ジカ熱やデング熱など悪さをする蚊。だったら絶滅させりゃいいじゃない!と遺伝子操作した蚊を自然にばら撒くプロジェクトがあるそうです。ただ、生態系を破壊して問題が起きるのでは?と疑問に思いましたし、実際、悪い影響があるのでは?と言っている人もいました。 (2016/11/6)
2016/11/6:
●ブラジルで遺伝子操作蚊を用いた蚊根絶プロジェクト
●蚊の撲滅はいいけど、生態系破壊で人類に影響は?
●蚊を絶滅させたら農作物にも影響?
2017/09/04:
●グーグル系も蚊撲滅を計画 生態系に影響ない理由は?
2018/12/01:
●すでに95%の蚊を減らしてしまったグーグル系企業
【クイズ】GMO(Genetically modified organism)の意味として正しいものはどれでしょう?
(1)遺伝子組換え作物
(2)遺伝子組換え生物
(3)遺伝子組換え動物
●ブラジルで遺伝子操作蚊を用いた蚊根絶プロジェクト
2016/11/6:遺伝子操作蚊を用いた蚊根絶プロジェクトがブラジルで行われるそうです。というか、既に小規模なものは実施済みとのこと。
蚊の根絶にむけて、遺伝子操作された蚊の放出が目前|ギズモード・ジャパン 2016.11.04 22:05
遺伝子操作したオスの蚊を世に放ち、野性の蚊と交尾させることで子孫を残せないようにするというプロジェクトが、もう最終段階にまできています。
この特殊な蚊を育成しているのはOxitecという会社。2011年から2014年の間に、すでに5回にわたるフィールド実験が行なわれており、その結果、ネッタイシマ蚊の数は90%もの減少をみせましました。(中略)が、まだ、ブラジルの保健機関からの承認がおりていません。(中略)
ジカ熱やデング熱が深刻な問題であるブラジルでは、病原体を運ぶものを絶つというのが画期的な計画であるのは確かな一方、生態系をいじることで長期的に見てどのような副作用、ネガティブな作用がうまれるかまでは、まだわかっていません。Oxitecの研究者は「病原菌を運ぶ蚊を排除するだけ」と非常に前向きですが、さて、人類の未来はいかに。
(そうこ)
●蚊の撲滅はいいけど、生態系破壊で人類に影響は?
上記では「生態系の破壊」という話が出ていますが、ネットの人たちはこういう話は問題視しません。興味なし!です。
ただ、生態系のバランスが崩れて結局人間が被害を受けるということは、今までも繰り返してやってきました。ジョークなんでしょうが、「人類滅亡」なんてことを言っている人もいて、こちらは気になるところなのでしょう。
私も生態系への影響がすこく気になったので検索。以下の記事では、まず蚊の存在の重要性が語られて、その影響について懸念されています。
もしもこの世から「蚊」がいなくなったら? - GIGAZINE 2014年10月01日 23時04分00秒
Ecology: A world without mosquitoes : Nature News
http://www.nature.com/news/2010/100721/full/466432a.html
全世界では毎年5億人ともみられる人がマラリアに感染し、100万人以上が命を落としています。マラリアの主な感染源は、病原体を媒介する「蚊」であることが知られており、さらに蚊は黄熱病やデング熱、日本脳炎、西ナイル熱といった病気をも媒介しています。(中略)
蚊はほぼ全ての大陸に生息し、数多くの生態系の中で重要な機能を果たしてきました。アメリカ・ウォータリード陸軍研究所のJittawadee Murphy氏は「蚊は1億年以上も地球に生息しており、非常に多くの種とともに進化を遂げてきた」と語り、生態系の一端を担う蚊が一掃されてしまうと、蚊を食糧とする生き物の生態が脅かされ、また一方では花粉を媒介してもらっていた植物が絶滅してしまうことも考え得ることといえます。
ところが、意外なことに、多くの研究者は問題なしとしているそうな。本当なんですかね?
しかし、科学者の多くはこの世から蚊がいなくなることが環境に与える影響について「一時的な影響は受けるもののすぐに他の生物によって埋め合わされ、しかもよい結果を招くことになるだろう」と考えています。その影響については、「駆除することによる不都合点が見つからない」とするイリノイ州立大学のSteven Juliano氏や、「より安全な世界になり、人類にとって顕著なものとなるだろう」とするブラジル・サンタカタリーナ連邦大学のCarlos Brisola Marcondes氏のような意見が存在しています。
一応、この記事では、他のネガティブな話も載せてはいました。とはいえ、当初想像したようなものではありませんね。
一方で、蚊の駆除は「一時的な安心感を得るにとどまる」とする意見が挙がっているのも事実。フロリダ州のスクラップ場で採取されたネッタイシマカを調査した研究チームによると、ネッタイシマカの一部の個体は別のヒトスジシマカとの混血が進んでいる上に、次第にヒトスジシマカによって駆逐されつつあるという事がわかっており、一部の種を駆除してもすぐに別の種によって置き換えられてしまうという実態を明らかにしています。
また、人々が健康に暮らせることによるメリットよりも、人口増加によるコスト増加による弊害がそれを上回るという見解が存在していることも事実です。
●蚊を絶滅させたら農作物にも影響?
もう一つ検索した中で見つけた以下の記事は、ネガティブなものでした。ただ、日本だけを想定したような話です。
デング熱猛威で気になる 「蚊」、絶滅したら困ることって? - Excite Bit コネタ(1/4)(スズキナオ)
2014年6月にロンドン大学の生物学研究チームが発表した論文では、蚊の遺伝子を組み換え、メスの発生率を低下させることで、ある種の蚊を全滅させることが可能だと証明されたという。
こちらの研究、世界中で毎年60万人もの死者が出ている「マラリア」に対する対策としてのものなのだが、反論の声も多く上がっている。そんなことをすれば生態系のバランスが崩れ、新たな危機が生まれるというのだ。確かに「全滅」というのはなんだか怖い気がする。人間の都合でそんなことをしていいものだろうか、と思う。大きなしっぺ返しが待っているような……。(中略)
福島県須賀川市にある、昆虫の生態を楽しく学ぶことができる自然と科学のミュージアム「ムシテックワールド」の紹介により、農学博士であり「福島虫の会」に所属されている専門家・三田村敏正さんにお話を伺うことができた。
――すばり、蚊が絶滅したらどんなことが起きるのでしょうか?
三田村さん「蚊の仲間は、生態系の比較的下位に属しますが、他の生き物の重要なエサとなっています。蚊の幼虫、ボウフラの時はヤゴやゲンゴロウなどの水生昆虫、フナなどの魚類のエサとして重要です。成虫では、トンボやクモなどのエサとなっている他、コウモリも極めて多数の蚊をエサとすることで知られています。したがって蚊がいなくなることでこれらをエサとする生き物たちがいなくなったり、数が減ったりすることが予想されます」
当然だが、やはり「蚊」も自然界の大きなサイクルの一部なのである。それがなくなってしまえば、次々に影響が広がっていくことになる。
三田村さん「これらの生き物たちは水田や畑において害虫たちを食べてくれる有益な生き物たちでもあることから、これらの生き物がいなくなれば、害虫がどんどん増えて農作物に大きな影響を与えると思われます。さらにはその上位に位置する生き物にも影響を及ぼし、生態系が崩れて我々にも影響を及ぼすことになるかもしれません」
農作物に影響って話になっていますが、そうなると害虫に強い作物を!ってなわけで、今度は遺伝子組み換え作物の出番かもしれません。
【クイズ】GMO(Genetically modified organism)の意味として正しいものはどれでしょう?
(1)遺伝子組換え作物
(2)遺伝子組換え生物
(3)遺伝子組換え動物
【答え】(2)遺伝子組換え生物 (遺伝子組換え作物をGMOとしていることがありますが、本来は作物に限りません)
でも、たぶん遺伝子組換え生物の方が拒否反応強い人が多いでしょうね。
●グーグル系も蚊撲滅を計画 生態系に影響ない理由は?
2017/09/04:NHKやAFP通信などが2017年8月30日に伝えたところによると、ブラジル・リオデジャネイロの研究グループが、「ボルバキア」という細菌に感染させたネッタイシマカを実際に大量に放ったそうです。感染した蚊と交配したメスの蚊は、卵を産んでもふ化しないという効果があり、こうした蚊が増えることで感染リスクを減らそうという狙いです。
一方、なんとあのグーグルも2017年7月から、米カリフォルニア州フレズノの市街地で感染症対策として始めているとのこと。今冬までに2000万匹の蚊が放たれる予定だとしていました。
(
ジカ熱やデング熱防ぐ救世主は「蚊」 ある細菌に感染させると卵がふ化しない J-CAST ニュース | ライフ・美容 | 2017年09月03日より)
グーグルについて検索してみると、厳密にはGoogleの親会社Alphabet傘下のライフサイエンス企業Verilyのプロジェクトでした。
(
Google子会社、細菌に感染した蚊2000万匹を市街地で放つ なぜ? 2017年07月17日 00時28分 JST ハフィントンポストより)
こちらでは、蚊の人口を減らすことで予期せざる弊害はないと断言していました。その理由は、この種類の蚊は、2013年に初めてその地域に入ってきたものであり、既存生態系の一部ではないとのこと。外来種を撲滅させるというのといっしょだってことですね。それならよくある話です。
この説明は納得行くものでした。既に過去にいた一部の種が絶滅してしまっていた場合など、予期せぬ弊害が起きることはゼロではなさそうですけど、なるほど!という説明ではありました。
●すでに95%の蚊を減らしてしまったグーグル系企業
2018/12/01:前回の追記で書いた「既に過去にいた一部の種が絶滅してしまっていた場合など、予期せぬ弊害が起きることはゼロではなさそう」ですが、実際に問題あることがあるみたいです。
外来種の駆除で在来種と生態系を守るどころかさらに問題に… 池の水ぜんぶ抜くでは魚「大量死」で、関連する話が出てきました。
ただ、今回の追記の目的は、グーグル系の蚊撲滅プロジェクトに関する別記事の紹介ですj。進捗状況が載っている記事がありました。
カリフォルニアで行われているフィールドテストでは、所定の位置でアルゴリズムにより自動で計算された「散布に適した数の熱帯シマカ」が放出されています。Alphabet傘下のVerily Life Sciencesは既に、卵が孵化しなくなるボルバキアに感染したオスの熱帯シマカをブレズノの町中に2度散布。過去6か月で散布した数は1500万匹を超えています。
その結果、2017年にはメスの蚊の数が3分の2程度に減少しており、さらに2018年には蚊全体の数が95%も減少。Verily Life Sciencesはアメリカだけでなくオーストラリアでも同様の実験を行っており、ここでも蚊の数を80%減少させることに成功していました。予期せぬ影響が出ていないか、続報を待ちたいところです。
なお、Verily Life Sciencesの蚊を繁殖するための飼育システムは、すでにかなりの部分が自動化。なんでも自動化しちゃうってのが、実にグーグルらしいですね。
まず、ロボットは卵を蚊が大人になるまで育てる「水と空気で満たされた容器」に詰め込みます。容器の中では機械が自動で蚊にエサを与え、温度を適温に調整。さらに、他のロボットが光学的な独自技術を使用して蚊の性別を判断し、それらを分類。これらの蚊には、特定のGPS座標まで追跡することが可能になるデジタル識別子も与えられているそうです。
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