サンマなんかもそうなのですが、水産資源が枯渇しているのは、中国や韓国のせいだという誤解があります。実際には日本が捕りすぎだからという面が大きいんですね。日本の資源管理は世界的に見ても遅れているのです。他の先進国では漁業が成長産業なのに日本だけ衰退しているというのも、この資源管理のまずさがあります。
【クイズ】マグロに関する説明で正しいものはどれ?
(1)現在のクロマグロの流通量はマグロ全体の流通量の半分程度で、残りは安いメバチが多い。
(2)1960年代の日本は、マグロの輸出量が輸入量より多かった。
(3)日本のマグロの消費量は大きく増えているわけではない。少なくともデータのある1976年以降ほとんど増えていない。
●クロマグロの保護や規制 問題は中国韓国ではなく米・台湾・日本
2016/9/7:
闘病中の松方弘樹の訴えは届くのか?「マグロを守ってくれ…」 | ニコニコニュース (2016/9/6(火)16:13 日刊SPA!)という記事が出ていて、先に反応を見たら中国・韓国がどうのという話が多くなっていて、だいぶ誤解が大きいなと感じました。
“中国に言えよホント”(GrapeColo...)
“日本なら海に返すような小さい魚も根こそぎ獲っていく国が隣にあったよな”(焼きたて鳩サブレ)
“日本はマグロの養殖始まったしな。問題は中国だよ。”(in-d-mil)
“中国に言え、日本は結構こういう規制はガチガチだろ”(B級妖怪)
“日本は消費国だから積極的に取り組んでいる方なんだがな。問題は隣だよ。マグロだけじゃなく、アジやイワシなんかもそろそろ危険かも”(ゴムソー)
“お魚はだいたいとなりの国々の乱獲がね…”(O-MU)
“無理じゃないかな。中国人にその手の理屈は理解できないよ。”(風車)
“日本が自主規制しても中国と韓国が根こそぎ捕っていくからな”(D.D.)
“一番問題なのは日本以外の、例えば中とか韓がつく国だったりするけど、そこら辺の国も含めての話なら大賛成だよ”(とらとら)
ニコニコ動画ユーザーなのでニュースを全然見ていないのでしょうが、日本が出した漁獲量を制限する緊急規制案に最近反対したのは、アメリカと台湾なんですよね。
緊急規制、結論先送り=クロマグロ保護、日米などに溝:時事ドットコム(2016/09/02-17:10)などで報じられています。
<福岡市で開かれていた太平洋クロマグロの資源保護を話し合う国際会議「中西部太平洋まぐろ類委員会」(WCPFC)の北小委員会が2日、5日間の討議を終え閉幕した。日本はマグロ資源の枯渇を防ぐため、1歳未満の生息数が減少し続けた場合に漁獲量を制限する緊急規制の具体案を示した。しかし、米国や台湾の反対で合意には至らず、結論を1年先送りした>
ただ、ややこしいのが、アメリカと台湾では全く立場が逆なこと。アメリカは日本案が甘すぎるという反対理由。日本が提案したのは、クロマグロが今よりかなり減った場合に初めて規制するというものであり、「保護する」というポーズを取っているだけだと判断されたようです。
一方、
クロマグロ規制物別れ 国際管理、漂流も :日本経済新聞(2016/9/2 19:06 (2016/9/2 20:41更新))を読むとわかるように、クロマグロをたくさん獲りまくりたい台湾は、実効性のある規制に反対しています。乱獲したい悪い国は、中国でも韓国でもなく、ニコニコ動画ユーザーが批判しなかった台湾だったのです。
<世界のクロマグロ消費量の8割を握る日本は「1歳未満の未成魚の量が3年連続で過去最低水準の約450万匹以下になった場合、緊急の漁獲規制を2年間実施する」と提案した。実は規制の発動条件に当てはまるほど資源量が低下したことは過去になかった。
そこを突いたのが環境保護団体の支持を受ける米国だ。「発動のハードルが高過ぎる」と反発。日本は漁獲制限量を現行水準からさらに半減するカードで妥協を迫った。
だが思わぬ伏兵が「それは厳しすぎる」とかみついた。台湾だ。合意見送りは決定的となり「なすすべがなくなった」(日本の交渉関係者)>
●日本は魚の保護が進んでいる国…どころか海外より規制が甘い国
また、最も大きな誤解が、日本は魚の保護が進んでいる国だという勘違いでしょう。以下のような過去投稿で書いているように、日本はむしろ規制がゆるゆるな漁業後進国であり、なおかつ日本人が食べすぎているからマグロが減ったというのが事実です。昔はそんなに食べていませんでした。
■
漁業衰退は政治の問題 先進国は成長産業なのに日本だけ衰退の謎 ■
うなぎ・マグロ不足は食べ過ぎだから 稚魚まで獲るから当然減る ■
マグロ消費量の推移 日本のマグロ漁業の発展はアメリカへの輸出のため ニコニコ動画のユーザーでも、<何でみんな記事読まずにコメントしてるの。資源に悪影響のある漁法を規制した方が水産業が発展することは世界中で証明されてる。日本は規制が遅れている>(りょうすけ☆)といった反応がかろうじてありました。また、上記でわかるように、記事そのものが日本の規制が海外より甘いという指摘なんですよ。
闘病中の松方弘樹の訴えは届くのか?「マグロを守ってくれ…」 | ニコニコニュース 2016/9/6(火)16:13 日刊SPA! 取材・文/横田 一
<SPA!は当時、松方氏の優勝当日の夜にインタビューを行ったが、そこで語られたのは優勝の喜びよりも「『巻き網漁』を規制強化すべし!」という訴え。マグロを、そして海を愛してきた松方氏ならではの熱い気持ちが吐露された。(中略)
松方氏自身、健康だったときにこう語っている。
「人間の力で釣り上げるマグロ一本釣りは獲る量はたいしたことはなく、水産資源に優しい“エコ”な漁法なのです。それに比べて産卵期の魚や小さい魚を根こそぎ獲る『巻き網漁』は魚の枯渇につながる。水産資源に優しくない乱獲漁法なのです。
海外30か国以上で釣りをしてきましたが、規制が厳しい国では魚が獲れますが、乱獲を放置している国では魚が枯渇する違いがあります。日本も海外並みの規制強化をすべきです」>
●ブーメラン?捕鯨問題とクロマグロ問題で一貫性のない日本
あと、コメントでなるほどと思ったのが以下のあたりです。ただ、今日本が乱獲していない…というのは、ちょっと誤解のような気がしますけど…。
<元々、日本が乱獲したんだけどねw 捕鯨の話になると昔乱獲した西側諸国を叩くのに、マグロになると乱獲した過去を無視して今乱獲してる連中を叩くんだねw>(エルモ コヲタ)
<過去クジラを乱獲したくせに他国の捕鯨のせいにするアメリカ、過去マグロを乱獲したくせに他国の責任のせいにする日本 そっくりですね!>(ぬるぽ13)
クイズもこれに関係するところで、途中でもリンクした
マグロ消費量の推移 日本のマグロ漁業の発展はアメリカへの輸出のためからです。1960年代の日本人はあまりマグロを食べておらず、マグロの輸出量が輸入量より多いほどだったんですよ。それが急激に大量のマグロをとるようになりました。減って当然です。
【クイズ】マグロに関する説明で正しいものはどれ?
(1)現在のクロマグロの流通量はマグロ全体の流通量の半分程度で、残りは安いメバチが多い。
(2)1960年代の日本は、マグロの輸出量が輸入量より多かった。
(3)日本のマグロの消費量は大きく増えているわけではない。少なくともデータのある1976年以降ほとんど増えていない。
【答え】(2)1960年代の日本は、マグロの輸出量が輸入量より多かった。
ただ、本文すら読まずにバッシングしちゃう人たちですので、こういう真面目な話は受け入れられないだろうと思われます。
●マグロ資源管理で違反だらけの国は日本だった ルール守る気なし?
2017/02/19追記:マグロ資源を管理する「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」は2014年、資源保護を目的に30キログラム未満の幼魚の漁獲量を「2002~2004年平均の半分以下」に抑えることなどを決めており、日本政府もこれに従って「承認制」にして上限を定めました。
ところが、
本マグロ規制の違反続々 「管理甘い」と国際的な批判招く恐れ 2017年 02月18日 17時00分 提供元:J-CASTニュースによると、これが全然守られておらず、違反だらけだということが判明しました。たぶん日本人は最初から、ルールを守る気がなかったんじゃないですかね?
もともと問題となったのは、長崎県と三重県。水産庁が実際にこの2県を調査してみると、無承認や未報告の漁獲量がかなりあることがわかります。さらに、全国に調査を広げるてみると、次々と問題が発覚しました、静岡、和歌山など新たに7県で違反があったことが判明します。
水産庁はこの原因として、規制の周知不足や、
漁業者が規制を守る意識が低いことなどを挙げていました。まさか水産庁まで、そもそもルールを守る気がないって指摘をするとは思いませんでしたわ。日本はマグロ消費量が断トツに多いだけに、資源管理が甘いと国際的な批判を招く恐れがあると記事では書いていました。日本人はルールを守る意識が低すぎです。
●「俺が癌になってないから禁煙・分煙なんて無意味」と同じ主張をする漁師たち
2018/01/15追記:毒舌で売るあるタレントが、テレビのインタビューで禁煙・分煙の推進に関して「俺はこれだけタバコを吸っても癌になってない。だから禁煙・分煙なんて意味がない」といった非科学的な主張をしていたそうです。
日本の漁師もこれと同じで、記者が漁業特集に絡んで国内の先端的なプロジジェクトに参加している漁師を多く取材したところ、魚が獲れなくなったことへの科学的分析に対して否定的な意見を持っている人が驚くほどたくさんいたといいます。
釧路のあるサンマ漁師は、「資源の予測なんて俺は信じねえよ。魚が獲れる獲れないなんてのは、俺らの腕次第の話だよ」などと言っていました。また、「乱獲ではない」と主張し、自らに帰責する資源減少を認めない漁師も多いといいます。これが前述のようなルール無視にも繋がっているかもしれませんね。
(
科学データを「漁師の肌感覚」で否定する水産庁:日経ビジネスオンライン 寺岡 篤志 2017年8月30日より)
●漁獲量は俺らの腕次第…のはずが、所属組合で9割休業状態の惨状
「資源の予測なんて俺は信じねえよ。魚が獲れる獲れないなんてのは、俺らの腕次第の話だよ」などと言っていたのは、釧路のあるサンマ漁師でした。しかし、その釧路港の2018年7月末の「流し網漁」はひどいものでした。腕次第だというのなら、ほとんどが最低の下手くそな漁師というほど捕れていなかったのです。
釧路市漁業協同組合で市場運営を担当している山田将史さんによると、「流し網船の登録は70隻ほどですが、9割が休業状態」といった有様。「漁に出ても走り回ってばっかりで、魚群探知機には(魚影が)映らない。漁に出ても自分たちが船の上で食べる分しか獲れない。燃料代の分損するだけだから、ほとんどみんな家に引きこもっています」といった理由で休んでいるといいます。
ただ、日本の漁師らはたまに捕れる年もあるから、「魚は減っていない」って主張するみたいですね。アホすぎて、話になりません。しかし、より問題なのは、こうした漁師の科学否定の主張を国際会議の場でやっている日本政府です。そんなことをしたら、日本は科学が浸透していないバカな国だと思われ、信用をなくすでしょう。国益を損ないます。
●漁師だけじゃない…よりによって日本政府までもが非科学的な主張
2017年春に開かれた、北太平洋まぐろ類国際科学委員会が都内で開いた「太平洋クロマグロに関するステークホルダー会合」。水産庁はここで、「漁師の肌感覚」として「既に資源は回復しており、漁獲枠を一刻も早く増枠すべき」という主張を掲載した資料を配布してしまいました。
「漁師の肌感覚」というのは、信頼性が低いデータや研究どころの話ではなく、完全な感覚や勘、当てずっぽうといったものです。記者は、先ほどのタバコの例で言えば、厚生労働省が「タバコは吸っても癌になりません。だって吸っても癌にならない人がここにいるじゃないですか」と国内外に喧伝するようなものだとしていました。
政治家などがこうした非科学的な主張をするのは海外でもあるものの、今の日本政府は特に多くて嫌になりますね。それでいて日本の科学レベルの高さを喧伝しているのですから、頭がおかしいとしか思えません。
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