ビジネスにおける棲み分けの事例がいくつか載っている記事があり、参考になるんじゃないかなと思ったので、メモ的な意味での投稿でした。なぜ棲み分けが必要なのか?といった話が、まず最初に。具体例はその後になります。読み直してみると、差別化の具体例とも言える事例も多く、棲み分けとセットになりやすい感じでした。
2021/07/15追記:
●コンビニがコーヒーで棲み分けできて、ドーナツでできなかった理由 【NEW】
●全然別ジャンルだと思ってたのに!異業種に突然シェアを奪われる時代
2011/6/29:私が読んだ記事は、
ゲーム人口は増えているのに なぜゲーム機が売れなくなったか 「意図せざる戦い」を戦い抜く3つのポイント 早稲田大学ビジネススクール教授 内田和成|日本を元気にする新・経営学教室|ダイヤモンド・オンライン 2011年6月27日というもの。記事では「意図せざる敵と意図せざる戦いをする場合」と表現していますが、以前は別業界だと思っていた業界が突然ライバルとして現れ、顧客を奪うということがあります。
その例として載っていたのは、携帯電話。任天堂がWiiやDSで、これまでメインユーザーだった若い男性だけでなく、女性や中高年も楽しめる世界に広げたものの、今度は携帯電話やスマートフォンがそれに取って代わっていると記事では書きます。また、スマホでは腕時計業界にも影響が…。「昔はビジネスパーソンには腕時計が必需品だったが、今は携帯で時計機能を代用すれば十分とばかりに、腕時計を持たない若者が増えている」と書かれていました。私もこれは実感がありますね。
それから、カメラ業界。「携帯カメラがどんどん高性能化して、画素数だけならデジカメ並みに。そうなるとデジカメをわざわざ持ち歩かずに、携帯のカメラ機能で十分と考える人も増えている」というわけです。最後のカメラに関しては、だいぶ後の2017/3/10に、
カメラもスマホ部品も日本製ばかりなのにニコン倒産危機・リコーも一部撤退報道という投稿も書いています。スマホの力は強烈でした。
●異業種による侵略を受けた場合…その対策には棲み分けがおすすめ
こういった異業種による影響が予測しづらいというのが、携帯電話会社はドコモのような通信会社であれ、シャープのような携帯端末会社であれ、任天堂やソニー・コンピュータエンタテインメントに戦いを挑もうと思っているわけではないということです。要するに意図してやっているわけではないということですね。
彼らがやっていたのは、自分たちの通信ビジネスあるいは端末ビジネスを、より便利に、あるいは競争相手に対して差別化するために、いろいろな機能を付け加えているだけ。いつの間にかゲーム業界の領域に足を踏み入れてしまったわけで、ゲーム業界側にしても携帯電話側にしても意識していなかったことが起きたわけです。
こういった異業種による侵略を不幸にして受けてしまった場合、被害者企業は、著者は次のように考えるように…としていました。ここでやっと「棲み分け」の話になってきます。
1)明らかにゲームのルールが違い、同じ土俵で戦っていないことに気づく。
2)したがって、彼らのゲームのルールすなわち彼らの土俵を理解すること。
3)正面から戦っても無理なので、棲み分けの道を探すこと。
●グーグルののせいで地図サービスが売れなくなったゼンリンの例
本題である棲み分けの具体例。まず、「ゼンリン」の場合です。
ゼンリンは元々紙の住宅地図メーカーでした。その後、地図情報を電子化した段階で電子地図も開発し、PC用に独自の地図サービスをDVDなどで提供するようになります。ところが、PCのポータルサイトが地図を無料で提供するにつれ、彼らの数千円もする高額な地図は売れなくなってしまいました。タダで手に入るのに、高い地図を買うのは馬鹿らしいですものね。
しかし、このとき一番やってはいけないのは、「地図の値段を下げて無料の地図に対抗すること」だそうです。"消費者に直接売る方が、1枚当たりに換算すれば高く売れるかも知れないが、ポータル上の情報はただと思っている消費者に、地図の価値を認めさせ、価格をつけて売るのは至難の業"。タダで見れるものを、多少安くなったからと言って買いません。
そこでゼンリンが選択したのは、「自分たちの地図の価値を認めてくれるプレーヤー」であるグーグルのようなポータルサイトに売ることでした。"総売上はあまり大きくならないかも知れない"ものの、"電子地図の小売りを諦めて、卸売り"に徹することが生き残りへの道です。これは先程の3点に対応して考えると、以下のようになるとされていました。
1)ポータルサイトは地図で稼ぐつもりはない。
2)彼らが提供したいものは、より便利なサービス。
3)したがってゼンリンとしては、消費者相手に価格を下げても、ただで提供される地図とは勝負にならない。そこで大本のポータルサイトに対して、彼らの競争優位の元となる地図情報を提供することで、金を稼ぐモデルに変更するという整理になる。
ゼンリンは同様に、カーナビ用の地図も、全く同じビジネスモデルで、稼いでいるとのこと。どの業界でもそうですが、昔儲かったからこれからも…と時代が変わっても、昔ながらのやり方にしがみついて頭を切り替えられない企業が多いです。そんな中で、ゼンリンは柔軟な考えをもとに、うまく転換しできたと思います。
●任天堂に攻められたフィットネスクラブ「カーブス」の場合は?
次に、フィットネスクラブ「カーブス」の話。"任天堂WiiのソフトであるWii Fitが、フィットネスクラブの顧客を奪ったのではないかと言われたことがある」が、これも「フィットネスクラブが低価格戦略で対抗しようとしてもうまくいかない"と書かれていました。
カーブスは、女性にとってフィットネスクラブが行きにくかったり、続かなかったりする理由は何かを考えて、そちらに手を打つことにしました。
たとえば、男性の視線が嫌だとか、時間が自由に変更できないことだとか、あるいはトレーナーがきちんと見てくれないといったところに目をつけて、女性専用小型フィットネスクラブとして差別化したそうです。
●スーパーホテルは「睡眠」以外捨てる戦略で人気
.ビジネスホテルである「スーパーホテル」の場合、漫画喫茶が相手でした。若いビジネスパーソンが宿泊代を浮かすためにビジネスホテルではなく、漫画喫茶に一晩泊まるケースが増えている…と当時は言われていたのです。
前述の通り、これに低価格化で対応するのは良くない…というのが筆者の考え。そして、漫画喫茶には決してできないサービスを提供することで、顧客をつなぎ止めるべきだとしています。
スーパーホテルの場合は、"ビジネスホテルで一番大切と信じる快適な睡眠にフォーカスして、他のサービスは極力廃止し"たとのこと。"どうせ泊まるだけなら、眠るところと朝食だけで十分という出張者に人気"になりました。
●コンビニコーヒーと缶コーヒーとコーヒーショップ…実は共存している
2017/06/03:棲み分けの具体例が少なかったので、1つ追加。私が思いついたのが、コンビニコーヒーの話です。コンビニコーヒーが登場して、コンビニ内に従来からある缶コーヒーとコンビニコーヒー2種類ができることになりました。そうなることで、コンビニコーヒーが缶コーヒーの客を奪った…いわゆる共食いを起こしているのか?と言うと、意外なことにそうではなかったのです。
データを見てみると、実は缶コーヒーの購入者は極端に男性が多く、なんとほぼ8割でした。そうなると、コンビニコーヒーは女性が多いというわけなのですが、
セブン、PB缶コーヒーも大ヒット データで予見 :日本経済新聞 2014/7/24 7:00(日経ビッグデータ 多田和市によると、その他にも若い世代と年配の世代が多いという特徴もあり、購入層があまり重なっていなかったのです。
また、具体的なデータを見たわけではないのですけど、確か別の日経新聞の記事で、コンビニコーヒーの登場で喫茶店が打撃を受けるかとも思われたのに、実際には売上が落ちなかったともされていました。これも棲み分けできているためだと思われます。コンビニコーヒー1つの話だけで、2つの棲み分けの事例が説明できました。
●タリーズはスタバ・従来型喫茶店・無料のコーヒーマシンと差別化
そういえば、コーヒーでさらにもう一つ別の事例がありましすね。まだ下書き途中で投稿していない話ですが、タリーズは、大資本であるスターバックスとの差別化を意識して行っていた…という話を思い出しました。小さなタリーズの場合、一等地に出すのは無理なので、オフィスビルにカウンターだけの小さな店を出す戦略を選択したのです。
このカウンターだけのお店というのは、さらにスターバックス以外のコーヒーとも棲み分けできました。同じビルの地下に大きな喫茶店があり、各フロアには無料でコーヒーが飲めるベンディングマシンがあるという環境で、タリーズが成功したという話だったのです。「テイクアウトするというコーヒー」という別ジャンルだったからかもしれません。
ということで、タリーズはスタバ・従来型喫茶店・無料のコーヒーマシンと差別化して棲み分けを行っていたんですね。なぜか知りませんが、コーヒーの話は棲み分けの題材としてやけに優秀ですね。
●コンビニがコーヒーで棲み分けできて、ドーナツでできなかった理由
2021/07/15:軽く触れるだけであったコンビニコーヒーに関する話の補足。
コンビニがコーヒーで成功して、ドーナツで失敗したシンプルな理由 | 現代ビジネス | 講談社(2016/8/24 加谷 珪一)という記事です。タイトルを見てわかるようにコンビニドーナツの話がメインであり、そちらについては、
セブン-イレブンのドーナツ失敗 ミスドの劣化版、まずいなど不評で書いています。
<コンビニ各社がこれほどまでにコーヒーへの参入にこだわったのは、新しい需要を創造することによって、コンビニの潜在的な事業規模を拡大できると考えたからである。コンビニでコーヒーを購入する顧客は、必ずしも既存のコーヒー店の常連客とは限らない。既存市場とパイの奪い合いをせず、新しい需要を作り出すことができれば、コンビニの市場はまだまだ拡大が可能という期待が出てくる。
実際、コンビニ・コーヒーはそれに近い効果をもたらしたといってよい。(中略)セブン1社だけで年間約750億円もの売り上げとなった。(中略)コンビニ各社のシェアからコンビニ・コーヒー市場全体の規模を推定すると約2000億円となるが、これはかなりの大きさである>
スターバックスは情報が公開されていた2014年3月期時点において約1200億円の売上高で、ドトールは約1500億円の売上高があったと推定。つまり、コンビニ・コーヒーの規模はすでにコーヒー・チェーン大手を上回る規模です。しかし、多くの人が予想した「既存のコーヒー・チェーンが大打撃」といったことは起きませんでした。この理由が「棲み分け」です。
<少なくとも現時点においては、コンビニ・コーヒーは既存のコーヒー・チェーンの顧客を根こそぎ奪っているという状況にはなっていない。それどころかコンビニ・コーヒーは、外で気軽に珈琲を飲むという習慣を定着させたという意味では、むしろ新しい需要を生み出したと考えてよいだろう>
このコーヒーでの成功体験から、同じように新しい市場を創造できるのではないかと考え、各社がこぞって参入したのがドーナツ市場…だったのですが、こちらでは成功できませんでした。不思議な話なのですが、これはそもそもドーナツ市場が極めて小さい上に縮小市場であったため…という説明になっていました。
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