27年ぶり大規模デモ、抑圧政治に怒れるポーランド国民 WEDGE Infinity(ウェッジ) 2016年08月14日(Sun) ソルネク流 由樹 (ポーランド在住フリーライター)
欧州各国で、ポピュリズム勢力はかつてない高支持率を得ている。(中略)昨年10月、ポーランド総選挙で議席の過半数を獲得した保守派の「法と正義」(PIS)もまた同様だ。8年間続いた中道右派の市民プラットフォーム(PO)の政治に嫌気が差した国民が変化を求めてPISに投票したのだが、その代償は大きかった。(中略)
PISは選挙公約に「年金支給年齢の引き下げ」「高齢者への無料薬支給」「税金控除額引き上げ」をはじめ、大衆不満をすべて解決するかのようなポピュリズム政策を掲げた。
法と正義 - Wikipedia
法と正義(ほうとせいぎ、Prawo i Sprawiedliwość)は、ポーランドの政党。党首はヤロスワフ・カチンスキ。略称:PiS(ピス)。
議席の過半数を占める現政権は法案を議会通過させることが可能だ。拒否権を行使できる大統領も現政権の息がかかる。最後のとりでは憲法だ。ポーランドには憲法裁判所がある。法律の合憲性チェックと人権を保障する機関なのだが、PISは政権の座に就くと大統領をまきこみ、自党の息のかかった裁判官を同機関にねじこもうとした。
この一幕で国民の怒りは絶頂に達した。昨年10月には1989年の共産党政権崩壊以来初めて、「民主主義」を求めてデモ行進が行われた。この動きは一気に広がり、既に何度も全国規模で行われている。しかし、「法による民主主義のための欧州委員会」からの勧告も無視され、ねじこみは強行された。現政権は、どの裁判結果が有効か、無効かを国会が決定できるようにしたのだ。
このような恐怖政治を思わせる法案がどんどん可決されている。最近では「反テロ法案」の名の下、国は個人メールなどの閲覧が可能となった。閲覧の合法性をチェックする機関はない。
法と正義 - Wikipedia
国際社会にはびこる誤解とその実態
世界市民的なカトリック保守主義を党の最も主要な理念とする同党は人種や民族による社会的差別には断乎として反対している。外国からの移民、難民、出稼ぎの受け入れに積極的。これはファシズム等の過激で排他的なナショナリズムとは決定的に異なる点の1つである。外国のマスメディアは同党があたかも人種差別主義のファシスト政党であるかのような誤った紹介を頻繁にするため、イギリスのデイヴィッド・ミリバンド外相までもがそれに影響されて誤解し、2009年、欧州議会における同党代表ミハウ・カミンスキ議員を反ユダヤ主義者のネオナチだと名指ししたことがあるが、ポーランド国内のユダヤ教の最高指導者(チーフ・ラビ)マイケル・シュードリックが出てきて、カミンスキ議員は反ユダヤ主義者であるどころか最もユダヤ人とイスラエルに親しい人だ、ミリバンド外相はポーランドを全く理解していない、とイギリスに抗議し、野党であるイギリス保守党のデイヴィッド・キャメロン党首が「ミリバンド外相はポーランドとカミンスキ議員に公式謝罪すべきだ」と詰め寄る騒動となった。
つまりこの政党は、ポーランド民族のエゴを押し通して他者を排除する民族主義(nationalism)や自民族至上主義(ethnocentrism)ではなく、民族によらずポーランドという国家の主権を守ろうとする愛国主義(patriotism)の理念を強く持っている。同党の標榜するEUへの主権移譲に対する慎重論はこの愛国主義から来ているものであってファシズムとは関わりがないのであるが、党がしばしば取る対決的姿勢(confrontationalism)のため多くの場面で理念上の誤解を招いている。
右派の支持者を手中に収めたい現政権は、民族主義色の強い集会や外国人排斥行為に非常に寛容な態度を示している。全欧州で問題となっている中東の難民受け入れ問題からポーランド社会の中でも反多文化共生主義が浸透。それを政治的に利用している状態だ。
一方、2015年に起きたEUのシリア難民受け入れ問題に対しては「非ヨーロッパ的価値観が入り込む」等、選挙では有権者にムスリムに対する警戒心を煽り、ハンガリーやスロバキアなどと共にシリア難民受け入れに断固反対する姿勢を示すなど、依然として排外主義の政党であるとの警戒感は根強い。
対メディアでは、国営放送のリベラル寄りとされるキャスターを次々に降板、もしくは解雇している。その結果、政権に都合のいい報道ばかりが流れることとなり、国営報道番組の視聴率は急降下した。
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