「高学歴大工企業」なぜ東大生が大工になりたがるのか プレジデントオンライン / 2016年9月13日 6時15分 ジャーナリスト 吉村克己=文
木造建築の大工職を大学や大学院卒の憧れの職業に変えたのが沼津市に本社を置く平成建設である。同社には200人以上の大工・多能工がいるが、その多くは大学や大学院建築系の卒業者である。東大、京大、東工大、東京芸大、早大、慶大など高偏差値の学生が続々と入社するその秘密とは?
(中略)「このままでは在来工法を担う大工がいなくなってしまう」と、立ち上がったのが、平成建設創業者であり、社長である秋元久雄(67歳)だ。(中略)
大工の伝統を大事にしながらも、育て方は近代化した。師弟関係の中で技を盗んで覚えるようなやり方では、現代の若者はついてこない。技術の習得を体系化し、大工だけではなく、設計、施工管理、営業、弟子の育成までできるかつての棟梁を目指すべく多能工化を図っている。
「誰でも10年がんばれば職人としてはものになる。だが、設計や施工管理まで担えるようになるには、努力と才能が必要です。いまは形骸化してしまったが、昔の棟梁はそれをやっていたんですよ。私たちはこの会社で、本物の棟梁を育てていきたい。そうしないと、木造文化が消えてしまいます」と秋元。
建築業界では営業や施工管理以外は外部の下請けに出すのが普通だ。建設工程は分業化され、基礎、足場、型枠など、それぞれ専門の業者に任せる。だが、平成建設はこの常識を打ち破って、建設に関するこれらの主要工程を自社で行い、社員が施工する。そのための多能工化だ。
平成建設の職人たちは自分の手で家を作ることに憧れて入社しているだけに、その仕事ぶりは丁寧だ。「作った家を引き渡すのが寂しい」という大工がいるほどである。(中略)
とは言え、最初から大卒が採用できたわけではない。創業当初は中途採用で職人を集め、1998年頃から新卒を採り始めた。だが、地元の静岡、神奈川からは大学生が集まらない。そこで、秋元は思いきって東京で募集しようと、企業合同の会社説明会に自ら乗り込んで、「やり甲斐」や「大工の面白さ」を訴えた。大阪や名古屋の会社説明会にも足を運び、訴え続けた。初任給も大手ゼネコン並みの給与にした。
しかし、人数合わせに走らず、じっくりと面接し、大工や建築業界を本当に生涯の仕事としたいのかホンネを確認した。(中略)
2006年度からはインターンシップ制度も始め、卒業予定者に1週間の職場体験をしてもらっている。これも、入社後のミスマッチを防ぐためだ。建築業界では職人が1年で6割辞め、3年で9割がいなくなるといわれているが、平成建設では仕事や会社が嫌になって辞める社員はほとんどいない。
大工の伝統を大事にしながらも、育て方は近代化した。師弟関係の中で技を盗んで覚えるようなやり方では、現代の若者はついてこない。技術の習得を体系化し、大工だけではなく、設計、施工管理、営業、弟子の育成までできるかつての棟梁を目指すべく多能工化を図っている。
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