2016/8/16:
●世界一の研究捏造大国日本…というのは本当に本当なのか?
●昔はが多くなかった…2000年から急激に不正が増えた理由は?
●三菱自動車やスズキも不正、人間は不正をする生き物である
●やはり研究分野でも成果主義は必要なのか?現実の成果は…
【クイズ】アメリカにおいて、HIVワクチン研究で実験結果を捏造していたハン・ドンピョ研究員が受けた実刑判決は?
(1)懲役7カ月
(2)懲役27カ月
(3)懲役57カ月
●世界一の研究捏造大国日本…というのは本当に本当なのか?
2016/8/16:
日本が世界一の「研究捏造大国」になった根因 | ブックス・レビュー | 東洋経済オンライン(塚田 紀史 :東洋経済 記者 2016年05月28日)は、『
研究不正 - 科学者の捏造、改竄、盗用 (中公新書)
』の作者東京大学の黒木登志夫・名誉教授へのインタビュー記事です。
この記事のタイトルには、日本が世界一の「研究捏造大国」と書かれています。ただ、本文ではそういうズバッとした言い方はなく、ちょっと曖昧なものでした。 まず、撤回数が多い人について以下のように言っている部分がありました。
「2014年まで11年間の撤回論文数のワーストワンは日本人、ワースト10に2人、30位内に5人も名を連ねている」(東京大学の黒木登志夫・名誉教授、以下同)
1位ってのはたぶん
東邦大藤井善隆元准教授の全論文193本に不正・捏造の疑い、世界新記録か?で書いた藤井さんのことでしょうね。日本人には世界を代表する不正量産者が多くいます。これは間違いありません。
ただ、国ごとで合計した撤回数だと、「撤回数を国別に見ると、いちばん多いのから順にインド、イラン、韓国、それから中国、日本、米国と続く」だとのこと。じゃあ、世界一はインドじゃん!となりそう。変ですね。
なので、たぶん日本が世界一の「研究捏造大国」というタイトルの根拠は「日本は捏造が多く、ほかの国は盗用が多い」という発言からとったのだと思います。とはいえ、世界一とは明言していないので、東洋経済オンラインのタイトルの付け方には問題を感じますけどね。
なお、日本が5位だった撤回数の国別順位ですが、私が以前見たものとかなり順位が違っていました。さらに、
偽学術論文誌を悪用している日本の大学ランキング 驚きの1位は?でちょっと見たように、人口や研究論文数を考慮すると、日本の順位は悪化する可能性があります。
●昔はが多くなかった…2000年から急激に不正が増えた理由は?
それから、日本人研究者の不正の理由について。「研究不正は2000年まで日本では目立つものはなかった。2000年に麻酔科医が摘発されて以降、次から次へと出てきている」と黒木登志夫・名誉教授がおっしゃっているように、まず近年急激に増えている点に注目する必要があります。
これを踏まえて黒木登志夫・名誉教授は以下のように言っています。直接名前は出していませんが、成果主義的なものも意識した発言でしょう。
「大学、研究機関が経済的に苦しくなって、自らおカネを取ってこなければ研究ができない。任期が不安定化し、腰を落ち着けることも簡単にはできない。そういう研究の競争社会入りがバックにある」
●三菱自動車やスズキも不正、人間は不正をする生き物である
急激に増えたということは何か原因があるはずで、上記の見方には一定の説得力があります。ただ、私はこれ以外にも、そもそも人間は不正をする習性があると考えています。この考え方で行くと、一番の問題は「(俗に言う)性善説で動いている」とされる研究の世界の不可思議さだと言えるでしょう。
通常の社会では不正が行われることを前提として、法律や組織内の制度による対策・抑止策があります。放っておくと、人間はズルをする生き物なのです。最近起きた三菱自動車の燃費不正や三菱自動車だけじゃなくてスズキもやっていた測定方法の法律違反というのは、企業自身に測定させていたことに起因していると言えるでしょう。そりゃ、企業に任せれば不正が起きるに決まっていますわ、という話です。
同じく研究者だって、対策されなければ魔が差して不正をして当然。研究者だけは不正をしない人間です…なんてことは、バカの言うことでしょう。これは別に不正をした人を擁護しているわけではなく、不正がされることを前提として事前の対策や事後の罰則を厳しくせよ、という意味です。
黒木登志夫・名誉教授は個人がやったSTAP細胞問題より、組織的なノバルティス問題の方が深刻だとしていましたが、このノバルティスのときには「日本は不正のやりやすい国だ」と言っている人がいました。日本は甘いようです。日本の甘さに関しては、
日本の研究不正・論文捏造に甘い アメリカでは懲役57カ月の実刑判決もというのも書いています。クイズはここからでした。
【クイズ】アメリカにおいて、HIVワクチン研究で実験結果を捏造していたハン・ドンピョ研究員が受けた実刑判決は?
(1)懲役7カ月
(2)懲役27カ月
(3)懲役57カ月
【答え】(3)懲役57カ月
●やはり研究分野でも成果主義は必要なのか?現実の成果は…
上記で書いたように、私は不正防止のために競争をやめるべきといった極端な意見には賛同しません。ただ、それとは無関係に、研究分野での現在の成果主義的なやり方、競争主義的なやり方そのものは間違いだろうと感じています。
なぜかと言うと、政府が行ってきた成果主義的な予算の増加が研究論文数の向上に繋がっておらず、広く配分する予算の低下が論文数の減少に繋がっているという分析があったためです。
また、「研究論文数」だけの問題ではありません。「研究論文数」だけだと「量より質だ」と反論したくなるでしょうが、
国立大学の予算・教員削減で日本の研究論文数減少 重要論文も全分野で顕著に低下でやっているように、重要論文で見ても日本は一つ残らず悪化しているといった状況なのです。
成果主義で不正が増えるだけでなく、肝心の成果でも逆効果になっているんですね。これでは何一つやる意味がありません。ということで、現在の日本のやり方は改めるところがたくさんあると感じます。
【本文中でリンクした投稿】
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