子供のしつけや幼児教育の話をまとめ。<子供のしつけも幼児教育もIQ向上に効果なし 親からの遺伝で決まる>、<「幼児教育に効果あり」という研究とも矛盾せず、両立する可能性>、<早期教育どころか18歳まで読み書きできなかったのに最年少教授>などをまとめています。
その後、<悪い幼児教育の見分け方は簡単 「~~」を言った時点で詐欺>なども追記しました。
2023/06/18追記:
●早期教育どころか18歳まで読み書きできなかったのに最年少教授
2023/09/29まとめ:
●悪い幼児教育の見分け方は簡単 「~~」と言った時点で詐欺 【NEW】
【クイズ】早期教育の有効性と根拠となるペリー就学前プロジェクトの対象となったのは、どのような人々でしょう?
(1)アフリカ系米国人の子供を所得別に2グループ
(2)中所得層の白人の子供
(3)低所得層のアフリカ系米国人の子供
●子供のしつけも幼児教育もIQ向上に効果なし 親からの遺伝で決まる
2016/12/14:
幼児教育としつけで学歴アップ、IQを高めるのなら生後3ヶ月から? ヘックマン教授のインタビューなどでやったヘックマン教授の主張と矛盾しそうな話です。ただし、今回のような結論の研究の方が多いため、こちらの方が説得力あり。また、後述するように、考えようによってはヘックマン教授の主張とも両立する可能性があります。
<心理学誌「Intelligence」に発表された研究によると、子供のIQ(知能指数)は遺伝子によってきまるもので、親のしつけによって影響を受けないとのこと。
今までの研究で、IQは遺伝できまるのか?それとも、親のしつけなどによる環境によってきまるのか?と議論されてきました。
米フロリダ州立大学のケビン教授は、全国からサンプル5,500〜7,000件から選んだ実子と、250〜300件のサンプルから選んだ養子の若者を対象に、IQテストを実施しました。
その結果、親によるしつけが、子供のIQに影響を及ぼしたという根拠は見つけられませんでした>
(
しつけをしても子供のIQに影響はない | ネタ・おもしろ・エンタメ | 大学生活 | マイナビ 学生の窓口 2015/06/08より)
上記とは別の記事である
子供の頃の教育は大人になってからの知能の向上に影響しない―アメリカ研究|「マイナビウーマン」(公開日: 2014.11.12 11:58)は、「しつけ」ではなく「両親が行った子供に対する教育」という話があります。ただし、同じフロリダ州立大学の研究ですから、全く同じ論文の話かもしれません。(研究者の名前がなかったので、判断できませんでした)
<多くの親達は、子供との意思疎通を測るために家族で囲む夕食や寝る前の絵本の読み聞かせを重要視していると思います。
しかし、フロリダ州立大学の新しい研究によると、子供の頃のこのような教育は、大人になってからの知能の向上に影響を与えず、むしろ遺伝子がより関係している可能性があることが明らかになりました>
●「幼児教育に効果あり」という研究とも矛盾せず、両立する可能性
では、なぜこれとヘックマン教授の幼児教育が重要だという話と両立する可能性があるのか?という話について。研究結果が正反対になるということはよくあるのですが、この場合両立できそうなんですよね。実は、今回の研究においても、"親たちが自分の子供たちに教育をしなくても良いことを意味している"わけではないのです。
今回の論文では、"子供に対する教育方法の違いは彼らのIQに影響が出る訳ではないと言うことを意味している"としていたとのこと。つまり、教育を全くしないのは問題であるが、教育方法の選択による違いはそれほどないといった意味じゃないかと私は捉えました。教育すること自体は確かに効果が出ているのです。
"成長してからの知能の向上は遺伝や環境など、数えきれないほどの要因がある"ともありましたから、数多くある知能に与える要因のひとつでしかないから大きな影響力はないってことだと考えられます。ありがたがられる有機栽培に効果がないのも同じような説明なんですよ。関係する要素が多すぎて1つでは決まらないのです。
そして、「教育を全くしないのは問題あり」が、幼児教育としつけが効果があると主張するヘックマン教授の研究で問題になってきます。というのも、ヘックマン教授の主張な主な根拠となっている研究というのが、昔の黒人低所得者層というかなり特殊な家庭だったため、教育そのものが十分でなかった可能性がありそうなのです。
【クイズ】早期教育の有効性と根拠となるペリー就学前プロジェクトの対象となったのは、どのような人々でしょう?
(1)アフリカ系米国人の子供を所得別に2グループ
(2)中所得層の白人の子供
(3)低所得層のアフリカ系米国人の子供
【答え】(3)低所得層のアフリカ系米国人の子供
全く教育やしつけが行われていない子供と何らかの教育やしつけが行われた子供で差が出るという話を聞かされたなら、たぶん皆さん「そりゃそうだろう。不思議でも何でもない」と感じるでしょう。こうした研究結果は、一種の児童虐待状態になっているような家庭の子供を救うのが大切という話には繋がります。大事な研究です。
しかし、この研究は、幼児教育が重要だと盛んに言って不安にさせた上で、民間企業でやっている有料の教育サービスを売りつけることの正当化には繋がらないでしょう。どうも日本ではヘックマン論文がこういう民間企業への利益誘導に悪用されている感じなんですよね。注意が必要です。
●早期教育どころか18歳まで読み書きできなかったのに最年少教授
2023/06/18追記:教育しなかったわけではなく、病気などのため…というものですが、幼児教育重視と対極にあるような話だと思ったニュースをブックマークしていました。
18歳まで読み書きできなかった男性が…英ケンブリッジ大学でアフリカ系最年少の教授に!|日刊ゲンダイDIGITAL(公開日:2023/02/28 )という記事です。
<注目を集めているのは、ロンドン南西部クラパム出身のジェーソン・アーデイさん(37)。子どもの時、全般的発達遅滞(知的発達に遅れはないのに読む、書く、計算するなどの特定の能力を習得することに著しい困難がある状態)および自閉症と診断された。
しかし母親が音楽で言語を概念化する訓練を行った結果、ジェーソンさんは会話の能力と文字の読み書きを習得した。>
「音楽で言語を概念化する訓練」というのはよくわからないのですけど、母親の創造力と努力には驚かされます。普通でしたらこの母親の偉業が注目されるところでしょう。ところが、彼は普通の人と同程度の会話の能力と文字の読み書きを習得…で終わらず、普通の人どころではない才能を発揮したため、こちらが注目されることになりました。
<小学校卒業後、地元のコミュニティーカレッジで大学進学資格を取得。ロンドンのサリー大学に進学し、体育の教師になった。
その後、友人の指導を受けるなどして才能を開花させ、リバプール・ジョン・ムーア大学で博士号を取得。2018年には初めて社会学の論文を発表して注目を集め、グラスゴー大学教育学部で英国史上最年少の教授となった。>
(引用者注:さらに世界大学ランキングで第3位である英ケンブリッジ大学で教授に就任。英ケンブリッジ大学ではアフリカ系最年少の教授)
記事冒頭によると、11歳まで話せず、18歳まで読み書きができなかったとのこと。しかし、前述の工夫により、読み書きができるようになった後は、メキメキ才能を伸ばして上記のようなことになりました。これはおそらく本来は才能があったのに教育機会を設けることができなかったためでしょう。教育機会の有無そのものが大事なのだと思われます。
●悪い幼児教育の見分け方は簡単 「~~」と言った時点で詐欺
2023/09/29追記:ここから<幼児・子供へのIQ教育に対する批判>などというタイトルで書いてた投稿の話を少しずつまとめ。上記で書いているように、子供のしつけも幼児教育もIQ向上に効果がないなどの話がある(他にも理由あり)ので、そもそもIQを言い出した時点で悪徳。見分け方としては簡単ですね。
2012/12/14:「IQ 150以上の子どもが続出!育児の概念を変える」とする、ある手法が書籍化されたというOFFICE-SANGAの記事[2012/12/10]が目に入り、私の胡散臭さレーダー的なものに引っかかりました。母親のための乳幼児親子教室の実態を、ノンフィクションライターが調査取材して執筆したものだそうです。
記事では、以下のような説明がありました。(2023/09/29追記:IQの話さえなければ、「叱らない」など科学的根拠のあるなかなか良さそうな感じのことを書いているのですけど、欲張ってIQの話をしたばっかりに台無し。一気に信頼性がゼロまで下がってしまっています)
・適切な時期に最適な刺激を与えることによって、子どもの脳の発達を促すという教育方法。
・「叱らない」「教え込まない」といった育児法で、「叱らずにしつけができ、育児を楽しめる」、「親や友達の気持ちがわかる、思いやり深い子になる」、「知的指数が向上し、運動能力や手指の巧緻性(こうちせい/巧みに指先を使う能力)が向上する」という三つの特徴を持つ。
・乳幼児親子教室の代表講師は、教育現場で1,000人以上の子どもたちを指導し、教育技術を研究。妊娠・胎教・育児に関する理論の研究と、自身の育児体験をもとに、乳幼児親子教室を開設した。
・代表講師自らの子どもにも「TOEメソッド」の教育手法を実践しており、長男は2歳4カ月で「IQ242」、長女は3歳で「IQ194」を実現。ともに健康優良児に育て上げているとのこと。
【本文中でリンクした投稿】
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