2016/6/4:
ベンチャー企業、東京より地方にメリットが大きい理由
田舎には強敵がいないというメリット
農業関連なら東京じゃない方が有利というメリットも
アメリカでは大都会以外に本社がある企業が多い
2016/10/25:
企業の本社は東京より地方にメリット 本社移転数を調べると?
地方と首都圏の本社移転数のトレンド、過去と現在では違う
「地方創生元年」で本社機能の地方移転…結果は?
【クイズ】安倍晋三政権が「地方創生元年」としたのは何年?
(1)2014年
(2)2015年
(3)2016年
●ベンチャー企業、東京より地方にメリットが大きい理由
企業の本社は東京より地方の方がメリットが大きい アイリスオーヤマ大山健太郎社長の件に絡んで、気になる記事を見つけたので読んでみました。斎藤祐馬・トーマツ ベンチャーサポート事業統括本部長と入山章栄・早稲田大学 大学院経営管理研究科准教授の対談記事です。
ただ、先に白状しておくと、残念なことにデータや研究の裏付けはありません。入山章栄准教授は研究の裏付けのある話をするので期待していたのですが、主に話をしているのは斎藤祐馬本部長の方でした。
斎藤:地方の有利な面は2つあると思います。1つはストーリーを組み立てやすいことです。「この街に1000人の雇用をつくる」とか、「故郷で10年で100個の事業を立ち上げる」などと言うと共感を得やすい。特に、東日本大震災以降、「共感できるストーリー」が求められるようになっています。みんなが応援したくなる仕組みを作り、周りを巻き込む力が重視されているんです。
入山:起業には明確なビジョンや強いモチベーションが必要ですよね。地方の人たちは、「ここが好き」という単純な理由でやれる。それが一番、強いわけです。(中略)
斎藤:むしろ、東京のベンチャー企業のほうが、その場所で事業をする蓋然性が少ないので、アピールしにくいんです。
(
実はど田舎ほど起業に向いているのです:日経ビジネスオンライン 2016年6月23日より)
●田舎には強敵がいないというメリット
もう一つのメリットというのは、競合との競争が少ないという点でした。これは説明としてはわかりやすいもの。しかし、証拠がないとやはりダメ。こういうもっともらしい理論に騙されている…ということは頻繁にあります。
斎藤: 地方の有利な面のもう1つは、ライバルが少ないということです。ある県で小学生向けにITとものづくりを融合させた習い事教室を運営している会社があります。プログラミングをしたり、3Dプリンタを使ったり、ロボットを作ったりして注目を集めています。こちらの代表はトーマツ ベンチャーサポートで学生アルバイトを経験しており、地方出身者が東京で1年くらい修業をして戻ると、圧倒的な力でトップに立てるという例ですね。
入山:概念的に言うと、東京は立地というリソース(資源)があるけれど、コンペティション(競争)がすごく厳しい。逆に地方はリソースさえ確保できれば、ドミネート(支配)できるチャンスがあって、いきなり勝つことも不可能ではないという仕組みなんですね。
●農業関連なら東京じゃない方が有利というメリットも
メリットは大きく二つとのことでしたが、もう一つメリットらしきものがありました。田舎にあって東京にないものがあります。農業です。これはさらにわかりやすいかもしれません。
斎藤:地方には、東京にはない貴重なリソースもあるんです。その1つが「農業」です。
佐賀県の山奥で起業したベンチャー企業があります。佐賀駅から30~40分かかり、地元の方ですら迷うような場所です(笑)。
製造しているのは、竹炭やお茶のカテキンを使った鮮度保持剤。冷蔵庫に入れておくと3日くらいしか持たない野菜が1週間持つとか、専用装置と併用すると3週間持つといった商品です。
周辺が農家ばかりだから、野菜を配送したいお客さんがいっぱいいる。それで、佐賀を拠点に研究を続けているんです。東京でまねしようにもできないビジネスモデルですよね。山奥という土地柄が技術そのものというか。
●アメリカでは大都会以外に本社がある企業が多い
以上、何となく理屈は通っているように見えます。もっともらしいメリットですよね。ただし、最初や途中で書いたようにデータ的な根拠がないがために、成功しやすいと思っているだけ…という可能性があります。証拠がないのは本当残念ですね。
また、過去に
地域活性化を促進するとされるITの発展、実は地方の過疎化の原因だったという話をやっており、以下のような話が出ていました。
「形式知の方は、安くかつ容易に入手できるようになるから、相対的に価値が下がる。逆に、暗黙知の価値は高まる。すると人々は暗黙知を求めてますます集まるようになるのである」
なので、やはり都会の価値が高いのでは?と感じるので、私は田舎が有利説に懐疑的です。(アメリカの場合は、上記でシリコンバレーみたいなものも説明できます)
企業の本社は東京より地方の方がメリットが大きい アイリスオーヤマ大山健太郎社長で、大山健太郎社長はアメリカでは大都会以外に本社がある企業が多いとしていましたので、可能性はありそうではあります。
ただ、実を言うと、アイリスオーヤマの本社も「ど田舎」にあるってわけじゃないため、今回の話を後押しできない事例でした。やっぱり「ど田舎ほど起業に向いている」は胡散臭いと感じます。
●企業の本社は東京より地方にメリット 本社移転数を調べると?
2016/10/25:
企業の本社は東京より地方の方がメリットが大きい アイリスオーヤマ大山健太郎社長以来、企業の本社は地方にある方が有利という説が最近気になっていて、気にして見るようにしていました。上にまとめた"地方ほどベンチャーの起業に向いている理由 メリットは大きく二つ"もそういう話です。
ただ、これらは残念ながらデータ的な裏付けがなかったんですよね。もっともらしい話はあるのですが、データ的な根拠がないとなかなか確からしいとは言えませんので不満でした。
で、今回やっと少し確かめられそうなデータを見つけました。しかし、むしろ地方に本社があると良いという説にとってマイナスのデータなのです。
企業の首都圏転入 最多 昨年13%増 働き手確保狙う 一極集中、歯止めかからず 2016/8/8付 日本経済新聞 朝刊
地方から首都圏へ企業の転入が加速している。2015年に1都3県へ本社機能を移した企業数は過去最多で、16年もこの傾向が続く。地方の人口減で市場が縮小し、労働力の確保も難しくなっているためだ。政府は地方創生(総合・経済面きょうのことば)で本社の地方移転を推進するが、人口減が首都圏への流出を促し、地方経済をさらに疲弊させる「負の連鎖」に陥っている。(中略)
帝国データバンクがデータを持つ約146万社を調査した。登記上の本社だけでなく財務、管理部門など本社機能の移転も件数に加えた。
東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県への他の43道府県からの転入は14年比13%増の335件。集計可能な1981年以降で最多となった。転入元で最も多いのは大阪府(22%)で、茨城県(9%)、愛知県(8%)、福岡県(5%)が続く。近隣のほか、地方の大都市からの転入も目立つ。
一方、1都3県から43道府県への転出は14%減の231件で、転入を100件以上下回った。
●地方と首都圏の本社移転数のトレンド、過去と現在では違う
これは単純な移転数で見たものであり、本社は東京より地方にあった方がメリットが大きいという説を完全に否定したわけではありません。
ただ、企業自身は地方が本社であることにやりにくさを感じているところが多いってことは確かみたいですね。
上記ではわかりやすい比較がなかったので、並べて書いてみます。
首都圏への転入 335件(転出の1.45倍)
首都圏から転出 231件
やはり圧倒的なのがわかるのですが、意外なことに1981年から2002年まではずっと首都圏からの転出の方が多かったようです。むしろ以前の方が地方向きだったのかもしれません。
なぜトレンドが転換したのか?というのはポイントになりそうですごく気になったのですが、記事ではこれといった解説はありませんでした。
●「地方創生元年」で本社機能の地方移転…結果は?
あと、記事には、"安倍晋三政権は15年を「地方創生元年」とし、企業に本社機能の地方移転を促した"という話もありました。
【クイズ】安倍晋三政権が「地方創生元年」としたのは何年?
(1)2014年
(2)2015年
(3)2016年
【答え】(2)2015年
しかし、前述の通り、むしろ2015年は過去最悪という結果になりました。全く役に立っていません。「地方創生」は掛け声倒れですね。
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