もともとは、公共サービスを民営化してうまくいっている街があると知って、興味を感じた話。ところが、よく調べてみたらお金持ちによるお金持ちのためだけの街であり、弱者救済を行わないことで税金を節約しているという街でした。その後、<弱者切り捨ての都市を歪曲して紹介の団体、あれ系の思想団体?>も追記しています。
2023/01/12追記:
●弱者切り捨ての都市を歪曲して紹介の団体、あれ系の思想団体? 【NEW】
【クイズ】アメリカは州ごとに税率が異なり、所得税も大きく違います。この税率の違いと富裕層の引っ越しについてのスタンフォード大学の研究は、どのような結論だったでしょう?
(1)富裕層は「税金」だけを理由に遠方の地へ引っ越してしまうことはほとんどない。
(2)富裕層は「税金」だけを理由に遠方の地へ引っ越すことが多いが、貧困層の同じ理由の引っ越しの方がずっと多い。
(3)富裕層は「税金」だけを理由に遠方の地へ引っ越すことが多く、貧困層の同じ理由の引っ越しはほとんどない。
●公共サービスを民営化し支出削減に成功したというアメリカの都市
2017/2/26:<市場原理主義への批判は大部分が勘違い?>(
自由主義は本当は敗者に優しい 徹底的な自己責任を求めるのは偽物の自由主義?にまとめ)でやったように、経済学は何でもかんでも市場が万能だなんてそもそも主張していません。例えば、「公共財の提供」は市場が失敗するケースだと考えられています。
ところが、ほとんどの公共サービスを民営化して、しかも、うまく行っている市がアメリカにあると知り、
自治体を民間が運営する都市 森記念財団主任研究員 三輪恭之 (2009年7月17日 森記念財団)というページブックマークしていました。この時点では、非常におもしろいと興味を感じた話だったんですよ。
<長引く厳しい財政状況の下、サービス水準を保ったまま如何に効率よく都市を経営していくかは我が国のどの自治体も抱えている共通課題である。ところで世の中には、自治体のほぼ全ての仕事をまるごと民営化した都市が存在するのをご存知であろうか。アメリカ合衆国ジョージア州サンディスプリングス市がそうである。 (中略)
ジョージア州アトランタ市の北に隣接するサンディスプリングス市は、2005年に発足した人口10万人弱の新たに設立された市である。(中略)
以前はフルトン郡の直轄都市であったが、住民は郡が提供するサービスに不満を持っていたため、住民投票により新たに市を設立する意思決定をし、フルトン郡から独立して市となった。
6 ヶ月という短期間で市の組織を立ち上げる必要のあったサンディスプリングス市は、新たに公務員を雇う時間的余裕がなく、公共サービスの運営を包括的に民間企業に委託する方法を選択した。(中略)
公権力の性格が強い警察・消防、米国では郡の仕事とされる教育・福祉を除く全ての公共サービスの提供を CH2M HILL OMI 社が行っている。市長以下、いわゆる公務員の立場で仕事をしているのはわずか4人、残りの140人あまりは全て民間事業者の社員である>
サンディスプリングスは「市」であるように小さいところではありません。
サンディスプリングス (ジョージア州) - Wikipediaによると、2012年時点で99,419人もいました。それでうまく行っており、しかも、そのうまく行ったおかげで、以下のように税金まで削減できたと言うのですから夢のような話
に見えます。
<民間の経営手法を全ての面で適用したため、米国ジョージア大学の試算によれば、歳出規模は同等の人口規模の自治体と比較して半分以下に抑えることができたという。このため歳入も圧縮することが可能となり、市の主要な財源である固定資産税の税率を近隣都市と比較して半分以下に設定することができ、住民の満足度は大いに上がったようである>
●財政再建なんて簡単だ、弱者を切り捨てれば良い…を実際にやった
ブックマークしていたのは上記だけでしたが、今回紹介するにあたって軽く確認したところ驚きました。実はサンディスプリングス市は全然夢のような話ではなく、悪夢のような話。「弱者救済にカネを払わなければ財政危機なんて起きない」をマジで実際にやった米都市の例だったのです。弱者見殺しが前提でした。
上記の時点で既に4つの地域で、サンディスプリングス市と同じように独立した地域があるとされていたんですよ。以下の
“独立”する富裕層 ~アメリカ 深まる社会の分断~ - NHK クローズアップ現代+(2014年4月22日)はさらに別の例です。
<アメリカ南部、ジョージア州の議事堂。先月(3月)新たな自治体の設立を求める法案を巡り、議論が交わされていました。この法案を提出したのは会社経営者や弁護士など、富裕層を中心とした住民のグループです。(中略)
マリーケイ・ウッドワースさん(引用者注:法案を提出したグループの代表)
「自分たちが支払う税金に見合う行政サービスを受けているとは思えません。私たちは社会を分断したいわけではありません。ただこれまでの自治体に代わって、より自分たちに合った自治体を作りたいだけなのです。」>
確かに最初のコラムにも高所得者が多いとは書いていたのですが、以下のような大事な話が語られていませんでした。
<富裕層の動きを後押ししているのが、同じジョージア州で大きな成功を収めた市の存在です。州の北部にある人口9万4,000人のサンディ・スプリングス市です。市民の平均年収は1,000万円近く。医師や弁護士、会社経営者などが多く住む高級住宅地です。
市が誕生したのは2005年。住民投票で94%の圧倒的賛成を得て、それまで属していたフルトン郡から分離したのです。貧困層に多く配分されていた税金を取り戻そうという主張が、富裕層だけでなく中間層にも支持されたのです。(中略)
住民グループ代表 オリバー・ポーターさん
「
政府による所得の再分配には反対です。人のお金を盗む行為だと思います。」
●低所得者層をますます貧困にしてしまうお金持ちの身勝手な行動
実を言うと、
これは朗報?富裕層は税金を高くしても引っ越さないことが判明!という話をやっています。しかし、研究論文とは異なり、サンディスプリングス市には、"うわさを聞いた富裕層が、全米から相次いで流入し人口が増えてい"るとのこと。研究結果に疑問を持ってしまうような話になっています。
【クイズ】アメリカは州ごとに税率が異なり、所得税も大きく違います。この税率の違いと富裕層の引っ越しについてのスタンフォード大学の研究は、どのような結論だったでしょう?
(1)富裕層は「税金」だけを理由に遠方の地へ引っ越してしまうことはほとんどない。
(2)富裕層は「税金」だけを理由に遠方の地へ引っ越すことが多いが、貧困層の同じ理由の引っ越しの方がずっと多い。
(3)富裕層は「税金」だけを理由に遠方の地へ引っ越すことが多く、貧困層の同じ理由の引っ越しはほとんどない。
【答え】(1)富裕層は「税金」だけを理由に遠方の地へ引っ越してしまうことはほとんどない。
富裕層がサンディスプリングス市に移住した場合、高所得者が出ていってしまった側の自治体は資金繰りが苦しくなります。そして、公共サービスが悪化し、低所得者層はますます困窮。さらに治安まで悪化するという悪循環で、どんどん悪くなっていきます。このように、サンディスプリングス市の試みは、全く理想とは程遠いものでした。
また、最初のコラムで例外だとされていた「教育」も以下のように今は放棄されているようです。うーん、こんなことやっているところ見ると、アメリカの未来も明るくないかもしれませんね。(2023/01/12追記:その後、移民のせいで貧しくなっていると移民叩きが起こりトランプブームに。ただ、本当の敵はアメリカの内部にいるようです)
<サンディ・スプリングス市のような例えば富裕層の街というのは、公立の学校にやる必要がないので、公教育にお金を出すという概念がなくなっていくんですね。
そうしますと、公立の学校が切り捨てられていった州では、自治体では、貧困層の子どもの受け皿がなくなっていくので、教育難民、学校に行かれなくなった子どもたちが、もう全米各地の都市であふれているという、そこまで事態が進んでおります>
●弱者切り捨ての都市を歪曲して紹介の団体、あれ系の思想団体?
2023/01/12追記:最初ブックマークしていたページは、サンディ・スプリングス市の悪い話を全然書かずに理想的な街であるかのように紹介していました。これは、意図したものではなく、著者のミスである可能性があると思っていたんですよ。ただ、読み直していて問題のこのページが「森記念財団」のページであることに気づきます。
確か「森」という名前のつく企業で自民党支持の保守系企業があったはず。で、「右派系の団体じゃないの?」と思ったんですよね。アメリカの貧困層がトランプさんをなぜか支持しているのですが、多くの国でお金持ちは右派を支持しやすい傾向があります。社会保障を少なくして弱者救済を嫌がるというのも、多くの右派の特徴です。
ただ、調べてみると、似た名前でも違う感じ。まず、「森記念財団」は森ビル系の可能性が濃厚。所在地が虎ノ門37森ビルで、評議員や役員に森ビル社長・副社長がいますので、関係があることは明らかだと思います。で、私はこの森ビルが以前、右派系の企業だと紹介されていたと思ったのですが、微妙に記憶違いでした。
あるビジネス記事で「有名な保守派経営者」とされていたのは、森ビルではなく森トラストの会長。森トラストはもともとは森ビルグループでしたが、現在は独立しており、一応違うグループとされていました。ひょっとしたら森ビルも思想的には森トラストと近いのかもしれませんけど、私の見た記事では明記されていなかったので「不明」としておきます。
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森トラスト - Wikipedia<かつては次男・稔が社長を務める森ビルグループであったが、父の死後の1999年(平成11年)に分離し、経営面ではそれぞれ独立することになった>
【本文中でリンクした投稿】
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これは朗報?富裕層は税金を高くしても引っ越さないことが判明! ■<市場原理主義への批判は大部分が勘違い?>(
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