グーグルの機械学習システムテンサーフローでキュウリの選別や唐揚げの盛り付けを行うなど、従来できないとされていた「職人技」の仕事も、AIによってできるようになっているという事例紹介の話です。キュウリの選別や唐揚げの盛り付けって聞くと大したことなさそうなんですが、実は機械には難しいことだったみたいです。
2017/11/23:
●キリンビールはAIに熟練職人の技以上を期待 味の素・神戸製鋼所もAI導入
2021/02/14:
●10人の作業を1人で!港で魚の種類をAIが1分間に最大で100匹の判別 【NEW】
●AI(人工知能)で農家の職人技すら不要に
2016/12/8:グーグルは昨年11月、機械学習システムテンサーフローを「オープンソース」化しました。このテンサーフローの適用事例として話題になり、グーグルの米本社にまで声が届いたのがキュウリの選別です。キュウリの選別くらい…と思うかもしれませんが、これはたいへん難しくいわゆる「職人技」の領域だったようです。
AIでも世界制覇狙うグーグル、日本で攻勢:日経ビジネスオンライン 井上 理 2016年10月25日
農家でもテンサーフローが活躍できることを静岡県の小池誠氏は示した。自動車部品メーカーで制御システムの開発に携わっていた小池氏は、退職を機に両親のキュウリ栽培を手伝い始めた。母親が手作業でキュウリを選別する大変さを知り、自動化に取り組む。
(中略)長さ、太さに加え、全体の形状や色艶などの質感、傷、イボなど様々な要素を加味して9等級に選別する母親の「職人芸」を、テンサーフローで学習させた。母親が選別したキュウリの写真を、等級とともに覚えさせたのだ。
●唐揚げの盛り付けも従来はできなかったこと
もう一つグーグルを大喜びさせたのが、唐揚げの盛り付け。これまた大したことなさそうに見えるものの、画期的なんだそうな。
ロボットアームを手がけるアールティ(東京都千代田区)は今年6月、唐揚げをカメラで自動認識し、掴んで皿に盛り付けるシステムをテンサーフローを活用して試作し、公開した。
形や重さが一定でない食品をロボットで扱うのは困難とされている。特に唐揚げは形にばらつきが多く、認識自体が難しい。だが同社は、テンサーフローを使い唐揚げ1つひとつの画像を学習させ、唐揚げを掴んで盛り付けるまでの動作をロボットアームにやらせることに成功した。
●半導体工場の熟練の技術をAIが伝承
これ以外に今年の正月の記事でも、既にAIが職人的な仕事をしたという記事が出ていました。
ここにもAI(1)つくる 「職人の勘」蓄積 データ分析、工場が進化 2016/1/1付 日本経済新聞 朝刊 (戸田健太郎、細川幸太郎)という記事です。
半導体大手ルネサスエレクトロニクスの生産拠点、那珂工場で「職人の勘」を伝承する実験が始まっていました。「職人の勘」を伝承と言っても、人が学ぶのではなく、人工知能(AI)により勘所となるデータを蓄積することで、熟練の技術を継承しようとするものでした。
この実験は、半導体製造で必要な「エッチング」と呼ぶシリコンウエハーの表面加工にAIを活用しようというもの。特殊なガスをあてる際、40秒の処理の間に目まぐるしく変わる表面の状態を電圧の高低から読み取り、不良品が発生する予兆を検知するんだそうです。今まではどうしていたか?というと、熟練の担当者が電圧に加えて温度やガス濃度などの指標をもとにして経験的に判断しています。
それが今回、AIの活用により、シリコンウエハー数千枚分の電圧データを覚え込ませて判断基準を確立したとのこと。もうできちゃったってこなんでしょうね。このあとに、「人間の知覚を上回る50ミリ秒ごとに電圧の変化を数値としてとらえ、不良品が出る予兆を見極める」と書かれていましたし、「ルネサスは異常検知システムとして製品化し、外部企業に売り込む」とされていました。
●人工知能(AI)に代替される職業の予想は信頼できるのか?
事務職大激減!会計・経理も人工知能(AI)に代替されるなくなる仕事では、転職コンサルタントが「AIに代替される仕事」を予想していました。ただ、本当にこれが当たるかはわかりません。特に同時にアンケートを取っていた「AIに代替されない仕事」の方は怪しいと思います。
なぜかと言うと、今回の職人技の話がそうであるように、一見代替不可能と思われる仕事も奪われる可能性があるためです。こういうテクノロジーの発展の話を聞くと私は興奮する性質なのですが、嫌な気分になる人も多いかもしれませんね。
生徒「なぜ仕事を奪う研究を?」、AI研究者を責める 新井紀子教授の回答は?なんかもそういう話が出てきました。
ただ、
今読むしかない!『インターネットの次に来るもの 未来を決める12の法則』(ケビン・ケリー)などでやっているように、避けられない流れでもあります。AIに仕事を奪われるという前提で動いていた方が良いでしょう。
●キリンビールはAIに熟練職人の技以上を期待 味の素・神戸製鋼所もAI導入
2017/11/23:
職人技 AIで代替(2017/8/17付 日本経済新聞 朝刊)というタイトルがそのままこの投稿と同じテーマの記事があったので、ブックマークしていました。記事によると、ビール醸造は技術習得に10年以上かかる職人技の世界。醸造や発酵は、熟練職人の技に頼ることが大きかったそうです。
しかし、今回、キリンビールは三菱総合研究所と組み、過去20年分の試験データを基に最適な方法を予測する試みを始めました。しかも、"職人技をAIに蓄積することで技術伝承を効率化する"だけではなく、「より効率的な手法をAIが見つける可能性がある」と指摘、伝承以上の役割を期待していました。
また、職人技とは関係なさそうなものの、他のAI活用事例も出ていました。前述のルネサスエレクトロニクスは、他にも不良品発生を検知する工程をAIに置き換える予定とのこと。味の素もAIでアミノ酸生産工場の発酵工程の無人化を検討し、神戸製鋼所も高炉の温度制御にAIを導入するとしていました。
でも、
日本企業の不正事件 神戸製鋼データ改ざん、東洋ゴムの免震ゴム不正、日産、三菱自動車やスズキの燃費不正の件がある関係で、神戸製鋼の場合は「その前にデータ改ざんをどうにかしろよ!」と、今読むと思っちゃいますね。
●10人の作業を1人で!港で魚の種類をAIが1分間に最大で100匹の判別
2021/02/14:職人技系かな?と思う
AI技術を使って魚を自動選別 青森:朝日新聞デジタル(2021年1月16日 9時00分)という記事を発見したので、読んでみました。農林水産省が地方独立行政法人・青森県産業技術センター(青森産技)や水産研究・教育機構などに委託して進められてきた事業だそうです。
青森県の八戸港で実証実験が行われたのは、サケ、サバ、スケトウダラのデータをAIに学習させ、ベルトコンベヤーで運ばれてくる魚をカメラで認識し、データと照合して判別するシステム。1分間に最大で100匹の判別が可能で、40種類ほどの魚を90%以上の精度で種分けすることができるとのことです。
自動選別システムの開発の背景には、慢性的な新規就業者不足と高齢化があるとされていました。90%の精度で大丈夫なのか?というところがありますが、1分間に最大で100匹の判別からすると人間以上のようですね。実用化されれば、将来的には10人ほどの作業を1人のオペレーターでこなすことが可能になるとされていました。
なお、精度がそれほど高くなくても実用化は可能でしょう。AIでは「人間の仕事を奪う」という話になりがちですが、「人間の仕事の補助」も期待されています。最初に粗く「素人」のAIが判別したものを、「玄人」の職人がチェックするというだけでも相当時間が短縮できて、生産性が上がると考えられるでしょう。
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