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花押は重要文書で現役! 印鑑は日本の伝統文化ではない新しい慣習


 印鑑は日本の伝統的な文化ではなく、比較的新しい慣習ではないかという意見が出ていました。また、絶滅した文化のように思われる「花押」はなんと未だに超重要な場面で使われているとされていてびっくり。それはなんと政府による閣議決定の場面だそうです。

2016/9/29:
●花押なんて使わない…と思いきや重要文書で現役!
●非伝統的!はんこは日本の伝統文化ではない新しい慣習
●はんこなんかより花押の方が日本では歴史が長い!
●伝統的に重要文書で使われるのははんこではなく花押
●はんこではなく印章の伝統ならもっともっと長い?
●明治政府も印章を悪習と考えていた!しかし改革には失敗


●花押なんて使わない…と思いきや重要文書で現役!

2016/9/29:電子決済に長所 はんこ文化なくした中国韓国台湾、なぜ日本だけ?で書いたように、はんこは日本の伝統文化ではなく非伝統的であるという主張がありました。

 こんなことを言うと、日本の伝統文化を汚すのか左翼め!と怒る右派の方がでてきそうですが、何と愛国保守とされる産経新聞の記事でそう書いていたんです。書いているのは、本郷和人という方。検索すると、歴史学の東大教授みたいですね。

 「非伝統的」とタイトルにあったのは後半の記事の方なのですが、まず前半の記事から。この話のきっかけは私も前回書いた遺書の有効性について花押を認めさせるための裁判の件です。

 これまでの1審と2審の判決は、男性が長く花押を使ってきたことや、花押が「認め印よりも偽造は困難」であるとして遺言は有効と認めていました。ところが、最高裁第2小法廷は、「重要な文書は署名、押印して完結させる慣行がわが国にはある」と述べ、花押は民法968条(本人自筆の遺言書には、ア自筆の署名、イ押印。この2つが必要だと規定している)の要件を満たさない、それゆえに遺言書は無効であると断じたといいます。
(【本郷和人の日本史ナナメ読み】「花押」いまだ現役!?(上) 大物政治家の「必修技能」 - 産経ニュース 2016.7.7 07:21 より)

 本郷和人教授はこれについて、「いや、しかしこれは、ツッコミどころの多い判決ですねー」とした上で、「重要な文書は署名、押印して完結させる慣行がわが国にはある」という裁判所の認識は果たして正しいのでしょうか?としています。要するに事実ではないってことですね。以下のような理由です。

<何でこんなことを言うかと申しますと、花押が実は、いまだに使われているからです。それも、これ以上ないだろうという重要な場面で。お分かりになりますか? それは、閣議決定において、です。閣議決定の際には、首相や大臣が筆で花押を書くことが慣例になっているのです>


●非伝統的!はんこは日本の伝統文化ではない新しい慣習

 そして後半の【本郷和人の日本史ナナメ読み】「花押」いまだ現役!?(下)「重要文書にハンコ」実は非伝統的 産経ニュース(2016.7.14 08:28)、はんこは伝統文化などではないという話に繋がります。

 遺言書に書かれた花押の有効性をめぐる裁判では、判決文に「重要な文書は署名、押印して完結させる慣行がわが国にはある(傍点は筆者)」とされていました。これは一応ギリギリ嘘ではないようです。

 そして、これがもし、「重要な文書は署名、押印して完結させる伝統がわが国にはある」となっていれば、「それは違う!」と突っ込まねばならないとしていました。署名して押印する、というのは、伝統ではないため。古くて明治時代からの行いだそうです。


●はんこなんかより花押の方が日本では歴史が長い!

 また、歴史の長さにおいても、花押がはんこに勝ります。まず原則として、花押というものは、実名の代わり。花押を用いる以前は、自分の名前をくずして、草書で書いていました。これは草名(そうみょう)というそうです。次の段階で、この草名を記号化しました。これが「花押」であるようです。

 「花押はそもそも、実名の代わり」というのは重要であり、鎌倉時代の幕府の公文書には「実名プラス花押」という組み合わせはなかったといいます。

 ところが、花押がそもそも実名であることが、時とともに忘れられていくと「実名プラス花押」が次第に姿を現してきました。室町時代には、幕府の公文書でもそういった例がすでに登場。そして、戦国時代になると、印判というものが出てきます。印判はハンコの先輩といったものだとのこと。花押を書く代わりに、印判を押すという使い方をしたそうです。


●伝統的に重要文書で使われるのははんこではなく花押

 ただし、印判が出てきても、花押がなくなったわけではありません。そして、印判は他の人が押すことも可能だったため、花押の方が丁寧であると認識されていました。このことから、花押の方が重要だとも言えます。したがって、日本の伝統的にも、花押の方が重要文書で使われるというのが本当なのです。

 印判が登場した戦国時代においても、印判よりも花押が丁寧。重要な文書は署名して花押。だから「重要な文書は署名、押印して完結させる慣行がわが国にはある」というのは、この時期にはあてはまらないんですね。

 本郷和人教授はおそらく江戸時代でも同じだろうとしていました。これは理由がないわけではなく、明治になっても閣議書に花押が持ち込まれたというのは、そういう理解があってこそだろうという見方。閣議では前述のように、現在でも残っていますしね。

 ただし、「慣行というのは、ここ数十年(引用者注:実際にはもうちょっと長い?)のことだ。それはそれで問題ありません」ともおっしゃっています。花押を認めなくちゃいけないという主張ではないわけです。

 とはいえ、前回書いたようにサインの類が認めらないという社会は妙な感じがして、何かしっくり来ないものが残りますけどね。


●はんこではなく印章の伝統ならもっともっと長い?

 でも、単純に古さなら印章の方が古いですし、重要文書にも使われていましたね。花押の最古例という話で言うと、10世紀中葉ごろと花押 - Wikipediaでは書かれていました。印章は上記より古いですし、確認のためにと見たW印章 - Wikipediaでは、花押に途中で変わったと説明していました。
日本では西暦57年ごろに中国から日本に送られたとされ、1784年に発見された「漢委奴国王」の金印が最古のものとして有名である[39][40]。ただし当時の日本ではまだ漢字が知られておらず、印章を使う風習もなかったため、漢委奴国王印が実際に印を押す用途で使用されたかどうかには懐疑的な意見もある[41]。日本の文献に残る最古の記述は『日本書紀』のもので[41][42]、692年には持統天皇へ木印を奉ったという言及がある[41]。なお『日本書紀』にはそれ以前にも、崇神天皇が四道将軍に印を授けたという紀元前88年頃の記述が見られるが、これについては後世の脚色と考えられている[43]。

日本において印章が本格的に使われるようになったのは、大化の改新の後、701年の大宝律令の制定とともに官印が導入されてからであると考えられる[44]。当時の日本における印章の用法は、隋・唐における用法が模範となったものの、それ以前の中国での歴史的用法は伝播しなかったため、中国とは趣を異にするものとなった[18]。律令制度下では公文書の一面に公印が押されていたが[45][40]、次第に簡略化されるようになり、平安時代後期から鎌倉時代にかけては花押(意匠化された署名)に取って代わられた[46]。しかしながら、室町時代になると宋から来た禅宗の僧侶たちを通じ、書画に用いる用途で再び印章を使う習慣が復活することとなり、武家社会へと伝播していく[47]。戦国時代には花押にかかる手間を簡略化するため、大名の間で文書を保証する用途に、略式の署名として印章が使われるようになる(織田信長の「天下布武」の印など)[48][49]。

 後半の説明は本郷和人教授と同じ。印章文化は断絶がありますし、やはり「略式の署名」です。


●明治政府も印章を悪習と考えていた!しかし改革には失敗

 ただし、江戸時代になると、印章はめちゃくちゃ重要になったとWikipediaでは説明されています。まず、江戸時代には行政上の書類のほか私文書にも印を押す慣習が広がるとともに、実印を登録させるための印鑑帳が作られるようになりました。これが後の印鑑登録制度の起源となっていあmす。

 江戸時代の日本における印章は命の次に大事なものに例えられるなど、庶民の財産を保証するものとして非常に重く扱われるようになり、日本独自の印章文化が確立したとされていました。

 ところが、むしろ明治時代にはこれを改めようとしたというのです。明治政府は印章の偏重を悪習と考え、欧米諸国にならって署名の制度を導入しようと試みました。

 ただ、事務の繁雑さや当時の識字率の低さを理由に反対意見が相次ぎ、以後の議論の末、1900年までに、ほとんどの文書において自署の代わりに記名押印すれば足りるとの制度が確立。また、印鑑登録制度が市町村の事務となったのも明治時代であり、むしろ印鑑文化が発達しました。

 このように明治時代にもはんこ文化への改革は頓挫していますし、これはちょっとやそっとじゃ変わらんぞ!という感じです。


【本文中でリンクした投稿】
  ■電子決済に長所 はんこ文化なくした中国韓国台湾、なぜ日本だけ?

【その他関連投稿】
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