コンビニドーナツで直接ミスタードーナツが利益を受けるというよりは、コンビニドーナツの出現によって、ミスタードーナツの良さを考える良い機会になったのではないか?という話。実際、ミスタードーナツはコンビニドーナツとは異なる方向性で、店舗を作り直しました。(2016/10/5)
その後、それ以外にもコラボ商品連発など改革をやっているよ、という話を読んだので、"もっとお客さんとの接点を増やそう!というミスタードーナツの改革"という小見出しで、こちらに加えています。(2017/04/08)
【クイズ】香川大学大学院の高木知巳准教授が、丸亀製麺がはなまるうどんに店舗数で圧勝した理由の一つとして挙げていたのはどれ?
(1)1店舗あたりの売上高ははなまるうどんより低いものの、出店数を増やすことに注力したため。
(2)店内でうどんをつくっている光景を見ることができるので臨場感を味わえるため。
(3)はなまるうどんと比べて、丸亀製麺は出店の初期費用がかからないため。
●2016年の落ち込みが激しいのでやっぱりコンビニのせい?
ミスタードーナツがコンビニドーナツのせいで閉店増加という大嘘を書き終えた後に別記事を読みました。この記事では、最初コンビニのせいでピンチという書き方をしていました。
ドーナツ戦争、コンビニの攻勢受けるミスドの運命は|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン 2016年8月25日
運営会社のダスキンの決算によると、「ミスド」のチェーン全店売上高の推移は14年3月期が1030億円、15年3月期が1020億円、16年3月期は前期比10.3%減の915億円となった。ミスドを中心としたフードグループの営業損益は15年3月期に約2億円の赤字だったが、16年3月期は約14億円に拡大、また17年3月期第1四半期(16年4~6月期)も赤字が続いており歯止めがかかっていない。
決算数字を見ると、明らかにコンビニがドーナツ市場に参入した15年から業績が悪化していることが分かる。損益もドーナツの値下げなどで収益を圧迫している様子がうかがえる。
ただ、その後にこれを否定するようなことも書いていて、わかりづらくなっています。
しかし、よくよく考えてみれば、ミスドは拡販費が増加しているとみられるし、急速な売上高の減少で利益も減少しているようだが、セブンがドーナツで400億円を達成しているならばミスドの売上高はもっと食われていてもいいはず。
ところが、ミスドの16年3月期の売上高自体は15年3月期に比べ100億円程度の落ち込みで、前期比で200億円も、300億円も減っている訳ではない。つまり市場自体が縮小したのではなく、セブンが400億円以上の売り上げを獲得、それに他コンビニの売り上げを加えればドーナツ市場はむしろ拡大している格好だ。
このような状況について、ある流通コンサルタントは「住み分けができてきたのではないか」と見る。少子高齢化の進行で、遠くのミスドまでドーナツを買いに行かない、行けないシニアや小さい子どもがいる世帯はコンビニで済ませる。逆に若年層や店舗で作りたての商品購入したい向きなどはミスドで買うというのだ。
変な書き方していますけど、とりあえず、後半だけ読んでおけば良いでしょうね。
棲み分けできるし、むしろドーナツ市場全体を広げるのでは?という見方は、うちで最初に紹介したときから出ていた見方であり、今のところその通りという感じになっています。
●セブンのコンビニドーナツはミスタードーナツにとってむしろ良い効果?
長期的な見方で、なおかつ本当にうまく行くかどうかはわからないものの、ミスタードーナツにとって、セブン-イレブンがドーナツ市場に参入したことはむしろ良かったかもしれないと思いました。
というのも、ミスタードーナツはコンビニドーナツという相手ができたことで、自分たちの魅力は何なのか?と見つめ直す機会ができました。これは市場を独占していたときには、なかなか考えられないことです。
そして、「つくりたて」「できたて」というのがコンビニドーナツになりミスタードーナツの魅力の一つであるということに気づけました。
ミスタードーナツは既にこの魅力を前面に出した店舗などにも挑戦し始めているのです。
ドーナツも調理も“むき出し”にした新ミスド:日経ビジネスオンライン 河野 紀子 2016年6月1日
JR東海道本線・甲子園口駅の改札口を出ると、水色を基調としたカフェが目に飛び込んでくる。2015年秋にリニューアルオープンしたこの店は、「ミスタードーナツ」の最新型店で、社内では「ニューミスド」と呼ばれる。赤と茶色を基調とした外観を見慣れている消費者には、この店がミスドだとは気づかない人もいるかもしれない。
店内には、ドーナツがお行儀よく正しく並ぶおなじみのショーケースはない。ベーカリーショップのように、“むき出し”になったドーナツが、ボリューム感を強調するような形でどんと積まれている。客席からは大きな窓越しにキッチンを覗け、ドーナツを手作りする様子が間近で見られる。
また、一人客からファミリーまで幅広い客層がゆったりと過ごせるように、従来店より広めのテーブルを採用。商品を選ぶのに迷っている顧客には積極的に声をかけるなど、コミュニケーションを重視する方向で接客のマニュアルも見直した。
なぜ今、ミスドはニューミスドを展開し始めたのか。「事業開始当初から手作りや出来たてのドーナツを売ってきたが、アピール不足だった」とダスキンでミスド事業を統括する宮島賢一専務は話す。ミスドはドーナツの原材料の練り込みから各店舗で行っているが、そのことを知っている消費者はそれほど多くないのではないだろうか。
●コンビニドーナツ対策というよりはコンビニ中食対策
ああ、記事を読み直してみたら、実際のスタートにはコンビニドーナツ参入前。コンビニのせいでというのはあっていますが、ドーナツではなく、コンビニ中食に対する危機感で始めたみたいですね。
ニューミスドをチェーンの中軸に据えていくとの計画を打ち出した背景には、「中食」のレベルアップに代表される競争の激化がある。デパ地下や町中の洋菓子店だけでなく、コンビニエンスストアのスイーツの種類も豊富になり、その質も向上が著しい。様々な種類のドーナツが気軽に買える店としてミスドの魅力は、相対的に低下していったといえる。
そこで2014年からミスドは、中食にはない武器を磨く方向で店舗力の強化を始めた。具体的には、手作り感、できたて感を含めた“シズル感”のアピール、高齢者でも親子連れでもゆったりと過ごせる時間の提供、来店客へ一歩近づいた接客――などだ。ミスドは現在、全国で約1300店を展開するが、今後5年で約1000店をニューミスドなどへ改装する考えだ。
●ミスタードーナツでお馴染みのセールも行わない
ニューミスドでは、「ドーナツ1個108円(税込み)」のセールなどは行わないそうです。(ただし、ものによっては、従来より安い商品もあるとのこと)
私はこういったセールなどを利用しているタイプなので残念ではあります。ただ、この方向性は正解だとも思います。既存店舗では相変わらず盛んにこの手のセールをやっていますけど、これはミスタードーナツのブランドを下げているためです。
コンビニドーナツより安いのならともかく、コンビニドーナツよりも高くておいしいという立ち位置であるならば、安さで攻めるよりもブランド価値を向上した方が良いでしょう。セール向きのスタイルではありません。
ただ、まあ、これが本当にうまく行くかは、改装店舗を見てからでしょうね。大塚家具は親子喧嘩して路線変更していましたが、いきなり全店変えなくても、まず実験店舗でやれば良かったと指摘されていました。私がいつも書いている「小さく失敗せよ」の考え方で、やってみて失敗したらやめりゃいいのです。
全席禁煙なんか失敗するぞ! → ロイヤルホストにはプラス効果のロイヤルホストも、様子見ながら少しずつ増やしていったという形でした。ロイヤルホストは大塚家具と違ってよくわかっています。
●作っているところが見えることの良さ
あと、先ほどあった「ドーナツを手作りする様子が間近で見られる」というのは、意外に訴求力になるのでは?とちょっと思いました。
なぜそう思ったのか?と言うと、丸亀製麺がそれでウケたと言われていたためです。(関連:
店舗数日本一、丸亀製麺がはなまるうどんに圧勝した理由)
【クイズ】香川大学大学院の高木知巳准教授が、丸亀製麺がはなまるうどんに店舗数で圧勝した理由の一つとして挙げていたのはどれ?
(1)1店舗あたりの売上高ははなまるうどんより低いものの、出店数を増やすことに注力したため。
(2)店内でうどんをつくっている光景を見ることができるので臨場感を味わえるため。
(3)はなまるうどんと比べて、丸亀製麺は出店の初期費用がかからないため。
【答え】(2)店内でうどんをつくっている光景を見ることができるので臨場感を味わえるため。
チャレンジの方向性としては良さそうに見えますし、復活を期待したいです。
●もっとお客さんとの接点を増やそう!というミスタードーナツの改革
2017/04/08:ミスタードーナツは他の改革も行うようで、一つがコラボ商品の連発です。ドーナツや飲み物、軽食で、宇治抹茶専門店の祇園辻利、ラーメン店「ソラノイロ」、ハウス食品などと開発した商品を期間限定で発売していくそうです。
(
"大きく変わるぞ ミスタードーナツ"、復活を図るダスキンの本気度 マイナビニュース / 2017年4月7日 20時35分より)
これは、「misdo meets 祇園辻利」といった感じで、「misdo meets」シリーズになるようですが、こうした試みはお客さんとミスタードーナツとの「出逢い」という意味でも重要だと思われます。
かっぱ寿司に関して書いた
安いけどまずい!かっぱ寿司、不当評価で回転すし4社で一人負けで、「安売り系のキャンペーンより新商品開発を!」と書きました。
かっぱ寿司は改善を行った後も、「安かろうまずかろう」のイメージが定着してしまっていて、変わったことを知ってもらう機会がありませんでした。なので、かっぱ寿司にしかない食べてみたい新商品を開発して来店してもらい、その際にメインである従来の寿司も食べてもらうことで、「悪くないじゃないか」と気づいてもらうという形が望ましいという理由です。
同様に、ミスタードーナツのコラボ商品もとりあえず来てもらうきっかけを作って、ミスタードーナツの良さを知ってもらおう・思い出してもらおう…という作戦で良いと思います。
これと同じく、接点作りとなっているのが、昨年11月から展開を開始したという、テイクアウト専門店「Mister Donut to go(ミスタードーナツ トゥゴー)」。"消費者とのタッチポイントを増やすために、駅ナカなど人通りの多い場所に200店舗をメドに出店する計画だ"と、書かれていました。
宮島賢一専務は、以下のように語っています。
「ドーナツが嫌いな人はほとんどいない。でも、ミスタードーナツになんで行かないの? となると、お客さんの行くきっかけ、要望に応えられていないというのが事実だと思う。10年、20年と店舗を出してからほとんど改装をせずに来ている。以前はファミリー層が多かった街が今やシニアの街に変わっていることもある。3年かけて小ロット生産、店舗の改装、これらを利用目的に合わせて動いている。改装、出店、クローズの繰り返しをやらないとドーナツの隆盛はない」
大まかな方向性としては、これで正しいと思われます。
【本文中でリンクした投稿】
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