中国企業の進出とか、中国企業が高給で引き抜き…といった話を嫌がる人がいます。ただ、過去に日本のアニメ業界はブラックだという話をいくつかやっているように、アニメ業界での好待遇での人材集めは、業界の健全化のために歓迎すべきかもしれません。そうじゃなくても日本がバブルの時代にやっていたことなんですけどね。他人に厳しく自分に優しい反応です。
2017/1/6:
●日本のブラックなアニメ業界に救いの手?
●『青の6号』を手がけた村濱章司氏が参加していた
●既に多くのテレビアニメを作製、聞いたことあるタイトルは?
●「霊剣山 星屑たちの宴」を作った「国王陛下」が気になりすぎる…
●中国のアニメ市場の重要性を考えると中国重視は正解では?
2019/05/31:
●絵梦はすでに日本撤退?アニメ会社の保有株式をすべて譲渡
2021/06/03:
●「スラムダンク」「聖闘士星矢」などは中国人にとっても大切な思い出 【NEW】
●日本アニメ業界「別に中国人に日本アニメを見てと頼んでいない」 【NEW
●日本のアニメ業界じゃ生活できない!諦めていた人材を中国企業が救う 【NEW
●日本のブラックなアニメ業界に救いの手?
2017/1/6:企業側の言っていることなので本当かどうかはわからず、素直に信じるわけにはいきませんが、以下のような記事がありました。
中国のアニメ企業が、日本のアニメーターをどんどん引き抜いてる=中国メディア サーチナ 2016年12月31日 11時12分 (2017年1月2日 00時00分 更新)(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)
昨今、さまざまな業界において中国資本による日本進出の動きが見受けられるが、中国国内にファンの多い日本のACG(アニメ・マンガ・ゲーム)業界でも、中国資本が日本で会社を設立し人材を集める現象が起きているという。中国メディア・新浪は27日、「中国企業が大量の日本のアニメーターを吸収している」とする記事を掲載した。
(中略)良いアニメ制作人材を集めるために、中国企業が日本企業より高い待遇を提示していると伝えた。その一例として、2015年10月に上海のアニメ企業が日本で設立した絵梦(えもん)株式会社について紹介、同社の李豪凌CEOが「スタッフに良い作業環境を与えるために、人件費で多くの投資をしている」と語ったとしている。
そして、日本のアニメ業界における賃金水準は決して高くないとするとともに、現在原画の単価を高めに設定しているのはいずれも中国からやってきた企業あるいは作品であると伝えた。
●『青の6号』を手がけた村濱章司氏が参加していた
上記で名前の出ていた絵梦(えもん)株式会社というのを検索してみようと思いますが、先に社名について。「梦」というのは、繁体字っぽいですね。日本語表記だと、絵夢株式会社となっています。ドラえもんの中国語表記に「哆啦A夢」というのがあり、やはり最後の「夢」は「もん」と読むのだと思われます。
さて、会社の話。既にWikipediaができていました。
絵梦 - Wikipedia
絵梦株式会社(えもん)は、日本のアニメ制作会社。日本動画協会準会員。
概要・沿革
絵梦は、2013年末に中国・上海にて創業したアニメーションブランド「HAOLINERS(ハオライナーズ)」を展開する上海绘界文化传播有限公司の子会社として、日本初のデジタルアニメ『青の6号』を手がけたゴンゾの創業者・村濱章司を執行役員に迎え、2015年10月に日本で設立された。(その後、村濱は2016年いっぱいで退任[1])
親会社である上海绘界文化传播有限公司は、中国にてインターネット関連の子会社を通して様々なウェブサービスを提供するテンセントを持株会社として、同社のアニメ事業に関して統括的な独占契約を結び、また、中国の動画共有サイト嗶哩嗶哩(ビリビリ)からの事業出資を受けて、中国最大級の動画配信メディア「iQIYI」(アイチーイー)にアニメコンテンツを供給している。
●既に多くのテレビアニメを作製、聞いたことあるタイトルは?
テレビアニメ作品も既に以下のようにたくさん名前が挙がっていました。が、有名なのあるんですかね、これ? 私は一つも聞いたことありませんでした。
2016年
・霊剣山 星屑たちの宴
・一人之下 the outcast
・Bloodivores
・CHEATING CRAFT
・TO BE HERO
2017年
・Spiritpact
・霊剣山 叡智への資格
・銀の墓守り
●「霊剣山 星屑たちの宴」を作った「国王陛下」が気になりすぎる…
一番上の「霊剣山 星屑たちの宴」を検索すると、DVDがありました。「霊剣山 星屑たちの宴」はWikipedia、アマゾン両方にページがあるものの、どちらもない作品もあり、知名度は様々みたいですね。
TVアニメ「霊剣山 星屑たちの宴」 第1巻 [DVD]

あと、「霊剣山 星屑たちの宴」の作者が「国王陛下」というすごい名前で、最初読んでいて非常に戸惑いました。
霊剣山 - Wikipedia
『霊剣山』(れいけんざん、日本語: 従前有座霊剣山、簡体字: 从前有座灵剑山、繁体字: 從前有座靈劍山)は、国王陛下によるウェブ小説。中国の『創世中文網』にて2013年6月29日から2015年7月26日まで連載された。
猪画×菌小莫によるウェブ漫画が中国の『テンセントアニメ』(テンセント)にて2014年8月8日から連載中。2016年に日本と中国の共同企画でアニメ化された。(中略)
テレビアニメ
2016年1月より3月まで第1期『霊剣山 星屑たちの宴』(れいけんざん ほしくずたちのうたげ、簡体字: 从前有座灵剑山)が日本のAT-X・TOKYO MX・KBS京都・サンテレビ・テレビ愛知にて放送された。また、中国語版がテンセントにて配信された。
●中国のアニメ市場の重要性を考えると中国重視は正解では?
すべてのアニメがそうなのかわかりませんが、絵梦の作品は日本向けというよりは、中国向けという部分が大きいのかもしれません。ただ、これは理にかなったやり方じゃないのかな?とも思います。
日中の正確なアニメ市場の大きさがわからないものの、人口やGDPで大きな差があることを考えると、中国を主体に作った方が利益を出せます。さらに将来まで考えた場合はなおさら中国を重視する意味が出てきます。(関連:
中国の逆転以来報じられない日本と中国の名目GDPの比較と推移)
また、同じスタッフの人数で儲けが大きいとした場合、それだけスタッフに報いることも可能だと言えます。そういう意味で、中国市場を念頭に置いたやり方は正しいと言えるでしょう。あと、上記で何度か名前の出てきた「テンセント」という企業名に聞き覚えがあったので、ブログ内検索すると、世界最先端の企業ランキングの話がヒットしました。今勢いのある企業なんだろうな、という感じです。
●絵梦はすでに日本撤退?アニメ会社の保有株式をすべて譲渡
2019/05/31:絵梦(えもん)が日本での事業は撤退したと見かけたものの、ちょっと違うっぽいです。まず、日本のアニメ会社だった
アートランド - Wikipediaには、以下のような説明がありました。
・2016年6月、中華人民共和国のアニメブランド「HAOLINERS」(ハオライナーズ)を手掛ける上海絵界文化伝播有限公司の日本子会社である絵梦株式会社の出資を受け、資本金を1,305万円に増資した。
・納品の延期などで急速に経営が悪化し、2017年7月4日に債務整理を弁護士に一任。負債総額は2億9884万円(平成28年12月期決算時点)。
・2017年7月12日、筆頭株主だった絵梦が保有する株式のすべてを株式会社LEVELS(東京都)に譲渡して連結子会社から外した。公式サイトのニュースリリースでは事業継続を発表したものの、本社スタジオは引き払われており、アニメーション制作事業からは事実上撤退している。
ただし、
絵梦 - Wikipediaによると、日本法人絵梦株式会社はその後も健在。2018年8月にはオフィスを新設しています。また、2017年7月から9月まで、日本のコンテンツの初制作元請作品となる『セントールの悩み』を放送…とあったので、日本ではまだ始まったばかりみたいですね。
前回書いたように市場規模の将来性を考えると、日本市場にこだわる必要はない気がするものの、まだ日本でチャレンジしそうな感じです。
●「スラムダンク」「聖闘士星矢」などは中国人にとっても大切な思い出
2021/06/03:他のところでも書いた別の中国アニメ企業の話を。
日本のアニメが「中国で負ける日」が来る。「天才に頼らない」戦略が、圧倒的な差を覆そうとしている | ハフポスト(2021年06月02日 07時29分)という記事からです。こちらは日本向けアニメにこだわっておらず、日本で中国向けアニメを作っていました。
記事ではまず「スラムダンク」「聖闘士星矢」「ドラえもん」は日本人だけでなく中国人にとっても、「国民的」な存在で子供時代の思い出だと説明しています。ただし、日本のソフトパワーを象徴するアニメが今、中国で存在感を失いつつあるとも指摘。「待っていればチャイナマネーが入ってくる」時代の終わりが見えてきたとしていました。
東京都町田市にあり、中国IT大手・テンセントが出資する中国発のアニメ制作会社「カラードペンシル」(本社:中国重慶市)では、日本のアニメ業界関係者を「これを中国が作ったのか」と驚かせる技術の高い作品を作成。制作側の技量が向上し、中国産の原作も増え、日本アニメが徐々に淘汰されつつあるとされていました。
「カラードペンシル」の瞿史偉(く・しい)代理社長は、「日本アニメが急に無くなることはありません。ただ中国人消費者にとって、より面白いものを作れるのは中国人クリエイターです」と説明。私はよく日本流より現地化が大事としているように、地域により好みが異なりますからね。説得力ある説明です。
●日本アニメ業界「別に中国人に日本アニメを見てと頼んでいない」
実際、中国が放映権を購入するアニメは、2018年には年間192作品が配信されていたのに対し、2019年は178作品。2020年は169作品と減少傾向だといいます。また現地メディアによると、日本のサブカルチャー好きが特に多く集まる「bilibili」でも、日本アニメの視聴数は2019年に中国産に追い抜かれました。
中国の海賊版対策に第一線で関わってきた弁護士・分部悠介(わけべ・ゆうすけ)さんも「ここ5年ほどで、中国アニメ産業が底上げされていると感じます。日本アニメ産業はもう少しこの市場を真剣に見ておくべきでした」と危機感。記事ではありませんでしたが、中国が「違法アニメばかり」という認識も確か今だと事実ではなかったはずです。
一方、「別に中国人に日本アニメを見てと頼んでいない」といった声もあるとのこと。分部悠介弁護士は「それも一理あります。中国に進出する・しないは企業の戦略次第です」と前置きしたうえで、「日本の市場はシュリンク(縮小)していきます」と指摘していました。
なお、2021年4月から、ネット配信される海外産アニメへの検閲も強化されたという事情もあるとのこと。せっかく日本から作品を買い取っても、検閲終了までに時間がかかるか、最悪検閲を通過しない可能性もあるために買わないという理由もあると説明していました。ただ、日本アニメ減少は検閲が強化された2021年4月以前からですので、理由を説明できていません。
●日本のアニメ業界じゃ生活できない!諦めていた人材を中国企業が救う
また、私がタイトルを見た時点で気になっていたのが、人材に対する扱い。カラードペンシルでは、日本人と中国人、それにベトナム人などの国際的なメンバーがアニメ制作。給与は突出して高くないものの、日本では15%しかいない正社員が半分でさらに増やそうといしている…という安定性が特徴となっています。
これはアメリカ流のビジネスモデルのため。「ネットフリックスやアマゾンのように、いい作品は予算を出して購入してくれます。受注件数や金額を予測しやすいのです。ここは日本と大きく異なる点だと思います」と瞿史偉代理社長は説明していました。アニメ業界を一度諦めてから戻ってきたという日本人もいるそうです。
<かつて、日本の制作会社で働いていたが「経済的な理由で脱落した」と退職。介護関係の仕事に就いていたが、去年6月に正社員として「カラード」に入社した。「普通に働いて普通にお金がもらえる。業界全体でも片手で数えるくらいです」と話す>
記事タイトルであった「天才」も気になっていたのですが、これは瞿史偉代理社長の「日本には『天才』がいます。(中略)そういう存在は中国にはまだいません。トップ層は日本の方が全然強いのです。ただ天才は相応の給料をもらっていても、その下の人たちは(生活も)大変だと思います。天才たちの栄光を頼りにするのは限度があるのではないでしょうか」という発言からでした。
また、「天才に頼らない」戦略というのは以下の発言も踏まえている感じ。日本アニメへの思い入れを随所に滲ませる瞿史偉代理社長は日本アニメ業界の魅力を語りつつ、「若い世代が必要。そのためにはきちんとお金を出さないと。根性や愛情で頑張ろう、には限度があります。業界全体で1つのチームとなって欲しいです」とエールを送っていたそうです。
【本文中でリンクした投稿】
■
中国の逆転以来報じられない日本と中国の名目GDPの比較と推移【その他関連投稿】
■
マシリトが少年ジャンプの原則「友情・努力・勝利」や王道を全否定 ■
少年に読まれていない少年誌は?ジャンプ・マガジン・サンデー・チャンピオン ■
アニメファン・オタク差別 左翼が宮崎勤のような変質者を作った説 ■
首藤武夫氏参加アニメ『RAIL WARS!』、原作レイプと酷評レビュー ■
アニメ化でオリキャラは悪?イクラちゃん・中島くん・花沢さんもアニメ版サザエさんのオリキャラだった ■
文化・芸術・宗教・海外との比較についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|