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極右・右翼・保守派思想の銃乱射事件、テロはイスラム教徒が起こす…は誤解


 テロや銃乱射事件などに関する話をまとめ。<極右・右翼・保守派思想の銃乱射事件、テロはイスラム教徒が起こす…は誤解>、<右派の白人人種差別主義者は日本好きが多い?教会銃撃事件の例>、<イスラム教テロの2倍!米国では右翼テロの方が多く被害者も多い>などをまとめています。

6番目に追記
●テロの4割が人種問題の過激派思想、うち過半数が白人至上主義者
2023/04/24追記:
●あいちトリエンナーレ批判の愛国右翼、候補者の首を絞めて逮捕 【NEW】


●極右・右翼・保守派思想の銃乱射事件、テロはイスラム教徒が起こす…は誤解

2019/03/16:ニュージーランド南島のクライストチャーチにあるモスク2か所で起きた銃乱射事件で、警察は犠牲者が49人に増えたことを発表しました。オーストラリアのスコット・モリソン首相は容疑者について、オーストラリア国籍の「過激派で右翼思想を持つ暴力的なテロリスト」だと述べています。
(NZモスク銃乱射、49人死亡20人以上重傷 ネットで犯行中継か AFPBB News / 2019年3月15日 17時54分より)

 容疑者についての情報は今後訂正される可能性があります。ただ、モスクでのテロと聞いた時点で思い出したのが、過去に今後は保守派思想のテロこそ警戒すべき…という主張を紹介したことでした。ズバリISのテロ以上に懸念される極右勢力のテロ:日経ビジネスオンライン(和田 大樹 2016年4月13日(水))というタイトルの記事です。

 このタイトルを見た時点では私も正直ピンと来なかったのですけど、確かに過去に極右思想の人によるノルウェーで多数の死者が出るテロが起きていた実績があるにも関わらず、この方面には無警戒かもしれないと感じました。記事の内容は以下のような感じです。

・ISIS(イスラム国)のテロ以上に、欧州の極右主義勢力、極右主義者によるテロを懸念している。
・2012年7月、ノルウェーの首都オスロにある政府庁舎が爆破され、またその近くにあるウトヤ島で銃乱射事件が発生し、77人が犠牲となるテロがあった。当時も「テロ」と聞けば自然にイスラム過激派の関与を疑う風潮はあったが、実行犯はアンネシュ・ブレイビクという白人金髪のノルウェー人だった。
・ノルウェー人テロ研究者Petter Nesserが2012年1月“CTC Sentinel”に執筆した論文“Individual Jihadist Operations in Europe: Patterns and Challenges”によると、実行犯のブレイビクはイスラム主義から自国を防衛するのは使命であると述べ、異文化へ寛容な政策を採り続ける政府に不快感を抱いていたとされる。


●「銃撃犯はイスラム教徒」とデマを報道、誤報と判明しても訂正しないマスコミ

 検索してみると、他の過去の事件でも右翼思想の人が起こしたと思われるテロ事件が起きています。また、こうしたテロの場合、イスラム教徒が起こした事件とは違う扱われ方をするといった話もありました。

・カナダ・ケベック州のケベック市にあるモスクで2017年1月29日に発生した銃乱射事件は、白人男性アレクサンドル・ビゾネット容疑者(27)による犯行だった。この事件では6人が死亡し、8人が負傷した。
保守系の報道機関は「銃撃犯はイスラム教徒だ」という誤報を流した。例えば、FOXニュースは「複数の情報筋から、ケベックのモスクでのテロ攻撃容疑者はモロッコ系の人物とみられる」とツイッターに投稿。メディアの多くは、容疑者の出自に関する報道を訂正しておらず、この投稿も削除されたのみ。
・カナダのトルドー首相は、今回の銃撃事件はイスラム教徒へのテロ攻撃だと語った。犠牲者の死に哀悼の祈りを捧げる動きが広がったが、アメリカのホワイトハウスやトランプ大統領は沈黙を保ち続けている。
(トランプ大統領、ケベック銃乱射事件に沈黙を貫く。アメリカのイスラム教徒に動揺が広がる | ハフポスト 2017年02月09日 18時31分より)

 別記事によると、銃撃犯は、ドナルド・トランプ米大統領やフランスの極右政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首によるソーシャルメディア投稿に「いいね」を押していたとのこと。他にも女性の権利に反対する意見を在籍していた大学やSNSで発するなど、極右思想に染まっていることで知られていた人物だったそうです。
(カナダのモスク銃撃、容疑者は地元27歳学生 - BBCニュースより)


●ノルウェーでもニュージーランドでも…右翼テロリストが称賛する国とは?

2019/04/02:最初の投稿でちらっとした極右思想の人によるノルウェーでのテロは、うちでも書いたことがあります。死刑のないノルウェーの連続テロ事件 無反省でも刑期21年で出所可能という投稿です。

 そちらで触れたように彼は、日本と韓国を多文化主義に否定的な国家として挙げ、そのような国家を賛美賞賛するなどの行為をインターネット上の投稿で行っていたそうです。会ってみたい人物としても、オランダ極右政党「自由党」党首やイスラム系住民の大量虐殺指導者らと並んで日本の麻生太郎さんの名前を挙げています。これは日本人としては不名誉なことでした。

 ところが、ニュージーランドのクライストチャーチ銃乱射事件のオーストラリア人容疑者も、また嬉しくない形で日本を称賛していた模様。犯行声明のなかに「日本」に触れている箇所があったようです。

 容疑者は〈世界の「ダイバーシティ」な国々は社会的、政治的、宗教的あるいは民族的な紛争の舞台となっている〉と主張して、〈西洋の国々に力をもたらすもの(ダイバーシティ)が、東洋の国々(中国や日本、台湾、韓国)に力をもたらさないのはなぜか〉としていたようです。

 続けて、〈今世紀、世界の覇権を握ろうとしている国・中国が、ダイバーシティが欠如しているにもかかわらず、どれほど強力なことか。なぜ、これら多様性のない国々が、とても多くの様々な指標で見ても我々よりも栄えているのか〉としていました。

 彼の理解は間違いだらけだと思います。ただとりあえず、彼は、多文化を否定したり、民族的・宗教的マイノリティを弾圧したりするような単一民族国家ほど成功していると考え、その一例として日本を挙げていたみたいです。日本人としては悲しまくちゃいけません。
(NZモスク銃撃事件容疑者が「日本の多様性のなさ」を賞賛! ノルウェー連続テロ犯人は「麻生太郎に会いたい」|LITERA/リテラより)


●右派の白人人種差別主義者は日本好きが多い?教会銃撃事件の例

2022/10/20追記:最近の話ではないですけど、典型的なケースということで、チャールストン教会銃撃事件 - Wikipediaの例を紹介。2015年6月17日にアメリカ合衆国サウスカロライナ州チャールストンにある教会で白人男性が銃を乱射した事件です。聖書勉強会のために教会にいた教会員のうち9人が死亡し、1人が負傷しました。

 なお、狙ったものか偶然なのか書かれていませんが、死者の中には、聖職者であり州上院議員のクレメンタ・C・ピンクニーさんがいましたので、これは政治家殺害事件でもあります。

<審理前前に連邦捜査局から受けた2時間にわたる尋問では「私は有罪だ」と述べ自らの罪を認めた。しかし、最終弁論の終了間際には「やらなければいけないと感じた」と述べ、自らの銃撃を正当化している。
 容疑者の白人至上主義者のディラン・ルーフ(英語版)は、声明文で「東アジアの民族を尊敬する」「東アジア系は他の民族を差別するので、我々白人との良き同盟が築けそうだ」と述べているが[8]、白人ナショナリストのなかには、アジアを賞賛する者も少なくなく、『バイス(雑誌)(英語版)』は、白人ナショナリストは「特に日本が好き」であり、それは「白人至上主義者は日本を『単一民族のユートピア』として見ているから」であり、『Plan A Magazine』は、「アジア、特に日本は、社会的および政治的な保守主義によって守られている長い伝統があるから」だと説明している[8]。
 白人至上主義者によるアジア礼賛をたどっていくと、アドルフ・ヒトラーに行き着き、ヒトラーは1945年に「私は中国人や日本人を、自分たちより劣っているとみなしたことはない。彼らの古代文明しかり、その歴史は私たちドイツ人のものより優れていると私は認めている」と語っており、『バイス(雑誌)(英語版)』は、「現代の白人至上主義者たちは、ヒトラーのアジア偏愛にさらなる独自解釈を加えて作り上げた、全く別の虚像に心酔している」と報じている>


●イスラム教テロの2倍!米国では右翼テロの方が多く被害者も多い

2022/11/17追記:古い話ですけど、右翼テロの件数に関する情報があったので、ニュージーランド大量殺人の衝撃―国境を越える白人右翼テロ(国際政治学者 六辻彰二) - 個人 - Yahoo!ニュース(2019/3/16(土) 12:43)を紹介しておきます。もともと書いたニュージーランドのクライストチャーチときの記事です。

<以前にも書いたが、右翼テロはいまやイスラーム過激派とともに、大きな脅威となっている。
 とりわけ、アメリカでは2008年から2016年までの間に、ムスリムによるテロが63件だったのに対して、白人によるものは115件にのぼった。その多くは「アメリカは白人のもの」という信条のもと、異教徒や有色人種、とりわけムスリムやその宗教施設を標的にした破壊や襲撃だった。この調査によると、白人と非白人の平均的な所得格差や社会的信用を反映して、銃器の購入が容易な白人によるテロほど、死傷者が増える傾向にある>

 記事では、組織的にイデオロギーやメッセージを拡散させるイスラーム過激派と異なり、右翼テロを実行した白人至上主義者たちは、これまで個人レベルで行動することが多く、犯行声明などを拡散させることも少なかったのが変わってきている…という指摘もありました。

<現代ではインターネット上で、イスラーム過激派だけでなく白人至上主義者たちも組織的にメッセージを流布させている。アメリカでトランプ大統領の主たる支持基盤として注目された陰謀論者のネットワーク、QAnon(引用者注:日本ではQアノンの表記が多い)は白人至上主義的なメッセージを発信しており、その影響は英語圏の各国にも広がっている。
 例えば、フェイスブックのQAnonオーストラリア&ニュージーランド支部のアカウントには1522人のメンバーがいるが、人種差別主義的なアカウントは順次削除されるため、その支持者は潜在的にはもっと多いとみられる>

 また、この件ではオーストラリア人がわざわざニュージランドで犯行を行っていることにも注目。これについて、オーストラリアでは右翼テロの監視が厳しいためではないか?と作者の六辻彰二さんは予想。オーストラリアの場合、イスラムテロと右翼テロは同程度であり、右翼テロも警戒されていたようです。

 一方、ニュージランドはどちらのテロも少なく、警戒が低い国でした。人種差別問題も大きくなかったのですけど、そのような安全で平和な国にわざわざ行って摩擦を引き起こすテロを行ったわけです。今後同様に外国人右翼が安全な国に行ってわざわざテロを行う…といったことが起きる可能性がありそうでした。


●テロの4割が人種問題の過激派思想、うち過半数が白人至上主義者

2023/02/24追記:もう一つ、古い記事ですが、データ的な話があったので追記。2019 年 8 月 5 日のテキサス・オハイオ銃乱射、白人至上主義が背景か - WSJという記事です。この記事自体は、米テキサス州とオハイオ州で24時間以内に相次いで発生した銃乱射事件で少なくとも計29人が死亡した事件を受けての報道で、以下のようなデータ的な話がありました。

<米連邦捜査局(FBI)によると、国内テロのうち、過激思想に触発された白人男性による暴力行為の割合が高まっている。最近の約850件の国内テロの40%は人種問題を動機とした暴力的過激思想によるもので、その過半数に白人至上主義者が関わっている。
 ヒスパニック系が住民の過半数を占めるテキサス州エルパソで3日に起きた銃乱射事件では20人が死亡し、26人が負傷した。この事件の容疑者は21歳の白人の男で、銃乱射の少し前、人気の高い極右系のウェブサイトに移民排斥、白人ナショナリストの思想を支持する声明のようなものを投稿していた>


●あいちトリエンナーレ批判の愛国右翼、候補者の首を絞めて逮捕

2023/04/24追記:演説中に「しゃべるな」激高、市長選候補者の首絞める 投票日前日緊迫、激戦の岐阜・多治見市 | 岐阜新聞Web(2023年4月23日)という事件がありました。こうした事件の犯人には目立った政治思想が見られないケースもあるものの、今回の犯人は典型的な愛国右翼だったようです。

<22日午後6時ごろ、岐阜県多治見市大畑町のスーパー「バロー多治見南店」の駐車場で、多治見市長選(23日投開票)に立候補している高木貴行さん(45)が演説中に男に素手で首をつかまれ、押し倒された。通報を受けて駆けつけた多治見署員が公選法違反(選挙の自由妨害)の疑いで男を現行犯逮捕した。(中略)
 高木さんは容疑者と面識がないと話している。(中略)周囲にいた陣営関係者が取り押さえ、目撃者が「演説中に首を絞められた人がいる」と110番した。>

 愛国右翼だとわかるというのは、<関係者によると、容疑者は政治団体の多治見支部長を務めている。団体のホームページによると、日本の伝統や文化の復興と保持を目的に、2010年に設立し、全国に15団体ほどの本部や支部がある>といった情報です。

 また、<2019年に開催された国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」を巡っては、問題となった作品や主催者に抗議の声を上げていた>とのことで、これも保守派思想であることがわかる話。「あいちトリエンナーレ」批判はネットでもネトウヨさんらが大いに盛り上がっていたものでした。


●トランプ大統領が批判した民主党州知事誘拐計画容疑で13人逮捕

2020/10/10:米ミシガン州知事誘拐計画容疑で13人逮捕、議事堂襲撃も計画 | ロイターによると、米検察当局が、ミシガン州のウィットマー知事(民主党)の誘拐と州議会議事堂への襲撃を企てた容疑で13人を逮捕したと発表しました。

 容疑者らは当初、州議会議事堂に押し入って人質を取る目的で200人の協力者を集めようとしていたのですが、その後計画を断念していたとのこと。知事誘拐はこの代替案でした。計画断念の代わりにウィットマー知事の別荘で知事を誘拐する画策をしていたとのこと。爆発物の使用も検討していたとみられています。

 ウィットマー知事の誘拐は米大統領選前というタイミングでの実行を計画していたともされていました。なぜここで大統領選挙の話が出てくるのか?と言うと、ウィットマー知事は、新型コロナウイルス対応などを巡り、トランプ大統領が過去に批判の矛先を向けていたことで知られる方だったためです。

 春には新型コロナウイルス対策としてウィットマー知事が導入した制限措置にトランプ大統領とその支持者が反発していました。制限緩和を求めて4月に起きたデモには武装集団のメンバーも参加していることも判明済み。トランプ大統領はツイッターでデモ参加者に対し「ミシガンを解放せよ」と呼び掛けています。

 なお、武装集団は「ウルバリン・ウォッチメン」という名前でした。ウルバリンというのは、アメリカで人気のあるコミックのスーパーヒーローのことです。検索してみると、名前の後半部分であるウォッチメンもコミックの名前みたいですね。容疑者らの精神的な幼稚さを感じてしまいます。


●FBIが上申する白人至上主義過激派対策、大統領に潰されていた…?

 一方、ウィットマー知事は会見で、「異常で卑劣な」容疑者のような過激派グループを扇動したとしてトランプ大統領を非難。トランプさんが大統領候補討論会で白人至上主義者の糾弾を避けたことを例に挙げました。「指導者が自国内のテロリストを扇動し、親しく交われば、指導者は彼らの行動を合法化し、加担したことになる」と語っています。

 ただ、彼らが直接白人至上主義者だったかは、記事からは不明。たぶんそういう主張ではなく、一部のテロリストに優しいという例として挙げたんでしょうね。また、彼らがトランプ大統領を支持しており、トランプ大統領が影響を与えたことは間違いなさげな感じですから、トランプ大統領に問題があること自体も事実でしょう。

 日本語情報がなくて確認取れていないのですけど、白人至上主義者の関連では、この記事のはてなブックマークで、最近、ブッシュの時の元CIA長官がバイデン支持のビデオ広告を出し、「白人至上主義過激派への対策をFBIが上申しても、トランプ氏は聞かず、国家を危険に晒している」と暴露してた…といった話も出ていました。


●大統領選の開票作業所の襲撃計画未遂事件?大量の弾薬を購入

2020/11/07:前回の追記と似たもので、今度は、激戦州開票所の襲撃計画か 男2人拘束、武器押収―米フィラデルフィア:時事ドットコム(2020年11月06日17時06分)というニュースが出ています。
 
 警察は2020年11月5日夜にバージニア州から車で来たグループによる、米大統領選の開票作業が行われている同市のペンシルベニア会議センター襲撃計画の情報を受けました。そして、このペンシルベニア会議センター付近で男2人を拘束しています。武器も押収しました。

 この襲撃を理解するには、アメリカ東部ペンシルベニア州フィラデルフィアは、米大統領選の激戦州であり、きちんと票を数えるとトランプ大統領に不利になると予想されていたのがポイント。都市部のフィラデルフィアは特に民主党支持者が多いともされていました。なので、開票作業を邪魔することができれば、トランプ大統領の当選が高くなると彼らは考えたのだと思われます。

 別記事米東部で開票所襲撃計画、銃押収 トランプ派か、市民衝撃|秋田魁新報電子版によると、地元メディアは車内から別の銃も押収したと報道。さらに、殺傷能力の高いAR15型ライフル銃の部品や大量の弾薬を購入したことも確認されたそうで、たまたま銃を持ち歩いていただけ…という言い訳は難しそうでした。


●トランプ支持者の議会占領、テロとクーデターの定義に当てはまる?

2021/01/10:トランプ大統領が支持者を煽ったせいで支持者らがアメリカ議会に侵入して占領…という右翼の危険性を示す最大級にわかりやすい事件が起きてしまいました。5人の死者も出ています。この件では、今後大量に追記したいことができてしまって困っているのですが、最初にテロとクーデターの定義について確認。今回の事例はテロであり、クーデター未遂と言って良いです。

 まず、テロですが、これは主にテロリズムの略。そして、多用される言葉であるにも関わらずあまり知られていませんが、このテロリズムというのはかなり広い意味を持ちます。ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典では、「特定の政治的目的を達成するため,広く市民に恐怖をいだかせることを企図した組織的な暴力の行使」と説明。右翼・左翼や愛国的・宗教的集団だけでなく、軍や情報機関,警察などの国家組織によっても行なわれることも書かれています。

 また、研究機関センター・フォー・システミック・ピース(CSP)の用語集では、クーデターを「(必ずしも政権の権限の本質や統治形態に変化がなくとも)行政府の指導体制と前政権の政策に大きな変化をもたらす反政府派/与党または政治エリートの一派による執行権限とオフィスの暴力的な掌握」と定義していそうです。
(米議事堂占拠事件はクーデター、トランプが大統領のうちは危機が続く | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイトより)

 今回の事件では、まず、トランプ支持者らが暴力を行使したのは疑いのない事実です。また、当然、政治的な目的があっての行動であるために、テロに当てはまることがすんなり確定。さらにその政治的な目的というのは、バイデン次期大統領への権力移譲を阻止することですから、クーデター未遂事件にも当てはまります。本当、最悪ですね。


●右翼「トランプ支持者がこんなにデモに集結!」→乱入後「左翼だらけ」

2021/01/14:トランプ支持者によるテロ・クーデター未遂事件ですが、支持者らは左翼の工作だと主張しており、日本の右翼も盛んにそう主張しています。ここらへんのいい加減さがわかりやすいのは、抗議デモのトランプ支持者らが米議会に侵入 女性が撃たれ死亡 | NHKニュースのはてなブックマークコメントの<twitterでは陰謀論者が「トランプ支持者が集まっている」としながら、乱入映像になると「ANTIFAがたくさん紛れてる」と言ってて、もうこの人たちには勝てないという気持ち>(monbobori)です。

 そもそも議会への侵入前は、トランプ大統領の支持者が多数集まっていると誇っていたんですよね。もともとトランプ大統領の狙いも数を集めて影響力を見せることでした。それが都合悪くなると、左翼の工作と言い出すのは、日本の右派と同じですね。

 仮にアンチファシストの左派ANTIFA(アンティファ)が多数混じっていたとした場合ですら、トランプ大統領が煽った後に不法侵入が起き、トランプ大統領支持者が含まれていた時点で問題でしょう。それで無罪となる理由がわかりません。ただ、そもそも暴徒が左翼だとする情報はデマだらけ。しかも、よりによって有名右翼を左翼だとするデマを複数流していたので、デタラメ加減がすごいです。


●議事堂襲撃を自慢した右翼、仲間から左翼認定されて殺害予告殺到

 トランプ大統領を熱烈に支持してきた有名右翼の人たちにとっては左翼呼ばわりされるのはさぞかし心外に違いありません。こうした有名右翼については後で紹介することにして、先に米議会前で動画撮影のトランプ氏支持者、アンティファと誤解され殺害予告殺到:AFPBB News(2021年1月9日 19:46)を紹介。自業自得ではありますけどね。

 トランプさんの支持者だというカリフォルニア州のクリストファー・ドリューさんは、「たった今、議事堂襲撃から戻って来た。われわれは襲撃し、成功した」と宣言する動画を投稿。襲撃はトランプ支持者にとって良いことだと思っていたのでしょう。むしろ仲間から褒められると思っていたかもしれません。

 また、議会に乱入したのは左派のアンティファだったと主張する人に触れ、「それはわれわれだ。われわれが誇りを持って議事堂を奪還した」と述べ、トランプさんの支持者たちによる襲撃だとフェイスブックで強調。ただ、これを見ている人もアホなので、この発言がなぜかアンティファが関与を認めたものだと誤解されます。

 ただ、今のアメリカが恐ろしいのは、右派の弁護士も同じレベルだということ。トランプ支持派の弁護士であるリン・ウッドさんが、この動画にアンティファのメンバーが映っているとの投稿を右派系プラットフォーム「パーラー(Parler)」に投稿・拡散し、「議事堂に侵入したのは彼らだ」と主張してさらに大ごとに。右翼仲間から褒められるどころか、「5分に1通の殺害予告が届く。耐えられない」と語る状況になっていました。


●左翼呼ばわりされた有名右翼「大統領に呼ばれたから行った」

 さて、なぜか仲間によって左翼呼ばわりされてしまった有名右翼の話。そもそも率先して侵入して撃たれて亡くなっている女性が、退役軍人の熱心なトランプ支持者でした。また、一番わかりやすいのは、目立ちまくっていた「バッファロー男」でしょう。

 過去にリベラル的な活動にも嫌がらせのために顔を出していたために、その写真だけ見て左翼認定されたという記事も読んだ(どの記事だったか失念)のですが、彼はアメリカ版ネトウヨのQアノンです。彼など、すでに逮捕されている人たちにトランプ支持者が含まれています。現役議員までいるというのがヤバイですね。

<ワシントン連邦地検は、通称「ジェイク・アンジェリ」ことジェイコブ・アンソニー・チャンスリー被告について、暴力的な不法侵入や治安を乱す行為などを含む罪状で起訴した。被告はすでに逮捕・勾留されている。
 ワシントン連邦地検は声明で、「角と熊の毛皮のかぶりもの、赤白青のフェイス・ペイント、上半身裸で茶色いズボンという姿で連邦議会議事堂に入る姿が報道された人物が、チャンスリーだと特定されたと言われている。この人物は全長約180センチの槍(やり)を手にしていた。槍の刃のすぐ下に、アメリカ国旗が縛り付けられていた」と述べた。
チャンスリー被告は、陰謀論「Qアノン」の「シャーマン」を自称しているとされる>
<連邦地検はほかにも、ウェスト・ヴァージニア州議会のデリック・エヴァンズ議員(35)を暴力的な不法侵入や治安を乱す行為の罪などで起訴したと発表した。議員もすでに逮捕・勾留されている。エヴァンズ州議会議員は、トランプ氏支持者たちと議事堂外に並ぶ自分の姿を撮影し、オンラインに投稿した後、議事堂内に入ったとされる>
(米議会襲撃 Qアノン陰謀論の信奉者や州議会議員など次々と起訴  WEDGE Infinity(ウェッジ) 2021年1月10日より)

 トランプ支持者は「バッファロー男」に変装した左翼だ!といった幼稚な反論もしていましたが、本人は捜査官に対して「2021年1月6日にすべての『愛国者』が首都ワシントンに集結するよう命じた大統領の要請を受けて」と言い、アリゾナ州からワシントンに向かったグループに参加したこと、自分が議事堂にいたことを認めていたそうです。
(米議会乱入、角つき帽子の男ら訴追 トランプ氏の要請に応じたと主張:AFPBB Newsより)


●テロ・クーデターは起きて当然だった…トランプ大統領などの扇動

2021/01/22:すぐ見かけなくなったものの、トランプ支持者はトランプ大統領が侵入を煽ったと決まったわけではないという主張も最初していました。ただ、バイデン候補の勝利を正式決定している最中の議会に向かうよう訴えていたのは事実であり、この発言は重く、重大な責任があります。それだけでなく暴力につながりかねない攻撃的な発言もトランプ大統領らからは出ていました。

<トランプ大統領は議会占拠事件が起きる前、ホワイトハウス前の集会で支持者らに約1時間にわたって「自分が圧勝していたのに、選挙が盗まれた」と陰謀論の持論を展開、議会に通じるペンシルベニア通りを行進し、バイデン氏勝利確定の審議に抗議するよう呼び掛けた。大統領は演説の中で「死ぬ気で戦え」とまで煽った。
 メディアによると、集会には大統領の個人弁護士のジュリアーニ氏や息子たちも参加して演説した。それぞれ「戦闘で試してみよう」(ジュリアーニ氏)「気概を示せ。議会まで行進しなければならない」(次男のエリック氏)などと扇情的な発言が相次いだ。支持者らがこうした発言に触発されたのは間違いないところだろう>
(トランプ氏、屈辱の“敗北宣言”議会占拠の扇動批判で保身か    WEDGE Infinity(ウェッジ) 2021年1月8日 佐々木伸 (星槎大学大学院教授)より)


●テロ未遂事件が中で擁護する発言してさらに煽ればテロが起きて当然

 上記のものがわかりやすくアウトなのですが、抗議デモのトランプ支持者らが米議会に侵入 女性が撃たれ死亡 | NHKニュースのはてなブックマークコメントでは、<陰謀論者や過激派を煽動し続けたら「暴力と破壊」行為に走るのは目に見えてる。特にトランプは昨年10月には支持者による州知事誘拐計画すら起きたことを知っている上で煽動を続けてるんだからどうしようもない>(carl_s)というものもありました。

 要するに今までの流れとして行き着いたということですね。議会占拠のテロ・クーデター未遂事件が起きる前にも、すでに書いたように、テロを容認するかのような発言はトランプ大統領はしてきています。右派テロリストに擁護的な態度は、うちでは紹介しきれないほどありました。そりゃテロが起きるに決まっているという話です。

 また、これもすでに以前のところで書いたように、過去にもテロ未遂事件が起きていたり、凶器の発見があったりしたわけで、テロが起こっても不思議はなかったとも言えます。今回も首都警察は、敷地内でパイプ爆弾や火炎瓶が入ったクーラー・ボックスも押収しており、非常に危険な状態でした。
(トランプ支持者の議会乱入、数週間前から計画されていた? | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)(2021/01/09)より)

<司法省は、複数の容疑者を逮捕したと発表。(中略)発泡スチロールを使用して威力を高めた火炎瓶11本をトラックに積んでいた男が含まれる。(中略)そのほかの容疑者には、弾丸を装填(そうてん)した拳銃を持って議事堂内に入った男、警官を殴打した男、議事堂内への乱入に加わったウェストバージニア州議会議員が含まれる>
(米司法省、議会襲撃で15人訴追 強化火炎瓶や銃所持:AFPBB News(2021年1月9日 7:30)より)

<ワシントン市内では複数個所でパイプ爆弾とみられる不審物の通報があり、連邦警察や地元警察が対応した。共和党関係者によると、共和党全国委員会の本部では6日、建物の壁に面した地面でパイプ爆弾が見つかり、警察が安全に爆破処理を行った。連邦当局によると、ほかにも共和党のオフィスがある建物や議事堂の敷地内でパイプ爆弾と思われる不審物が見つかり、警察が処理した。いずれも本物の爆弾で、安全に爆破させたとしている。民主党関係者によれば、民主党全国委員会でも不審な小包が付近で見つかり、警備員などが避難した>
(CNN.co.jp : トランプ大統領支持者が議会に乱入、女性1人死亡 市内で爆弾見つかる - (1/2)より)


●ネットでは議事堂の襲撃・暴力の予告が多数!トランプ氏の扇動が合図に

 また、トランプ支持者の議会乱入、数週間前から計画されていた? | Forbes JAPAN(2021/01/09)では、ネットで公然と議事堂を襲撃すること、暴力をふるうことなどが書かれていたことも指摘。襲撃予告のあるという状況で、支持者を煽っても問題なかった…とは言えないでしょう。テロが起きる危険性が高い中で、トランプ大統領が火をつけた形です。

<トランプ支持者のウェブサイト「ザ・ドナルド(TheDonald)」では、こうした計画についてより率直に議論されていた。連邦政府の庁舎に侵入することや、首都ワシントンに銃を持ち込むこと、議事堂への乱入を止められそうになれば、警察官に暴力を振るって抵抗することなどが話し合われていた。
このサイトには先ごろ、「議会が大統領選に不正があったという“証拠を無視”したらどうするのか」という質問が投稿され、それに対してあるユーザーは、「議事堂を襲撃しろ」と回答していた。そのほか同サイトには、デモ参加者たちで塞ぎたい議事堂周辺の主な通りを示す地図も掲載されていた。
「TheDonald」に4日に投稿されたコメントは多くが議会による選挙結果の認定に関するものであり、それらに対する返信として、暴力行為を呼び掛けるものだったという。そして、「パーラー」(引用者注:トランプ支持者や保守派が多く利用する「パーラー(Parler)」)への投稿でも、同じような傾向が見られていた>


●ぬるすぎる議事堂の防衛、「支持者の侵入を助けた警官たちも」と報道

2021/03/02:議事堂占拠の話が多いので、なるべくまとめて一気に更新。…上記のようにテロ予告が多数あったのに防げなかったことは、警察の失態だとも言えるので、そういった疑問の声が出ていました。常識ある人であれば「まさかこんなことをするとは!?」と予期できなかったのはわかりますが、トランプ支持者に協力的だったのではないか?という一部報道もあります。

<ソーシャルメディアでシェアされた写真や動画から、乱入してきた支持者の1人の要求に応じ、一緒にセルフィーに写っていた警官がいることが分かっている。また、敷地内に置かれた安全柵を動かし、支持者の侵入を助けた警官たちもいた>(トランプ支持者の議会乱入、数週間前から計画されていた? | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)(2021/01/09)より)

 また、やたらと発砲して人を殺しているアメリカの警察が、生ぬるい対応だったというのは私も最初不思議に思いました。多くのところで言われているように、これで相手が黒人たちだったらもっと厳しい対応だったでしょう。白人だったからぬるい対応だったのだろう…と言う人の気持ちは私もわかります。

 特に今回襲われたのは議会ですから、本来、通常以上に厳重に守備する必要がありました。襲撃者がやろうと思えば、議員を大量殺人することも可能だったわけで、議会の防衛力がこれでいいの?という話。もちろん良いはずがありません。もともとアメリカの右派は銃を持って武装するのが必要という主張ですし、前述の通り、爆発物が実際に見つかっており、かなり危ない状態でした。甘すぎます。


●警官が自らバリケードを撤去、議事堂内で右翼はリラックスして動画配信

 トランプ大統領支持の警察官らがテロを助けた…と断定してしまうのも問題があるのですが、怪しいところがあったという話についてもう少し。以前、民主党による不正があったという否定済みのデマや根拠のないデマを流していた安部かすみさんなので、大丈夫か?と思うのですが、今度は逆にトランプ支持者に不利な情報をまとめていました。併せて普通に右派がテロ行為に参加していたとする情報も書かれています。

<ハワイから参加したニック・オクス (Nick Ochs)容疑者など、極右団体「プラウドボーイズ」のメンバーも目撃された。(中略)「首都よりこんにちは」などとツイートし、占拠中にライブストリーミングしていた。
白人至上主義者として知られる、ベイクド・アラスカ(Baked Alaska)ことインフルエンサーのティム・ジオネット(Tim Gionet)も容疑者として捜査の対象になっている。この容疑者も占拠中、動画を生配信していた。(現在アカウントが停止)>
<ほかにも3人が議事堂内で死亡した。ペンシルバニアから参加の男性(50歳)、アラバマの男性(55歳)、ジョージアの女性(34歳)と、いずれも熱心なトランプ支持者だった>

<目を疑ってしまうのだが、群衆のためにバリケードを取り去ったり、建物内で侵入者らとセルフィーを撮る警官や警備員の姿などもソーシャルメディアでシェアされているのだ。
これらの映像を見る限り、特に混乱状態ではない。また前述のオクス容疑者もそうだが、一旦入り込んだ侵入者らはリラックスして、自由に建物内を行き来している>
(トランプ支持者は、厳重なハズの議事堂を「なぜこれほど簡単に」襲撃できたのか? ── 現地で深まる謎(安部かすみ) - 個人 - Yahoo!ニュース 1/8(金) 12:50より)


●トランプ支持の右派・共和党議員からもさすがにトランプ批判が出るが…

 議事堂テロでは、やっとトランプ支持者の右派からも批判が出てくるようになっていました。これは、米議会乱入、共和党議員からも批判 「トランプ氏が扇動」 | ロイターで出ていたものですが、記事では、先にトランプ大統領が煽っていたことも指摘。これを踏まえる必要があります。

<敗北をまだ認めていないトランプ氏は先月、選挙人投票が行われる1月6日にワシントンで大規模抗議集会を開くことを提案。この日のワシントンでの演説でも、支持者に対し、議事堂に行進して選挙手続きに抗議の意を表明し、議員らに選挙結果を拒否するよう圧力をかけるべきだと訴え、「戦い」を呼び掛けていた>

 トランプ支持者のマイク・ギャラガー下院議員は騒動について「米国の議事堂で、政情不安を抱える途上国のような騒ぎが起きている。トランプ大統領はこの事態を止めるべきだ」とツイート。同じくトランプ氏を支持するフレンチ・ヒル下院議員もCNBCに対し、「大統領は過熱した論調の責任の一端を担っている」と語ったといいます。

 共和党議員、特に、トランプ派の共和党議員は加害者であり、被害者ではありません。彼らがトランプ大統領に乗っかったことで、今回のテロを引き起こしました。また、彼らが今回の件で本当に目覚めてくれたのかも不明。再開された審議では、根拠なき選挙不正の主張を取り下げた共和党議員がいた一方で、なおも100人以上の議員が選挙不正の訴えに賛同したと別記事では読みました。

 ただ、支持者らがトランプ大統領を引き続き支持した場合、共和党議員が乗っかってトランプ路線を続行するという可能性も感じます。…と下書きしていたら、その後、共和党支持者らのほとんどがトランプ大統領は辞める必要はないと考えているという世論調査が出ていました。

 また、下院本会議でトランプ大統領の弾劾決議を可決しましたが、共和党議員で賛成した議員はほとんどいませんでしたので、やはり議事堂侵入も含めて支持している感じ。5人が亡くなり、数十人の警察官が負傷しているんですけどね。これらは、日本人からするとヤバイとしか思えない感覚。本当、アメリカは劇的に劣化しているのかもしれません。


●右派弁護士が副大統領の処刑呼びかけ…削除しないSNSでも削除に

 上の方で出てきたトランプ支持派の弁護士であるリン・ウッドさんが、「銃殺隊を招集しろ。最初はペンスだ」と、ペンス副大統領の処刑を呼びかけていて、本当アメリカやばいなと思いました。削除しないことが売りの「表現の自由」を謳うソーシャルネットワークParler(パーラー)ですらこの投稿を削除したそうです。

<表現の自由を重視する方針から保守派コメンテーターを数多く惹きつけていたこのソーシャルネットワークが、トランプ支持者であるLin Wood(リン・ウッド)氏の複数の投稿を削除したと、Mediaite(メディアイト)は伝えた。
Parlerから削除された投稿の中には、ウッド氏が Mike Pence(マイク・ペンス)副大統領の処刑を呼びかけるものもあった>
(保守系メディアParlerがペンス副大統領の処刑を呼びかけたトランプ支持者リン・ウッド氏の投稿を削除 | TechCrunch Japan 2021年1月10日より)

 ここらへんはやはり右翼にテロ・クーデターの危険性が高く、対処が必要という話。「議事堂で少なくとも別の3人から、マイク・ペンス副大統領を捕まえて裏切り者として議事堂の木に吊して絞首刑にしたいという話を聞いた。この共通のフレーズが繰り返されている。さらに多くの人間が副大統領をどう処刑するかを話し合っていた」といったツイートもあったそうです。


●なおもSNSに再襲撃を煽る投稿「武器を手に戻ってくる」「戦争だ」

 右派からはペンス副大統領殺害予告以外にも過激な投稿が相次いでいます。この流れを受け入れてしまったアメリカの右派や共和党支持者はどうかしているんですが、議事堂襲撃すら一部の右派しか批判できなかったからこそ加速しているという感じかもしれません。批判しないことがもはや次に起こる殺人計画に加担しているといった感じです。

<「われわれは19日、世界が決して忘れない決意で武器を手に戻ってくる」。NBCニュースによると、右派SNS「パーラー」で最近、陰謀論的思想を持つ人物がこんな投稿をした。
 別のSNS「ドナルドウィン」でも匿名の人物が「20日の第2ラウンドは容赦しない。トランプの地位はどうでもいい。私が関心があるのは戦争だ」と投稿。コメント欄には賛同者から多くの書き込みが寄せられた。
 ワシントン・ポスト紙によると、こうしたサイトでは6日の議会乱入に先立ち、建物を襲撃する方法や議員に手錠をかけるなどの段取りが具体的に話し合われていたという>
(トランプ派「再襲撃」を警戒 SNSに予告投稿相次ぐ―米首都:時事ドットコム 2021年01月10日20時37分より)


●アンティファ襲撃の証拠という写真の人物、ネオナチだった…

 あと、もうちょっと左翼認定された右翼の話を追加。【検証】「米議会に乱入したのはアンティファ」は誤り:AFPBB Newsという記事が出ていました。前述のトランプ支持派のリン・ウッド弁護士は、ツイッターで永久停止になっているのですが、停止される前に投稿されていた内容についての話です。

 リン・ウッド弁護士は、ツイッターに2枚の写真を投稿し、「きょう連邦議会に暴力的に突入し、危害と損害を与えたのはトランプ氏の支持者ではなく、アンティファであったことを示す決定的証拠写真。だまされてはいけない。トランプ氏の支持者は平和的だ。過去数か月にわたり私たちの街で暴力を生み出しているのはアンティファだ」と書き込んだそうです。

 襲撃の写真とアンティファ系ブログに同じ人物が写っている!という主張でしたが、そもそもこのブログは右派グループの情報を投稿した内容なので、むしろ右派が襲撃した証拠に。ブログでは、長年ネオナチとして活動した人物との説明になっていたんですよ。左派ブログにトランプ大統領の写真があったときに「トランプは左翼だ!」と認定するようなものですね。アホです。

 なお、右派で自民党とも関係が深い統一教会系のワシントン・タイムズもデマを流していた模様。アンティファがいるという誤報記事を書いておいて、「議事堂に侵入した人々の中にアンティファのメンバーがいることが顔認識ソフトウエアの『XRビジョン』によって特定されたという誤った情報を記載していました」と訂正していたとのこと。これを信じて拡散している日本の右派もいました。いい加減すぎる誤報であり、訂正すれば済む話なのか?と思います。


●トランプ弁護団「襲撃はトランプ支持者が勝手にやったから悪くない」

2021/03/20:議会襲撃に関してはまだいくつも書いていない話があって、トランプ氏の弁護団、議会襲撃は支持者が「自分たちでやった」 - BBCニュース(2021年2月9日)というのもその一つでした。弁護団は、米連邦議会を襲撃した前大統領の支持者たちは自分たちの判断で行動したのであって、トランプ氏に先導されたわけではないと主張していたのです。

<(引用者注:弾劾裁判の)審理前準備書面で、連邦捜査局(FBI)の資料によると1月6日の議会襲撃は事前に計画されていたもので、トランプ氏による直前の演説は扇動にあたらないと主張。「犯罪的に連邦議会に侵入した人々は、自分たちの意思で、自分たちの理由でそうしたというのが、本当の真実で、彼らはそのために起訴されている」と、弁護団は書いた>

 これは、トランプ大統領の弁護士らが、議会襲撃をトランプ大統領支持者がやったと認めいてるということが重要。普通の人にとってはそりゃそうだろうというすでにわかっている事実なのですが、襲撃に不参加だったトランプ大統領支持者は前述の通り、左翼の工作だと主張していましたからね。

 また、実際に襲撃に参加したトランプ大統領支持者としては、トランプ大統領側から裏切られたという思いでしょう。前述の通り、「大統領に呼ばれてやった」などと言っている人もいました。都合が悪くなると、支持者や支援していた人たちでも冷たく切り捨てたり、内輪もめしたり…というのは、日本の右派でも何度も見てきた場面です。


●議事堂占拠で共和党議員がトランプ大統領に助けを求めた結果…

2021/03/26:議事堂襲撃の発生は、トランプ大統領の直前の演説の問題だけでなく、より大きな流れがあったという話が、米議会襲撃 65日間の危険信号 - BBCニュース(2021年1月13日)に書かれていました。で、本当はこの記事をまとめつつ紹介しようかと思っていましたが、あまりにもたいへんすぎるというのと、そろそろこの件は一区切りにしておきたいということでリンク紹介のみに。今回は別記事のCNN.co.jp : トランプ氏、議事堂襲撃中に下院共和党トップと「怒鳴りあい」 暴徒制止を拒否を紹介して、一区切りとします。

 米議事堂襲撃事件の最中、トランプ大統領と同じ共和党で、下院共和党トップのケビン・マッカーシー院内総務がトランプ大統領と電話協議しました。しかし、トランプ大統領は「ケビン、君よりもこの人たちの方が選挙結果に懸念を持っているようだ」と暴徒たちの方を肯定。さらに、マッカーシー議員が、暴徒を制止するよう懇願したものの、トランプ大統領は応じなかったといいます。

 最初、これはまだ議事堂に侵入する前のやり取りなのかなと思ったのですけど、すでに議事堂内に侵入していた後みたいですね。激怒したマッカーシー議員は、暴徒が自身のオフィス内に侵入しつつあることを説明し、放送禁止用語を交えて「一体誰に向けて話していると思っているんだ」と怒鳴ったとのことです。

 つまり、トランプ大統領は議事堂侵入を確認した後でも、侵入者の方を支持していたというわけ。日本でも多いトランプ大統領支持者は、トランプ大統領は議事堂襲撃テロを支持していないと言い張っていますが、実際には、襲撃が実際に起きた後ですらしばらく支持していた模様。完全にアウトですわ。


●人種差別・宗教差別・性差別などの犯罪、アメリカでは2割も増加

2021/11/24追記:右派系のテロやその類に関する記事は結構たくさん出ていますね。人種、宗教、性に対する偏見や差別などが原因で起こる犯罪であるヘイトクライム(憎悪犯罪)に関する、FBIの最新統計で判明! 2017年、アメリカでは反ユダヤのヘイトクライムが37%増加 | Business Insider Japan(Nov. 16, 2018, 05:30 AM)は、そういった記事のひとつでした。

 FBIが公表した統計によると、アメリカでは2017年、ヘイトクライムの発生件数が前の年に比べて17%、反ユダヤの犯罪件数が37%増加。ヘイトクライム全体としても増えているんですね。2018年に発生したペンシルベニア州ピッツバーグのシナゴーグで発生した銃乱射事件は、アメリカ史上最悪の反ユダヤ主義の虐殺との見方もあるそうです。

 FBIが発生件数をまとめ始めて以来、反ユダヤの犯罪は一貫して、宗教関連のヘイトクライムの中で最も割合が高いとのこと。反ユダヤの犯罪は、さまざまな集団を標的にしたヘイトクライム全体の13%を占めています。また2017年の37%増加は、2015年の9%、2016年の3%から見ても非常に大きな増え方でした。

 なお、この時期はトランプ大統領の時代であり、イスラエルに偏って好意的だったトランプ大統領の行動とと逆という印象。しかし、2016年、トランプ大統領はバージニア州シャーロッツビルで行われた白人至上主義、反ユダヤ主義の抗議活動で死亡者が出たとき、「どちらの側にも、とても良い人たちもいた」と擁護していたとのこと。ユダヤ重視なわけでもなかったようです。

<ピッツバーグでの銃乱射事件の直後、無党派の世論調査会社パブリック・レリジョン・リサーチ・インスティテュート(PRRI)の調査では、50州、2509人の成人のうち54%が、トランプ大統領の決断や行動が白人至上主義者を助長していると回答した。
 事件を受け、アメリカを目指す移民集団(キャラバン)に対するトランプ大統領の対応が批判されると、陰謀論者たちはこれをユダヤ人グループと結びつけた。シナゴーグを襲撃する前、ロバート・バウアーズ(Robert Bowers)容疑者は過激主義者たちが利用するソーシャルメディア「Gab」に、ユダヤ系団体が「我々の同胞を殺す侵入者」を手引きしていることに腹を立てていると投稿していた>


●議会襲撃関与と関係者が証言 公文書持ち去りや不動産不正疑惑も

2022/08/30追記:右派の産経新聞がトランプ前米大統領、一族企業の不正疑惑で証言拒否 - 産経ニュース(2022/8/11 14:49 平田 雄介)という記事を書いていました。トランプ前大統領に不利な内容を伝える記事です。

<トランプ前米大統領は10日、一族が経営する複合企業トランプ・オーガニゼーション社が所有する不動産の資産価値を偽ったとする疑惑を民事案件として調査しているニューヨーク州司法長官の事務所に出向いた。司法当局からの質問に対し、トランプ氏は黙秘したとされ、米メディアは今後裁判に発展した場合にトランプ氏に不利に働く可能性があると指摘している。
 ト社をめぐっては、有利な条件で融資を受けるために所有する不動産価値をつり上げたり、減税を受けるために資産価値を過少に評価して申告したりした疑いが持たれており、ニューヨーク州司法当局が民事・刑事の両面から調べている>

 米連邦捜査局(FBI)が実施したトランプ氏のフロリダ州の邸宅マールアラーゴの家宅捜索とは別件だと記事では補足。つまり、他にも疑惑があるんですね。これら2つはテロと関係ないものですが、アメリカ右派の議会襲撃事件と合わせて3つ疑惑があるとまとめていた記事があったのでここに追記しました。

(1)一族の不動産ビジネスの不正疑惑
(2)公文書を不正に所持し続けた疑惑
 在任中の公文書を国立公文書館に返却していない大統領記録法違反で、連邦捜査局(FBI)がフロリダ州の邸宅マールアラーゴの家宅捜索を行った。2021年1月の大統領退任時、国立公文書館への提出が義務付けられた公文書をマールアラーゴに持ち帰り、2022年1月に15箱分を返却。しかし、一部は保持したままの疑いがあるという。
(3)議会襲撃事件へ関与した疑惑
 当時の政権関係者は、支持者の一部が武器を所持していることをトランプ氏が知っていたにもかかわらず、議会に向かうよう呼び掛けたと証言。司法省はトランプ氏の刑事責任を追及するかどうか検討している。
(トランプ氏に3つの疑惑 公文書不正所持、不動産ビジネス不正、議会襲撃への関与 同氏は「魔女狩りの標的」と反発:東京新聞 TOKYO Web(2022年8月11日 19時09分)より)


【本文中でリンクした投稿】
  ■死刑のないノルウェーの連続テロ事件 無反省でも刑期21年で出所可能

【関連投稿】
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