小さな嘘が大きな嘘に繋がってエスカレートしていくのが、研究でも確かめられたという話(2016/10/29)。これに、:"脳に電気ショックで正直な人に…でも、罪悪感のない人や大義名分があるときには効果なし"といった話を、追加しました(2017/04/25)。
【クイズ】スタンフォード大学のアルバート・バンデューラ名誉教授が、不正を犯さないために効果的な手法の一つとして紹介していたものはどれでしょう?
(1)悪人や不正を憎む心を絶えず燃やし続けるために、批判する機会があれば徹底的に叩くこと。
(2)他人への共感力を身につけること。嫌いな人、理解できない人も同じ人間なのだと思うこと。
(3)両親、教師、自分が憧れる著名人など、尊敬できる人をたくさん作ること。
2016/10/29:
●小さな嘘・不正が大きな嘘・不正に繋がる、研究で確かめられる
●普通の人も嘘をつく?嘘を繰り返すのは特別な人だけではない
●なぜだんだん嘘がエスカレートするのか?嘘を繰り返すほど弱まる脳の反応
●不正を犯さない手法…スタンフォード大学名誉教授のおすすめはどれ?
2017/04/25:
●脳に電気ショックで正直な人に…でも、罪悪感のない人には効果なし
●罪悪感のない人だけでなく、大義名分があるときにも効果なし
2021/01/15:
●ルールを守らない人がいるとやがて治安の悪い町になってしまう…
●小さな嘘・不正が大きな嘘・不正に繋がる、研究で確かめられる
2016/10/29:
嘘つきや悪人に罪悪感がないのは、人は不正を忘れやすい生き物だから?で、「不正が不正を呼ぶ」という話を書きました。この観点の研究としては、より直接的なものがありましたので紹介します。
「うそをつくほど平気に」、不正直に脳が適応 国際ニュース:AFPBB News(2016年10月25日 13:47)によると、税金のごまかしや、恋人への裏切りなど何であれ、小さなうそをつくと、それがエスカレートして大きなうそに発展しやすくなるとの研究結果が英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」で発表されました。
論文の主執筆者で、英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)実験心理学部の研究者のニール・ギャレット(Neil Garret)さんは「今回の研究は、不正直な行動が繰り返されると、その程度が増大することの初の実証的な証拠となっている」と述べたそうです。
●普通の人も嘘をつく?嘘を繰り返すのは特別な人だけではない
また、事前の質問表で、率直さの程度が低いと特定されていた被験者は、実験中にうそをつく可能性も高かったことがわかっています。これだけ読むと、嘘をつく人は特別な人だと思うかもしれません。
ただ、嘘のエスカレート具合に個人差が見られたのは事実であるものの、大半の被験者は、時間とともにますます大胆なうそをつくようになったといいます。つまり、普通の人であっても、嘘の悪循環に飲み込まれる可能性が高いのです。
なので、前回も書いたように、小さな不正であっても問題視し、初期段階で嘘の連鎖を断ち切れるように努力すべきでしょう。
●なぜだんだん嘘がエスカレートするのか?嘘を繰り返すほど弱まる脳の反応
それから、論文はまた、うそを重ねるとともに、脳に表れる感情的な反応が徐々に弱くなるともしていました。
研究では、被験者25人に対しては、機能的磁気共鳴断層撮影法(fMRI)による脳スキャンを実験中に実施。感情を処理する脳の部位である「へんとう体」が、うそをつく行為の発生時に強い反応を示しました。ただ、この強い反応は最初だけ。うそが大胆になるほど、へんとう体の反応が徐々に低下してしまったのです。
シャロットさんによれば、最初は、後ろめたく感じる悪感情が、不正直な行動に歯止めをかけるものの、「次にごまかしをする際には、すでに適応しているために、行動を思いとどまらせるための否定的な反応が弱くなる」と説明していました。したがって、うそを多くつくほど、うそが上達する、と言えてしまうのです。
●不正を犯さない手法…スタンフォード大学名誉教授のおすすめはどれ?
今回書いていて、そういや、「不正をやる人はいかにも悪そうな人だけでなく普通の人もやるんだよ」という話を以前投稿したことを思い出しました。検索してみると、
性善説と性悪説、どちらも人間は悪という前提 間違った意味が浸透で使ったものでした。
このときも、<人間が悪いことをしているという認識すらなく悪いことをしてしまうのは、脳が錯覚をおこすからだ>という論文の話が出ていましたし、徐々にエスカレートするという話ありました。冒頭のクイズはこの投稿からの出題です。
【クイズ】スタンフォード大学のアルバート・バンデューラ名誉教授が、不正を犯さないために効果的な手法の一つとして紹介していたものはどれでしょう?
(1)悪人や不正を憎む心を絶えず燃やし続けるために、批判する機会があれば徹底的に叩くこと。
(2)他人への共感力を身につけること。嫌いな人、理解できない人も同じ人間なのだと思うこと。
(3)両親、教師、自分が憧れる著名人など、尊敬できる人をたくさん作ること。
【答え】(2)他人への共感力を身につけること。嫌いな人、理解できない人も同じ人間なのだと思うこと。
小さな不正を許すと大きな不正を呼ぶために、小さな不正も許さない方が良いでしょう。ただ、一方で他人の嘘を口汚く罵る人が、自分も平気で嘘をついているという場面をしばしば見かけます。人の振り見て我が振り直せというのは、絶えず注意していないと、なかなか実行できないようです。
●脳に電気ショックで正直な人に…でも、罪悪感のない人には効果なし
2017/04/25:
脳に電気刺激を与えることで不正を減らすことができることが判明。ただし「良心」がある人に限る(スイス研究) : カラパイア(2017年04月25日)というも記事がありました。スイス、チューリッヒ大学の神経経済学・決断神経科学教授のクリスチャン・ラフさんらの研究について書いたものです。
研究では、145人の大学生たちに、1回サイコロをふるごとに五分五分の確率で9スイスフランをあげる実験を行いました。しかし、五分五分の確率であるはずなのに、3分の2以上の報酬が発生したみたいです。たぶん自己申告なんでしょうね。ズルした人がいることを示唆しています。
そして、この次の実験で、電気ショックが登場。相手を騙そうと考えているときの脳に電極を取りつけ、生体を傷つけない脳刺激を施します。これにより、被験者は正直に行動する方を選び、相手を騙す傾向が少なくなりました。平均確率は58%にまで落ちたそうです。
ただ、「相手を騙そうとした人の割合は8%」で変わらなかったとも書いてありました。この意味がよくわからなかったものの、ラフさんは、騙していることに罪悪感がある人にだけ効果があり、稼ぎを最大にするばかりに夢中になっていた被験者にはそれほど影響を与えなかったと、説明しています。
●罪悪感のない人だけでなく、大義名分があるときにも効果なし
この実験は、電気ショックを与えられるとわかっていれば、そのバイアスが働いてしまい、証明としては不十分なのではないか?と思いました。しかし、被験者本人だけでなく、匿名の他人にも金が入る仕組みのゲームを行ったもうひとつの実験では、脳に刺激を与えても不正は減らなかったとのこと。となると、マジっぽいですね。
この2つ目の実験については、他人の為という大義名分があるため、私欲ではないと自分に思い込まることができるから、と説明されていました。
最初の投稿部分でも紹介した、不正を行うの人は特別な人ではなく、多くの場合普通の人であるという研究の話。このときには、不正を行う人は、「私だけがおかしなことやっているのではない。皆だってやっている。だから私がやったっていいですよね」と正当化するという話がありました。
そして、次の段階で「自分よりこの人のほうがずっと悪いことをやっている」という比較をやり、徐々に不正がエスカレートしていくという指摘もありました。大義名分のようなものがあると、不正が行われやすくなるという点は、今回の実験と一致しています。
そういえば、東芝での不正会計なんかも、「上から圧力かけられたから」という大義名分があるから、加速化したのかもしれませんね。「悪いのは自分じゃない、上層部だ」と責任転嫁して、不正が起こりやすくなった…といった感じです。(組織において不正などの責任が上長にあることが多いのは本当なので、厳密に言えば「責任転嫁」ではないのですけど)
大義名分によって暴走して普通ならやらないであろう残酷なことをやってしまう…などの問題は、これまでかなり多く発生してきたのではないかと予想されます。
●ルールを守らない人がいるとやがて治安の悪い町になってしまう…
2021/01/15:
ルールを守らない人が多い街は犯罪しやすい…ベテラン泥棒が語るで書いた話は、当初こちらのページに追記しようと思っていたもの。今読み直すと、あんまり似た話じゃないかな?と思ってしまいましたが、小さな不正を放置してしまうとエスカレートしていく…という流れの話ではあります。
その話というのは、ある元女性警察官の話。「なぜルールを守るのか」について子どもたちに教える安全教室の話で、「ルールを守らない人がいるということは、まわりに注意する人がいないから。注意する人がいないというのは、すなわち泥棒をしやすい街」といった話をしていました。これは割れ窓理論のことも思い出します。実を言うと、割れ窓理論については信頼性への批判があるのですが、とりあえず、
Wikipediaでは、以下のような説明になっていました。
<軽微な犯罪も徹底的に取り締まることで、凶悪犯罪を含めた犯罪を抑止できるとする環境犯罪学上の理論。アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した。「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される」との考え方からこの名がある>
(1)建物の窓が壊れているのを放置すると、それが「誰も当該地域に対し関心を払っていない」というサインとなり、犯罪を起こしやすい環境を作り出す。
(2)ゴミのポイ捨てなどの軽犯罪が起きるようになる。
(3)住民のモラルが低下して、地域の振興、安全確保に協力しなくなる。それがさらに環境を悪化させる。
(4)凶悪犯罪を含めた犯罪が多発するようになる。
【本文中でリンクした投稿】
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