図書館と印税の話をまとめ。<税金が高い北欧だからできること?否定的意見多いがこれも怪しい>、<今の図書館は泥棒だ!当初の目的から逸脱している可能性>、<図書館で借りて印税発生はフィンランドだけじゃない 公共貸与権がある国は多い>、<なぜか日本でも映画なら図書館が支払う補償金があった!>などをまとめています。
2023/08/24:
一部見直し
【クイズ】1980年以降の公共図書館の貸出冊数は右肩上がりです。では、書籍の売上数の推移はどうなっているでしょう?
(1)売上は公共図書館の貸出冊数と逆に右肩下がり。
(2)売上は1980年から20年ほどは横ばいだったが、ここ10年ほどは低下している。
(3)売上も右肩上がりだったが、1995年頃がピークでその後は下がり続け、山型のグラフになっている。
●著者に優しい国?フィンランドの図書館では本を借りても印税
2016/11/11:
フィンランドの図書館では本を借りると作家に印税が入るし作家活動には補助金も出る! - Togetterまとめが話題になっていました。
●税金が高い北欧だからできること?否定的意見多いがこれも怪しい
ただ、これの
はてなブックマークの人気コメントでは、否定的なものがツートップ。それ以外にも人気コメントで否定的なものがあった他、別の観点で見たおもしろい話もあったので、続けて4つ紹介します。
“はいはいそういう国は税金も高いのよね定期。はいはいそういう国は、実態はかなり国力が低下しているのよね定期。/そろそろ「隣の家の庭は」的な北欧の国ユートピア神話論は止めようよ。”(kohgethu 2016/09/24)
“高福祉と高負担はセットなので、北欧のような制度を受け入れられる地ならしが無いと。大使館のTwitterアカウントがこういう自国制度のPRしているのは良いよね。”(raimon49 2016/09/24)
“中間税60%、消費税25%の重税フィンランドは大国日本と異なりまともに書籍の市場が成り立たず、作家は補助金で餌付けされた国家当局の犬という文化的に貧しい国ということか。”(nekora 2016/09/24)
“[北欧諸国は、国民の英語識字率が高く、国が自国の作家を保護しないと英語文化に圧倒されてしまうという背景があると」”(kaos2009 2016/09/24)
後述するようにこの説はそもそも怪しいところがあるのですけど、最後のものなんかは、異なる視点のものであり、前向きで悪くない意見だとは思います。一方、最初のものなんかは、かなり感情的でしたよね。そういう指摘コメントも複数ありました。
“最近北欧の行政の良さに対して頭から否定で入る人増えたけど発端は何なんだろう。手放しで褒めてた頃と同じぐらい議論が成り立たなくなってきてる。”(Louis 2016/09/24)
“フィンランド程度かそれ以下の規模の地方自治体使って経済実験してみればいいと思う。そこを特区指定し、各種税と社会保障やサービスをフィンランド並にする。頭ごなしに否定するのも盲信して肯定するのもおかしい。”(kasugano 2016/09/24)
●今の図書館は泥棒だ!当初の目的から逸脱している可能性
私はそもそも現在の図書館の制度が当初の目的から逸脱しているのでは?という問題意識が以前からあったので、印税発生というやり方はおもしろいと思いました。
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本来の役割を忘れた図書館は泥棒と同じ 電子書籍の敵は図書館だ ■
本が売れない原因は図書館のせい?出版不況で新潮社らが口撃、「貸し出しの1年猶予」を求める ただし、出版不況は図書館のせいという説には賛同しているわけではありません。そもそも公共図書館の貸出冊数と売上は全然関係していなかったため。これが冒頭のクイズにしていた話でした。出版不況は図書館のせいという出版業界の主張は間違っている可能性が高いと思われます。
【クイズ】1980年以降の公共図書館の貸出冊数は右肩上がりです。では、書籍の売上数の推移はどうなっているでしょう?
(1)売上は公共図書館の貸出冊数と逆に右肩下がり。
(2)売上は1980年から20年ほどは横ばいだったが、ここ10年ほどは低下している。
(3)売上も右肩上がりだったが、1995年頃がピークでその後は下がり続け、山型のグラフになっている。
【答え】(3)売上も右肩上がりだったが、1995年頃がピークでその後は下がり続け、山型のグラフになっている。 (関連:
本が売れない原因は図書館のせい?出版不況で新潮社らが口撃、「貸し出しの1年猶予」を求める)
ただ、図書館のせいで出版不況うんぬんとは全然別にして、印税のようなものを支払う制度については、検討する価値があると思います。今回も、“補助金はアレだが、図書館は商業出版業にただ乗りしすぎてるから、使用料の支払いは妥当では。”(Yagokoro 2016/09/24)というコメントが出ていました。
●図書館で借りて印税発生はフィンランドだけじゃない 公共貸与権がある国は多い
あと、先ほど出た北欧だからできること、独自の言語による文化が衰退しているからやっていることという説は大嘘じゃないかと思います。
"図書館における資料の貸し出しに対する補償を著者に対して実施する制度"における権利を、公共貸与権、公貸権、公共貸出権と呼びますが、北欧以外の地域にも多数存在しているためです。英語圏でもガンガンあるんですよ。こうなると、高い税金や独自の言語では説明できません。
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公共貸与権 - Wikipedia<1946年、デンマークが世界で初めて導入した。1979年にはイギリスで20年間にわたる議論の末、法律が制定・公布された。以後、カナダ・フィンランド・スウェーデン・ノルウェー・ドイツ・オランダ・ベルギー・オーストリア・イスラエル・豪州・ニュージーランド等で導入されており、欧州委員会(EC)では1992年に全加盟国での導入を義務付ける内容の「貸与権及び貸出権並びに知的所有権分野における著作権に関係する権利に関する1992年11月19日の欧州理事会指令」が成立。イタリア図書館協会は導入に反対を表明しているが、こうした動きに対しECがイタリアやルクセンブルク政府を指令違反により欧州裁判所へ提訴する事態となっている>
●なぜか日本でも映画なら図書館が支払う補償金があった!
また、日本でも一部あります。なぜか出版物はないものの、映画だけあるんだそうな。「補償金は現実的ではない」という反論は、上記の<図書館で借りて印税発生はフィンランドだけじゃない 公共貸与権がある国は多い>の時点で、ほぼ説得力をなくしていました。日本でも映画で存在する制度となると、説得力がなくなるでしょう。
<日本においては、著作権法第38条第5項において映画の著作物に限り図書館等で貸与に供する場合は著作権者に対して補償金を支払わなければならない旨が規定されており、限定的範囲で公貸権が導入されている。出版物の著作者に対し図書館が補償金を支払う制度は存在しない>
前述の通り、これで「非現実的で実現不可能」という主張はもうほぼ駄目な感じです。というか、書籍には補償金がないのに映画だけ補償金があるとなると、なぜそんなちぐはぐなことをしているの?って話にもなってきますね。ここらへんは政治的な理由でもあるんでしょうか…?
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