太平洋戦争で莫大なお金を使ってしまったため、戦後は預金封鎖や財産税によって国民からお金をぶんどっていたようです。数十年分の税金に値するものでしたから、ちょっと今では信じられない感覚ですね。これは戦後の徴収から計算したものですが、戦前・戦中の資料から試算した話もありましたので、追加しています。
2021/11/08まとめ:
●統計不正のなぜ?戦争は統計不正確なせい、吉田茂に麻生太郎学ぶ
●預金が下ろせない!太平洋戦争のせいで国民に負担転嫁する預金封鎖
2016/11/6:日本でも戦後行われた「預金封鎖」。政治の失敗のつけは国民に…というわけですが、当時こうなったのは「戦争」のせいです。
預金封鎖 - Wikipediaによると、日本では1944年、日本国債の発行残高が国内総生産(GDP)の2倍に達したために償還が不可能となり、財産税の新設と共に実施されました。
また1946年にも、第二次世界大戦後のインフレの中、幣原内閣において新円切替が施行されると同時に実施されています。この封鎖は封鎖預金と呼ばれ、第一封鎖預金と第二封鎖預金に分けらました。引き出しが完全にできなくなるのではないものの、預金者による引き出し通貨量の制限や給与の一部が強制的に預金させられるなど、利用条件が設けられたのです。
封鎖預金からの新円での引き出し可能な月額は、世帯主で300円、世帯員は1人各100円。1946年の国家公務員大卒初任給が540円であり、それを元に現在の貨幣価値に換算すると、世帯主が約12万〜15万、世帯員が1人各4万弱までという計算になります。これが「政治の失敗のつけは国民に」である、「戦争のつけを国民に」であるとわかるのは、預金封鎖が実施された当時の大蔵大臣である渋沢敬三さんに「
国の負担を、国民に転嫁する意図」があったことからもわかるようです。
●最高税率90%の課税の他、戦後、国民から23年分の税金を搾取
では、預金以外なら大丈夫だったか?と言うと、そうではなかったようです。別記事
預金が下ろせなくなる? 国の借金1000兆円を国民に負担させた「預金封鎖」とは 〈dot.〉|dot.ドット(更新 2016/10/31 07:00) では、以下のような話がありました。
<また、それと並行して数々の新たな特別課税を断行した。なかでも「財産税」は、一定額を超える預貯金、株式、不動産などの財産に一回限り特別に課税するというものだが、最高税率が90%だったというから驚きだ。戦後のただでさえ苦しい生活の中で、国民にとってはまさに地獄のような状況であったと想像できる。
そのあとわずか数年で危機は収束するが、
結局今の額で約1000兆円を当時の国民が負担したことになる。政府の負債と言っても、そのツケを払わされるのはつねに私たち国民だということを忘れてはいけない>
「今の額で約1000兆円」という国民の負担。この感覚を知るために、今税金の総額がどれくらいあるかを見てみましょう。うちで書いたそれっぽい投稿を探してみると、
日本の税金(一般会計税収)の推移 一般会計歳出に占める税収分は半分以下が見つかりました。
ここにあった最新の数字は2011年で、2011年の日本の一般会計税収は42.8兆円でした。毎年極端に変わる数字ではないので、たぶん今もそう大きくは変わらないはずです。で、「今の額で約1000兆円」なわけですから、1000兆円を42.8兆円で割ってみるとおよそ23という結果に。つまり、およそ23年分の税金を数年で取られたという感覚です。
●今ではあり得ない…と思いきや安倍政権下の財務省でも検討
23年分の税金を数年で取られれしまう…というのは、改めて「戦争はダメだよね」って感じられる話なのですが、同時に今の政府が検討しているということにも恐怖せねばならないかもしれません。ここまでの話は今だとあり得ない話…とお思いになるかもしれませんけど、恐ろしいことに財務省が最近検討していたとのこと。2015年9月というマジで最近の話です。ちょっと信じられませんね。
<
2015年9月に財務省の財政制度等審議会において「戦後の我が国財政の変遷と今後の課題」と題した資料が出された。そこでは、太平洋戦争終戦直後に断行された
「預金封鎖」「通貨切り替え」「財産税」といった暴力的な財政再建策についての検討が行われたというのだ>
●あまりにも無謀すぎる…国家予算280年分使った太平洋戦争
2017/08/16:
日本が太平洋戦争に総額いくらを費やしたか、知っていますか(加谷 珪一) | 現代ビジネス | 講談社(2017.8.16)という記事は、戦後徴収された金額ではなく、戦時に使われた予算の方から計算していました。ただし、「実は、太平洋戦争における戦費の実態はよく分かっていない」といいます。理由は以下の二つです。
(1)軍部が暴走し、東南アジアの占領地域において軍票(手形の一種)や独自の現地通貨を乱発し、この財源をもとに資金を現地調達したため、その分の金額がはっきりしないため。
(2)太平洋戦争が日本経済の基礎体力を完全にオーバーしていたせいで、激しい財政インフレが発生したため。
インフレでわかりづらくなってしまったものの、とりあえず、日中戦争を含む太平洋戦争における名目上の戦費総額(一般会計と特別会計)は約7600億円。これは日中戦争開戦時のGDP(厳密にはGNP)が228億円なので、戦費総額のGDP比率を計算すると何と33倍にもなります。
当然GDP全部を税収にできるわけがないので、国家予算(日中戦争開戦当時の一般会計)に対する比率で見た方が良いのですが、こちらだとなんと280倍というアホみたいな数字になります。名目上ではあるものの、どれだけハチャメチャなことをしたのかというのはわかりやすい数字ですね。
●日本は東南アジアの占領地域の経済も破壊していた?
なお、これは当然まともなことをやっていて、用意できるお金ではありません。税金を使って調達することは不可能だったので、費用のほとんどは日銀による国債の直接引き受けによって賄われました。今やっている量的緩和策と同じやり方です。当時はこれがインフレの要因になりました。
戦争中は価格統制が敷かれていたので、それでもインフではかなり抑えていたところがあったそうです。価格を決めて無理やり押さえつけている感じですね。ところが、こうしたなりふり構わない反則技をやっても、インフレは抑えられず、物価水準はどんどん上昇。さらに統制が終わった戦後に準ハイパーインフレとして爆発することになりました。
また、前述の東南アジアの占領地域における現地通貨や軍票乱発では、日本国内をはるかに超えるインフレが発生し、各地域の経済は破壊されたそうです。海外にも迷惑ばかりかけていますね。ただし、こちらはさらに研究が進んでいないようで、よくわかっていないとのこと。より研究が進むことを期待したいです。
●他国との比較でもわかる…経済的に見ても合理性がなかった太平洋戦争
加谷珪一さんは戦争費用について、インフレ分を仮定したもので、簡単に試算していました。それによると、GDPとの比率は8.8倍、国家予算との比率は74倍という数字であり、無謀であることに変わりありません。この戦争費用の馬鹿らしさは日本が行った過去の戦争や、海外の戦争の戦費総額と比較してもわかります。
日本・日清戦争 GDP比 0.17倍
日本・日露戦争 GDP比 0.6倍
アメリカ・第2次世界大戦 GDP比 3.2倍
イギリス・第1次世界大戦 GDP比 3.8倍
日本・太平洋戦争 GDP比 8.8倍 経済的にも国民を苦しめたこのような戦争を、未だに正当化する人が多いことは、残念でなりません。
●戦争は統計不正確のせい、祖父・吉田茂氏に麻生太郎財務大臣学ぶ
2019/03/31:立憲民主党の長妻昭議員がに麻生太郎財務自身の著書である「麻生太郎の原点 祖父・吉田茂の流儀」の記述について触れました。以下のような内容だったそうです。
<戦後の連合国軍総司令部(GHQ)による占領時代に、マッカーサー最高司令官から「日本の統計はいいかげんで困る」と苦言を呈された際、当時の吉田首相が「当然でしょう。もし日本の統計が正確だったら、むちゃな戦争などいたしません。また統計通りだったら日本の勝ち戦だったはずです」と切り返したという>
長妻議員は「戦前、戦中は統計がいいかげんで、権力者の意のままに使われた。非常に示唆に富む話だ」と指摘。麻生大臣は、長妻議員に「事実か」と問われ「小学生ぐらいの時に何回か聞かされた。おおむねそういうことだ」と答えたそうです。
(
東京新聞:吉田元首相「統計正確なら戦争なかった」 幼い麻生氏に言い聞かせ:政治(TOKYO Web) 2019年2月19日より)
●統計不正のなぜ?統計の大切さがわかっていたなら…
ただ、統計の大切さがわかっていたなら、麻生太郎財務大臣を含めて、安倍政権で統計不正に対する消極的な態度の説明ができません。全く学んでないように見えます。また、麻生太郎さんはなんと自ら圧力をかけるようなことすら言っていました。不正の解明や是正に消極的なだけでなく、むしろ積極的に統計を不正確にしているということです。
圧力をかけるようなことというのは、諮問会議における麻生太郎財務相の発言のこと。調査対象の入れ替え時に数値の変動があることを問題視し「統計委で具体的な改善策を早急に検討してほしい」と要求していたことが判明しています。政府による統計不正を引き起こした圧力の一つとなったと考えられます。
さらに、統計ではないものの、
アベノミクスの嘘、麻生財務相が半ば認める 統計不正とも関係かで書いたように、積極的に虚偽の政府発表をしていることを半ば自供していました。総雇用者所得が増えている理由について説明していない要因があるのではと指摘されて、麻生太郎財務相は「その通り」と認めたのですが、それだけじゃなかったんですよ。
麻生財務相は「表現する時はなるべくいいことを言わないと支持率が上がりませんので、私どもとしては努力していろいろいいことを探して申し上げている」と言っていたのです。わざわざ努力しないと見つからないほど良いところがないのに、そのわずかな良いところだけアピールして、国民を騙してきたわけです。
●我が国の統計制度はそもそも戦争の反省から生まれたもの
今回の話は、内容的に前半の<国家予算280年分使った太平洋戦争 預金封鎖・財産税で戦後も23年分の税金>とも関連する話。また、やはり関連しそうな
経済統計学会が統計不正に声明 | 長周新聞という記事も発見。経済統計学会が、厚生労働省の統計不正を批判する声明文を、総務省統計委員会の西村清彦委員長に提出したというニュースなのですけど、現在の統計制度が戦争の反省から生まれたものだと指摘されているのです。概ね以下のような内容でした。
・このたびの不正について、第二次世界大戦の深刻な反省から戦後うち立てられた「いかなる権力からも独立し真実性を最優先すべきである」という公的統計の原則を覆すものであると批判したうえで、国の存亡をかけて公的統計の原則をうち立てるよう求めている。
・戦時期に公的統計がその機能を果たしえなかったことがわが国を無謀な戦争へと駆り立てたことへの痛切な反省から、統計法(昭和22年)は、「統計の真実性」の確保を最優先の目的として規定された。
・今回の統計不正は、統計の真実性の確保という統計再建にあたって掲げた初期の目的を達成すべく設計された法制度の仕組みそれ自体の存立基盤を覆すものであり、わが国の公的統計ひいては日本という国のあり方そのものを根底から揺るがしかねない問題である。
・対応を誤ればわが国の公的統計に将来はない。それは同時に、日本の統計に対する国際社会からの信用の喪失をも意味する。
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