睡眠薬で糖尿病治療のデマをNHKが謝罪 「デルタパワーで血糖値を下げる」と「ガッテン！」で宣伝した件

　NHKが「睡眠薬で糖尿病治療」「デルタパワーで血糖値を下げる」などと宣伝したそうで、非難を浴びていました。

　既に謝罪したようですが、こういうのっていつの間にか復活して浸透しちゃうことがあるんですよね。きっちり否定するサイトが増えた方が良いだろうということで、遅ればせながら。


●NHK「睡眠薬のデルタパワーで血糖値を下げる」

　2017年2月22日放送のNHKの生活情報番組「ガッテン！」では、「血糖値を下げる！デルタパワーの謎」と題した特集が放送されました。

　番組では、熟睡中に脳から出る「デルタ波」という脳波に、血糖値を下げる効果があるとまず説明。そして、「睡眠薬」がこのデルタ波の「パワー」を強め、糖尿病を治療する効果があると紹介しました。

　さらにこの後、「2014年に登場したオレキシン受容体拮抗薬」(商品名：ベルソムラ)を「デルタパワーで血糖値を下げる新薬」としてゴリ押し。「睡眠薬で糖尿病が治療できる」「新しいので安全性が高い」などとしていました。
(NHKガッテン「睡眠薬で糖尿病治療できる」　医師「番組見たが、ちょっとひどい」　J-CASTニュース / 2017年2月24日 20時38分より)


●睡眠薬に血糖値を下げる効果はなし、新薬宣伝のステマか？

　しかし、これ、かなりぶっ飛んだ内容だと言えそうです。

　睡眠障害が糖尿病による血管障害の原因であるとする研究成果などは公表されているのは事実。しかし、「睡眠薬が糖尿病の治療に効果的」となると乱暴すぎて意味不明、医師らから批判が出ています。

「睡眠薬と糖尿病には、ほとんど関係がないですよ。生活習慣の面で、睡眠自体と糖尿病には間接的には関係がないとは言い切れないですが、（番組の説明は）無理があるというか...、正直に言えばちょっと意味が分からない」(睡眠医学に詳しい都内の精神科医)

「番組は見ましたが、ちょっとひどいですね。常識的に考えて、睡眠時間が短くなればストレスが増加し、食事の量や回数も増えるし血糖値は悪化しますよ。そういう意味では、睡眠と血糖値に関係はあると言えますが、決して『睡眠薬に血糖値を下げる』効果はありません。論理に飛躍がありますね」(都内のある糖尿病専門医)

　また、ステマではないか？という見方も出ています。

「お金も労力も使って最終的にMSDの利益誘導になり悪質な番組内容」(スタンフォード大学の睡眠専門医の河合真氏のツイート)


●睡眠薬で糖尿病治療のデマをNHKが謝罪

　冒頭で書いたように、この番組について、NHKは謝罪しています。ただ、謝罪内容をよく読んでみると、ちょっと微妙でした。
(「ガッテン！」で行き過ぎ表現＝睡眠薬「誤解与えた」と謝罪―ＮＨＫ　時事通信 / 2017年2月27日 11時56分より)

　NHKはまず、「行き過ぎた表現や短絡的な表記」で、睡眠薬を糖尿病の治療や予防に直接使えるかのような誤解を与えたと説明。もうちょっとデマであることをはっきり言った方が良いですが、これはまあ良いです。

　しかし、その上で、医師の判断が前提となることを「明確に述べるべきだった」と釈明しているのには、引っかかります。この言い方だと、「睡眠薬で血糖値を下げる」という主張を完全には捨てていないように見えます。

　あと、NHKでは「副作用の心配がなくなっている」との説明もあったものの、「悪夢や頭痛などの副作用は報告されており、大変不適切だった」と訂正したという話もありました。

　最初の記事ですごく引っかかっていたのが、この副作用関連での「新しいので安全性が高い」という発言。なぜかこれがスルーされていたのですけど、新しい薬の方が副作用が少ないとは限らないために、「新しいので安全性が高い」は意味不明です。

　どうもこれはNHKの取材に協力した医師の発言だったようなのですが、お医者さんもピンキリですからね…。


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