大きなニュースになると、その現象が多数起きていると誤解されることがよくあります。以前も少しやったように、高齢者の事故が多いという理解も、この錯覚が起きているように感じていました。で、今回見ることができた事故の多さのデータによれば、事故が多いのは圧倒的に10代でした。その次というのも20代であり、高齢者はその下という順位だったのです。
その後、<高齢者ドライバーによる死亡事故の件数は増加?データを見ると…>、<ひき逃げ事故で多いのも高齢者?意外に傾向がはっきりある可能性>、<逮捕されたひき逃げ犯「これくらいの事故で逮捕されるのは心外」>などの話を追記しています。
冒頭に追記
2022/12/30追記:
●ひき逃げ事故で多いのも高齢者?意外に傾向がはっきりある可能性 【NEW】
●逮捕されたひき逃げ犯「これくらいの事故で逮捕されるのは心外」 【NEW】
2021/11/22追記:
●高齢者ドライバーによる死亡事故の件数は増加?データを見ると…
●ひき逃げ事故で多いのも高齢者?意外に傾向がはっきりある可能性
2022/12/30追記:4人をひき逃げし、そのうち2人死亡というニュースを見て、交通事故の中でも特に悪質性が高い事故だと言えるひき逃げ事件って、高齢者は少ないのではないか?と思います。とりあえず、このきっかけとなった事故の場合、40代(49歳男性)という高齢者ではない部類の人が運転手でした。
(
堺4人死傷ひき逃げ、49歳の容疑者を逮捕 大阪府警 | 毎日新聞より)
合わせて5件になるように、これ以外に4件ざっと見てみよう…と検索。すると、46歳男性、20歳男性(ただしむそもそも無免許)、43歳男性、53歳男性(これだけ後で内容を補足)ということで、思った以上にはっきりとした結果に…。全員男性というのも特徴で「女性は運転が下手」という主張にも疑問を感じさせる結果になっています。
5件のみであり、データとして信頼性があるわけではないのですが、何度も書いているようにそもそも高齢者叩きにデータ的な根拠がありません。ひき逃げ報道の場合は「中年の免許を取り上げろ!」「男性の免許を取り上げろ!」とはなりませんので、思い込みによる無意識の差別が生じていると考えられます。
・石巻市のひき逃げ 美里町の46歳男を逮捕 自転車の女性をはね重傷 | khb東日本放送 2022/3/5 (土)
https://www.khb-tv.co.jp/news/14564616
・無免許運転でひき逃げ容疑 20歳男を逮捕 群馬県警藤岡署 | 上毛新聞社のニュースサイト
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/193023
・群馬・安中市のひき逃げ事件で会社役員の男を逮捕 群馬県警安中署「より確実な容疑の過失運転致死で」 | 上毛新聞社のニュースサイト
<19日午前に群馬県安中市鷲宮の市道で発生したひき逃げ事件で、県警安中署は20日、自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで、同市の会社役員の男(43)を逮捕した>
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/191332
●逮捕されたひき逃げ犯「これくらいの事故で逮捕されるのは心外」
引用元を一件だけ紹介しなかった53歳男性のひき逃げ事件。これは死亡事故とはなっていないものの、別の意味で極めて悪質。<車に接触された小学5年の男児『逃走した車のナンバーとっさに手に控え』53歳の男浮上し“スピード逮捕“ 男「これくらいの事故で逮捕は心外」奈良・安堵町>(MBSニュース)というニュースだったのです。
<ひき逃げの疑いで逮捕されたのは、奈良県安堵町の会社員の53歳の男です。警察によりますと、男は10月31日午前に乗用車を運転中に、追い抜きざまに小学校へ登校中の小学5年生の男児(10)に接触したにもかかわらず、その場から逃げた疑いがもたれています。
男児は胸に軽いけがをしました。警察によりますと、男児が手の甲に逃走した車のナンバーを控えていたことなどから男の関与が浮上。約12時間後の『スピード逮捕』につながったということです。
警察の調べに対して男は容疑を認めたうえで「これくらいの事故でけがをするとは思えないので、逮捕されるのは心外だ」などと話しているということです>
https://news.yahoo.co.jp/articles/b01b5ffff16b099f67621a71d3c0952991e6bced
ヤフーニュースの人気コメント
<道路交通法第72条報告義務違反。軽微な接触でも通報しなければならない。接触したのに通報しなかったから逮捕。怪我の程度や事故の規模は関係ないし、その程度の認識ならもうハンドル握らない方が良い>
<「これくらいの事故で逮捕は心外」などと言える大人がいる事に愕然としますね。 怪我の程度は関係なく車を停車させ、被害児童の安否を確認し学校や警察・救急に連絡するのが当たり前だと思います>
<その場で救護活動や事故の報告とその後の処置をちゃんとやっていれば逮捕まではなかったのでは?逮捕されたのは救護義務の放棄と轢き逃げが原因だろうし>
上記の3番目のコメントの方は「こういう輩はハンドルを持つべきではない」ともコメント。問題を起こした個人に問題がある…というもっともな指摘です。ところが、犯人が高齢者の場合はこうしたコメントが「高齢者はハンドルを握るべきではない」になってしまうのが差別的。こういうのは私も注意しなくちゃいけないと思うところです。
●高齢者ドライバーによる死亡事故の件数は増加?データを見ると…
2021/11/22追記:
「75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故件数は10年以上変わっていない。悪者にせず、まずは代替案の提示を」“免許返納”へ向けた説得について認知症の専門医 | ABEMA TIMES(ABEMA Prime 2021/11/19)という記事が出ていました。年に200人超の高齢者に免許返納を促しているという八千代病院・愛知県認知症疾患医療センター長の川畑信也さんに話をうかがっています。
「非常に誤解されていると思う。こういう事故が起こると必ずマスコミがすごく取り上げるので強い印象を受けるけれども、警察庁のデータによれば75歳以上のドライバーによる死亡事故の件数は2007年以降、毎年450件前後でほとんど増えていない。逆に言えば75歳以上のドライバー全員から免許を取り上げても、年間3000人くらい亡くなっている方のうち、400人ぐらいしか減らないわけだ。そこを誤解して、“高齢の方の運転は危ない”というイメージを作り、悪者になってしてしまっている」
この記事を見つけたのはツイッターであり、ツイッターのユーザー層なら結論ありきで反論しているだろうなと思ったらやはりちらほらそういう人がちらほら。根拠がなくイメージ論でしか無い「高齢者ドライバーが危険で免許を取り上げるべき!」という思想を絶対間違いないと思って、それに基づいた意見を言ってしまうんですね。
ツイッターでは「死亡事故の件数のが減ってなきゃいけないのに減っていないのが問題だ」という主張もありました。ただ、これも根拠不明なんですよね。同じことは医療センター長の話にも言えてしまうのですが、事故率という概念が抜けています。事故数だけを見ていると、正確な議論ができないのです。
例えば、現在は高齢者が増えているため、高齢者ドライバーも増えている可能性があり、事故数が同じなら事故率は減っている可能性すら考えられます。さらに最近は健康寿命が伸びて元気な高齢者が多いために高齢者ドライバーがかなり増えていると考えられるため、これもまた事故率が下がっていると推測できる要素でしょう。
…といった感じで、死亡事故の件数だけ見ていても仕方ないんですね。問題は高齢者ドライバーの数や彼らの運転時間などを考慮した事故率を見なくてはいけません。これを考えられる人ってなかなかいないですし、そのせいかデータもなかなか見つからなくて苦労します。ただ、最初に書いていた以降の話では、多少こうしたデータがありましたので参考にしてください。
●免許を取り上げるべきは高齢者より若者?事故が多いのは圧倒的に10代
2017/1/2:以前書いた投稿というのは、
高齢者以外でも多いアクセルとブレーキの踏み間違い事故 6割は75歳未満と
実は高齢者と若者でほぼ同じ事故率 ペダル踏み間違い、ブレーキ・ハンドル操作不適などの操作不適事故。ただ、これらでは具体的に年代ごとにどれくらいの事故が多いのかがわからず、歯がゆい思いをしていました。
しかし、
高齢者による交通事故 免許を返納すれば済む問題なのか THE PAGE / 2016年12月31日 14時20分にデータがあって、やっと知りたい情報がわかりました。免許保有者10万人あたりの、2015年の第一当事者(事故を起こした人の中で最も責任が重い人)を比べたグラフが載っていたのです。ここでは具体的な数字が書かれていませんが、2015年の場合、10代(16~19歳)が10万人あたりで1900人くらい。これは本当のぶっちぎりのトップ。2位は10万人あたりで1000人くらいですから、倍近い事故の多さでした。
この2位というのも、20代の若者です。高齢者はこの後になり、80代が10万人あたりで800人くらい、70代が同600人くらい。その他の年代は同500~600人にごちゃっと固まっています。ですので、70代も他の世代とほとんど変わらない感じです。この傾向は2015年だけというわけではなく、ここ10年間変わりありません。ただ、各年代とも事故率は明確に減ってきています。事故率そのものははっきりとした減少傾向なんですね。ここらへんも錯覚している人がいるかもしれません。
●死亡事故の起こしやすさでも高齢者の問題とは言えず やはり若者が悪い
どうしても高齢者を悪者にしたい人たちは、重大事故が多いんだ!という主張をするかもしれません。実を言うと、この傾向は若干見られるみたいです。とはいえ、"死亡事故の起こしやすさについても警察庁にデータがあり、ここ10年間では10代と80代以上が他の年代よりも死亡事故を起こしやすいことが分かります"とのこと。(グラフはなし)
なので、これも結局高齢者だけの問題とは言えず、10代といっしょですし、10代より70代の方が安全という話。また、これまた10年前から同じような傾向だともありました。冒頭で書いたように、テレビで大きく扱っているからという錯覚ですね。こういった錯覚では殺人事件のものが有名で、殺人が増えていると錯覚している人が多いです。
ついでに言うと、今は昔と違って治安が悪く物騒だとか、今の子供や若者は怖いとかも言いたがりますよね。高齢者と若者という年齢の違いがあるだけで、やってることは似たようなものです。ここらへんは、
日本の殺人事件被害者数の推移 ピークは昭和30年で現在は20%未満まで低下や
日本の凶悪少年事件・殺人事件は減っている 戦後は現在の8倍もを参考にしてください。
●「ペダルの踏み間違い」事故防止そのものは重要だが高齢者叩きは問題
なお、年代によって事故の内容に傾向の違いがあることは事実です。以前のものでやったように、高齢者において「ペダルの踏み間違い」が多いことはわかっています。ただし、結局高齢者以外でも「ペダルの踏み間違い」がないわけではありあせん。このため、こうした「ペダルの踏み間違い」対策を進めようという考えそのものは前向きで意味があるものです。
この対策について記事では、自動運転車と踏み間違いを防止する最近の技術に関して紹介していました。踏み間違い防止システムは、やはりうちでも以前触れており、
アクセルとブレーキの踏み間違い不可能、ナルセペダルの画期性をリンクしていました。
とりあえず、高齢者の免許を取り上げろというのは、データに基づかない暴論でしょうね。理由の一つは前述の通り、そもそも高齢者以外の人身事故や死亡事故が多いこと。さらに記事では、高齢者で「ペダルの踏み間違い」事故が多いとは言っても、全ての人身事故の中で見れば1%に満たないことも指摘していました。これで高齢者の免許を取り上げるという結論に持っていくというのは、無理がありすぎです。
【本文中でリンクした投稿】
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高齢者以外でも多いアクセルとブレーキの踏み間違い事故 6割は75歳未満 ■
実は高齢者と若者でほぼ同じ事故率 ペダル踏み間違い、ブレーキ・ハンドル操作不適などの操作不適事故 ■
日本の殺人事件被害者数の推移 ピークは昭和30年で現在は20%未満まで低下 ■
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