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最強の台風は増えていない 歴代最も気圧の低い台風は1979年


 最強の台風などの話をまとめ。<最強の台風は増えていない 歴代最も気圧の低い台風は1979年>、<最強の大安売り?最強じゃないのに「最強の台風」が生まれる理由>、<新聞記事見出しで「過去最強」連呼!しかし、本文を読んでみると…>などをまとめています。

冒頭に追記
2022/09/23:
●人命優先のマスコミ台風報道に批判「売上失う」「経済活動止まる」
2022/10/13追記:
●安全重視で運休やイベント中止…流れを作ったのは関西の鉄道?
2022/10/23追記:
●「災害でもいつも通り」とわかると出かける人が増えて被害も増加
2022/10/29追記:
●災害時の開催が批判されるように変化の一方、自己責任擁護論も
2022/11/04追記:
●「災害でも自己責任論で」は、現実を見れない人の机上の空論? 【NEW】
2022/10/18追記:
●新聞記事見出しで「過去最強」連呼!しかし、本文を読んでみると…


●人命優先のマスコミ台風報道に批判「売上失う」「経済活動止まる」

2022/09/23:どっかに電車の災害運休メインの話を書いていた気がするんですが、見つからないのでとりあえずここに書いておくことに…。最近は「安全を見て運休」といった選択に理解が得られて、なおかつ称賛すらされることも多くなってきました。ところが、今でも激しくこうした措置を叩く人がいる…というのが今回の話です。

<台風14号は17日夜から19日にかけて奄美と九州に接近する見通し。暴風や高波、高潮、土砂災害、河川の増水や氾濫に厳重な警戒が必要だ。九州南部と九州北部では記録的な暴風や高波、高潮、大雨となるおそれがあり、気象庁は特別警報を発表する可能性があるという。
 メディアでは「竜巻のような危険極まりない」や「史上最強クラス」「過去に例のないほどの強さ」など仰々しいワードも並ぶ。
 こうした状況に堀江氏(引用者注:ホリエモンこと堀江貴文さん)は17日、ツイッターを更新し「マスコミは視聴率欲しさに必要以上に煽るし、人命がかかってるっていうと反論もしにくいからエスカレートして安全側に振り過ぎになると困る人たちが沢山いるって話な」と持論を展開。
 続く投稿では「台風煽りで貴重な三連休の売り上げを失うところも、声は出せないよね。人命最優先とか言われちゃうからさ。コロナでもそうだったけど。ちょっと今の風潮はやりすぎ感あるね」と、台風への警戒から人流が途絶え、経済活動が止まると指摘した>
(堀江貴文氏が〝最強台風〟報道に持論「必要以上に煽る」「三連休の売り上げ失う」 2022/9/17(土) 20:20配信
東スポWeb より)
https://news.yahoo.co.jp/articles/08d08cd26368a62e76929cb21431717f301d31e3

 最強台風と煽りすぎ…というのは、最近のマスコミでは見られるもので、その批判だけならわかります。しかし、安全重視まで問題視するのは危険です。ホリエモンが自分で書いていたように、この人は新型コロナウイルス対策にも反対してきた人ですからね。人命軽視で「経済側に振り過ぎ」な人です。

 こうした批判がまずいとわかりやすいのは、津波警報批判の例でしょうか。以前、空振りすることがあった津波警報対する批判がネットでは検索上位だったのですが、その後、東日本大震災が発生。こうした批判が東日本大震災の津波による犠牲者を増やしたおそれがあります。安全重視を非難することはリスクが伴うんですね。

 ただ、堀江貴文さんは死者が出ても責任を取るつもりはないでしょうし、そもそも自身の責任を認めないでしょう。大体にして何人死のうが心は傷まないでしょうから、こういう無責任なことが言えちゃうのです。困るのがこういう人の声がデカく、なおかつ熱心な信者がいるということですね…。


●安全重視で運休やイベント中止…流れを作ったのは関西の鉄道?

2022/10/13追記:前回書いたように、ホリエモンのような例外はいますが、「安全重視で運休やイベント中止」といった選択に理解が得られて、なおかつ称賛すらされることも多くなってきました。この契機となったのは、関西の鉄道の事例だった気がします。これは、JR西日本が2014年に行った計画運休だったかもしれません。

 検索して出てきたJR西日本の「計画運休」に称賛の声、台風21号から乗客守る(2018/10/01 17:35 枝久保達也 ダイヤモンド・オンライン)よると、2014年のときは非難する人がいたとも書かれています。うちのこのページで以前書いているように、マスコミでは産経新聞が運休を強く叩いていました。

<(引用者注:2018年)9月4日、近畿や四国地方で猛威を振るった台風21号が上陸した際、JR西日本や私鉄が行った「計画運休」の評価が高まっている。4年前、JR西日本が初めて行った際には批判もあった計画運休。しかし、予測可能な天災から乗客を守る手法としては、非常に重要である。
 9月4日、「今年最強」の台風21号が上陸し、大きな被害を出した近畿地方。関西空港が閉鎖され、利用客が空港内で一夜を明かす様子が報じられる中、乗客の混乱を未然に食い止めたJR西日本や関西私鉄の「英断」を評価する声が相次いだ。「計画運休」である。
 計画運休とは「台風接近など列車の運行に影響が予想される場合に、風速や雨量が規制値に達する前に運転を取りやめることで、安全の確保と混乱の防止を図る」というものだ。今回のケースでも、台風上陸の前日に通告し、実際に4日の正午過ぎから全線で運休した>

 2014年、JR西日本が日本で初めて実施した計画運休は、なんと「空振り」だったとのこと。言われてみればそうだった気がしますね。確かそうであっても正しい判断だった…として、ネットでは結構褒める意見もあったといいます。一方、当時の新聞では以下のような批判もあったとされていました。

<2014年の台風19号は全国で死者3人、負傷者94人、大阪・兵庫を中心に200棟以上の浸水など、決して小さくはない被害をもたらした。しかし関西圏の雨量、風速は予想ほどではなく、JR西日本が予告通りに全面運休した一方、並行して走っている阪急や京阪電鉄は、ほとんど遅れや運休なく運転を継続していたのである。
 当時の新聞記事は「対応に賛否」と伝え、安全の最優先には理解を示しつつも、「動ける限り運転してほしかった」「帰宅できなくなるほうが困る」など、通勤者の戸惑いの声を中心に紹介している>


●「災害でもいつも通り」とわかると出かける人が増えて被害も増加

2022/10/23追記:上で書いたように、2014年のときには批判がありましたし、現在でもホリエモンのような考え方の人がいます。しかし、上記記事が書かれた2018年の時点で枝久保達也さんは「今、計画運休は徐々に社会に浸透しつつある」としていました。他社も運休を選択するようになっていたのです。

<JR西日本だけではない。今回は私鉄でも南海電鉄と京阪電鉄が初めて計画運休を実施。企業側も社員に早めの帰宅を促したり、商業施設は臨時休業を決めたりするなど、計画運休を前提とした対応が目立ったように、JR西日本の取り組みをきっかけに、社会が少しずつ変わり始めている。
 大規模災害時に、鉄道事業者が特に恐れているのは、駅間で列車が停止して大勢の乗客が車内に閉じ込められる事態だ。乗客の安全を確保しながら、救助を手配しなければならず、二次被害の恐れもある。対応に時間を要し、運転再開も遅れることになる。
 JR西日本には苦い経験もある。2015年7月の台風11号では、計画運休を実施せずに運行を継続していたが、急に雨が強まり雨量が規制値に達して運行がストップ。駅間に長時間列車が立ち往生し、乗客が救急搬送される事態となった>

 記事では台風以外にも、朝のラッシュ時間帯を直撃したため合計14万人が車内に閉じ込められた大阪北部地震、1998年に大雪で首都圏の鉄道各線がマヒ状態に陥り、多数の列車が駅間で立ち往生した事例も挙げていました。雪での立ち往生では、高速道路で深刻な被害が出るケースが近年何度か起きており、死者も出かねません。

 2018年の台風21号の場合、屋根をはぎ取り、電柱をなぎ倒し、自動車が空中を舞う記録的な暴風でした。作者は、「計画運休がなければ人的被害はさらに拡大していたとみられる」と評価。鉄道や店、イベントなどが休止となると、それだけで暴風の中で出かける人が減るため、運休で被害を減らせるのは確実だと思われます。

 ホリエモンのように「経済重視」を訴える人たちが欠けているのは、こういった視点でしょうね。新型コロナウイルスであった自粛・休止系の話にも考え方を応用できるのですが、災害時の人々の活動を促すことは、被害のリスクを増やすことになります。ここらへんと経済活動とのバランスを考える必要があるでしょう。


●災害時の開催が批判されるように変化の一方、自己責任擁護論も

2022/10/29追記:イベントなどの中止が批判されるどころか称賛されるように流れが変わってきた…に関して一つ事例を紹介。<矢沢永吉 台風下コンサートでついた中止英断の小田和正との差…強行で帰宅困難者続出>(女性自身 22/9/19(月)17:10)という記事が出ていました。ただ、相変わらず擁護が多いこともわかる話です。

<ロックバンドのT-BOLANは18日と19日に長崎県と大分県で予定していたライブ、高橋真梨子(73)は18日と19日の福岡公演の見合わせを発表するなど、多くのアーティストが公演中止を余儀なくされた。
 小田和正(74)もいち早く動いた。18日にマリンメッセ福岡でコンサートを予定していた小田は前日の17日に、公式HPで「公演時間に大型の台風14号が福岡県へ最接近する予報となっており、公共交通機関の計画運休による交通手段の確保が難しいことと、何よりもお客様の安全第一を最優先に考えました結果、公演を中止とさせて頂きます」と中止を発表>
<いっぽうで、同じ福岡でコンサートを決行したアーティストが。矢沢永吉(73)だ。(中略)
「会場周辺の公共交通機関は午後7時ごろまでにすべて運休しましたが、コンサートが終わったのは午後8時ごろ。タクシーを使って帰宅できた人もいましたが、つかまらずに徒歩で帰る人や帰宅困難になる人もいたといいます」(音楽ジャーナリスト)
 強行し、帰宅困難者まで出た矢沢のコンサート。矢沢の公式HPでは開催に際して、「ご来場いただく方は、ご自身の判断で必ず安全を確保できる方、帰路につける方のみご来場ください」とアナウンスしていただけに、ネット上では“自己責任”といった擁護する声が。
 しかし、こうした“結末”が来ることを予想し、中止の判断をしなかった矢沢サイドを批判する声も少なくない>

 こちらはホリエモンとは違う方向性での「自己責任」による擁護。これもおなじみの擁護ではあります。これも結局、前回書いたようにイベントなどがあると出かけようと思う人が増え、被害が増える方向に働く問題は変わらず。また、死者続出した場合でもなお「自己責任」と擁護できるのか?とも思いますね。

 また、<矢沢永吉、台風下のコンサート強行で“帰宅難民”続出に「無責任」「ロックじゃない」YAZAWAに批判向く>(9/19(月) 12:36配信 週刊女性PRIME)では、レコード関係者が「会場設営や来場者の整備など、大勢のスタッフやアルバイトがいてこそ成り立つ」として、自分の意志とは無関係に出た人がいることも指摘。結局、しわ寄せはリスクを感じても出勤を断れない立場の弱い人に来るわけで、「自己責任で開催」は強者による身勝手な暴論のようです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/eaa7b7b97fb2dab80c95b128496573e0abe74a08


●「災害でも自己責任論で」は、現実を見れない人の机上の空論?

2022/11/04追記:前回書いた「自己責任論」でひとつ思い出した話を。辛坊治郎氏は右翼?左翼批判・安倍首相を評価・自己責任論などで書いた辛坊治郎さんのことを思い出したんですよね。右派で多い自己責任論を唱えながら遭難事件で自衛隊に救出されて、自分は責任を果たなかった形になったのです。

「9年前、イラクで人質にされた高遠菜穂子さんたちに対し、自己責任論を持ち出して批判しました。これでは、言ってることとやってることが違うじゃないかと厳しい指摘があるのも承知しています。私には反論できません。」(辛坊治郎さん「自己責任論には反論できない」「お金は払わない」「再チャレンジする気持ちも」文春と新潮にコメント | ガジェット通信  DATE:2013.06.28 15:15 BY:Taka より)

 一方、お金のことに関しては、斜め上の反論。辛坊さんの救出で4000万円の税金が消えたとして、辛坊さんに費用を払う考えがあるのか質問され、「“払います”と言えば、助けてくれた自衛隊員が喜ぶと思いますか。命をかけて助けてもらって、それが金かよって思わないか。目の前で命がけの彼らを見ていて、それで金払いますとは言えないだろ……」と答えていたそうです。

 この逸話を聞いて、「自己責任論」唱える人はちゃんと責任取れよ…と思うかもしれません。ただ、私は「自己責任論というのはそもそも現実には不可能なのではないか?」ということを指摘したいですね。例えば、辛坊治郎さんのケースでは、お金を払っても迷惑をかけたことには変わらないためです。

 また、あらかじめ捜索を断っていたとしても、捜索しないわけにはいかず、結局、迷惑をかけたでしょう。さらに現実にはあり得ない「本当に捜索せずに見捨てた」というケースですら、辛坊治郎さんが行方不明になったことで多くの方に影響が出ます。実際には、自己責任で迷惑をかけないというのは、不可能なのでしょう。

 これは台風でコンサートに行く方も同様で、遭難したり怪我したり死んだりすることでいろいろな人に迷惑をかけます。すでに書いたように、コンサートを行った矢沢永吉さんも弱い立場の大勢のスタッフやアルバイトを道連れ。自己責任論は、現実を見れない人の机上の空論で、無責任な主張なんだとわかりそうな話でした。


●新聞記事見出しで「過去最強」連呼!しかし、本文を読んでみると…

2022/10/18追記:古新聞の一面見出しででっかく「最強」「台風」と書かれたていたのが目に付きました。どこの新聞かと確認してみると、読売新聞です。そこで、「読売新聞 最強台風」でネット検索してみると、「過去最強」が多数出てきたのでメモ。他の新聞も少し見たところ、記事数や見出しの書き方に温度差がありました。

 以下は基本的には時系列順の表示。ただ、2020年の記事もあったのでこれだけ最後に紹介。見出しでは「クラス」がつかずに、「最強」断言の場合も多いです。一方で、本文では「過去最強」の記述はひとつもなく、「最強クラス」の記述すらない記事も…。これらは批判されても仕方ないケースでしょう。

・ 過去最強クラスの台風14号、18日に九州接近・上陸か…鹿児島に暴風・波浪・高潮の特別警報 2022/09/17 21:36
(本文では<この勢力を維持したまま上陸すると、第2室戸台風(1961年、925ヘクト・パスカル)や伊勢湾台風(59年、929ヘクト・パスカル)を上回り、51年の統計開始以来「最強」となる>という書き方)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220917-OYT1T50199/

・ 避難の男性「とにかく風が怖い」…最強台風が3連休直撃、スーパーは品薄・観光地は休園 2022/09/18 11:42
(本文では「九州に上陸の恐れがある過去最強クラスの台風14号」という書き方)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220918-OYT1T50053/

・ 過去最強クラスの台風14号、線状降水帯を発生させ北上…最大風速36・6mの暴風 2022/09/19 00:35
(本文では<気象庁によると、上陸時の中心気圧は935ヘクト・パスカルで、第2室戸台風(1961年、925ヘクト・パスカル)や伊勢湾台風(59年、929ヘクト・パスカル)などに匹敵する「最強」クラスの台風となった>という書き方)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220918-OYT1T50101/

・ 「過去最強」台風14号、2重の壁が発生…強い風雨が広範囲に 2022/09/19 05:00
(本文には「最強」の記述はなく見出しのみ)
https://www.yomiuri.co.jp/science/20220919-OYT1T50021/

・ 「過去最強」台風14号に世界遺産も備え、丸太を立てかけ補強…農園は落果対策 2022/09/19 09:56
(本文では「過去最強クラスの台風」という書き方)

・ 「観測史上最強級」の台風14号、陸上通過で勢い衰え 2022/09/20 15:00
(本文では「観測史上最強級に発達し、九州に上陸した台風14号は19日夜、近畿に最接近した」という書き方)

・史上最強級の台風14号、「最も衰弱しやすいコース」進み温帯低気圧に 2022/09/20 18:51
(本文に「観測史上最強級に発達し、九州に上陸した台風14号は20日午前、温帯低気圧に変わった」とあり)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220920-OYT1T50124/

・最強台風 首都圏直撃 各地で爪痕
(有料記事で本文、公開日時ともに不明)
https://www.yomiuri.co.jp/stream/3/13144/497/

・ 「過去最強」台風10号、沖縄や九州に接近上陸の恐れ…首相「命を守る行動を」 2020/09/04 22:36
(これのみ2020年の話。本文では「過去最強クラスに発達する見通しの台風10号」という書き方)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200904-OYT1T50286/


●最強の台風は増えていない 歴代最も気圧の低い台風は1979年

2016/8/29:史上最強、過去最強、今年最強、台風が来るたびに「最強」の台風がやってくる近年の日本。「最近の地球はおかしい」という話が好きな人は多いので、"「最強」の台風は近年、増えている"と感じているかもしれません。

 しかし、「最強」の台風は増えているのか?(増田 雅昭) (2014年10月14日 12時47分)という記事の中で、気象予報士の増田 雅昭さんは「(最強の台風は)増えていません」とズバリと否定していました。「最強の台風」というのがまず定義しづらいものですが、"観測史上最も強い(気圧が低い)台風は、1979年の20号"だそうです。これは単に記録だけの強い台風ではなく、実際に被害を出しています。Wikipediaによると、以下の通りです。

<この台風は日本列島を縦断して全国に影響を及ぼし、北海道にも甚大な被害をもたらした。(中略)
 10月19日、和歌山県白浜町付近に上陸した。上陸時の勢力は中心気圧965ヘクトパスカル、最大風速35m/sであった。その後本州を縦断し、北海道釧路市付近に再上陸した。台風は、温帯低気圧に変わった後に再発達し、10月20日15時には950ヘクトパスカルとなった。(中略)
 この台風は、大型で暴風域が広かったため、ほぼ全国を暴風域に巻き込んだ。午前中に上陸した台風は、午後にかけて中心が北関東を北東へ進んだため南関東は台風進路の右側に入ってしまい暴風が吹き荒れた。千葉県館山市で最大瞬間風速50.0m/s、東京で38.2m/sを記録し、鉄道や高速道路などの交通機関が麻痺状態となった。北海道網走市で最大瞬間風速37.4m/sを記録した。北海道東部では漁船の遭難が相次いだ。釧路市では、死者・行方不明者67名となった。また、紀伊半島では、900mmを超える大雨となった>

 被害

死者110名、行方不明者5名、負傷者543名
住家全壊139棟、住家半壊1,287棟
床上浸水8,157棟、床下浸水47,943棟
耕地被害25,451ha
船舶被害19隻


●最強の大安売り?最強じゃないのに「最強の台風」が生まれる理由

 増田雅昭さんによると、昭和54年台風第20号は"沖ノ鳥島の南海上で中心気圧が870hPaまで低下"していました。記事執筆当時に最強と騒がれていた"の台風19号は、日本のはるか南海上で900hPaまで下がりましたが、遠くおよびません"。

 また、「今回の台風19号は上陸時が970hPa」。上記の昭和54年台風第20号は965hPaや950hPaを記録していますので、やはりそれに及びません。"過去には911.6hPaで上陸した室戸台風(1934年)がありますし、統計がそろう1951年以降にしぼっても、伊勢湾台風(1959年)の929hPaなど"があるそうです。

 さらに、"このレベルの台風が近年、増えているわけでも"ないそうです。どうも最強とは言えない状況になっても、"「最強」が連呼され続け"、"ひどい時には、それがいつの間にか「史上最強」に変わっていることも"あるというのが、近年「最強の台風」が増えているような錯覚を起こしているようです。

 そもそもこの「最強」台風は、簡単に作り出すことができると言います。たとえば、「10月として、○○に近づく中では」など対象を少なくすれば当然、一番になりやすくなります。それが、いつの間にか諸々の条件が消えていき、「最強」がひとり歩き"というパターンみたいですね。

 また、「最強クラス」「最強級」というのは要するに二番以下なのですが、同様にこちらもいつの間にか「クラス」「級」が抜け落ちて「最強」になってしまうという「最強の台風」の大安売りになっているようです。これはマスコミだけでなく、一般人が誤解してデマを広めている…というところもあるでしょうね。


●「最強の台風」捏造は防災上プラスになるのか?

 こういった大げさな言い方は防災の上で、プラスになるでしょうか? 大げさに言った方が良いという考え方は一部にありそうです。しかし、増田さんは「情報を信じてもらえないマイナス効果」を指摘していました。オオカミ少年のようなものですね。安易に捏造してしまうのは、問題かもしれません。

 一方、コメント欄は避難勧告についても大げさ…と書いていましたけど、これは一緒くたにするべきじゃないです。安易に「最強の台風」と呼ぶのが問題だと言えるのは、実際のデータに基づいていないのがはっきりしているため。ところが、避難勧告の方はそうではありません。いろいろと異なってきます。

 まず、避難勧告などの妥当性の検討はもっと複雑です。私も現在の避難勧告の出し方に疑問を感じる点はあるものの、根拠なしに否定するのはむしろ根拠なしに「最強の台風」と言う側の人と同類だと言えます。記事で出ていたのと同じ台風のときだったと思いますが、産経新聞が全線運転見合わせをしたJR西日本を攻撃して非難されていました。

 これが非難されたのは産経新聞が前日には「慎重な対応を」という記事を書いていたのに、いざ被害が少なかったのを見て手のひら返ししたという理由がまずあります。最悪級に悪質な事例だったんですね。ただ、そうでなくても安全を優先した対応を安易に叩いてしまう…という同種の問題も見えていました。

 東日本大震災の前には津波警報なんか当てにならないから警報によって列車などに遅れが出て迷惑だ!と訴えている人も多かったですけど、こうした津波警報の軽視が悲劇を大きくした可能性が疑われます。ここらへんの安全の考え方は非常に問題がありそうです。


●「史上最強クラス」の台風がまた発生した

2017/10/30:また「最強クラス」の台風が来ていたようです。「最強 台風」検索しても産経新聞グループの記事しか出てこないのですが、例えば、"【台風21号】関東上陸「史上最強クラス」23日未明から明け方に 300ミリは都心の1カ月分超"(産経ニュース / 2017年10月22日 16時30分)は、タイトルにも「最強」が入った記事。
https://news.infoseek.co.jp/article/sankein_afr1710220013/

 他社の記事がヒットしないのが不思議ですが、記事によると、気象庁がそういう認識だったそうです。"気象庁は22日、関東に接近、上陸する台風としては「史上最強クラス」との見解を明らかにした"とのこと。また、以下のような記載もありました。

<関東へ上陸した台風としては中心気圧960ヘクトパスカルが記録上最低で、関東へ上陸すれば「史上最強クラス」(同庁)。また、「超大型」での上陸は全国的に前例がない>

 私がもともと書こうと思っていたのは、実はこの話ではなく、「最強の低気圧」的な話。上記の台風21号のすぐあとにやってきた台風22号から変わった温帯低気圧が、北海道の東で急発達。そして、30日正午の中心気圧は944hPaまで下がりました。台風から変わった低気圧の中心気圧がここまで下がるのは、1981年10月以来36年ぶりのことだそうです。
(低気圧に変わって急発達 36年ぶり tenki.jp / 2017年10月30日 15時9分より)

 「1981年10月以来36年ぶり」と明記してありますし、この記事では、「最強」とも「最強クラス」とも言われていなかったものの、検索するとやはり「最強」を使用している人はいました。こうやってだんだんと内容が変わっていくんでしょうね…。


【本文中でリンクした投稿】
  ■辛坊治郎氏は右翼?左翼批判・安倍首相を評価・自己責任論など

【関連投稿】
  ■日本上陸の台風の多い時期はいつ?過去の統計を見て旅行するのに良い月は?
  ■日本で過去に災害をもたらした台風が多いのは何月か?8月・9月・10月?
  ■夜が一番長い冬至 しかし、「日の出が最も遅くて、日の入りが最も早い」は間違い
  ■台風の進路予測はなぜ外れる?予報円に入る確率は70%程度か?
  ■異常気象の頻度は本当に増加?畳・土塀・檜皮葺は環境破壊の産物だった
  ■科学・疑似科学についての投稿まとめ

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