プリウスが事故率の多い欠陥車だという話がたびたびネットで盛り上がるようです。トヨタに関しては批判的な投稿ばっかりしていたのですが、今回は珍しく擁護する方向のもの。いくらトヨタが悪い会社であっても、これは違うだろう…という話です。(2016/12/5)
2017/10/20:事故9割減!を謳っていたトヨタの自動ブレーキ搭載プリウスで事故か?
【クイズ】マレーシア航空の行方不明事件、ウクライナでの撃墜、年末のエアアジア・インドネシアのスラバヤ発シンガポール行きQZ8501便の墜落など、大きく報道される事故が多かった2014年。この年の飛行機の事故率の説明として正しいものは?
(1)過去の平均と同程度の事故率
(2)史上最も高い事故率
(3)史上最も低い事故率
●プリウスは事故率が高い危険な車というイメージ
2016/12/5:まず、プリウスは事故率が高い危険な車というイメージが強いという話について説明。例えば、以下のような話がありました。
「高齢者がプリウスで誤発進してしまうのはシフトが原因」は本当か? | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online 2016.11.22
連日のように高齢者ドライバーの事故が報道されていることを受け、ネットのまとめサイトで「高齢ドライバーがプリウスでドライブとバックを間違えるのはシフトパターンが原因ではないか?」という考察が話題になっている。実は1年近く前に上がったものなのだが、「なるほど」と思う人が少なくないらしく、時々思い出したようにSNSで拡散され、そのたびに話題になる。
●またプリウスの事故ニュース…病院に突っ込んだタクシーもプリウス
プリウスのイメージが悪いのは事故のニュースでプリウスが映る回数が多いこと。最近あった病院へ突っ込んだタクシーもプリウスでした。この場合は調査中ですので、実際に車両の問題の可能性がありますけどね。
「車の不調聞いていない」…容疑者の家族 毎日新聞2016年12月4日 01時22分(最終更新 12月4日 02時30分)
容疑者のタクシーはトヨタのハイブリッド車「プリウス」で、同社は2010年2月や13年6月にブレーキに不具合があるとしてリコールを届け出たことがある。松岡容疑者は「ブレーキが利かなかった」と供述しているというが、タクシーは道路運送車両法に基づいて3カ月に1度の点検が義務づけられており、事故現場近くでタクシーを止めていた男性運転手(58)は「ブレーキが利かないとは信じられない」と話した。【佐野格】
●車両保険は高くなっていないという事実
上記の件が実際にトヨタのせいであったとしても、プリウス全体の事故率が高くなければ、プリウスが特別危険だとは言えません。こういった話ではプリウスのシステムがどれだけ悪いかという議論の方が白熱してしまうのですが、そもそも事故率が高くなければ理由をいくら推察しても全く意味がありません。
で、最初のプレジデントオンラインでは、"プリウスが他のクルマに比べて、特別に事故が多いというデータを、少なくとも筆者は見たことがない"としていました。ここだけ読むと、筆者が知らないだけでは?と思うかもしれませんが、ある説を唱える場合、説を唱える人が証拠を提示する必要があります。データ的な証拠を出す必要があるのは、プリウスが危険だと主張する側です。
また、作者はプリウスの事故率が高くないと考えることができそうな傍証は出していました。保険の型式別料率は別に特別高くないとのこと。これは説得力を感じます。保険会社がわざわざ損をするような価格設定にしませんからね。
(余談ですが、、自動車保険は保険商品の中では、非常に計算しやすい安定した商品だと言われています。車種別に見ても、車両台数の多いプリウスは、特に計算の精度が高いでしょう。逆に難しい例がアメリカのハリケーン保険で、何度も保険会社が倒産しています)
保険会社の資料を見ても、プリウスの型式別料率は9段階のうち、車両でランク5、対人ではランク4とごく普通の料率で、特に事故が起きやすいクルマとは考えていないことが分かる。つまりそもそもの前提である「プリウスは高齢者の誤発進事故が多い」という認識そのものが、思い込みである可能性は高い。
●保険料は過去の事故率によって決まる
車両保険についての説明は以下がわかりやすいのですが、これはプリウスの車両保険を「高い」という前提で書いている記事で、他の部分は間違っていそうです。
なぜ、「プリウスの車両保険は高い」のか。事故率が高いって本当? | ZUU online 2016/06/19 Written by ZUU online編集部 稲村優貴子
自動車保険は、車両保険と賠償・搭乗者の保障部分の2つで構成されている。ここでいう車両保険とは、所有者自身のクルマへの保障である。この車両保険は一般車両保険という自損事故や当て逃げも保険対象となるものと、車対車(保険会社によって呼び方は様々)という自損事故や当て逃げは対象外で、交差点など相手がいる事故で自分のクルマを修理する自己負担部分を保障するものがある。
自動車保険の保険料は過去の事故率によって料率が決まる。
●車両料率が高いのはトヨタならセルシオ
なお、プリウスの車両料率については確認のために、もう一つ別のサイト見てみました。
車両料率クラスとは?「型式」ごとのリスクを表示!の作者の保険証券の例を見てみると、車種はプリウス(型式:ZVW30)で「対人4対物4傷害5車両5」となっています。やはり特別高いわけではありません。
また、料率クラス9の例も載っており、スバル インプレッサ・マツダ RX-7・ホンダ NSX・トヨタ セルシオなどが一番車両料率が高いそうです。ただ、これは事故率以外に、盗難リスクが効いている可能性が高いと思われます。
●飛行機事故なども報道によって錯覚しやすい
ああ、そうだ、じゃあ、何でプリウスの事故ニュースが多いの?という話。これは前述のような「プリウスには特有の操作がある」と思うことによるバイアスもあるのでしょうが、単純に車両の台数が多く事故が多いから錯覚しているのだと思われます。(2017/11/09:表現訂正)
また、最後に思い出したのが、
LCCの安全性は低い?飛行機事故が目立った2014年の驚きの事故率の話。最初別の話をクイズにしていたものの、思い出して差し替えました。これも事故報道の多さによって、錯覚してしまという例です。
【クイズ】マレーシア航空の行方不明事件、ウクライナでの撃墜、年末のエアアジア・インドネシアのスラバヤ発シンガポール行きQZ8501便の墜落など、大きく報道される事故が多かった2014年。この年の飛行機の事故率の説明として正しいものは?
(1)過去の平均と同程度の事故率
(2)史上最も高い事故率
(3)史上最も低い事故率
【答え】(3)史上最も低い事故率
それから、
日本の凶悪少年事件・殺人事件は減っている 戦後は現在の8倍もでやったように、殺人事件の多さも報道の印象によって全く逆に誤解されている例の一つです。
こういったものは、きちんとデータで見ないといけません。
●事故9割減!を謳っていたトヨタの自動ブレーキ搭載プリウスで事故か?
2017/10/20: 2017年10月20日、東京都武蔵野市吉祥寺の路上で、乗用車が歩道に突っ込み、2歳の男児を含む80代までの男女7人がけがをしたという事故が起きました。百貨店の地下駐車場から右折して都道に出た直後に、事故を起こしたそうです。
(
車突っ込み7人けが=東京・吉祥寺で、80代男性運転 時事通信 / 2017年10月20日 15時21分より)
この事故で多かった反応の一つが、「またプリウス」というものでしたので、この話に追記しました。前述の通り、プリウスが悪いという証拠は見当たらず、思い込みによる誤解の可能性があります。
あと、多かった反応ではないものの、トヨタ自慢の自動ブレーキが作動しなかったのではないか?という見方がありました。これは新しい反応ですね。公式の発表や報道を待つ必要がありますが、写真を見る限り、トヨタの最新の自動ブレーキを搭載したタイプではないか?とのこと。
TSSPというのは、おそらく「Toyota Safety Sense P」のことでしょう。インテリジェントクリアランスソナーとともに、
「プリウス」の追突事故が半減、「Toyota Safety Sense」の運転支援で - MONOist(モノイスト)[齊藤由希,MONOist 2017年08月29日 06時00分]という記事で出てきます。
この記事によると、トヨタは、アクセルの踏み間違いや踏み過ぎによる衝突被害を軽減する「インテリジェントクリアランスソナー」と歩行者の検知と衝突回避に対応した自動ブレーキ「Toyota Safety Sense P」について調査。ちょうどプリウスのみを調査の対象としていました。
調査の結果、「Toyota Safety Sense P」を搭載する「プリウス」は非搭載車と比較して追突事故が半減していたことがわかりました。また、「インテリジェントクリアランスソナー」と両方を備えたプリウスは、なんと9割も減少したといいます。
なのに、今回事故?という話なわけですが、一応1割の事故は防げないわけで、可能性としてはあります。もちろんトヨタが嘘をついているという可能性もありますけどね。何しろアメリカでは、大嘘の宣伝をしていた会社ですし…。
(関連:
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あと、前述の事故でプリウスバッシング以外にもう一つ多かった反応が、高齢者バッシングでした。80代の男性が運転していたということで、この反応となったようです。
ただし、
実は高齢者と若者でほぼ同じ事故率 ペダル踏み間違い、ブレーキ・ハンドル操作不適などの操作不適事故で書いたように、高齢者の事故が極端に多いという証拠もなさそうな感じ。プリウス欠陥車説同様に思い込みの可能性がありそうでした。
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