2022/04/06追記:
●青色?黒色?日本人女性の理想的な色は「濡烏」(ぬれがらす) 【NEW】
●白眼視の由来は三国志の阮籍 白眼はわかるが青眼視ってどんな目?
2011/7/10:辞書を見ていると、「青眼(せいがん)」という言葉があって、「中国の阮籍が相手によって白眼と青眼を使い分けたことから、喜んで人を迎えるときの目つき」といったことが書かれていました。しかし、白眼はなんとなく意味がわかるので良いとして、青眼って何なんでしょうね。
その辞書に載っていた他の青眼の意味としては、「正眼に同じ」というだけでしたが、こちらを見ると剣道の構えの一つとの説明で意味不明。まさか昔の中国の人が喜んで人を迎えるときに、剣道の構えをして待っているわけがないので、たぶんそういう意味じゃないでしょう。そんな格好で迎えられたら、逃げますわ。
ということで、実質、この辞書では青眼をちゃんと説明されていないことになります。これは「青眼だよ、わかるだろう?」ってことで、書かなかったのかもしれません。この青眼は素直に考えれば青い目ですけど、中国人なのに西洋人のように青い目をしていたのでしょうか。
とりあえず、これが不思議で仕方なかったので、阮籍の
Wikipediaを見ました。これによると、<阮 籍(げん せき、210年(建安15年) - 263年(景元4年))は、字(あざな)を嗣宗、陳留尉氏の人。竹林の七賢の指導者的人物である>とのこと。彼は三国志のころの人だったんですね。昔三国志好きだったのにわかりませんでした。
「竹林の七賢」というのは、「3世紀の中国・魏(三国時代)の時代末期に、酒を飲んだり清談を行なったりと交遊した、下記の七人の称」。竹林の七賢は正直三国志では目立たない存在ですね。なお、魏の後である晋の人という説明もあり、三国時代の末期なので、時代的には微妙なんだと思います。
白眼視の故事としては、以下のような説明であり、やはり阮籍が由来だとわかります。ただ、私が知りたかった青眼については特別な説明がありませんので、ここらへんはもう少し後で情報を集める予定。とりあえず、Wikipediaでの白眼視の故事に関する説明をご覧ください。
<魏の末期に、偽善と詐術が横行する世間を嫌い、距離を置くため、大酒を飲み清談を行い、礼教を無視した行動をしたと言われている。 俗物が来ると白眼で対し、気に入りの人物には青眼で対した。
阮籍は、青眼と白眼を使い分けることができたという。礼法を重視した儒家のような気に入らない人物に対しては白眼で対応し、気に入った人物に対しては青眼で対応したという。転じて、気に入らない人物を冷遇することを、白眼視という。一方で彼は時事を評論せず、人の過ちを決して口にしない、極めて慎重な人物であったという>
●白眼と青眼の話けだけじゃない…阮籍の逸話がみんなおかしい
白眼と青眼の話はもう少し後で調べるとして、先に寄り道。すでに青眼と白眼を使い分けることができて、「俗物が来ると白眼で対し、気に入りの人物には青眼で対した」という時点でおかしいのですが、彼は変わった人物だったようで、以下のような逸話もありました。
<歩兵校尉の役所に酒が大量に貯蔵されていると聞いて、希望してその職になり、竹林の七賢の一人の劉伶と酒を飲んでいた。それで阮歩兵と呼ばれることもある。 当時の礼法では、喪中には酒や肉を断つ義務があったが、彼の母の葬式の日も大酒を飲んで肉を食い、母の棺に別れた後、もうだめだと言って血を吐いて倒れた。 権力者の司馬昭の幕僚となっていたが、いつも酔っぱらっていた。彼を陥れようとする人たちが時事を問いかけたが、いつも返事は抽象的で難解な返事ばかりで、失言は得られなかった。 司馬昭が息子の嫁に、彼の娘をもらおうと使者を送った。それと察したか彼は60日間酔っぱらい続け、使者は用件を言い出せなくて諦めて帰った。 あてもなく馬車を駆って遠出するのが好きで、行き止まりにあうと慟哭して帰った>
抽象的で難解なことばっかり言っている人は嫌だなぁと思いましたが、失言狙いに来る人らを煙に巻いているのですから、良いでしょうか。残りの逸話は酷い酔っぱらいっぷり。上記の母の葬式で血を吐くまで暴飲暴食の他、「馬車を駆って遠出するのが好きで、行き止まりにあうと慟哭して帰った」なんてのもおかしいです。
ここで出てきた「慟哭」は「どうこく」と読み、「悲しみのために、声をあげて激しく泣くこと」ですから、馬車で出かけて行き止まりになっただけでわーんと泣き出すということ。あまりに飲み過ぎて、この人ちょっとヤバくなってるんじゃないでしょうか?
●「青眼」の青は青と言っても青ではない 様々な色を指す青
さて、本題である青眼の軒をもう少し調べてみましょう。
大辞林 第二版 (三省堂)でも青眼は「訪れた人を歓迎する気持ちを表す目つき」、「「正眼(せいがん)(1)」に同じ」とあるだけ。
コトバンク(デジタル大辞泉)なんかは私の読んだ辞書とほぼいっしょで、青眼の説明の中で青眼を使ってしまっています。
<1 《晋の阮籍(げんせき)が、好感のもてる人は青眼で迎え、嫌な人は白眼で迎えたという「晋書」阮籍伝の故事から》親しい人が訪れたとき、喜んで迎える目つき。⇔白眼。
2 「正眼(せいがん)2」に同じ>
全然わからんなぁと首を傾げていたのですが、
四字熟語図書館でちゃんと説明がありました。ここで出ていた四字熟語は「阮籍青眼(げんせきせいがん)」で、「親しいものを迎えるとき好意あふれる眼差しのこと。青眼は黒い目の意」との説明でした。黒い目ですから、要するに普通の目なんでしょうね。
この説明を読んでみると、確かに注意書きなしでわかってもらいたいことだったかもと思います。黒を青と表現するのは変だと思うかもしれませんが、実はあるんですよね。たとえば、馬の毛並みで青毛というと深い黒色をしたものを指します……と書いてはみたものの、他にパッと思い浮かびませんでした。
どちらかと言えば、青と言って緑を指す場合の方が、日本や中国では多かったでしょうね。その他、犬猫では灰色を青と呼び、馬でも灰色を指す用法もあるようです。「青」といってもいろいろ指す…というのは、不思議でしょう。そう考えると、やっぱり辞書の説明は不親切じゃないかと思います。
●青色?黒色?日本人女性の理想的な色は「濡烏」(ぬれがらす)
2022/04/06追記:読み直していて、馬の毛並みの青毛と似たケースですが、人間の黒髪を「青」と表現するケースがあった気がしたので検索。まず、
青髪 - Wikipediaでは、<光加減で青っぽく見える黒髪(青黒髪)に生まれる者もいる>という説明がありました。
で、ここでリンクされていた「青黒髪」のWikipediaページを見てみると、こちらは
濡烏 - Wikipediaという項目名でした。ただ、以下のように「青みを帯びた黒を指す」などの説明のみで、こちらでは「青髪」「青黒髪」といったワードは使われておらず、私が思っていたのと違う感じでした。
<濡烏(ぬれがらす・濡れ烏)とは、女性の髪の色彩を形容する言葉。また、その髪のもつ黒の色名。
日本人女性の理想美であり、もっと一般的には烏羽色(からすばいろ)、濡羽色(ぬればいろ・濡れ羽色)、烏の濡れ羽色とも言う。青みを帯びた黒を指す。
濡れ色
色彩は、対象となる物体から跳ね返ってきた光の波長で成り立つ。「濡烏」も水分によって更に艶が増した色合いをさすが、このとき光の干渉が起こり、黒い羽毛の上に青や緑、紫などの干渉色が浮かぶ。モンゴロイドに属する平均的な女性の髪は、黒っぽい色でまっすぐな髪質、水や髪油などを含むと健康な髪の場合、先の烏の羽を髣髴とさせるような干渉色が浮かぶことがある。ただの黒ではなく、この健康な髪の証ともいえる美しい干渉色が浮かんだ状態を呼ぶのが「濡烏」である>
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