北方領土のロシアからの返還ですけど、四島一括返還論の他に、二島返還論があります。この二島返還は、正確には「二島先行返還」であり、後に残りの二島も返還する四島返還論だと、二島返還論を主張する人は言っています。ただし、これには強い反対があり、特に過激な右派側からそういった主張が出て、今まで潰されてきたものでした。
ただ、安倍首相という本来ならバリバリの右派が率いる政権から、二島返還論が出てくるという変わった状況になっています。また、安倍政権では、「二島先行返還」論ですらない、四島返還を諦める「二島だけ返還」論を思わせる発言も出ており、今までの日本側の主張で最も後退しているという際立った特徴を示しています。
2016/10/19:
●ネトウヨは北方領土二島返還を批判せず?櫻井よしこは過去に批判
●以前は批判していたが、安倍首相なので右派・保守派も手のひら返し?
●ひどすぎるサハリン2事件…ロシアの横暴に手も足も出なかった首相とは?
2018/11/21:
●2島返還論の安倍政権幹部「ロシアが4島返還するわけはないだろう」
●むしろ過去の政権より後退…2島先行返還論ですらない2島だけ返還
2019/12/16:
●ロシアに貢いだのに「2島だけ返還」案すら無視されて成果ゼロ
【クイズ】日本企業などのサハリン・エナジーの出資比率を引き下げて、ロシアのガスプロム社に強引に過半数の株を持たせたサハリン2事件が起きたときの日本の首相は?
(1)麻生太郎
(2)安倍晋三
(3)森喜朗
●ネトウヨは北方領土二島返還を批判せず?櫻井よしこは過去に批判
2016/10/19:以前も書いたように、北方領土への関心は極めて低いと思います。竹島や尖閣諸島では大騒ぎなのに、北方領土問題への反応は薄く、「辺鄙なところで誰も住まないからこだわる必要はない」などと言っている人すらいます。竹島や尖閣諸島でこんなことを言ったら、猛批判を食らうでしょう。
で、自民党政権で二島返還論が出てきた今回、保守派やネトウヨさんはどうしているんだろう?と気になりました。過去には二島返還をかなり批判していたためです。例えば、保守派の代表的な論客である櫻井よしこさんは、過去に国益損なうと主張していました。
「 鈴木宗男はロシアにひれ伏す 」 | 櫻井よしこ オフィシャルサイト 2002.03.08 (金) 『文藝春秋』 2002年4月号
二島先行返還という暴論。とんだ国益の代弁者だ
田中真紀子前外相が思う存分好き勝手なことを言い、鈴木宗男議員が限りなく灰色の姿を見せたのが2月20日の衆院予算委員会での参考人質疑だった。(中略)
鈴木氏とロシア側の歩調は双子のようにぴったり一致する。しかしその中で、日本の国益だけが著しく阻害されていく。
日露関係はたしかに遅々として進まない。しかし、領土問題で目先の利を追えば追うほど、ロシア側の思うツボにはまっていく。日本側は今、こちらから動いてはならないのだ。ロシア側からの動きを冷静に分析し動きを待つべきなのだ。
73年にソ連が日本に接近して二島ではなく四島問題だと認めたのは米中両国が接近し、ソ連が国際的孤立を恐れたからだ。93年のロシアの譲歩は、ソ連が崩壊した状況下で援助を必要としていたからだ。プーチンのロシアもまた、非常なる援助を必要としている。そのプーチン大統領と、特別に30分間面談して、鈴木氏は一体、何を語り合ったのか。日本国の政治家ならば、日本の国益をこそ考えよ。
●以前は批判していたが、安倍首相なので右派・保守派も手のひら返し?
また、元外務省主任分析官の佐藤優さんが、"この「2島引き渡し先行」論は、過去に鈴木宗男・新党大地代表らが主張するたびに、「4島一括」に固執する右派・保守派から激しい批判を浴びてきた"と指摘。やはり二島返還論は、保守派が今までは批判してきたやり方と考えて良さそうですね。大体確認できました。
(
佐藤優氏が読み解く北方領土 2島返還も択捉・国後は困難 NEWSポストセブン 2016年10月4日 07時00分 (2016年10月4日 07時33分 更新)より)
ただし、佐藤優さんは上記に続けて、"今回は推進するのが保守派の安倍首相なので、右派は批判しづらい面があるのだろう"とも指摘していました。実際、ネトウヨの多そうなサイトをチラチラ見てみると、批判がないわけではないものの、割れている感じです。
また、何より祭りと言われるような盛り上がりになっていませんからね。北方領土への関心は薄くても、今回の提言が二島返還が野党やリベラル派のものだったらネットは大荒れ、大いに叩かれたでしょう。「何を言ったか?」よりも、「誰が言ったか?」に重きを置いていることがわかりますし、彼らが本当は国益なんか考えていないって話でもありますね。
●ひどすぎるサハリン2事件…ロシアの横暴に手も足も出なかった首相とは?
あと、クイズにしたサハリン2事件。これ、第一次安倍政権のときなんですよ。(関連:
ロシアへの投資リスク・サハリン2事件 天然ガス権益を突然奪取)
【クイズ】日本企業などのサハリン・エナジーの出資比率を引き下げて、ロシアのガスプロム社に強引に過半数の株を持たせたサハリン2事件が起きたときの日本の首相は?
(1)麻生太郎
(2)安倍晋三
(3)森喜朗
【答え】(2)安倍晋三
安倍首相はなぜか今ものすごい勢いで、親露路線を進めています。最初は懲りないなぁと思っていたものの、何かもうこうなってくるとロシアにいろいろと貢ぐつもりなんじゃないか?と思うくらいです。どうなってるんでしょう?
2016/10/27追記:投稿後に報じられた、安倍政権のロシア重視の例として、以下を紹介しておきます。(国際協力銀行は、政府開発援助(ODA)のうちの借款業務と 輸出入金融業務を担当する機関)
国際協力銀、ロシア銀に単独融資 欧米の制裁対象 首脳会談控え異例の支援 2016/10/22 2:01 日本経済新聞 電子版
国際協力銀行(JBIC)は年内に、ロシア最大手銀行のズベルバンクに単独融資する。円建てで融資額は約40億円。JBICは民間との協調融資が原則で単独融資は異例だ。ズベルバンクは欧米の対ロシア経済制裁の対象。12月に控える日ロ首脳会談を前に金融面の支援を打ち出し、政府が目指す北方領土問題の解決に向け環境を整備するねらいだ。
●2島返還論の安倍政権幹部「ロシアが4島返還するわけはないだろう」
2018/11/21:再び二島返還論が盛り上がってきたので追記して再投稿。
安倍晋三首相は2018年11月24日、シンガポールでロシアのプーチン大統領と会談し、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意。56年宣言は平和条約締結後に歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島の2島を引き渡すと明記。従来、国後(くなしり)、択捉(えとろふ)の2島も含めた北方四島の一括返還を求めていた日本政府は、2島の先行返還を軸に進める方針に転換したと考えられます。
実際、安倍政権幹部も14日夜、「国後、択捉の2島にはあれだけ人が住んでいるんだから、ロシアが返還するわけはないだろう」と発言。安倍首相は、「戦後70年以上残されてきた課題を次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つという強い意志を大統領と完全に共有した」と自画自賛しています。
(
首相「2島先行返還」軸に日ロ交渉へ 4島一括から転換:朝日新聞デジタル 2018年11月15日00時44分より)
ただ、2島返還ならタイミングは以前からあり、安倍首相の成果とは言えません。前述の通り、右派が批判して邪魔してきたものでもあります。
●むしろ過去の政権より後退…2島先行返還論ですらない2島だけ返還
また、「国後、択捉はロシアが返還するわけはないだ」だと、2島先行返還ではないため、むしろ以前より悪化したという反応もありました。(
はてなブックマークより)
questiontime 「四島一括返還」に拘ってきたのは他ならぬ自民党。二島返還で平和条約締結で良いなら62年前にできた話。少なくとも「安倍外交の成果」じゃない。
D_Amon これが受け入れられるなら鈴木宗男氏のときに終わっていた話だな。ロシアが経済的苦境でより有利な条件で交渉できた時代でも四島一括返還のためにそれを潰してきたのではないか。安倍氏の「功績」作りが最優先なの?
katamachi これ、鈴木宗男と一部外務官僚が唱えていた二島先行返還論ではなく、ただの二島返還じゃないの。安倍政権幹部「国後、択捉の2島にはあれだけ人が住んでいるんだから、ロシアが返還するわけはないだろう」
「外交の安倍」と讃えられているそうなんですけど、むしろ下手ですよね。
www6 目の前の外交成果をとるために金も国土も切り売りするのって、普通はレームダックと呼ばれ愛国者から忌避されるものだが、目を瞑り耳を塞いで2020年まで突っ走ることを決めたのだ。多分。
nabeteru1Q78 外交交渉のラインがズルズル後退してるのを「首相が決断を下した」調子で書くのって、何で?ラインがズルズル下がるのは、交渉が下手な人の特徴なんだが。
Arturo_Ui 二十数回も詣でておきながらプーチンは歯を見せず、交渉のベースラインは60年前と同じ(というか、橋本-エリツィンの時より後退)って、「やってる感」だの「ポンコツ」といった表現ではヌルすぎる売国奴ぶりだな。
●ロシアに貢いだのに「2島だけ返還」案すら無視されて成果ゼロ
2019/12/16:過去最高に妥協した「2島だけ返還」すら諦めた模様。
北方領土「2島引き渡し」も困難 安倍政権、日ロ長門会談から3年 | 共同通信(2019/12/14 18:33)という記事が出ていました。交渉のヤマ場と目された2016年12月の山口県長門市での日ロ首脳会談から、2019/12/15日で3年を迎えるというタイミングでの記事です。
安倍政権内で14日までに、北方領土交渉の落としどころとして検討してきた譲歩案の「2島引き渡し」について、近い将来にロシアから同意を取り付けるのは困難だとの見方が強まったとのこと。政府筋は、「ロシアに態度軟化の兆しが見えない」としており、首相官邸や外務省で諦めムードが漂っているといいます。まるで他人事ですね。
記事では書いていませんけど、一方で安倍政権はロシアの求めた経済協力だけは認めていますからね。当初危惧されたように、ロシアにいいように使われて、成果はゼロということ。こんな安倍首相について「外交がうまい」と評価するのは無理がありすぎで、むしろ歴代最高レベルで下手だと感じます。
【本文中でリンクした投稿】
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