日本では、超絶大ヒットの映画『君の名は。』。日本人的な感覚がアジア、さらに欧米でどうなるか?と思っていたものの、中国では見事に受け入れられたようです。
ただ、この中国の大ヒットは日本の儲けに繋がっていないそうで、安売りしてしまった日本はバカとか、中国の会社が悪どいとかいった類の感想が出ているようです。
●中国で『君の名は。』大ヒットも日本は儲け損ねてバカ?
とりあえず、
「君の名は。」中国で大人気も、日本はまったくもうからない... - Record China(配信日時:2016年12月6日(火) 11時30分(翻訳・編集/北田))は、日本は儲けていないよ、という話。
2016年12月6日の時点で、12月2日に中国で公開されてから、興行収入はすでに3億元(約50億円)に迫っているとのこと。わずか数日でこれですから、まだまだこんなものじゃないでしょう。
ところが、中国の映画輸入制度のせいで、「興行収入がいくら高くても日本はもうからない」ことになっています。
中国で放映される海外作品には主に、あらかじめ分配率を定める方法と買い取りの2種類。「君の名は。」は後者に当たり、映画製作大手の光線伝媒がわずか2000万元(約3億3000万円)ほどで配給の権利を取得したそうです。
中国のネットメディアの記事はこの額について「国産映画1本の制作コストよりもずっと低い」と指摘。「君の名は。」の興行収入は6億元(約100億円)以上に達する見通しであることから、「光線伝媒は笑いが止まらないだろう」と伝えているとのことでした。
●日本は儲け損ねてバカ…は誤解
前述の通り、日本は間抜け、中国企業が悪どいという声があったわけですが、これは誤解ではないかと指摘されています。
中国の制度に問題があることは事実でしょうが、その中で日本企業はむしろうまく立ち回りましたし、中国企業はかなりリスクを冒して今回の大ヒットを取りに行っており、むしろお見事だったと褒めるべきだろうといった内容です。
“わずか2000万元って言ってもさ、その国で知られてない監督の原作無しの新作を前評判だけで先物買いするのに3億円以上出すのは相当なもんだと思う。”(kazuau 2016/12/06)
“多分、日本で大記録打ち立てる前に契約したからだろうな。それにいきなり数千スクリーンの興行は賭けの側面もあっだろうから、向こうの商売上手さを褒めるべきだろう。”(CAX 2016/12/06)
“逆に日本が配給も握ってたら、このスピード感で7000館に公開するなんて判断したかぶっちゃけ怪しい。絶対賭けにでないじゃん。”(liatris5 2016/12/06)
“まあしょうがないだろうねえ。数千スクリーン確保して博打うったのは向こうの業者だし。”(KoshianX 2016/12/06)
“的外れブコメ多い。中国の利益配分方式での2D外国映画輸入枠は年間20本。当然ハリウッド大作で埋まるから買取枠で出さないと公開すら無理。交渉下手で儲け損ねたわけじゃない/配給の光線伝媒の目利きは確かに凄い。”(Shin-JPN 2016/12/06)
“最初からヒットを予測してそれに金をかけられる人だけが石を投げよ”(IkaMaru 2016/12/06)
はてなブックマーク - 「君の名は。」中国で大人気も、日本はまったくもうからない... - Record China●光線伝媒(エンライト)の3億3000万円で配給権購入は見事すぎ
そして、さらに丁寧な解説だったのが、
「君の名は。」中国公開事情について。です。
こちらによれば、先程もあったように、公開本数の制限のために、"中国の配給会社は貴重な外国映画枠を確実にヒットが狙える作品にしか使"わないとされています。そうなると当然、一番良い枠はハリウッド大作で埋まります。
また、「中国では無名の監督の作品を7000スクリーンで公開した賭け」以外にも、中国の企業はかなりギャンブルをやっているという指摘がありました。
"「公開規模の大きさ」以前に「実績無い新規IPに外国映画輸入枠を使う」「緊急的な公開」の2点でも大きく賭けてる"
日本での公開から僅か1ヶ月で上映日程発表してるということは、買い付け交渉の開始はまず確実に日本での公開前だ。
すなわち日本での大ヒットという実績が出る前に、確実に稼ぐ使命のある外国映画枠を一枠使う決断をしてる。
もしかすると君名を今年中に公開するために、買い付けてた他の外画1本お蔵入りにして枠作ったのかもしれない。
字幕準備や上映スケジュール調整は特急でやる(その辺は中国企業の得意技だ)にしても、公開自体も異例なまでに早かった。
無名監督のアニメに火をつけるには日本ウォッチしてるようなアニヲタ連中の口コミ(=SNS)が火口として大事だから
「彼らの間で話題になってる内に」と急いだのだと思う。
なにせ中国には検閲がある。外国映画なら公開日程だってお上の内諾が(非公式だが)必要。
物があれば即上映できる国ではないのだ。
最近は綱紀粛正で「賄賂で何とでもなる」わけじゃないので、その辺の許可が間に合うかどうか自体も賭けだったはず。
日本の感覚で考える以上に光線伝媒はハイリスクを取っている。これに賭けて宣伝費とスクリーン突っ込んだ担当者は
相当の度胸と嗅覚を持ってる敏腕だと思う。
●光線伝媒には日本企業も関係する?
なお、光線伝媒について検索したところ、日本企業も多少関係しているみたいですね。興味ない人は読み飛ばして良いと思いますが、以下はそれを伝える記事です。
アクセスブライト、中国の映画製作配給会社大手に第三者割当増資を実施|M&A ニュース速報 | M&A タイムス 2015年11月25日
日本のアニメやゲームコンテンツの中国展開をサポートするアクセスブライトは、中国の映画製作配給会社大手の光線伝媒有限公司(以下「エンライト社」)と、中国映画市場における映画の日中共同製作および配給に関し、業務資本提携契約を締結し、第三者割当増資により、約5億7,000万円の資金調達を実施したと発表した。(中略)
今回の業務資本提携契約締結および資金調達により、アクセスブライトがすでに中国市場で手掛けている実績をもつスマートフォン向けゲームに加え、映画コンテンツ領域にも事業機会の創出と拡大を図るとともに、有力な知的財産(IP)コンテンツを保有する日本のコンテンツホルダーとの連携をより一層深め、その中国進出展開のサポート体制を強化するもの。
ああ、というか、「君の名は。」でもアクセスブライトが関係していました。
アクセスブライト、「君の名は。」中国配給権を取得 2016/10/4 0:14 日本経済新聞 電子版
中国でスマートフォン(スマホ)向けゲームの配信などを手がけるアクセスブライト(東京・港)は、アニメ映画「君の名は。」の中国での配給・配信の権利を東宝から取得した。
アクセスブライトが中国系という可能性もありますが、とりあえず、社長さんは日本人的な名前で、中国法人の代表も同じ方でした。
会社概要|会社情報|Access Bright Inc.
日本法人
株式会社アクセスブライト
役員
代表取締役社長:柏口 之宏
取締役兼最高技術責任者:谷井 貴宗
取締役:易 巧
取締役(非常勤):神尾 英昭(K&Pパートナーズ株式会社、Co-Founder取締役)
中国法人
上海通耀信息科技有限公司
代表取締役 柏口 之宏
●中国企業の意思決定の早さと仕事の早さ
それから、今回関係しているかどうかわかりませんが、中国企業の強さとして、圧倒的な意思決定の早さ・仕事の早さがあるという話を最後に。
日本人は中国を早かろう悪かろうだとバカにいしていることが多いですが、この仕事の早さは重要です。
アフリカの角での日本の存在感「中国人?違うの、じゃあ韓国人?」でやったように、アフリカで中国がありがたがられるのはこのスピード感でした。
中国の仕事に不満がないわけではないものの、現地での中国への好感度の高さはダントツ。その理由について、平和安全保障訓練センター所長を務めるクワメナ・オノマさんは、以下のように説明していました。
「中国は援助するにあたって条件をつけない。この点が、旧宗主国の欧州各国と異なる。もちろん中国は、自国の国益のために援助している。そのことは分かっている。だが、その動機は明白で分わかりやすい。そして、約束をすれば、道路や鉄道、そして港湾をさっさと整備してくれる。いま、アフリカはインフラ整備が喫緊の課題になっている。
多少工事がずさんでも、アッという間に作ってくれる中国はありがたい存在なのだ」
まあ、
博多駅前道路陥没、即復旧で日本すごい!→即沈下で業者「想定外」の件もあって、早かろう悪かろうでは、日本も中国のことあまり言えませんけどね。
また、単純に仕事の早さ以上に、意思決定の早さというのは重要でしょう。
日本企業が中国・台湾に負けるのは当然 シャープもスピード不足のせい?では、この点が強調されていました。
例えば、日本が15年以上かけて達成できなかった旧三洋電機・白物家電事業の黒字を、中国企業のハイアールがわずか数年で成し遂げてしまったという話。
元三洋電機社員が、経営がハイアールに代わってからの違いを、次のように語っていたそうです。
「とにかく、スピードが早い。(以前の会社では)当然 社員がいて主任がいて課長がいて部長。根回しして段階踏んで決裁を取るまでに1ヵ月かかるとか。今は今日言って明日からって感じかな。そのスピードにびっくりしましたね。負けますわ。あのスピード感には。日本メーカー」
ここらへんの中国企業の素晴らしさは素直に認める方が、日本人の度量の広さを示せると思います。
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