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現在のマクロ経済学の主流派はニュー・ケインジアンと新しい古典派(ニュー・クラシシズム)?


 経済学、特にマクロ経済学の主流派は何なの?というのが気になっていろいろと検索してみました。


●現在のマクロ経済学の主流派はニュー・ケインジアンと新しい古典派(ニュー・クラシシズム)?

2017/1/13:まず、比較的客観的であろうWikipediaから。マクロ経済学 - Wikipedia(2016年11月12日 (土) 05:28 )には、"数の上でも主流派である新しい古典派とニュー・ケインジアン"と書かれている部分があります。この書き方からすれば、この2つが現在の主流派であるように読めます。

・新しい古典派
・ニュー・ケインジアン

 同じページでは、主流とは明記がないものの、学派と普及年代を示した表がありました。この表においても、やはり新しい古典派とニュー・ケインジアンが最新となっていました。

1990s 新しい古典派(ニュー・クラシシズム) 価格硬直性は存在せずワルラス均衡が常時成立
1990s ニュー・ケインジアニズム 価格硬直性へのミクロ的基礎付け

 Wikipedia以外の別のところも見てみましょう。(PDF)現代主流派マクロ経済学批判の一視角─ポスト・ケインズ派の挑戦 鍋島直樹(名古屋大学)の冒頭では、<"1980年代以降の主流派マクロ経済学は,新しい古典派とニュー・ケインジアンのあいだの対立を軸として展開されてきたと言ってよい>と書かれています。Wikipediaと同じく新しい古典派とニュー・ケインジアンが最近の主流派だという理解です。


●重商主義から新しい古典派・ケインズ派まで 主流経済学の変遷

 質問サイトはこれらに比べると、ぐっと信頼性が落ちます。ただ、私が見た現代の経済学の主流は? - 経済学 解決済 | 教えて!goo(回答者: bigorange9 回答日時:2009/10/05 21:04)も結局上記までと同じ認識でした。また、ここがおもしろかったのは、今までの主流経済学の変遷を長く振り返っていたこと。これも結局信頼性が不明なものの、書き方を変更して、以下に表記しておきます。


重商主義
 ↓
重農主義
 ↓
アダム・スミス
 ↓
リカードとマルサス
 ↓
リカードからJSミル(スミスからミルまでが古典派)
 ↓
限界革命(ワルラス・ジェヴォンズ・メンガー)
 ↓
マーシャル(英国新古典派)・オーストリア学派・北欧学派
 ↓
ケインズ(マーシャルおよび北欧学派およびマルサスから→マクロ経済学)・ピグー(マーシャルから→厚生経済学)→
 ↓
ヒックス・アロー・ドブリュー(一般均衡論)、サミュエルソン(ケインズおよび新古典派から→新古典派総合)・フリードマン・ルーカス(マネタリズム→合理的期待)
 ↓
その後の主な流れは以下のものが共存
・ゲーム理論、契約理論(1970年代~ミクロ経済学の革新)
新しい古典派、新しいケインズ派(1980年代~マクロ経済学の革新)
・行動経済学、神経経済学(心理学や社会学、神経科学との融合)
その他
・経済物理学、進化経済学(まだマイナーながら成長しつつある)


●新古典派とは別…新しい古典派(ニュー・クラシシズム)とは?

 さて、じゃあ、この主流派はどういうものなのか?という話なのですが、新しい古典派のWikipediaを見るとやたらと短いですし、どんな主張があるのかもよくわかりませんでした。

 とりあえず、新古典派(ネオクラシカル派)と新しい古典派(ニュー・クラシシズム)は、名前がよく似ているけど違うという点は大事です。完全に対立しているわけではなく、ニュー・クラシカル派は完全にネオクラシカル派の枠組みの上に構築されているみたいですね。あとの説明はよくわかりません。

<いくつかの仮定が、多くのニュー・クラシカル派モデルでは共通のものになっている。まず、すべての個人(経済主体)が合理的(効用最大化行動を取る)で合理的期待(当該モデルと整合的な期待)を形成する。また、一度マクロ経済が完全雇用あるいは潜在的産出量で唯一の均衡を持つと仮定された場合には、この均衡は価格および賃金の調整(市場清算)を通じて常に達成可能であると仮定する。
 ニュー・クラシカル派は、代表的個人(representative agent)モデルを先駆的に採用している。しかしながら、このモデルは痛烈なネオクラシカル派批判も浴びている。この批判は、Sonnenschein-Mantel-Debreu定理(Kirman, 1992年)や合成の誤謬(ごびゅう) (fallacy of composition) で示されているように、ミクロ経済学的行動とマクロ経済的結果の間には明確な分裂があることに由来している。(代表的個人モデルを用いると、合成の誤謬は起こらない。)(中略)
 最も有名なニュー・クラシカル派の経済モデルは、リアルビジネスサイクル理論モデルである。このモデルはロバート・ルーカス (Robert Lucas Jr.) が発展させ、この功績によりノーベル経済学賞も受賞している>


●新しい古典派の代表れエイ・リアルビジネスサイクル理論モデル

 よくわからないので、新しい古典派で代表的とされるリアルビジネスサイクル理論モデルを見てみました。ここで具体的にやっとイメージが湧く話に。この理論の場合は、金融政策や物価は全く景気に影響せず、生産技術などで決まるという考え方のようです。

リアルビジネスサイクル理論 - Wikipedia
<リアルビジネスサイクル理論( -りろん Real business-cycle theory)とは、景気循環の要因は生産技術や財政政策などの実質変数(実物的要因)に限られるとするマクロ経済学(新しい古典派)の理論である。リアル(real)とは実質的(実物的)を意味し、いわゆるモノに関連した要因を意味している。ビジネスサイクル(business cycle)とは景気循環を指す。「実物的景気循環理論」と訳す場合もある。
 リアルビジネスサイクル理論は、ジョン・ミュースのアイデアに基づいてロバート・ルーカスが最初に定式化したマクロ経済学のモデルである。新しい古典派経済学(new classical economics)の代表的なフレームワークの一つである。この理論の主張点は、マネーサプライや物価水準などの名目変数の変動が景気循環を引き起こすのではなく、生産技術や財政政策などの実質変数(実物的要因)のみが景気循環の要因となるというものである。
 2004年のノーベル経済学賞は、フィン・キドランドとエドワード・プレスコットのこの分野に対する貢献に対して贈られている[1]>


●リアルビジネスサイクル理論モデルはリフレ派を否定する?

 上記を読むと、リフレ派の理論を真っ向否定する主張のように見えます。で、検索すると、実際にそれっぽい記述がちらほら。例えば、以下に引用した「主流派経済学」のいかがわしさ ー 失われた20年の正体(その4) | ASREAD(島倉原)の記述からもプレスコットさんはそういう主張の人なのだろうなというのがわかります。

<私が日本経済の長期低迷について本格的に調べ始めた約3年前、経済学者の知人が「そのテーマに関して学界で有名な論文」として紹介してくれたのが、”The 1990s in Japan: A Lost Decade”(日本の1990年代:失われた10年)という論文(以下、「林=プレスコット論文」)でした(オリジナルは2000年に発表され、2002年にReview of Economic Dynamicsに掲載)。
 これは、林文夫(当時東京大学教授、現在一橋大学教授)という日本の経済学者と、エドワード・プレスコット(当時ミネソタ大学教授、現在アリゾナ州立大学教授)というアメリカの経済学者の共同論文で、以下のような内容です(プレスコット氏は「リアル・ビジネス・サイクル理論」という、新古典派ベースの主流派経済学の中でも最先端とされている理論の創始者として、2004年にノーベル経済学賞を受賞しています)。
「日本の失われた10年の原因は、財政による景気刺激の不十分さ、流動性の罠(金融緩和が景気刺激に効かない状態)、バブル期の過剰投資の反動、といったものではない。これらは(短期的な)景気後退を説明するものであって、今回の長期にわたる経済不振を説明する理由としては不適当である。
また、企業の設備投資のための資金調達が阻害されている訳でもないため、金融システムの崩壊も原因ではない。
真の原因は生産性の伸び率の低下と、1988年の労働基準法改正を背景とした労働時間の減少で、特に重要なのが前者である。これらは新古典派経済学の経済成長理論で説明できる。
問題解決のためには、生産性を取り戻すためにどのような政策変更(構造改革)をすべきかを追究すべきである。」
(林=プレスコット論文より筆者要約)>


●いわゆるリフレ派もこっちの流れ?ニュー・ケインジアンの説明

 では、もう一つの主流派であるニュー・ケインジアンはどのようなものなのでしょう? ニュー・ケインジアン - Wikipediaでは、<ニュー・ケインジアン(英: New Keynesian economics)は、マネタリストや新しい古典派に対応して発展した経済学の一学派>とした上で、以下のように説明しています。

<新古典派経済学と区別されるニュー・ケインジアンの主要な主張は、賃金と価格が市場が完全雇用の達成を可能にするために直ちに順応しないことである。この価格と賃金の硬直性をミクロ経済理論を使って説明することによって、遊休資源と開拓されない市場は合理的な期待があてはまる時にさえ存在し、持続しうると主張する。 なぜ価格がゆっくりとしか市場に順応しないかを説明するのに、いくつかのアプローチがある>

 他学派との比較においても、やはり完全雇用の達成がただちに起きないことが強調されていました。

<新古典派統合が財政政策や金融政策が完全雇用を実現することを期待するのに対して、新古典学派は価格と賃金の調整が完全雇用を短期に達成するであろうと推測する。一方でニュー・ケインジアンは「価格の硬直性」のため完全雇用は短期では自動的に達成できない、政府と中央銀行の政策や指導は非常に長期にわたらねばならない、と主張した>

 否定するばかりで何を言いたいのかわかりづらいんですが、たぶん「完全雇用の達成がすぐには起きないけど効いているんだよ。だから財政政策や金融政策に意味があるんだよ」という主張なんじゃないかと。

 実際、Wikipediaでは、"不完全競争を仮定することによって、より強力に価格の硬直性が発生する=財政・金融政策が有効であることをミクロ的に示すことが可能となる"と書かれている部分もあります。なので、ニュー・ケインジアンは財政政策や金融政策の実行を訴える人たちなのかな?と思いました。

 また、内容的にリフレ派もこっちの流れなのだろうと思ったのですが、こちらの考え方からも批判が出ているようでよくわかりません。とりあえず、以下はリフレーション - Wikipediaの説明。金融政策と財政政策を肯定していることはわかります。

<リフレーション(英: Reflation)とは、デフレーションから抜け出たが、本格的なインフレーションには達していない状態のこと。略称はリフレ。日本語では通貨再膨張とも訳される。
 リフレーションを起こそうとする政策をリフレーション政策(リフレ政策)といい、不況下における設備の遊休あるいは失業(遊休資本)を克服するため、マクロ経済政策(金融政策や財政政策)を通じて有効需要を創出することで景気の回復をはかり、他方ではデフレから脱却しつつ高いインフレーションの発生を防止しようとする政策である[1]。言い換えれば、年率換算にて数%程度の緩やかで安定的なインフレ率を持続させようとする政策である>


●経済政策の二本柱である金融政策と財政政策 リフレ派とも関係

 ついでに、金融政策と財政政策も軽く見てみましょう。まず、金融政策は金融緩和などを行うものですね。金融政策 - Wikipediaでは、金融政策は、「中央銀行が行う金融面からの経済政策のこと」と説明。さらに、<財政政策とならぶ経済政策の柱である>とした上で、以下のように説明しています。

<金融政策は経済を持続的に拡大させることが最終的な目的である。物価や通貨価値の安定、さらに景気対策の一環として、金融引き締め、金融緩和を行う。手段は、基準割引率および基準貸付利率(公定歩合)や預金準備率(準備預金制度)を変更したり、公開市場操作を行ったりする。また、操作の目標として金利かマネーストック(マネーサプライ)、その結果としての為替レートなどが上げられる>

 一方の財政政策の方は公共事業、減税や増税、所得再配分みたいなのが入ります。財政政策 - Wikipediaでは、まず、財政政策とは、主に国の財政の歳入や歳出を通じて総需要を管理し、経済に影響を及ぼす政策のことと説明。<金融政策とならぶ経済政策の柱である>とも書かれていました。

<税制や国債などによる歳入の政策と、社会保障や公共投資などからなる歳出の政策がある>
<一般に国の財政政策は、
1.資源配分機能 - 道路、下水道、ダム、公園などの建設・整備に関する事業(社会インフラ)や外交、国防、警察などの事業。
2.所得再配分 - 累進課税、相続税、社会保障(生活保護)による富者から貧者への所得移転。
3.経済の安定化 - 累進課税(ビルト・イン・スタビライザー)や減税、公共投資の実施。
の3つの機能がある>

 先程のリフレーションのメニューを見ることでも、間接的に金融政策と財政政策の例を知ることが可能ですので、こちらも掲載しておきます。

リフレーションの政策メニュー
伝統的金融政策
・法定預金準備率の引き下げ[11]
・短期名目金利の引き下げ[11]
・将来の名目金利引き下げに関するアナウスメント(時間軸効果)[11]
・為替介入による通貨の減価(為替レートの引き下げ)[11]

非伝統的金融政策
・オペレーション(市場操作)対象資産の拡大(外債・社債・株式・不動産投資信託など)[11]
・インフレ目標、物価水準目標の導入[11]
・マイナス金利の導入(金融資産・貨幣に対する保有税の導入)[11]

財政政策
・所得税減税、法人税減税[11]
・消費税の引き下げ[11]

金融政策・財政政策の協調(ポリシーミックス)
・公共投資などの財政支出の拡大[11]
・中央銀行の長期国債引き受けによる減税・政府支出の拡大[11]


 これをやったのはもともと本当の主流は何なの?ってのが知りたかったからでした。ところが、現実は上記のように対立する新しい古典派とニュー・ケインジアンがともに主流のようです。どちらか片方とは言えそうにありません。

 また、批判のようなものが見られましたので、同じニュー・ケインジアン内においても、個々の財政政策や金融政策に対する有効性に関しては諸説あるかもしれません。結局、これが王道だ!というわかりやすい経済政策はないんでしょうね。


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