2023/11/29追記:
●山本尚・卓越教授「日本の研究不正に対する処罰はおかしい」 【NEW】
●触媒の第一人者…ノーベル化学賞候補、山本尚氏の経歴・学歴・受賞歴
2016/10/3:直前に書いていたノーベル賞候補の投稿・
日本人ノーベル生理学医学賞候補 森和俊,坂口志文,大隅良典,水島昇では、大隅良典さんの予想が当たり。ただ、そっちを読んでもらうとバレちゃうのですけど、私は大隅良典さんは時期尚早じゃないかと書いたんですよね。見る目ないですわ…。
書いちゃったもんは仕方ないですし、気を取り直して次はノーベル化学賞に行ってみましょう。・
今年のノーベル賞、日本人の有力候補は? :日本経済新聞(2016/9/23 9:11)の挙げていたノーベル化学賞候補、ほぼ全員うちで紹介済みの方でしたが、中部大学の山本尚教授のみ初耳でした。
"米国化学会の「ロジャー・アダムス賞」の17年受賞者に決まった"というタイムリーな方。STAP細胞問題で晩節を汚した元理研理事長の野依良治さんなど、"歴代受賞者にはノーベル賞受賞者も多い"そうです。受賞の理由は、"精密に設計した分子を触媒として利用し、有用な化合物を選択的に合成する手法の開発"。
山本尚 - Wikipediaでは、"アルミニウムを中心とした、ルイス酸触媒研究の第一人者"という説明がありました。
<略歴>
1967年 京都大学工学部工業化学科卒業[1]
1971年 ハーバード大学化学科大学院博士課程修了(指導教官イライアス・コーリー)[1]
1971年 東レ基礎研究所博士研究員
1972年 京都大学工学部助手[1]
1976年 京都大学工学部講師[1]
1977年 ハワイ大学准教授[1]
1980年 名古屋大学工学部助教授[1]
1983年 名古屋大学工学部教授[1]
1984年 名古屋大学名誉教授
2002年 シカゴ大学化学科アーサー・コンプトンディスティングイッシュトプロフェッサー
2011年 中部大学教授、分子性触媒研究センター長
2012年 シカゴ大学名誉教授
2016年 日本化学会会長[2]
<受賞・叙勲>
1988年 日本IBM科学賞[1]
1992年 中日文化賞
2002年 紫綬褒章受章
2006年 テトラヘドロン賞(英国)
2007年 フンボルト賞(ドイツ)、日本学士院賞
2011年 野依賞
2012年 藤原賞
2017年 ロジャー・アダムス賞(予定)
●山本尚氏の他、水島公一氏,吉野彰氏,西美緒氏,藤嶋昭氏らも有力
私は実用性が気になるので、オススメはリチウムイオン電池。ただ、直接関係ないものの、テスラの自動車事故で今年はイメージが悪いかもしれません。また、リチウムイオン電池そのものの問題である発火事故もネックだと以前から言われています。というか、しまったと思ったのが、最近も事故ああったこと。今年は絶対無理そうな年でしたね…。(2021/10/08追記:リチウムイオン電池は2019年にノーベル化学賞受賞が決定。吉野彰さんが受賞しています)
<化学分野でノーベル賞に近いといわれる成果にリチウムイオン電池の開発がある。(中略)
同電池の正極材料を1980年に開発した米テキサス大学のJ・グッドイナフ教授がこの分野の第一人者だ。東芝リサーチ・コンサルティングの水島公一シニアフェローは77~79年にグッドイナフ教授の右腕として働いた。この成果をもとに旭化成の吉野彰顧問らがリチウムイオン電池の原型を試作、元ソニー業務執行役員の西美緒氏らが91年に初めて実用化した。
全米工学アカデミーは2014年、グッドイナフと吉野、西の3氏らに工学分野のノーベル賞といわれる「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」を授与した>
前述の通り、うちでは過去にも紹介している方々です。
ノーベル賞有力候補、西美緒・吉野彰の経歴 リチウムイオン電池の発明や
ノーベル化学賞日本人予想 柳田敏雄、藤嶋昭、吉野彰、水島公一で書きました。
上記でいっしょに名前がある藤嶋昭・東京理科大学長は、光触媒の開発というこれまたイメージしやすい成果を挙げた方で、日経新聞でも軽い扱いでさらっと名前が出てきていました。一方、うちの過去の投稿タイトルの中の人物では、柳田敏雄さんだけ今回の日経新聞に名前がなかったです。今、柳田敏雄さんでもう一度検索してみると、どうも以前のノーベル賞(2014年?)で関連研究が取り上げられたみたいですね。ノーベル賞は同じ内容で二度はありませんので、柳田敏雄さんは受賞を逃したという理解で良さそうです。
●山本尚教授と近い研究分野で親交があるドイツ人らがノーベル賞に
2021/10/08追記:<ノーベル化学賞 ドイツとアメリカの研究者2人 有機触媒の研究>(2021年10月6日 20時48分 NHK)を読んでいたら、山本尚さんが出てきたのでこちらに追記。比較的分野が近い研究であり、今回受賞者2人とは親交もあるとのことです。ただ、山本尚さんのコメントの前にまず2021年のノーベル化学賞の受賞者の話をやりましょう。
<受賞が決まったのは、ドイツのマックス・プランク研究所のベンジャミン・リスト氏とアメリカのプリンストン大学のデビッド・マクミラン氏です。
2人は有機触媒の分野の研究で大きな貢献をしたことが評価され、選考委員会は、彼らが開発した有機触媒を利用することで新たな医薬品などを効率的に作り出せるようになったとしています。
有機触媒の研究に詳しく、2人とも交流のある学習院大学の秋山隆彦教授は「リスト氏とマクミラン氏は、2000年に化学反応を促す新たな有機触媒をそれぞれ同時に発表した。これまでの触媒はパラジウムなどの金属を使うことが一般的だったが、この触媒は金属を使わないことから、医薬品などを作る際にも、より安全に作ることができるし、安価に作れることも特徴だ」と話しています>
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211006/k10013293651000.html
ドイツのベンジャミン・リストさんは北海道大学のICReDD=化学反応創成研究拠点にも主任研究者として所属しています。ICReDDの拠点長を務める前田理教授は「金属を使わないことで、薬を作るときに不純物が入らないといったメリットがある」と説明。いつかノーベル賞を受賞するのではないかと期待していたともおっしゃっていました。
●化学賞候補の山本尚教授、ノーベル賞受賞の可能性は消えた?
山本尚教授が登場するのはこの後。NHKでは、<ノーベル化学賞の受賞が決まったベンジャミン・リスト氏とデビッド・マクミラン氏の2人と以前から親交があり、自身も近い研究分野で世界的な業績を上げている中部大学の山本尚教授>と紹介した上で、以下のようなコメントを載せていました。
「薬品などを作る際、反応を促す触媒として以前は金属が入った物質を使っていたが、金属が入っていない『有機触媒』を開発したことが彼らの大きな業績だ。『有機触媒』は金属を含まないので、環境に優しく、コストも安く薬品を作れるというメリットがある。環境に配慮した今の時代にもマッチした研究だ」
なお、ノーベル賞では同じ内容のものが二度受賞することはありません。山本尚教授の研究が今回の関連研究だとみなされた場合、ノーベル賞を受賞することはなくなった…と言えます。ただ、もともと書いていたように、山本尚教授が評価されていたのは、精密に設計した分子を触媒として利用し、有用な化合物を選択的に合成する手法の開発。今回とは別件な感じがしますね。
上記以外にも山本尚教授は、「2人とは20年以上前から親交があるが、研究者としては新たなことに挑戦する開拓者だ」と指摘。他のノーベル賞候補関連の投稿で何度も書いているように、ノーベル賞級の研究で流行りの分野から生まれないことが多く、今の政府の成果主義的な方針が裏目に出て日本の研究が急激に劣化しているところが見られます。
「有機触媒」が2人の発見の前にどれくらい注目されていたのかわからないのですが、<有機分子で「不斉触媒」開発、2研究者にノーベル化学賞…インフル治療薬などの合成に応用>(10/6(水) 18:59配信 読売新聞オンライン)によると、スウェーデン王立科学アカデミーは、今回の業績について「2人は先入観にとらわれず、化学者が長年苦しんでいた問題の解決を発見した」と評価。当時は注目されていなかった可能を感じさせます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2a86c953c7308c66897604f8a53bc38e3f9f7f84
また、この発見の後、「有機触媒」論文が大量に出て一気に人気分野となったことも、それ以前は注目されていなかったと感じさせるもの。以前から注目されていても発見が難しいというものもあるでしょうが、その場合は最初の発見後も論文はそれほど激増しないと予想されます。そもそも未発見の「お宝の山」のような状態で、発見後に研究者が殺到した感じです。
●日本人も得意な分野で「名前がないのは残念」「複雑な思いもある」
2人と親交があり、自身の研究分野も近い学習院大学の秋山隆彦教授も、「それまでは金属を用いて化合物を合成するのが主流だったが、高価だったり、毒性があったりするなど問題点があった。2人の研究は、比較的小さな有機分子を用いて医薬品の開発などにつながるいろんな化合物を合成できるようにしたのが特徴で、その後、非常に活発な研究が行われるようになった。ある意味パイオニア的な2人だと思っている」と解説していました。
一方、2人と同じ分野の研究をしていて、20年以上の親交がある東北大学大学院理学研究科の林雄二郎教授は、「「この2人が切り開いた有機触媒の分野では、その後複数の日本人研究者が独自の触媒を開発し、大きな貢献をしていて、日本も世界的にこの分野の研究をリードしている。受賞者に日本人の名前がなかったことは少し残念」としています。山本尚教授のことも意識した発言でしょうか。
そうした研究者の一人なのか、同じ分野で研究を進めていて、リストさんと親交が深い東北大学大学院の理学研究科長を務める寺田眞浩教授は、「正直なところ、うれしい反面、複雑な思いもある」と吐露。リストさんの論文発表から4年後の2004年に、「秋山・寺田触媒」という金属を使わない新たな有機触媒を開発し、論文で発表していたそうです。開拓者・先駆者の方が評価されるので仕方ないだろう…とは思いますけどね。
寺田眞浩教授は、「この分野の研究が実用化につながった例はまだ少なく、今度、リスト氏に会ったときは今回の受賞をきっかけに実用化に向けてこの分野を盛り上げていこうという思いを共有したい」とも説明。ただ、先の林雄二郎教授は「これまで合成が難しかったタミフルなどの医薬品や、香料、農薬などさまざまな化合物が簡単に作れるようになった」としており、現時点でもかなり実用化されているようでした。
●山本尚・卓越教授「日本の研究不正に対する処罰はおかしい」
2023/11/29追記:山本尚・中部大学卓越教授(有機化学)が、
イノベーション妨げる不正処罰 - 日本経済新聞(2023年11月9日 2:00 )というコラム(?)を書いているのに気づきました。コラムでは、最初に「イノベーションの発展には若い世代の自由な発想こそ重要」としています。
その上で、「日本独特の研究不正に対する処罰を見ると、自由な研究活動への理解が全くない」としていました。私はこの時点でいくつか違和感を覚えます。その一つは、日本はむしろ欧米より不正に対する態度は甘いのではないかということ。ただ、続きを読むと、アメリカが厳しいことは書いていますね。
<欧米でも論文の不正行為は珍しくない。その場合、不正を行った学生や博士研究員は学会から放逐されるが、不正に関わらない限り、その研究を行った教授に処罰はない。しかし、日本ではたとえ不正への関与がない場合でも、そのプロジェクトを遂行した研究指導教授に非常に重い処罰が加えられる。数年間の研究費の申請が止められ、事実上長期間、研究がストップする。これはおかしい>
とはいえ、結局、上記もよくわからないところ。<日本ではたとえ不正への関与がない場合でも、そのプロジェクトを遂行した研究指導教授に非常に重い処罰が加えられる>とされていますが、実際には、指導教授については重い処罰がない例が多い印象。研究費ストップは大学の処分とはまた別なんですかね?
というか、そもそも「不正を行った学生や博士研究員」とあるものの、学生や博士研究員が主体となった論文での不正が発表されることはごくわずか。多くの場合、もっと上の人の論文による不正じゃないかと思います。それとも、教授名の論文でも、実際は研究員の論文って意味なんですかね?(その場合は別の不正の一種なんですけど)
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