ノーベル賞の話をまとめ。<日本人がノーベル賞を取れるのは今だけ?既に中国に負けている分野も>、<ノーベル賞は現在の科学水準の高さを示していない…過去の遺産である>、<「分野によっては中国に負けている」という言い方、事実ではない?>などをまとめています。
2023/09/23:
一部見直し
●日本人がノーベル賞を取れるのは今だけ?既に中国に負けている分野も
2016/10/5:
ノーベル化学賞候補、山本尚の経歴 吉野彰,西美緒,藤嶋昭らも有力などで使った日経新聞の記事
今年のノーベル賞、日本人の有力候補は? :日本経済新聞(2016/9/23 9:11)。実を言うと、日本はすごいんだぞ!という話で終わっていたわけではありません。
記事では、<未来について考えると、心もとない>としていました。<賞の対象となる研究成果が出たのは30~40歳代を中心とした比較的若い時代に集中している>というのが理由の一つ。<日本の科学力を保つには、若手や中堅の研究者が研究に没頭できる環境づくり>という現在が大事なのです。
また、<多くの研究者が奮闘しているが、近年は中国など新興国の研究水準向上が著しい。分野によっては「すでに追い越された」という声もある>として、地盤沈下も指摘。これについては、後半の<「分野によっては中国に負けている」という言い方、事実ではない?>という小見出し部分で補足しました。(2023/09/23追記)
●ノーベル賞は現在の科学水準の高さを示していない…過去の遺産である
ノーベル賞は過去の遺産…という言い方をすると、反発する人もいるでしょう。ただ、そういう人にも比較的わかりやすいだろうというのが、本来、受賞すべき人が亡くなっているというのが、ノーベル賞ではよくあることだという事実。例えば、
ノーベル物理学賞を逃した鈴木厚人・鈴木洋一郎・西川公一郎・戸塚洋二らの戸塚洋二さんがそうでした。
上記記事で「比較的若い時代に集中している」とあったことでもわかるように、受賞までに数十年の歳月を要するのです。これ自体は仕方がないことでしょう。日本だとSTAP細胞が極端な例ですが、その研究の本当の評価が定まるには時間がかかります。応用が進むなど、どれだけ人類に貢献できそうかというのも、時間が経過してみないとわかりません。
そういうわけで、ノーベル賞というのは数十年前の古い業績の評価、過去の遺産とも言うべきものです。現在の日本の研究が優れているかは示していない…と、残念ながら言えてしまうんですね。
●重要論文数で見ると悲惨な日本 全分野ではっきりと地位低下
では、今の日本はどうか?と言うと、実を言うともう既にかなりダメになっていると考えられます。
国立大学の予算・教員削減で日本の研究論文数減少 重要論文も全分野で顕著に低下でやったように、日本の重要論文数の順位はすべての分野で大きく下がっていました。
日経新聞では、"国は80年代から研究開発の源泉となる科学技術振興費を一貫して増やしてきた"と評価して、このおかげでノーベル賞が取れたかのように書いています。しかし、重要論文数の低下しているという事実からすると、あまり相関していないと考えた方が自然です。
科学技術予算の膨張は研究成果に繋がっていないだけでなく、むしろSTAP細胞問題や族議員の跋扈といった弊害を生んでいるという見方すらります。これは
文科省の影響強かったSTAP細胞問題 理研の責任は国・政治家の責任でもあったで書いた話ですけど、実はこれも同じ日経新聞が元ネタなんですよね…。
●日本の科学をダメにしてしまったたのはいったい誰なのか?
じゃあ、何が一番関係するの?という話も、
国立大学の予算・教員削減で日本の研究論文数減少 重要論文も全分野で顕著に低下で出てきました。豊田長康・鈴鹿医療科学大学学長(元三重大学学長)の分析によると、相関係数が高いのは、基盤的収入と運営費交付金で0.7と0.6。政府はこれらを削っていますので、それが素直に日本の凋落に繋がっていると考えて良いです。
他のお金ですと、これよりかなり低い数字で「科研配分額(直接経費)」0.14というものもありました。ただ、注意せねばならないのは、「科研採択件数」が2倍の0.283とずっと良いこと。金額よりも件数の方が大切だということがわかります。政府は特定分野に重点配分するやり方を好んでいるのですが、これが裏目に出てさらに日本の凋落を招いているということがこれらからわかります。
この大失敗の理由はある程度想像できます。以前から書いているように、画期的な研究は予想外のところから生まれることが多いです。どの研究が大成功するか予測できないのです。例えば、今年(2016年)のノーベル賞受賞者である大隅良典・東京工業大栄誉教授も以下のようにおっしゃっていました。
「競争するのは好きじゃない」「人と違うことをやる」「たくさんの人がやっている領域は『俺が1番』と早さを競うしかない。でもそこに興味がない」「がんにつながると確信して研究を始めたわけではない。基礎的な研究はそういうふうに展開していく。基礎科学の重要性をもう一度強調しておきたい」
(
「人と違うこと」追究 基礎研究 重要さ強調 大隅氏ノーベル賞 - 西日本新聞 2016年10月04日 00時17分より)
政府は成果主義・競争主義を期待した予算の組み方をしているようですが、実際にはそれが原因で逆に日本の研究を低下させた形になっています。政府は日本をこれ以上めちゃくちゃに壊さないように、間違いを認めた上で、予算を配分する方法を改めるべきでしょうね。
●「分野によっては中国に負けている」という言い方、事実ではない?
2016/10/5追記:投稿直後に気になって検索したら、「分野によっては中国に負けている」というのは、めちゃくちゃ日本に甘い見方ですね。軽く見た感じ、日本がことごとくボロ負けっぽい雰囲気。こちらについては、
日本人ノーベル賞受賞者は将来激減 既に中国に大敗の重要論文数で後に書きました。
2016/10/12追記:研究費削減と、成果狙いの偏向予算についても指摘されていたので紹介。
www.fnn-news.com: ノーベル賞・大隅栄誉教授「浮かれている場合ではない」 10/07 23:08では、ノーベル賞を受賞した大隅良典・栄誉教授が以下のような話をしています。
「ノーベル賞学者が、日本では、毎年出ていることで、浮かれているような状態ではなくて。次から次へと新しい人が、ノーベル賞をもらうことが、非常に難しくなっていくのではないかと、危惧している」
<教授が、雑務に追われていることや、研究費の不足で、先の見える研究に偏りがちな傾向を指摘>
【本文中でリンクした投稿】
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日本人ノーベル賞受賞者は将来激減 既に中国に大敗の重要論文数 ■
国立大学の予算・教員削減で日本の研究論文数減少 重要論文も全分野で顕著に低下 ■
ノーベル物理学賞を逃した鈴木厚人・鈴木洋一郎・西川公一郎・戸塚洋二ら ■
文科省の影響強かったSTAP細胞問題 理研の責任は国・政治家の責任でもあった ■
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