルブランドの商品を手掛ける織布メーカーなど104社が加盟する今治タオル工業組合によると、放送で取り上げられた会社は組合に所属していないとのこと。とはいえ、今治タオルの生産は、基本的に複数の下請け企業との分業で行われており、同社も組合企業の下請けとして今治タオルの生産に関わっていた可能性はあるともいいます。
また、タオル会社で技能実習制度を利用している企業は少なくないとのこと。この技能実習制度そのものが悪くなりやすいものばため、やはり今治タオルでも良くない可能性はありそう。国士舘大・鈴木江理子教授は、「日本から海外への技術移転という『国際貢献』を理念に始められたもの。労働力不足の補完という位置づけで利用されている現状は、制度が形骸化しているとしか言えない」と指摘していました。
●今治市のタオル工場で働いたことがある今治市民の話によると…
2022/04/12追記:前回記事のコメント欄からも少し。日経ビジネス電子版では近年ネトウヨ的なコメントが目につくのですが、この件ではあまり妙な擁護はなく普通に批判されています。その中で気になったのは、今治市民だという人のコメント。コメント欄なので真偽不明ですが、以下のような内容でした。
<過去に派遣社員としてタオル工場で2か月バイトした経験がありますが、本当にひどいところで、事情を知っている地元民はまずタオル工場への就職は避けますから、外国人に頼らざるを得ないのだと思います。タオル工場に限らず、この町には人を人とも思わない旧態依然の企業が多数存在しており、個人的に絶対この町では就職したくないです。今回の問題を機に、町全体が変わっていけばいいと切望しております>
前述の通り、「コメント欄なので真偽不明」。ただ、上記は技能実習生に限らない外国人労働者が多い産業の一般的な特徴であり、特殊なものではありません。過酷でなおかつ給料も安い、いわゆるブラックな労働の仕事には日本人が来ないため、ブラック労働をこなす外国人が求められることになってしまいます。
別のコメントでは、<労働力の搾取をしなくてすむように、品質と価値を維持するためにブランド化したのではなかったのか>というものも。「ブランド価値を上げることで、安売り競争をせず、価格を維持して品質を保つ」が今治タオルの成功だとと捉えられていたのに、土台から崩壊してしまいました。
その他、<一企業の問題で、と言う意見がありましたが。例えば、製造業では製品に関して有害物質を使ったり、人権無視で働かせる企業が下流と言うか下請けにいた場合、回収や不買運動が起きるのは当たり前のように起きています>というコメントもありました。確かに言い訳しづらいかもしれません。
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