(読まれいていない子宮頸がんワクチン問題の話を少しまとめています)
【クイズ】東北大の井上明久前総長は、研究不正疑惑を指摘した同大名誉教授らに対し、名誉毀損だとして損害賠償を求めて訴訟を起こしました。この仙台地裁の判決は?
(1)研究不正疑惑の指摘は科学の世界では許容されたものであり、名誉毀損に当たらないとした。
(2)名誉教授らに計110万円の支払いを命じた。
(3)名誉毀損には当たるが、指摘の公益性・真実性を認めて、損害賠償は認めなかった。
●子宮頸がんワクチン副作用捏造問題、信州大学が不正なしと判断
2016/11/7:
池田修一教授の子宮頸がんワクチン研究で捏造?信州大が不正疑惑で調査委設置の件。ネットニュースにはなっていないものの、信州大学が不正なしと判断していたんだそうな。
子宮頸がんワクチン捏造疑義で信州大学が不正なしと判断 - 世界変動展望(2016-11-03 16:35:00)では、3日の信濃毎日新聞で、子宮頸がんワクチン捏造疑義の調査に関して信州大学が不正はないとする調査結果を池田修一教授に伝えていたという報道があったとのこと。ただ、調査委員に利益相反がある人がいるのでは?とも言われています。
●池田修一、子宮頸がんワクチン副作用捏造は否定せず名誉毀損で訴訟
この話を読んでいて初めて知ったのですが、池田修一教授は夏に提訴していたそうです。
子宮頸がんワクチン研究者「実験捏造」と書かれ、ウェッジを提訴 - 弁護士ドットコムという記事が出ています。
<子宮頸がんワクチンの副作用を研究している信州大医学部の池田修一教授は8月17日、研究結果を捏造したと書かれ、名誉を毀損されたとして、出版社ウェッジと当時の編集長、記事を執筆したジャーナリストを相手取り、東京地裁に提訴した。約1100万円の損害賠償や謝罪広告の掲載などを求めている>
ただ、妙なのが「捏造などない」と否定するのではなく、「研究したのは自分ではない」という主張であることです。捏造そのものについては、否定も肯定もしていませんでした。
<記事では、池田教授が今年3月に発表した副作用の原因を探る研究で、池田教授が自説に都合が良いデータのみを選んだと報じた。(中略)これに対し、池田教授側は、3月の発表は研究班の代表として、ほかの所属メンバーの研究成果を公表しただけだと主張。プロジェクトの研究者はそれぞれ独立しており、自身は問題となった研究への関与や指示をしたことはなかったとしている>
●なぜ学会で議論せず、裁判に訴えたのか?裁判沙汰にするのは大抵…
また、そもそも学術研究の議論で解決する問題を、裁判所に持ち込むというのは間違っています。残念ながら過去にも同様の例があるのですけど、こういう手段に訴える場合は大抵、研究不正が濃厚な場合です。記事を執筆した医師でジャーナリストの村中璃子さんは、フェイスブック上で次のようにコメントしていたといいます。
「周到な取材と科学的検証に基づいて執筆した、子宮頸がんワクチンのマウス実験に関する科学不正を指摘した記事に対し、医学部長で副学長という立場にもあり、厚労省の指名を受け、税金を使って研究を行う大先輩の医師が、科学の問題を科学の場で反証することをせず、法律の問題にすり替えてきたことを極めて遺憾に思います」
別記事
訴訟ではなく学会で議論を 頸がんワクチン記事 月刊誌提訴問題 | NEXT MEDIA "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス](上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長):2016/9/6)でも、<医学上の批判に対しては、訴訟でなく、医学的に冷静に反論すべきだ。いまからでも遅くない。学会で議論されてはいかがだろう>と言われていました。
●池田教授の主張は科学の世界では通用しないが…裁判だと違う?
この記事では、法的事実認定は、時に科学的な事実認定と異なるため、どんな判決が出るか予想できないとしています。一方で、「医師・科学者の立場から言うと、池田教授の言い分は通用しない」として、あと、ここでは池田教授の主張は、科学の世界では通用しないよって話もありました。
<科学的には、この問題の解決は至極シンプルだ。池田教授が塩沢丹里・信州大学産科婦人科教授に実験ノートの開示を求めればいい。14年4月に不正の疑いを指摘された山中伸弥教授がやったことだ。彼は記者会見を開き、大部分のノートを保管しており、いつでも開示できることを表明した。池田教授は民事訴訟をする前に、やるべき事がある>
…といった感じであり、冒頭のように信州大学は不正なしと判断したらしいものの、極めて不自然な動きになっています。で、途中で書いた「こういう手段に訴える場合は大抵、研究不正が濃厚な場合です」の例を一つ。クイズにした
研究不正告発に逆風 井上明久東北大前総長論文で告発側に賠償命令の件です。
【クイズ】東北大の井上明久前総長は、研究不正疑惑を指摘した同大名誉教授らに対し、名誉毀損だとして損害賠償を求めて訴訟を起こしました。この仙台地裁の判決は?
(1)研究不正疑惑の指摘は科学の世界では許容されたものであり、名誉毀損に当たらないとした。
(2)名誉教授らに計110万円の支払いを命じた。
(3)名誉毀損には当たるが、指摘の公益性・真実性を認めて、損害賠償は認めなかった。
【答え】(2)名誉教授らに計110万円の支払いを命じた。
これは名誉毀損が認められており、科学の常識が裁判では通用しなかったという話。"法的事実認定は、時に科学的な事実認定と異なるから"と引用部であったように、今回の件も日本の研究不正の隠蔽推進に繋がってしまうかもしれません。(2020/10/26追記:相当時間がかかりましたが、井上明久前総長の論文は後に不適切として撤回になりました)
●信州大調査委員会、池田修一教授の不正・捏造は否定
2016/11/16:上記でメディアの報道がないと書いたのですが、やっと報道がありました。ただ、"不正の疑いを月刊誌で指摘したジャーナリストの村中璃子(りこ)さんは「『不正なし』との結果を聞き、非常に驚いています。十分研究不正にあたる行為です」とするコメントを出し"ています。一般論として、こうした不正に関する調査は甘くなりがちですからね。
信州大「不正認められず」 子宮頸がんワクチン研究巡り:朝日新聞デジタル 2016年11月15日22時22分
信州大は15日、不正を疑う情報が寄せられていた、子宮頸(けい)がんワクチンの影響などに関する厚生労働省研究班の研究内容について、「不正は認められなかった」とする調査結果を発表した。研究班は信州大医学部の池田修一教授(脳神経内科)が代表を務める。不正を疑う通報があり、信州大は外部の有識者を招いた調査委員会を9月に設置し、捏造(ねつぞう)や改ざんの有無を調べていた。
●子宮頸がんワクチン異常の実験は非科学的、信州大が指摘
実を言うと、大学側の主張が中心の記事ですら、研究のまずさがわかる部分があります。信州大は確かに池田修一教授の不正・捏造は否定しているんですけど、一方で断定的な表現をしたことについては問題だとしているのです。
"予備的な段階の実験結果にもかかわらず、断定的な表現をするなどしたと認定"(朝日新聞)
"信州大は「予備的な段階の実験結果を、確定的な結論を得たかのような印象を与える発表をした」として、浜田州博学長が同日、池田教授ら研究班のメンバー3人を口頭で厳重注意した"(
研究不正認められず=信州大教授、子宮頸がんワクチン:時事ドットコム(2016/11/15-18:56))
より決定的にまずいだろうと思われるのが、そもそも科学的な実験ではないという指摘。<調査委は、訂正を公表するとともに、科学的証明ができる方法で検証実験をするよう求めた(朝日新聞)>とあります。以下に"科学的に解明されたかのような印象を与えた"とあるように、非科学的な実験で科学的根拠があるかのように主張をするのは十二分に大問題だと思うのですが…。
<データは予備段階の実験で得たものだったのに発表の際、断定的な表現を使ったためワクチンが原因で異常が起きたことが科学的に解明されたかのような印象を与えたとし、発表内容の修正と再実験を求めた>(
信州大「不正認められず」 子宮頸がんワクチン研究 :日本経済新聞 2016/11/16 0:25)
●疑われているのは三菱自動車の燃費不正と同じケース
今回の調査では、研究で使われた数字が全くの捏造ではなかったことを、ノートなどと確認できたのだと予想されます。ところが、これだけでは不正なしとは言えません。そもそも不正の指摘は、自説に都合の良いデータを抜き出したというものであり、これも立派な不正です。この種の不正は、研究以外ですと三菱自動車の燃費不正でも使われていたものでした。
燃費データ不正の行方|NHK NEWS WEB
三菱自 正しい説明にも測定方法改めず 9月15日
三菱自動車は、ことし4月に燃費の不正問題が発覚したあとも、都合のよいデータだけを抜き出す不正な方法で車の燃費を測定し、販売を続けていました。
これについて会社側は「不正な方法だとは認識していなかった」と説明していました。
こうやって三菱自動車の例を出すと、おそらく多くの方がこれでも間違いなく不正だと納得するでしょう。数値の捏造だけが不正ではないのです。
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