運動不足な人、肥満気味な人に運動が必要だというのは間違いありません。ただ、運動=激しい運動やスポーツという誤解は危険だと思います。なので、むしろ運動不足な人はスポーツをすべきではないかもしれません。米医師会報の論文でも「運動は週1回で大丈夫だし、少しずつ増やせば良い」とされていました。
【クイズ】極端な食事制限ダイエットが悪い理由はどれ?
(1)筋肉が減るため
(2)内臓脂肪が増えるため
(3)皮下脂肪が増えるため
●運動不足な人にスポーツを勧めるべきではない理由
2016/10/26:後述するように、運動不足解消のためにスポーツをしなくてはいけない…というのは誤解だと思われます。一方で、国としてもむしろ積極的にこの誤解を広げている感じ。例えば、オリンピック関係への税金投入の正当化として、国民のスポーツへの関心を高めて健康的にするといったものが言われていました。
そりゃあ業界としては、スポーツや激しい運動をしてくれた方が儲かりますので、そうミスリードしたいというのはわかります。「激しい運動はいりません。ちょっとした運動でいいですよ」なんて言ってしまうと、企業はちっとも儲かりませんからね。
しかし、そもそも運動が本当に必要である運動不足な人、肥満気味な人というのは、運動が好きではないことが多いです。彼らがオリンピックを見て大挙してスポーツを始めるか?と言うと、そうではないでしょう。スポーツを始める人は、どちらかと言うともともと体を動かすことが嫌いじゃない人の方が多いはずです。
体を動かすことが嫌いだという人は、激しい運動が必要ですと言われてしまうと、むしろそのハードルの高さに諦めてしまったり、すぐにギブアップしてしまったりしがちで、逆効果です。食事の改善もそうなのですけど、大事なのは続けることであり、短期間に終わってしまうと意味がありません。できるところから無理なくやって、少しずつステップアップしていくべきでしょう。
また、最も問題だと私が考えるのは、普段運動をしていない人、太っている人らが急に激しい運動をすると、怪我や体調の悪化を招きやすいということ。なので、むしろ運動不足な人に強い運動を勧めるのは、健康を害するように誘導しているに等しい…とすら言えるかもしれません。ちょっと危険なところがあります。
●運動不足な人はむしろスポーツはするな!1日1万歩も健康に悪い理由
…と書いてきましたが、以上の話は私が考えていたというだけです。整合性のない話ではないと思うものの、専門家のお墨付きがあるというものではありませんでした。でも、今回、私のこの考えに近そうな記事がありました。東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利・運動科学研究室長のインタビュー記事です。
この記事、
「1日1万歩」は間違い? 5000人研究で判明!:日経ビジネスオンラインでは、“1日1万歩”について「今すぐやめたほうがよい」とは言っていません。間違っているわけではないといいます。
ただし、青栁幸利・室長は、「1万歩を実現できてさえいれば大丈夫」と過信したり、「歩けば歩くほど体にいい」と間違った思い込みをするのはよくないとしていました。要するに極端なのはダメなんですね。歩き過ぎも含め、運動のし過ぎは、健康効果がないどころか、免疫力を下げてしまうリスクがあるとしていました。
●世界的な水泳選手たちはむしろ不健康?血液検査の結果驚くべきことが…
青栁幸利・室長がカナダに留学しているとき、オーストラリアのメルボルン大学で水泳のナショナルチームの選手の血液検査を行ったことがありました。世界的な水泳選手のイアン・ソープ選手らが所属していた、レベルの高い代表選手たちの検査です。
しかし、検査の結果はあまり良くないものでした。持久力や筋力、ヘモグロビンの数などは素晴らしい結果ではありました。ただ、世界レベルの水泳選手は、ハードなトレーニングが原因で免疫力が落ちており、風邪などの病気にかかりやすいことがわかったといいます。スポーツをやり過ぎると病気予防はあまりうまくいかないということは、昔から実験的にも解明済みだといいます。
また、若いときには軽く1日1万歩をこなせてきた人でも、関節が傷んでしまい、歩けなくなり、一気に体力を落とすことがあるとのこと。これはそれでも我慢して歩くべき…という話ではありませんよ。痛みが出るのは、そもそもどこかで体が無理をしている証拠だとされていました。
●運動もダイエットもやりすぎは良くない…食事制限ダイエットが悪い理由
今回は運動の話でしたが、最初のところで書いたように、食事の改善も無理なくやった方が良いでしょう。いきなり好きなものを全部食べるなとか、嫌いなものをたくさん食べろと言われても、素直に聞かない人が多いでしょうし、チャレンジしても短期間で失敗しやすいです。また、それとともに強調しておきたいのが、極端な食事制限ダイエットが禁じ手だということです。
【クイズ】極端な食事制限ダイエットが悪い理由はどれ?
(1)筋肉が減るため
(2)内臓脂肪が増えるため
(3)皮下脂肪が増えるため
【答え】(1)筋肉が減るため (筋肉が減ると基礎代謝量が減って、余計やせづらい体になります。
ダイエットに何度も失敗する理由 食事制限・低カロリー飲料の罠より)
もちろん食べすぎな人はさすがにそのままじゃ痩せられませんよ。少しずつ少しずつ減らしていく必要があります。ただ、一般論として、極端な食事制限をしてしまうと、長く続かなかったり、リバウンドしてしまったりしがちで、おまけにダイエット前より痩せづらい身体までできあがり…ということになってしまいます。あまり得策じゃありません。
●米医師会報の論文でも「運動は週1回で大丈夫だし、少しずつ増やせば良い」
2017/05/13:
運動不足が原因で死ぬ人年間530万人 でもスポーツをする必要はない理由と同じ方向性の話を補足。イギリスのラフバラ大学のゲーリー・オドノバン博士を中心とした研究チームが、2017年1月9日にアメリカ医師会報(JAMA)の内科ジャーナル・オンライン版に発表した論文では、週末1回だけの運動でも、十分に健康への効果があるとされていました。
研究では、イギリス政府が1994~2012年にかけて調査した40代以上の男女6万3591人の運動習慣や病歴をもとに、週末だけの運動が心臓病や癌の予防になるかどうかを調査。週に何度か20~30分程度の軽い運動をする人たち・週末にまとめて少し高い強度の運動をする人たち・全く運動をしない人たちの3つのグループに分けて比較しています。
当然、「全く運動をしない人たち」に比べて、「週に何度か20~30分程度の軽い運動をする人たち」の方が死亡率が低いなど、良い結果になりました。ただ、予想外であったのは、週末1回の運動でも、「週に何度か20~30分程度の軽い運動をする人たち」と差がないという結果になったことです。
また、運動量に関しては、これまで運動を全くしていなかった人は、急に負荷の高い運動をすると、心臓などに負担がかかるので、「まずは、ゆっくりしたウォーキングや散歩から始めて、徐々にスピードアップしたり、距離や時間を伸ばしたりしたほうがいいでしょう」という話がありました。やはり最初はちょっとずつで良いのです。
最終的な目標の運動時間に関しては、記事では矛盾するところがあり、ちょっと大丈夫かな?と思います。"アメリカの心臓病学会などでは「週に150分」以上の運動を奨励"と書いている一方で、"頑張り過ぎも禁物。週の運動時間は、150分を超えないようにする"ともあったのです。
(
週1回だけの運動習慣って効果あるの?米国医師会が発表した驚きの研究結果 – アサジョ(医療/フィットネスライター 松尾直俊) 2017/02/20 10:14より)
安全を見ると、後者の「150分を超えないようにする」を採用した方が良いですかね。とりあえず、そもそも150分も運動なんかしていない人が多いのですから、最初はこんな時間なんか気にせず、ちょっとずつちょっとずつ増やしていけば良いと思われます。
【その他関連投稿】
■
運動不足が原因で死ぬ人年間530万人 でもスポーツをする必要はない理由 ■
「座らない」健康法 スタンディングデスクで立って仕事しよう! ■
歩くスピードで寿命がわかる?歩くことで血圧を下げる効果など ■
死亡リスク低下という貧乏揺すりの意外な効果 座りっぱなしの悪影響を低減か? ■
座り仕事・立ち仕事どっちが腰に悪い?腰痛経験者・腰への負荷のデータ ■
医療・病気・身体についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|