統合失調症の話をまとめ。<精神分裂病を統合失調症に名称変更したのは日本だけ!その理由は?>、<改名理由は命名者の意図が誤解されたためで、そもそも間違っている>、<海外名の命名者は痴呆状態になるとは限らないことを強調したかった>などをまとめています。
【クイズ】英語の「nurse」に関する説明として正しいものはどれでしょう?
(1)「nurse」は女性だけを指すので、男性の看護師は「nursard」と呼ぶ。
(2)「nurse」は女性だけを指すので、男性の看護師は「male nurse」と呼ぶ。
(3)「nurse」は男性の看護師も含む。
●精神分裂病を統合失調症に名称変更したのは日本だけ!その理由は?
2016/9/25:
統合失調症・躁うつ病とIQの高さ・天才の関係に関する様々な研究を書いていたときに、引っかかるコメントを見かけました。
<名称が古いってのは日本だけの話で、向こうではいまだに「schizophrenia」のままのようですね。日本は患者とその家族団体が無理に変えさせたようですが、「精神分裂→精神は分裂してないからおかしい」なら、「統合失調←何の統合が上手くいってないの?」か、素人にはさっぱりわかりませんけど。。。
#百姓も小使さんも障害者も看護婦も聾桟敷もダメな日本では、#「中国人→中国の人、若者→若い人、女→女性(ただし男はOK)、40歳前後→アラフォー」、「~します→~させていただきます」というおかしな変換まで進んでいる……>
(
天才と精神障害との間には関係がある | スラド サイエンス ストーリー by reo 2012年06月06日 12時20分)
●改名理由は命名者の意図が誤解されたためで、そもそも間違っている
上記のコメントでは、何か日本が過剰反応でおかしい、家族のわがままみたいな話になっていますが、そうじゃないでしょう。英名(Schizophrenia)などが改名されていないのは、日本のように間違った理解がされづらい難しい言葉だからだと思われます。そういう意味では、日本では改名後の統合失調症という言葉の素人の理解しづらさに似ています。
一方、日本が直訳した精神分裂病は誤解がされやすく、命名者の意図とは全く異なる解釈をされているためでした。命名者の意図とは全く違う風に理解されやすい言葉をそのまま使い続けるのは問題がある…というのは、改名する理由として十分だと思いますけどね…。
<19世紀のドイツの精神科医エミール・クレペリンが複数の脳疾患を統一的な脳疾患カテゴリーとしてまとめ、早発性痴呆症を提唱した。1911年、スイスの精神科医オイゲン・ブロイラーが症状群の性質から、著書『早発性痴呆症あるいは精神分裂病群の集団』(『Dementia Praecox oder Gruppe der Schizophrenien』)の中でSchizophreniaを造語し定義した[4]。ブロイラーによれば、当該疾患の特徴は「精神機能の特徴的な分裂(Spaltung der verschiedensten psychischen Funktionen)」であるとし、 Schizo(分裂)、Phrenia(精神病)と呼称した。
ここでいう精神機能とは、当時流行した連合主義心理学の概念であり、また精神機能の分裂とは主に連合機能の緩みおよび自閉症状を意味する>
上記は、
統合失調症 - Wikipediaの説明であり、問題となった日本の名称については、この後説明されます。<日本では、明治時代に精神分裂病が、ドイツ語の Schizophrenie に対する訳語として用意された>のですけど、これが誤解を招いてしまったのです。
<
精神分裂病の「精神 (phrenie)」は、本来は心理学的な意味合いで用いられた単語であり、知性や理性を現す一般的な意味での精神とは意味が異なる。ところが日本では、「精神分裂病」という名称から「精神が分裂する病気」と解釈され、ひいては「理性が崩壊する病気」と誤って解釈されてしまうことがあった。実際には、重度の統合失調症を患っておりながら、ノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュなどがおり、理性が崩壊するとは限らない。
統合失調症の患者の家族に対して社会全体からの支援が必要とされておりながら、誤った偏見による患者家族の孤立[105]も多く、その偏見を助長するとして患者・家族団体等から、病名に対する苦情が多かった>
そもそも病気への理解が間違っているといった意見が主流になっており、改名しないことを問題視するならともかく、改名を問題視するというのは理解できませんね。
<また、
医学的知見からも「精神が分裂」しているのではなく、脳内での情報統合に失敗しているとの見解が現れ始め、学術的にも分裂との命名が誤りとみなされてきた。そこで、2002年に、日本精神神経学会総会で英語の Schizophrenia に対する訳語を「統合失調症」にするという変更がなされた[106]。「病」ではなく「症状群」であるといった指摘もなされた[106]>
●海外名の命名者は痴呆状態になるとは限らないことを強調したかった
別のサイトの説明も見ておきましょう。
統合失調症の病理学では、スイスの精神科医オイゲン・ブロイラーさんが命名したときの考え方について以下のように説明。日本人が「精神分裂病」という名前で誤解したような症状の誤解や「単一の病気」という誤解をむしろ否定する方向性の名前だったようにも見えます。
<ブロイラーは,連合心理学でいうところの「連合 association」の障害こそがこの病気の背景にある基礎的な障害であり,様々な概念と概念の連合がうまく働かないことから種々の精神症状が産生されてくると考えました。(中略)
またこの病気が必ずしも末期像として痴呆様の状態にはならないこと,単一の病気ではなくたまたま同じような経過と症状を示すいくつかの病態の集まり,つまり「症候群」であることなどを考慮に入れ,「早発性痴呆」という病名ではなく"Schizophrenie"と呼ぶことを提唱しました。
この"schizo-"というのは「分かれる」「分離する」というような意味を持ち,"-phrenie"というのは心とか精神という意味を持つ古い言葉です。したがって"Schizophrenie"という言葉は先の連合障害を表現した全くの新しい言葉,ブロイラーの造語です。
この言葉はやがて世界中で広く用いられるようになりましたが,日本語に訳される時に「精神分裂病」と訳され,これがあまりに直訳に過ぎるため,ブロイラー自身の意に反してこの病気に対する様々な誤解や偏見を呼ぶ原因の一部となって,最近になり「統合失調症」という訳語に変更されることになったのはみなさんご存知だと思います>
●日本だけが過剰反応という大きな誤解 そもそも欧米の後追いでは?
それから、コメントでもう一つ強く気になったのは、「百姓も小使さんも障害者も看護婦も聾桟敷もダメな日本では」として、日本では海外と違って看護婦をダメだとしている変な国…という理解をしていたことです。
【クイズ】英語の「nurse」に関する説明として正しいものはどれでしょう?
(1)「nurse」は女性だけを指すので、男性の看護師は「nursard」と呼ぶ。
(2)「nurse」は女性だけを指すので、男性の看護師は「male nurse」と呼ぶ。
(3)「nurse」は男性の看護師も含む。
【答え】(3)「nurse」は男性の看護師も含む。
上記のように、もともと英語の「nurse」は女性だけを指すのではなく男性も含めていたのに、それを日本が女性だけに通用する語を当てたからおかしくなったのです。ですから、日本だけが変わって、英語が変わらないのは当然。これも訳語がマズかったという話で、音訳なら問題ありませんでした。
また、男性も含むのに英語圏でもわざわざ「male nurse」という呼び方をされていた時期があったそうです。しかし、性差別だとされて、現在では呼ばれていません。このようにそもそもこういった差別への敏感さは、日本よりむしろ欧米の方が強く、向こうが本場みたいなもので、日本はどちらかと言うと後追い。それなのに、正反対に日本だけが過剰反応みたいな理解をしているのは不思議でした。
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