企業の農業ビジネスへの参入は失敗する例が多いです。
オムロンの農業参入が失敗したのは、農業を舐めていたからなんかもそういう話でした。
ただ、
欧米でも人気、旭酒造の獺祭は工場で作る 職人の技をデータ活用で再現で紹介した旭酒造のデータ分析は、農業分野でも通用しているようです。
●獺祭人気は本物か偽物か?
なお、今回の記事は、
銘酒・獺祭(だっさい)人気は一過性ブームか? : 深読みチャンネル : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)(日本酒ライター 杉村啓 2016年12月02日 05時20分)というもの。なので、先に獺祭人気の今後についての話を軽く。
作者である日本酒ライター・杉村 啓さんが言うには、獺祭の"美味しさをあえて短い言葉で例えるならば、優等生的な、秀才の味わい"だそうです。また、特に普段は日本酒を飲み慣れていないような人が飲んでみてもおいしいお酒だと言います。
しかし、この初心者向けの味であるがゆえに、獺祭を入り口として他のクセのあるお酒にはまってしまい、獺祭の買う頻度が落ちるということが既に起きているのではないかとしていました。
とはいえ、杉村さんは、獺祭が「いつでもどこでも飲めるお酒」として定番になりつつあるともしていました。そして、海外人気もあることから、"ここ数年のような急成長よりはさすがに緩やかになるかもしれないが、このまま成長路線を維持していくのではないだろうか"と予想されていました。
●獺祭で成功の旭酒造のデータ分析、農業でも効果
さて、私が最も気になった農業の話。実を言うと、旭酒造が直接農業ビジネスに参入しているわけではなく、アドバイスといった感じみたいですね。
ただ、育てるのが難しい山田錦というお米の生産量を増やすことに成功したということで、データ分析がめちゃくちゃ役に立ったと言って良いと思われます。
今回検索していて、企業の農業参入が失敗する理由は既存の農家が充分に効率的だから…と主張している人も見つけたのですが、獺祭の例からすると通用するところが十分にあるのではないかと予想されます。
ちなみに山田錦の生産量が増えたのも、獺祭のおかげといえる。山田錦は米の粒が大きく、日本酒にするととてもいい香りがする、「酒米の王様」と言われている品種だ。全国新酒鑑評会などでは一時期、山田錦で造った酒が上位を独占するほどだった。ただし、粒が大きい分、稲穂が重いため、通常の稲よりも倒伏しやすく、育てるのが難しい。倒伏して籾が水に漬かってしまうと、発芽したり、カビなどに侵されてしまったりして、酒造りには使えなくなってしまうのだ。
そこで旭酒造は、富士通と共同で山田錦の栽培データをコンピューターに蓄積して、栽培農家と生産ノウハウや知見の共有化を図った。
なお、データ分析以外にも以下のようなことをやっていました。
また、米作りの際、5%から10%程度の割合で発生してしまう、粒がそろっていない米(等級が付けられないことから「等外米」と呼ばれる)も含めて買い取ると宣言したりして、山田錦の増産に尽力したのだ。
で、山田錦の生産量が増えて、獺祭の生産量も増えたわけですが、実はこれがさっきの話にも関係してきます。品薄解消によって、逆に獺祭ブームが少し失速したかもしれないと作者は予想していました。品薄商法は悪いやり方になりがちなので真似しなくていいんですが、品薄商法の逆みたいな感じです。
そのおかげもあり、食用米の需要量は毎年8万トンずつ減少し続けていると言われている中、山田錦は数年前と比べて1.5倍以上も増え、約3万8000トン(2015年産)になっているのだ。
●企業参入の失敗多い農業ビジネス
あと、一般的に企業の農業参入は難しいよって話も少し。
農業参入コンサルタントで、農テラス代表取締役の山下弘幸さんによれば、「参入企業の8割はうまくいっていない」とのこと。
(
「農業ビジネス」参入企業の8割が失敗してしまう理由│NEWSポストセブン 2016.06.18 07:00)
理由は以下の3つだと言います。(説明はそのまま引用ではなく、短くまとめています)
(1)3年、5年先まで辛抱できない
農業は育てた農作物がお金に換わるまでタイムラグがある。緻密な資金計画や栽培計画を積み重ね、3年後にようやく事業の道筋が見えてくるもの。さらに、農作物の販路を拡大させてビジネスを軌道に乗せるまでには2年かかる。
つまり、参入から5年先のビジョンや体力(資金)がない企業は、泣かず飛ばずのまま早期撤退を余儀なくされてしまう。
(2)社員が普通の「農家」になってしまう
いくら鮮度がよく質の高い大根ができても、それを売るためには出口となる消費者に喜ばれるよう、プロモーションをかけてサンプルを出してと、マーケットインの視点がないと経営は長続きしない。
しかし、れまで顧客第一でビジネスをしてきた企業でも、農業従事者になるとなぜか顧客や納期のことはすっかり忘れて、出来のいい農作物をつくることに集中してしまう。
(3)“IT脳業”の本質をはき違えている
農作物が育つ環境にばかりIT技術やお金を費やして利益が上がらなければ本末転倒。農作物がお金に換わるまでタイムラグがあるので、いわば契約栽培という名の“先物取引”。
なので、農作物が育つ環境にIT技術を費やすよりも、「○月○日までのトマトの生産高は○トンになる」という収量予測を常に発信できる企業のほうが、マーケット側からの信用力が増し、次のビジネスに繋がりやすい。
●農業ビジネスは生産よりも販売先確保が大事?
そういえば、日経ビジネスオンラインであった農業ビジネスの連載でも、販売先が確保できていなかったことが問題となっている例がいくつかありました。農業への企業参入と言うと生産に目が行きがちですが、それより販売先確保が大事かもしれません。
同じ連載で成功例として挙げられていた北海道のある企業は、川上から川下まで幅広くやる企業でした。また、この連載ではないものの、コンビニのセイコーマートも自分で作って自分で売るをやり成功した企業の例です。
(関連:
セイコーマートの100円惣菜がすごい ボリュームたっぷりでなぜこの値段?)
今回の山田錦も当然販売先が確保できています。そもそも旭酒造がもっと山田錦が欲しいと言って情報を提供したり、全量買取をやったりしたわけですからね。やはりこれで安定しました。
供給より需要の確保を重視というのは、一つのポイントと言えるかもしれません。
【本文中でリンクした投稿】
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