インセンティブで最も一般的と言えそうな金銭報酬。私はてっきり効果が高いと思っていたのですけど、他のインセンティブなどと比較してみると悪くなるという結果になっていて驚きます。現金の場合はむしろ逆効果…という可能性すらありそうでした。
2016/9/9:
●ピザ好き好きすぎだろう!インセンティブはピザと褒め言葉が効果的?
●インセンティブとして主流の現金報酬はむしろ逆効果の可能性
●本当は金銭報酬にも効果があってやり方の問題だという見方も…
【クイズ】イスラエルの保育園で「お迎え」に遅刻する親に対して罰金(米ドルで3ドルほど)を課することにしたら、どうなった?
(1)遅刻する親の数は顕著に増えた。
(2)遅刻する親の数は顕著に減った。
(3)遅刻する親の数はほとんど変わらなかった。
●ピザ好き好きすぎだろう!インセンティブはピザと褒め言葉が効果的?
2016/9/9:
現金よりもピザ。従業員のやる気を引き出す最も効果的報酬はピザであることが判明(米研究) : カラパイア(2016年09月09日)という記事がありました。
ピザのイメージのせいか、「ただしアメリカ人に限る」というジョーク的な反応が多かったのですけど、紹介したのがアメリカの教授というだけで、調査の対象となったのは、たぶんアメリカ人じゃなくてイスラエル人です。
アメリカのニューヨーク州デューク大学の心理学と行動経済学のダン・アリエリー教授の、『Payoff: The Hidden Logic That Shapes Our Motivations(給料日:やる気を形作る隠れた論理)』という書籍では、イスラエルにあるインテルの半導体工場で働く従業員が参加したある実験が紹介されているそうです。以下のような内容でした。
<従業員は週明けに「現金(約3000円)」、「ピザ」、「ボスからの褒め言葉」のうちの1通の報酬に関するメールを受信した(ただし、4分の1は対照群としてメールを受け取っていない。ゆえに報酬もなし)>
<実験初日が終わったとき、従業員からもっともやる気を引き出していたのピザだった。対照群との比較で、生産性が6.7パーセント上昇していたという。
そして次が上司からの褒め言葉(上司から「よくやったぞ!」というメールが届く)で、生産性を6.6パーセント上昇させた。
更に会社にとってかなり驚きだったことに、現金のボーナスでは4.9パーセントと最下位の結果に終わっている>
●インセンティブとして主流の現金報酬はむしろ逆効果の可能性
実験はこれで終わりではなくまだ続いています。これによって金銭報酬が名誉挽回となるか?と言うと、そうではありません。それどころか金銭報酬の効果のなさはむしろこの後顕著になっていました。
ただ、上記の現金報酬の「最下位」が無報酬より悪かったかどうかはっきり書いていないのと同様、以降もはっきり書かれていません。「逆効果」みたいな書き方ですので、無報酬より悪化しているということもありそうなんですけど…。
<30ドル(約3,000円)はそれほど大きな額ではないが突然の報酬となればうれしいはずだ。ところがその後数日で意外すぎる結果が生まれる。2日目、現金ボーナスが提示されたグループは、ピザ・褒め言葉などの対照群と比べて、13.2パーセントも生産性が落ちたのだ。
それから数日はこの結果が続く。そして、1週間全体としては、会社が資金を投じたにもかかわらず、生産性が6.5パーセント低下するという結果に終わった。従業員の目には、現金のボーナスはインセンティブを提示されないよりも嫌なものに映ったのだ>
あと、モチベーションにおいても「成績に基づく報酬インセンティブは逆効果」という話があったんですよ。ノルマ達成など、成績に基づく報酬インセンティブは逆効果になる傾向にあったとのことです。やっぱり金銭報酬は全然ダメってことなんですかね。
一方で感謝などの社会的要因は、幸福感や仕事でのやる気の形成に大きな役割を果たしていることがわかりました。例えば、職場でのモチベーションに関する50の研究をレビューした2011年の調査では、人は自分の仕事が感謝されていると感じている場合にはより一層頑張って働くことが明らかとなっているそうです。
●本当は金銭報酬にも効果があってやり方の問題だという見方も…
成果主義と罰則がうまく行かない理由 行動経済学の実験の意外な結果で、遅刻に対して300円の罰金をするようにしたら余計遅刻が増えたという話を書いています。ちょうど同じイスラエルの例でした。クイズはこれです。
【クイズ】イスラエルの保育園で「お迎え」に遅刻する親に対して罰金(米ドルで3ドルほど)を課することにしたら、どうなった?
(1)遅刻する親の数は顕著に増えた。
(2)遅刻する親の数は顕著に減った。
(3)遅刻する親の数はほとんど変わらなかった。
【答え】(1)遅刻する親の数は顕著に増えた。
上記のケースの場合は金額が安すぎて、抑止力にならなかった可能性があります。なので、今回紹介の実験でも3000円という現金報酬が安すぎたという可能性も考えていました。ただ、結局、成績に基づく報酬インセンティブは逆効果になる傾向という話もあったので、「基本的に金銭的成果報酬はあまり効いていない」と考える方が良いかもしれません。
なお、
成果主義と罰則がうまく行かない理由 行動経済学の実験の意外な結果では、慈善目的の募金を集める際にもインセンティブのある組が負けたという話があります。このときは、慈善事業の意義を十分に説いて募金集めに向かわせており、それが関係しているのかとも思いましたが、こうなってくると、単純に金銭的インセンティブがダメだとも考えられそうでした。
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