【クイズ】イスラエルの保育園で「お迎え」に遅刻する親に対して罰金(米ドルで3ドルほど)を課することにしたら、どうなった?
(1)遅刻する親の数は顕著に増えた。
(2)遅刻する親の数は顕著に減った。
(3)遅刻する親の数はほとんど変わらなかった。
●成功報酬・インセンティブより未達成ペナルティ・罰則が効果的…は本当?
2015/4/29:「インセンティブは、成功報酬よりも先渡しで未達成だったら取り消しの方が成果が上がるって研究がある」と聞いて、興味を感じて検索しました。ところが、さっぱりそのような研究は出てきません。「研究がある」という話はあるものの、実際に誰がどういう実験をしたと明記されている、信頼できるようなものがないのです。
「インセンティブ」と「ペナルティ」とどっちが有効だと考えますか?:人事部長からの質問 - 日本エス・エイチ・エルは、やっと見つけたそれっぽい話だったものの、社内実験に留まっています。実際に社内で実験してみるというのは科学的なアプローチで素晴らしいですが、個別事例というのは科学的な根拠として一般化できるレベルではありません。
<「インセンティブ」と「ペナルティ」とどっちが有効だと考えますか?
当社内でのある部署での実験結果があります。一定の成果をあげたら報奨金**円を貰える、という制度のもとでの部署全体の達成と、ある成果に届かなかったらペナルティとして**を課す、という制度のもとでの達成を比較したのです。後者の成果が圧倒的に前者を凌いだのです。このことは、社会心理学でいう「リスク回避(ペナルティを避ける)行動がチャレンジング(何かに挑戦する)行動に優先する」という理論と一致します>
●体罰の有効性も研究で裏付けがある?軍隊でも体罰を多用している!
ここでは、<強くなりたい軍隊、営業部、運動部が「体罰」を多用することは、ある意味で理にかなっている>とも書かれていました。ただ、ここを読んで、逆に引っかかりました。最初の時点では思いつかなかったものの、「体罰」という言い方なら、いろいろ類似する研究が思いつきます。
「体罰」に関する研究でしたら、かなりされていますし、「叱る」に関する研究もいくつか読みました。そして、こうしたものが効果的という理解は、多くの過去の研究結果と異なる理解だと思われます。この手の話はうちでは何度も取り上げているんですよ。
例えば、
部下を叱れないのはダメ上司でなく、叱る方がダメ 研究で判明のより良い方法とは?がそういった話。また、
子供や部下を叱る・怒る VS 褒める 効果を比べた研究論文はある?もそういった。うーん、何だか怪しくなってきましたね…。
●ペナルティがたとえ有効でも違法行為の可能性 実施はかなり難しい
また方向性が全く違う別の問題として、ペナルティが仮に有効だったとしても、法的にかなり実施が難しそうだというものがあります。有効であったとしても使ってはいけない…ってことですね。多くの場合、違法行為になるので、相当頭を使って工夫しないと非合法になるのです。
例えば、
法律違反の危険がある、バイトの「自腹」「罰金」4パターン ~ネット炎上だけでは済まない!~ | 専門家コラム | アルバイト採用・育成に役立つ人材市場レポート「an report」では、「ノルマ未達成によるペナルティ」について次のように説明していました。
そもそも、ノルマを課すこと自体が労働契約とは相いれないもの。ノルマ未達成でペナルティを課すことは労働基準法第16条違反の違法行為です。ペナルティが設定された契約条項は無効となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます(同法第119条第1号)。場合によっては強要罪(刑法第223条)に該当することもあるでしょう。
そもそも、ノルマ未達によるペナルティは企業間の取引ですら認められにくいものです。まして企業と労働者であるアルバイトの間で成立させることはできません。法的には、アルバイトをはじめとする労働者の義務は「労働に従事すること」(民法第623条)。つまり、労働力の提供だけに限定されており、「結果を出すこと」は義務ではないのです。指示通り、怠けずに仕事をしていたとしたら、たとえ販売成績が悪かったとしても、会社はスタッフの責任を問えません。
それはなぜか。クリスマスケーキの件を例にとって分析してみましょう。ケーキが売れるためには「商品力」「価格設定」「広告宣伝」「ブランドイメージ」など、様々な要素が求められます。これらを総合して立てられるのが販売計画であり、スタッフによる勧誘業務はこれらの要素の一つにすぎません。売れ行き不振は全体の販売計画がずさんだったことに起因します。スタッフに責任を押し付けて買い取りをさせてはいけないのです。つまり、販売促進のために「ノルマ」というムチを使うことはできないということです。
●ペナルティでは、その大きさも実は大事…下手したら逆効果にも…
さらに何度も紹介している
成果主義と罰則がうまく行かない理由 行動経済学の実験の意外な結果で出てきた問題が、ペナルティ作戦実施をさらに困難にします。(クイズも使い回しです。すみません)
【クイズ】イスラエルの保育園で「お迎え」に遅刻する親に対して罰金(米ドルで3ドルほど)を課することにしたら、どうなった?
(1)遅刻する親の数は顕著に増えた。
(2)遅刻する親の数は顕著に減った。
(3)遅刻する親の数はほとんど変わらなかった。
【答え】(1)遅刻する親の数は顕著に増えた。
ここに出ていた研究によると、イスラエルの保育園で「お迎え」に遅刻する親に対して罰金を課することにしたら、余計遅刻が増えたという話があります。罰金は、米ドルで3ドルほど、日本円で言うと、300円ほどという少額です。この値段設定だと逆効果になってしまったんですよ。
この研究そのものは罰則が無意味だと結論づけてはいませんでした。罰則の金額が低いと効果的ではないといった見解のようです。ところが、ペナルティの金額が大きくなると、前述の法律違反の可能性がさらに濃厚となってくる…というジレンマが生じます。正直、合法的なペナルティ作戦の実施は、ほぼ不可能だろうと予測します。
ただ、そうじゃなくてもペナルティなのですから、社員にネガティブな感情を抱かせる可能性がありますし、対外的にもあまり胸を張って言えるようなものではないでしょう。実際は、結構、ネットで堂々と書いていますから、良心の呵責はないのかもしれませんが、ネガティブに捉える人もいます。ということで、様々な理由で望ましいとは思えないやり方です。
【本文中でリンクした投稿】
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