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AIで仕事がなくなる…は誤解だった 人間の作業を代替するだけで職業そのものを代替するわけではない


 今までAIで仕事がなくなるという話を何度もやってきたのですが、それは誤解だという記事があってびっくり。早く言ってよ!という話です。ただ、説明を読むと、どうかな?というところもありました。やはり職が奪われる方向性なのは、否定できていない感じでした。

2020/11/20:
●デジタル化で8500万人失業するが、それ以上新たな雇用が誕生?


●人工知能は職を奪わない!AIで仕事がなくなる…は誤解だった

2016/12/27:今回記事で出ててくるオズボーン博士というのは、過去にも紹介してきた方。他の「仕事がなくなる」という話と同じ論文を元にしているものの、その解釈が間違っているという指摘でした。人工知能は職を奪わない--AIは「空気がよめない」 - ZDNet Japan(松田雄馬 2016年12月26日 07時00分)は、以下のように書いています。

<オズボーン博士は論文「未来の雇用」の中で、「自動化」される確率に基づいて、各職業をランキングしている。このランキングによると、最も自動化される確率が低いものが「リラクゼーション・セラピスト」(0.28%)であり、逆に、最も自動化される確率が高いものが「テレマーケター(電話による商品販売員)」(99%)だという。すなわち、テレマーケターの「作業」は、その99%が置き換え可能ということである。
 繰り返し強調したい事柄だが、これは、決して、「テレマーケターが職を失う確率が99%」であるということではない。「テレマーケターは、その作業を99%の確率で自動化でき、効率的に業務を行うことが可能そうである」ということを意味すると考えるのが、妥当な解釈ではないかと考えられる>


●人間の作業を代替するだけで職業そのものを代替するわけではない

 一言で言うと、「人間の作業を代替するだけで職業そのものを代替するわけではない」といった感じだと思われます。確かにそういう意味だと説明されても話は通じます。

 ただ、たとえ「テレマーケターは、その作業を99%の確率で自動化でき、効率的に業務を行うことが可能そうである」であったとしても、やはりその職業に従事する人が減るのは間違いないでしょう。

 大部分が自動化されている仕事に対して、今までと同じ人数の人を従事させるなんて馬鹿なことは誰もしません。たくさんの人数でやっていたのを1人にやらせたり、他の仕事と兼任でやらせたりといった具合で、その職業の人は減る方向になるはずです。「AIで仕事がなくなる」はやはり概ね正しいのではないかと思います。


●人工知能そのものが職業を奪うことは起きない

 ところが、この続きを読んでみても、作者の松田雄馬さんは根本的に違う考えみたいですね。この記事で出ていた、AIは「まったく空気がよめない」という言い方は少し変な表現で、要するに、人間なら簡単に対応できるちょっとした仕様変更に対応できないという意味みたいです。これは結構ポイントになっていて、その理解を元に以下のように書いていたのです。
 もちろん、フォーマットの変更をチェックするプログラムを書き下すことはできる。

 そうすると、その「フォーマットの変更をチェックするプログラム」に書かれていない変更があった場合(行の変更だけではなく、項目の追加など)には、その「『フォーマットの変更をチェックするプログラム』の変更をチェックするプログラム」を新たに書く必要があり、それすらも変更する場合は、という、堂々巡りが発生する。

 このように、「弱い人工知能」は、人間の「作業」を減らすことはあっても、人間の「職業」を減らすことにはならないのである。勿論、「今まで三人でやっていた作業を一人でできるように効率化する」というような状況は、現状既に起きている

 しかし、その分、作業効率化のためのシステムを作る作業や、そのシステムをメンテナンスする作業など、新たな作業は常に生まれており、「弱い人工知能」によって、「職業」自体がなくなるということは決してないというのが私の結論だ。

●フェイスブックでは既に人が職を奪われた事例

 しかし、たとえ新たな仕事がAIに生み出されるとしても、仕事内容が異なるために元働いていた人がそのまま雇用されるとは限らないのではないでしょうか?

 AIではなくアルゴリズムとされていますが、フェイスブックの例が思い出されます。フェイスブックは今年、編集者らのやっていた仕事をアルゴリズムに任せた際に、彼らを一気に解雇しました。代わりの仕事は与えられなかったのです。
瀧口範子のシリコンバレー通信 - 偽記事を取り上げたFacebookのアルゴリズム、人間排除で失態:ITpro  瀧口 範子=ジャーナリスト 2016/09/14

2016年8月末、ここ(引用者注:フェイスブックのトレンディングトピックス)にでたらめな内容の記事が掲載されて、ランキングのトップを飾っていた。共和党に傾倒していることが知られるテレビ局「Fox News」の女性アンカーが、実は隠れヒラリー支持者で、それがバレて同局を首になったという内容だ。

 実は、Facebookは同じ8月にこのトレンディングトピックスを担当する編集者ら約20人をクビにしていた。編集者はそれまで掲載されるトピックを監視したり、ちょっとした見出しをつけたりするために働いていた。その役割は今後アルゴリズムに任せるという決定が下されて、ポストを奪われたのだった。

 実は、Facebookは同じ8月にこのトレンディングトピックスを担当する編集者ら約20人をクビにしていた。編集者はそれまで掲載されるトピックを監視したり、ちょっとした見出しをつけたりするために働いていた。その役割は今後アルゴリズムに任せるという決定が下されて、ポストを奪われたのだった。

 偽記事はその数日後に浮上し、トレンディングトピックスに表示され続けた。これが偽記事であることを判断する人間がいなかったので、少なくとも8時間にわたってトップに居座り続けたという。

 まあ、これはマスコミは嘘だらけ?デマ捏造フェイクニュースは信じられやすいと判明でやったように失敗事例です。なので、「ほら、やっぱり人間を解雇しちゃいけなかったんだよ」と言えてしまうかもしれません。

 とはいえ、"アルゴリズムのレベルが公開するレベルにほど遠かった"というのが失敗の理由ですから、徐々に解雇や一部を解雇といったやり方なら十分現実的だったと思われます。

 人工知能によって、"「職業」自体がなくなるということは決してないというのが私の結論だ"といった言い方もしており、これ単体だと理解できないこともありません。ただ、「人工知能は職を奪わない」といった表現になってくると説得力を感じず、にわかには信じ難いものがあります。


●AIのせいで金融業者のトレーダーが「1~2割減った」

2017/05/21:人工知能によって職を失う人もいるというのは、実例を挙げるというのが簡単な反論ですね。(AIと世界)今そこにある未来(1)仕事が消える日 変化に適応可能か(写真=ロイター) :日本経済新聞(2017/4/11付)という記事にそういう話がありました。

 インド南部の古都マイソールには、インドIT(情報技術)サービス大手のインフォシスがあります。米欧のグローバル企業を顧客にシステム開発やコールセンター業務の受託で成長してきました。

 ところが、31歳の男性社員は昨年末、「今の仕事は続けさせられない」と、上司に告げられました。大卒後に入社、一貫してシステムに不具合がないか監視してきたものの、AIに取って代わられ今は担当業務がなくなったのだとのこと。これは彼に限った話ではなく、昨年、8千人分以上の仕事が消えたとされていました。

 上記の男性は解雇されていないような書き方でしたが、米ニューヨークの金融業界でも、2010年ごろからAIが職場に入り始め多くのセールストレーダーが辞めていったとのこと。10年近く働いたジャック・ベラスコさんも、今年1月、会社を追われました。ベラスコさんは、「トレーダーはここ数年で1~2割減った」と言っています。

 ということで、やっぱり仕事がなくなることがあるというのが現実です。ただ、一方で、AIの導入よって増える仕事も確かにあります。富国生命保険はAI活用で医療保険給付金の査定部署131人を約3割減らしたものの、全件数の約1割でミスがあり、人がAIの仕事をチェックしていました。

 AIによって減る職業もあれば増える職業もあるということで、消えてなくなるだとか、減らないだとかという極端なことにはならないんだと思われます。


●AIに仕事を奪われてトレーダーが99%以上減る

2017/09/16:職業そのものが消滅しないまでも、AIに仕事を奪われる人はいるよという例を追加。ただ、またトレーダーの例です。AIとの相性が良いんですかね。今回は、MIT Tech Review: ゴールドマン・サックス、自動化で株式トレーダーを大幅削減(by Nanette Byrnes2017.02.08)という記事から。

 ニューヨークにあるゴールドマン・サックス本社の米国株の取引部門には、20年ほどの前の最盛期である2000年には、600人のトレーダーが在籍ていました。現在、この部門にはたった2人しか残っていないということで、99%以上が消えています。壊滅的です。

 ただ、実際にやっていた仕事は?というと、大口顧客の投資銀行の注文に応じ、株を売買するというもの。こう聞くと、失くなって当然という仕事ではありますね。しかし、その後の説明を見ると、やはり顧客の注文通り取引するというわけではなく、裁量トレードだったのではないかとも思います。"株式売買の自動化プログラムが、他のトレーダーの職を奪ったのだ"と書いてあったためです。

 なお、プログラムを支えるのは200人のコンピューター・エンジニアだとありますので、代わりの雇用はできています。とはいえ、これは当初の600人より少ないのですので、66%の人間の仕事が減った計算です。また、ゴールドマン・サックスでは、為替等の取引業務、さらに投資銀行業務といった事業の一部も、株式の取引同様、自動化に向かっており、まだまだ人間の仕事を減らそうとしているようでした。


●デジタル化で8500万人失業するが、それ以上新たな雇用が誕生?

2020/11/20:スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」は報告書「仕事の未来リポート2020」で、人工知能(AI)やロボットの導入などで労働のデジタル化が急速に進んでおり、2025年までに世界で8500万人が失業するとの予測しています。これを伝えた記事もデジタル化で8500万人失業 対応職種で雇用創出も―シンクタンク:時事ドットコム(2020年10月21日09時21分)というタイトルでした。一方で、デジタル化に対応する職種で9700万人分の新たな雇用が創出される可能性があるとしています。差し引きで雇用が増える方が多いという予想なんですね。

 ただ、注意してほしいのは、これが事実であっても失業した人たちがそのまま増える職業に対応できるとは限らないということ。当たり前の話、すべての人がすべての職業をできるわけじゃありませんよね。他に時間的なズレがあり、雇用の増加は遅れてるという可能性もあります。ここらへんの話を「仕事を奪わない」という主張の人はしないことが多いです。

 報告書は需要が低下する職業として、具体的には、データ入力者や役員秘書、会計・給与の担当者、会計士などを挙げていました。一方、需要が高まる職業はデータアナリストや科学者、AIやビッグデータの専門家などだとしています。そして、この増える職業を見れば、ほとんどの人がなれない職業だとわかりますよね。AIに雇用を奪う側面があるというのは、やはり事実でしょう。


【本文中でリンクした投稿】
  ■マスコミは嘘だらけ?デマ捏造フェイクニュースは信じられやすいと判明

【その他関連投稿】
  ■生徒「なぜ仕事を奪う研究を?」、AI研究者を責める 新井紀子教授の回答は?
  ■AI(人工知能)で農家の職人技すら不要に グーグルテンサーフローでキュウリの選別や唐揚げの盛り付け
  ■人間にしかできないことは読解力…のはずがAIより悪い中高生たち 実は大人の読解力も怪しい?
  ■今読むしかない!『インターネットの次に来るもの 未来を決める12の法則』(ケビン・ケリー)
  ■浪人してた東ロボくん、東大を諦める AIの弱点と人間との違い
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