2021/02/12追記:
●草津温泉が新型コロナウイルスに効く!と宣伝されてしまう…
●新型コロナウイルス対策にならない研究で「観光促進」は悪徳
2022/02/02追記:
●草津温泉が入浴法を指導する湯長を廃止「医師法違反の可能性」 【NEW】
●高温で強酸性の草津温泉、安全対策にはお金をかけるべきだが… 【NEW】
●風呂の効果を水素効果と誤解…水素風呂は信じなくても温泉は信じる?
2016/12/25:この前、水素風呂の感想が笑い者にされていました。
ただ、この手のお風呂の効果を別の効果だと勘違いしていないか?というのは、温泉でも感じていたことなんですよ。水素風呂をバカにしている人でも、結構、温泉の効果効能は無批判に信じている人が多いのではないでしょうか?
●温泉の効果効能の科学的根拠に問題 効果が実証されたものは少ない
温泉の効果効能はかなりいろいろと言われていて、お風呂の効果だけでは説明できないものもあるかもしれません。これらについて疑問に思って昔検索してみたものの、当時は満足のいくようなページは発見できませんでした。「温泉 科学的根拠」で出てくるページは当事者による科学的根拠の主張ばかり。そりゃ当事者は科学的根拠があると言いたがります。水素風呂のケースと同じで信用なりません。
しかし、今検索してみると、"温泉に掲示されている適応症は科学的実証例が少なく、見直すべきだという専門家の意見が出ている"という記事が出ていました。
温泉の効能、科学的実証例少なく見直しの声も。 | Narinari.com(2006/08/15 22:42 Written by コジマ)というものです。
記事によれば、温泉療養に適した症状である適応症と温泉療養してはいけない症状である禁忌症があり、温泉法では「温泉の成分、禁忌症及び入浴又は飲用上の注意を掲示しなければならない」と決まっているそうです。しかし、これらの効果効能は、"「ここの温泉は古来、こうした病気に効く」と言い伝えられてきた効果を実証せずに採用している場合が多く、科学的に証明されているものは少ない"と言います。
●温泉の研究は「玉石混交」で「発展途上の科学」
さらに疑似科学の分野では、最近できた。
疑似科学とされるものの科学性評定サイトというサイトもあります。ここにはズバリ温泉に関する
温泉 | 疑似科学とされるものの科学性評定サイトというページもありました。非常に長い文章ですので結論から言うと、「玉石混淆」といった感じです。まず、問題点として、そもそも「温泉そのものの定義」が定まっていないといいます。これはかなり未熟な状態で、議論しようがありません。
また、「文化」「伝統」的な側面と「科学」的な側面とが入り混じった状態で議論されていることも問題。科学ではない話がかなり混じっているという時点で問題なのですが、「伝統」「文化」というのが特に厄介です。これらが絡んでくると政治的な思想で圧力がかかり、事実が捻じ曲げらることがあります。我が国の素晴らしき伝統文化である温泉にケチをつけるなど言語道断!といった感じの人もいるでしょう。
で、科学の部分なのですが、確かに温泉信者が言うように研究発表は多数出ているとのこと。ところが、これだけでは科学的に確かとは言えないのです。論文があるから直ちに正しいとは言えないというのは、多くの研究不正問題などからわかるでしょう。そもそも研究によって異なる結果になるということもごく当たり前に起こり、研究があるから正しいとは言えません。
そして、今回問題になるのは、レベルの低い研究が多いということ。"温泉の療法的側面については「日本温泉気候物理医学会」などが積極的に研究発表を行っているが、他の医学領域と比較した場合の研究の質のバラツキの大きさが学会内部から指摘されて"いるそうです。
なので、温泉の効果効能として科学的根拠があるものもあれば、ないものもある…という「玉石混淆」な状態で、「発展途上の科学」という言い方をサイトではしていました。まあ、科学的であろうする真摯な態度も一部で見られる分、他のニセ科学とはだいぶ異なり、まだマシかなとは思いますけどね。
私は別に温泉を敵視しているわけではなく、むしろ結構好きなんですよ。ただ、嘘をついたり、根拠のないことを言ったりしてまで宣伝するのはおかしいとは言わざるを得ません。日本の伝統…みたいな話が途中で出てきましたけど、不誠実さというのも日本的な美意識に反するのですから改めていった方が良いでしょう。
●草津温泉が新型コロナウイルスに効く!と宣伝されてしまう…
2021/02/12:ネットの反応を見ると、好意的な反応が多かったんですが、これはまずいな…と思った
「草津温泉がコロナウイルス不活化」研究 自治体が観光政策に活用予定 NEWSポストセブン / 2021年2月10日 7時5分という記事について。以下のようなことが書かれていました。
<古来「万病に効く」と謳われた草津温泉の湯はコロナにも有効──。そんな研究成果を発表したのは群馬大発のベンチャー企業「グッドアイ」だ。研究にあたった群馬大学大学院の板橋英之教授が解説する。
「草津温泉水が新型コロナウイルスを『不活化』するかどうか検証しました。不活化とは簡単に言うと『感染力がなくなった』という意味です」
板橋教授は、「水道水」、「硫酸酸性水」、「草津温泉の湯畑源泉の温泉水」の3種類の溶液に新型コロナウイルスを混ぜてサルの細胞に感染させる比較検証を行なった。結果、感染力は水道水と比較して、硫酸酸性水で80%減、草津温泉水では95%減となったという。
「硫酸酸性水、草津温泉水はともに『酸性』で、これがウイルスを不活化させたと推察されます。その上で草津温泉水のほうが不活化の効果が高かったということは、硫酸酸性水にはない、草津温泉水ならではの“成分”が不活化に作用したと考えられます。具体的にどの成分が不活化に効いているのかは、これから調べていきたいと思います」(板橋教授)>
●新型コロナウイルス対策にならない研究で「観光促進」は悪徳
調査は、草津町が板橋英之教授らに依頼したもの。結果を受けて、町はさっそく観光政策として源泉を使った「手洗い湯」を3か所整備する予定だといいます。草津町企画創造課は「今はまだ“お越しください”とはなかなか言えない状況ですが、今回の研究結果は誘客の面で明るい材料」としていましたが、「観光政策として」と明記されているので宣伝目的だと考えられます。
まずいだろうな…というのは、科学的根拠としてはまだ不十分だということ。ただ、そもそも科学的根拠があったとしても、観光政策としては不向きなことや、誤解を招きやすいという問題も。ネットの反応を見ると、「草津温泉に入ると~に効くからやっぱり!」といった反応が多くなっていましたが、今回の研究はそういったものではなく、誤解されていることがわかります。
仮に草津温泉に入ることで新型コロナウイルスを殺菌できたとしても、それ以外の場面では感染するのですから、そもそも観光政策としては使うことは不可能なはず。むしろ食事など他の場面で感染を広げるリスクがあるため、旅行は推奨はできないでしょう。現在、町でやっている手洗いも、わざわざ草津温泉に行く理由にはならず感染対策としては逆効果です。
今回の研究内容からすれば、殺菌用として温泉水を各地に販売するといった方向性の方が有望でしょう。その場合でも、もっと研究して科学的根拠を確かにする必要がありますけどね。そういったことをせずに、安易に「観光政策」として使ってしまうというのは、お金儲け至上主義で不誠実で悪徳。やはり温泉関係の科学は注意が必要ですね。
●草津温泉が入浴法を指導する湯長を廃止「医師法違反の可能性」
2022/02/02追記:前回書いた草津温泉とニセ科学が絡む話題としては、その前に「医師法違反の可能性」があるとして、入浴法を指導する湯長を廃止…という話題もあったようです。例えば、2019年5月31日に
草津温泉「湯長」を廃止へ 町長「医師法違反の可能性」:朝日新聞デジタル(泉野尚彦)という記事が出ていました。
<草津温泉(群馬県草津町)の湯治文化の象徴で知られる時間湯。町は来年度に湯治客へ入浴法を指導する湯長を廃止する方針を30日、明らかにした。黒岩信忠町長は「湯長が湯治客の健康状態などを把握するために行う『問診』が、医師法などに違反する可能性が高い」などと説明する>
草津温泉(の湯治文化の象徴で知られるとされていた「時間湯」は地蔵の湯と千代の湯の2カ所で行われています。湯長は代々継承した安全への知識や湯治技術を生かして、高温で強酸性の泉質を利用してリハビリや体質改善に湯もみ、かけ湯、一斉入湯を指導する…とされていました。
廃止について、草津温泉時間湯保存会の会長は「法律に抵触するとの町長の見解は一理あるが、時間湯は温泉文化の伝統でもある。今後、法律に触れないように伝統を維持するための方法を模索していきたい」と話していたとのこと。これは後半があるので良いのですけど、前半だけ抜き出されると伝統で非科学的なものを肯定することになりかねません。
●高温で強酸性の草津温泉、安全対策にはお金をかけるべきだが…
積み重ねてきた伝統を廃止するなんて!と思うかもしれませんが、そもそもこの伝統的な指導の裏付けが不十分。伝統は科学的根拠になりませんからね。医師法が医師以外の者の医業を禁止しているのも、素人が勝手な医療を行って健康被害をもたらすのを防ぐためだと考えられますし、法律がおかしいとは思えません。
ただし、「高温で強酸性の泉質」という性質からすると、安全対策にはお金をかけるべきじゃないかと思うので、単純な湯長廃止がベストとも思えないところがあります。日本の温泉はもともと温度が高くリスクあるとも言われており、安全対策はケチらずにきちんとしてほしいところです。
個人的には資格がある医師を配置すれば大丈夫なんじゃないの?と思うのですが、医師を雇うとなるとお金がかかるから選択肢にないのかもしれません。この予想が当たっていた場合、上の方で書いていた「科学的根拠よりお金儲け」と同じで「お金の方が優先なのかよ」という話になっちゃうんですけど、どうなんでしょうね…。
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