ブータンと言うと「世界一幸福な国」というイメージが定着しましたが、これは誤解だと指摘されていました。
●ブータンが世界一幸福な国は誤解
まず、ブータンがGNH(国民総幸福)という、国民の幸福度を測る尺度が国家運営の柱に据えらているというのは、事実です。ただ、これがイコール「世界一幸福な国」を示すか?と言うと、そうではありません。
ある企業が「社員の働きやすさを重視していきます」とアピールしている場合なんかを考えるとわかりやすいでしょう。これは飽くまで目標であり、今現在世界一社員の働きやすい会社であることは示していません。むしろ会社なんかの場合は、口だけじゃないの?と積極的に疑う人は多くなるでしょう。あまり信頼されません。
安倍首相の働き方改革をするというアピールなんかも懐疑的に見られていますが、これもわかりやすい例。働き方を改革しますと言った途端、日本が世界一働きやすい国になるわけではないのです。
ブータンの場合も、長年ブータンを研究してきた早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター助教・平山雄大さんが以下のように説明していました。
「正しくは『世界一幸福な国を目指している国』。その目標を実現するための政策の柱がGNHで、幸福というイメージが独り歩きしてこうした誤解が生じたのだの考えられます」
(
「世界一幸福な国」をめぐる誤解 ブータンで今起きていること|from dot.|ダイヤモンド・オンライン( dot. 2016年12月24日 ライター・小神野真弘))
記者をガイドしてくれた現地人男性に、「あなたは幸せですか?」と単刀直入に聞いてみた場合も、以下のような自虐的な答えが返ってきました。
「ブータンを訪れた旅行者からよく聞かれる質問です。幸せかそうでないかと聞かれたら、幸せだと思います。ただ、ブータンがGNHを重視しているのは、GDP(国内総生産)ではほかの国から大きく後れをとっているからで……」
ただ、
脱成長論とGDPと幸福度 ブータンは経済成長を目指すで書いたように、ブータンも経済成長を重視しています。経済成長は幸福と関係が深く、これはとても大切なことだと考えられます。
●実はむしろ日本より不幸な国だった
GDPに関して言えば、ブータンは明らかに悪いです。ブータンの名目GDPは約20億ドル(2015年、国際通貨基金による)。調査対象となっている189ヵ国中166位。最下層のグループです。
にも関わらず幸福なのだ!という美談を好む人が多いのですが、衝撃的な調査結果がありました。何と日本より不幸な国だったのです。
【幸福度調査】(0を「とても不幸」、10を「とても幸福」とした11段階評価)
ブータン 6.1 (2010年にブータン研究センター(現ブータン研究・GNH調査センター)が行った調査)
日本 6.6 (2012年、内閣府による)
ただ、これは私もさすがに予想外でした。経済成長という点で言えば、相対的に低くても上がっていく国のほうが有利であり、明らかに落ち目である日本よりブータンの方が高く出やすいだろうと思っていました。
また、貧富の格差というのは幸福度に対してたいへん影響が大きいのですが、みんな貧しい国の場合はこれはあまり不利に働きません。細かいここらへんの数字を見ていないのであれですが、意外です。
…と書いた後に続きを読んだら、平山さんが「多くの国がそうであるように、貧富の差の拡大や失業率の上昇、農村の過疎化など、さまざまな問題が山積している」とおっしゃっていました。モロに幸福度が下がる現象が起きまくっています。
●他人と比較してしまうと幸福度が下がる
こうした幸福度が下がる現象が起きている理由はいくつか挙げられていました。基本的にはブータンが近年発展しているがゆえのことです。
記事ではその中の一つとして急激なスマートフォンの普及と、それによる情報化を挙げていました。情報化については、別記事でも懸念が出ていました。
ブータンで4G競争が激化。しかしネット普及はブータンにとって諸刃の剣の側面も HARBOR BUSINESS Online / 2016年12月17日 16時10分 田村 和輝
インターネットの解禁が遅く、普及のペースも遅かったが、今や携帯電話事業者各社は高速通信を実現する第4世代移動通信システム(4G)を導入している。インターネットの普及率は上昇傾向にあり、4Gの競争が活発化しているが、インターネットの普及はブータンという国家にとっては負の側面も小さくない。(中略)
ブータンに滞在してみると確かに自然が豊かで、建物や人々の服装に目を配ると伝統文化を守る姿勢が見て取れた。しかし、これからインターネットの普及で外国の政策や文化に触れる機会が多くなり、情報拡散のペースが加速すれば、若年層を中心にブータン政府の保守的な政策に疑問を覚える者は間違いなく増えるはずだ。
先程出てきた貧富の格差がなぜ問題だと言われているかと言うと、他人と比較してしまうためです。
幸福度と自殺率の関係 幸せな国や都道府県ではむしろ自殺が多い?でやったように、幸福な人が多い地域ほど自殺者が多いことがわかっています。
ただ、これは逆に言えば、比較的他国との格差はそこまで重要ではないのではないか?とも思うんですけどね。まあ、他国との格差は北朝鮮なんかもめちゃくちゃ気にして情報統制していますし、やはりある程度は効いてくるのかもしれません。
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