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百貨店はいらないものを買うところ?場所貸し屋にすぎないからブランド頼み


 <百貨店はいらないものを買うところ?場所貸し屋にすぎないからブランド頼み>、<まさか復活?アメリカでショッピングモール関連株が急上昇した理由>、<デパートは場所貸し屋だから衰退って本当?大成功イオンが実は…>などいった話をやっています。

2023/08/20まとめ:
●カリスマとされるセブンイレブン鈴木敏文氏、百貨店経営では大失敗 【NEW】
●ヨドバシがすごいのはネットだけでリアルは下手…否定的な反応出る 【NEW】


●ブランド撤退で客も撤退…百貨店はいらないものを買うところ?

2017/3/4:「百貨店は必要性のないものを買うところ」という主張があったのは、百貨店は「ユニクロ」「ニトリ」入居で甦るのか | 百貨店・量販店・総合スーパー | 東洋経済オンライン(生地 雅之 :オチマーケティングオフィス代表 2017年01月27日)という記事。その根拠となるのが、以下のような話でした。

<その最たる事例が、三陽商会と衣料品ブランド「バーバリー」とのライセンス契約終了です。バーバリーの売り場がなくなって、このブランドのお客様が別のブランドを買うようになったかというとそうではなく、単に買わなくなっただけでした。
 これは、お店についているお客様にも同じことがいえます。たとえば、ピーク時には400億円強、1999年の閉店時でも百数十億円の売上高があった東急百貨店日本橋店の閉店後、近隣の高島屋日本橋店や三越日本橋本店の売り上げが増えるかと思いきや、実際はほとんど寄与しませんでした。
 つまり、百貨店顧客というのは、魅力あるブランドやお店についたファンであり、それ以外に移ることはありません。生活必需品を売っているわけではないので、それがなくても困ることはないのです>

 そして、作者は、"自前の売り場を減らして、ファストファッション店の「ユニクロ」や家具量販店の「ニトリ」などをはじめとしたテナントを誘致し、そこから賃料収入を得るテナントリーシングに力を入れる百貨店"は、再生につながらないと指摘しています。

 これは、百貨店内の大型テナントのほとんどの顧客は、そこのみを目的として入店し、目的のものを買ったらほかのフロアに立ち寄らずに帰ってしまうためという説明でした。ただ、これ、別に大型テナントに限らない話じゃありません? 作者自身が挙げたバーバリーの例が正しければ、バーバリーが目当てだった客も、バーバリー以外は買わずに帰っていたと考えられます。つまり、今までと変わりません。

 ということで、最初読んだときは、イマイチ腑に落ちない話でした。ただ、読み直してみると、「百貨店はいらないものを買うところ」になっているので、そういうお店の作り方は根本的に変えた方が良い…という主張なんでしょうね。バーバリー頼りもユニクロ頼りもダメという話。以下のようなアドバイスもありました。

①自店の既存顧客に向けたマーケティングをやり直して、今まで以上に店舗内で買い回ってもらえるように促す
②お店の商圏内における百貨店顧客層の掘り起こしをする
③平均年齢が高い既存顧客の、子ども、あるいは孫までをターゲットとしたモノ・コトを開発し、それを適切にプロモーションする


●現在の百貨店は場所貸し屋にすぎないからブランド頼みになる

 今現在の百貨店というのは「場所貸し屋にすぎない」という見方は、他の記事でも見つけることができました。本格的崩壊期か?テナントビル化した百貨店 | JIJICO [ジジコ] - 毎朝3分の知恵チャージ( 認定事業再生士 村上 義文)では、以下のような話がありました。

<「百貨店は場所貸し業」とよく揶揄されます。百貨店の仕入(発注)は
①仕入、在庫に一切関与しない場所貸し
②メーカーの店舗展開協力も在庫負担一切関与なし
③一部仕入関与一部在庫負担も売れ残りはメーカー負担
④百貨店が全発注、全部在庫負担
の4つに大別され、その9割ほどが①〜③に該当するそうです。
 つまり、百貨店はテナント賃料収入に腐心し、品揃え・在庫・販売スタッフ費用等のリスクは大部分をメーカーに依存します>

 "高級品は買えるが、当然値段が高い、値引きしない、メーカー店員が多く横断的なフロアサービスができない"ということで、百貨店自体の魅力としてはほとんどないと言って良い状態。なので、"安定的な賃料をもたらす集客効果の高い高名なブランド誘致に力点が置かれていた"という、誘致するブランド重視ということになっていたようです。

 この背景を知っておくと、先程あった今多くの百貨店がニトリを誘致しているという話もわかりやすくなります。自前主義ではなく、既にあるブランドを欲するんですね。なお、この記事は九州についての話があり、百貨店とスーパーの売上を比較しています。意外なことにスーパーは、まだ好調が続いているそうです。

<平成27年の九州百貨店・スーパー販売動向(九州経済産業局調べ)をみると百貨店(21店)の販売額は5426億円(前年比2.6%減、全国は6兆8256億円、前年比0.0%)と3年ぶりに前年同期比を下回りました。
近年ピークの8565億円(平成11年)から36.6%減と逓減しています。
 一方、スーパー(405店)は1兆0308億円(同2.0%増、全国は13兆2229億円、同1.9%増)と好調を維持しています>


●レトロな雰囲気で昭和を感じさせる百貨店、ただし需要はというと…

 百貨店再生に絡む話ということで、もう少し探していて、消えていく昭和デパート、それぞれの再生へのアイデア 女性自身 2016年11月24日 12時00分 (2016年11月28日 05時13分 更新)を見つけました。ただ、内容を見ると、百貨店はもう既に潰れてしまっていて、その後をどうするかという話。今回の話とはずれるものでしたね。
JR花巻駅から徒歩10分。シャッターが閉まったままの商店が散見される上町商店街の一角に、マルカン百貨店がそびえていた。創業1973年。駅前商店街の中心であり、花巻のシンボルともいわれた老舗百貨店が今年6月7日、多くの市民に惜しまれつつ、43年の歴史に幕を下ろした。

それから5カ月。現在、急ピッチで改装工事が進められているマルカン内部に入る。エレベーターで一気に6階まで上がると、そこはマルカン名物の大食堂。目の前には、おいしそうな食品サンプルが並ぶ陳列ケースがそのまま残っていた。

 レトロな、板から突き出たくぎ状の食券差しを指さし「昭和を感じるでしょう。ほとんどの物は43年前の開業時のまま。大食堂だけは、可能な限り、そのままの形で存続させるというのが僕らの基本コンセプトの1つです」と話すのは、「上町家守舎」社長・小友康弘さん(33)。

 レトロさはそれだけで魅力にはなります。とはいえ、それだけでは食っていけなかったからこそ、潰れたというのも事実でしょう。百貨店はもうすでにほとんどの人が必要だと思っていないんでしょうね。


●既に閉店しまくっている百貨店 復活ではなく跡地利用の問題に移行

 記事で紹介されていたもう一つは、新潟県長岡市にあった老舗百貨店「大和長岡」。こちらの建物は壊して、もう完全にまっさらにしてしまったっぽいです。跡地にアンテナショップを作って、イベントをやっているという話でした。
百貨店跡地は、名称を「カーネーションプラザ」と改め、アンテナショップをメインに再生した。

明るく広い1階フロアに入ると、名産品や銘菓、雑貨小物、民芸品などが目に飛び込んでくる。町村合併した市町村の特色ある名産品が常時300種以上、売られている。イベントスペースには、ライブや演奏会にも対応できるようピアノも置かれていた。定期的に多彩なイベントを開催し、商店街の店が展示会などをするときは、ほぼ無料で貸し出すなど、サテライト店舗としても利用されている。

(中略)この夏は、プラザ裏手にある商工会議所で大がかりなオバケ屋敷を開催。10日間で4,500人が集まった。

「8割は女子高校生と女子中学生。いまの子どもらは、楽しかったらネットで拡散してくれるから、翌日また、友達が押し寄せて、本当に大勢のコが来てくれましたね」(安藤さん)

イルミネーションをともし、プラザ前の32メートル道路を全面通行止めにして、ビアパーティも開催した。

 上記は、衰退する商店街の活性化 お店ではなく人を集めて交流の場にせよに近い系統だと感じた話。この以前の投稿自体も、スタートの話は商店街ではなく、ショッピングモールの話でした。百貨店だろうが、商店街だろうが、ショッピングモールだろうが、基本はいっしょってことなのかもしれません。


●百貨店は寄せ集めで特徴不明 だからプライベートブランドも失敗する

2017/04/26:百貨店のプライベートブランドはなぜ上手く行かないのか | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン(生地雅之:株式会社オチマーケティングオフィス代表)という記事を読みました。タイトルの通り、プライベートブランドについて書いているのですが、これが百貨店の特徴というのがよくわかる内容になっていました。というか、名前見てあれ?と思ったら、最初の記事と同じ人でしたね。

 生地雅之さんによると、無印良品、ZARA、GAP、H&M、FOREVER21などは、「1ショップ1ブランド」で1つのテイストと、特徴がはっきりしています。バーニーズやユナイテッドアローズ、ビームスなども、コンセプトによるセレクトショップであり、コンセプトがはっきりしています。

 一方、百貨店の強みは“総合”小売業。様々なテイストを包含し、幅広いお客様に対応しています。なので、プライベートブランドがうまく浸透しないってことみたいですね。コンセプトがはっきりイメージできないのでしょう。

 ただ、“総合”小売業である百貨店を1つのテイストにしちゃうわけには行かないので、アイテムことにまとめた売場からテイスト軸の売場に転換させ、プライベートブランドも、テイスト軸のライフスタイルを提案可能にできるショップ&グッズブランドを開発すべきとのことでした。

これがうまく行くかはわからないものの、百貨店のプライベートブランドがうまく行かない理由はわかりやすかったです。


●まさか復活?アメリカでショッピングモール関連株が急上昇した理由

2020/08/11:新型コロナウイルス問題でピンチという中、アメリカでは米株式市場でショッピングモール運営の不動産投資信託(REIT)、サイモン・プロパティ・グループの株価が大幅に上昇していました。これはアメリカでモールで見直されているためか?というと、そうではありません。むしろ逆かもしれないという理由でした。

 ショッピングモール運営の不動産投資信託の株価が上昇した理由はなんと、百貨店が入居しているモールのスペースをネット通販のアマゾン・ドット・コムの配送センターにする方向で同社と協議中だと伝わったため。モールの賃料収入を確保できるとの期待から、買いが優勢になったのです。

 アメリカでも普通に、郊外のモールに出店している百貨店の経営悪化や破綻が相次いでいます。やはりネット通販の台頭でモールへの客足減少が続いている上に、新型コロナウイルスのまん延が打撃となっていました。アマゾンの配送拠点としか価値を見いだされないというのは、むしろ百貨店の凋落を示す屈辱的で象徴的なニュースかもしれませんね。
(<米国>モール運営のサイモンが大幅高、百貨店をアマゾンの配送拠点に転換  :日本経済新聞 2020/8/11 0:31より)

 なお、アマゾン側のメリットとしては、住宅地に近いモール内に配送拠点を確保できれば、より迅速な配送を実現できるという説明がありました。ただ、立地はともかく、配送のしやすさはどうなんでしょうね。モールの空いているところに…となると、物の出し入れはしづらそうな感じ。モールに来るお客さんにとっても邪魔でしょう。

 配送しやすい外側に面したモールのスペースをごそっと奪ってしまうような感じでしょうかね。いっそのごとモールをまるごと全部ならこうした問題は生じないのですが、そういう書き方でもなさげ。アマゾンに利便性の高いスペースを貸すことで、さらにモールの衰退が進むといったことも起きるかもしれません。


●百貨店よりスーパーが儲かる…特にオーケーストアが驚異的な成長

2021/11/16追記:どこに追記するか迷った関西スーパー買収劇、H2Oとオーケーの対立が泥沼化。“百貨店の凋落”が背景に bizSPA!フレッシュ / 2021年11月14日 8時47分という話。「百貨店の凋落」「スーパーの方が相対的に好調」という話であり、当初書いていた話と合いますので、このページに追記することにしました。

 2021年10月29日の関西スーパーの臨時株主総会で阪急阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)との経営統合案への賛成が3分の2(66.67%)を上回りました。賛成率は66.68%だったとされており、ギリギリ。さらに、首都圏地盤のディスカウントスーパーのオーケーが「不正があった」と訴えて、決着は持ち越しとなっています。

 エイチ・ツー・オーが圧倒的な支持を得られなかった理由について、記事では、TOBによる価格プレミアムとオーケーの経営戦略が分かりやすかったことを挙げていました。まず、オーケーは1株を1.7倍である2250円で買い付けようとしていたのに対し、エイチ・ツー・オー案はプレミアムなし。個人投資家にとってはメリットがありません。

 また、オーケーは高品質・低価格路線を強みとしており、そのノウハウを関西スーパーに浸透させて競合他社との差別化を図るという戦略も説得力あり。オーケーは売上高は2桁増を続け、経常利益率はコロナ特需が生まれる前でも5%と驚異的な数字でした。スーパーの中でも特にうまく行っているスーパーだと言えます。

 私もオーケーストアに行ったことがありますが、このスーパーはおもしろかったですね。レジ袋有料化のはるか前からレジ袋を有料にしていました。その代わり安くしますよ!ということで、はっきりと意思表示していたのです。遠いしそこまでずば抜けて安くなかったので滅多に行かなかったのですが、独特の個性を感じる思想でした。


●「百貨店の凋落」でスーパーの強化に走らざるを得ない百貨店の事情

 一方、百貨店の凋落と関係するのは、エイチ・ツー・オーが何としてでも関西スーパーを手に入れたかった理由の説明部分です。理由の1つは本業の百貨店事業が新型コロナ問題でズタズタになり、回復の見通しが立っていないこと。もうひとつはスーパーマーケットが、規模の経済の働きやすいビジネスであることだとされていました。

 エイチ・ツー・オーリテイリングの2020年の年間売上高は4兆2204億円。前年比27.5%減という過去最大の減少となりました。特に主力となる衣料品の売上高が前年比31.1%もの減少。百貨店は生活必需品ではなくいらないものを買うところ…というのがモロに出た感じですね。不要不急の外出ならぬ不要不急の買い物が自粛されてしまった形です。

 この点、スーパー事業の方がマシでした。2021年3月期の百貨店事業は19億円のセグメント損失であった一方で、スーパーを含む食品事業は、42億円のセグメント利益を出しています。エイチ・ツー・オーが現在筆頭株主である関西スーパーもコロナ禍で利益率は1%から2%台へと改善。ここをより強化したいというのがエイチ・ツー・オーの思惑です。


●イオンが最強である理由!スーパーは規模の経済が聞きやすい業界

 「百貨店の凋落」とは無関係ですが、私がより興味深いと思ったのが、2つ目の理由である「規模の経済」でした。規模の経済とは、生産規模を高めることで単位当たりのコストが低減されることを指します。要するに店舗数を拡大すればそれだけ利益が出るということ。スーパーは規模の経済が働きやすいという特性があるそうです。

 これは売上規模による営業利益率の違いを見ると一目瞭然。2020年のスーパーの平均営業利益率は1%を下回っていますが、売上規模が1000億円以上になると、1.98%という平均の2倍以上の数字。利益率は300億~999億円までなら1.55%。30億~99億円までのスーパーは0.34%、それ以下は赤字…とわかりやすく規模が大きいスーパーが成功しています。

 理由は、大量に仕入れを行うことによってスーパーの価格交渉力が上がり、安く仕入れられるためというのがひとつ。また、物流網を統一して配送料を抑えられることも背景にあるとのこと。説得力がなかったエイチ・ツー・オーの統合案ですが、この規模の経済で考えると合理性があります。ただし、同じことはオーケーでも言えるために、微妙になってくるんですけどね。

 なお、私がおもしろいと思ったのは、イオンがなぜ成功しているのか?と気になっていたため。ダイエーなど大量出店したスーパーはことごとく失敗してきたため、イオンもダメだと思ったらイオンだけは成功。規模の経済をうまく生かしたのだと思われます。逆に言うと、ダイエーなどはなぜでこれで失敗したのか?という話にもなるんですけどね。

 あと、宅急便においても規模の経済が効くと言われていて、だからアマゾンの安い配送料でも利益が出る…と言われていたのに、結局、大手配送業者がアマゾンから撤退する結末になったことも気になっていたんですよ。規模の経済の利点以上にアマゾンの配送料はきつかったみたいですが、スーパーのように規模の経済がうまく働く業界もちゃんとあるんだ…と勉強になりました。


●イトーヨーカ堂がものすごい勢いで閉店が増加してるのはイオンのせい

2022/01/27まとめ:他のところでも書いていた話なのですが、こちらのテーマにも関係が深い話だったので転載。当初の<現在の百貨店は場所貸し屋にすぎないからブランド頼みになる>であった、デパートは場所貸し屋で寄せ集めだから失敗という主張を否定するな話があったのです。

 飛ぶ鳥を落とす勢いだった日本のスーパーは、その後ほぼ必ず衰退。ただ、その中ではイオンだけが例外で勝ち続けているというのが不思議でした。その答えが載っていそうな<イトーヨーカ堂の閉店が止まらない深刻な理由。イオンと明暗を分けたものは>(日刊SPA! / 2021年12月15日 8時25分)という記事を今回読んでみました。
https://news.infoseek.co.jp/article/spa_20211215_01795738/

 記事によると、イトーヨーカ堂旭川店などイトーヨーカ堂の閉店が相次いでいるとのこと。閉店予定を含めた一覧があったので数えてみると、3年で13店が閉店していますので大げさではない閉店の多さ。イトーヨーカ堂がもともと地域を偏って進出していたことを考えると、さらに多いと感じられる閉店数です。しかも、記事では一部しか取り上げていないとのこと。本当はもっと閉店しているようでした。

 なぜここまで閉店が相次いでいるのか。 日刊SPA!は、「背景には、イオングループの存在があります」としていました。イオンがイトーヨーカ堂を潰しているってことですね。私の地元苫小牧でもそんな感じで、イトーヨーカ堂やダイエーなどが地域商店街を潰したものの、その後進出してきたイオンに今度はイトーヨーカ堂やダイエーなどが潰されたという流れでした。


●イオンにイトーヨーカ堂が負けた理由はイオンが別ジャンルだから

 では、なぜイトーヨーカ堂はイオンにやられているのでしょう。記事では、実はイオンとイトーヨーカ堂は同じ「総合スーパー」に分類されるものの、そもそも別ジャンルのお店であることを指摘していました。また、イオンはイオンではない別形態の小規模店舗なども持っており、こうした複合体であることも記事では強調しています。

<駐車収容台数が何千台もある「イオンモール」もあります。消費者からすれば、そこが総合スーパーであろうが、ABCマートやユニクロが入っているモールであろうが、関係なくそこが買い物をしやすいから利用するわけです。さらにあなたの近所に「まいばすけっと」という生鮮食品も扱うコンビニはありませんか?
 あれも”イオン”です(イオングループのまいばすけっと株式会社が運営)。そう、イオンは複数の店舗形態を持つ小売企業なのです。(引用者注:さらにマックスバリュという、このふたつの中間サイズの店舗形態も持つ)
 つまり、「イトーヨーカ堂VSイオン連合」という図式が現在のスーパー業界の正しい見方です>

 イオンモールのような「モール」は「小売」というよりは「不動産業」であり、より細かく言うと「ディベロッパー」に分類されるそうです。商業施設を「イオンモール」として作り、そこへの出店料で儲けるビジネスモデル。ディベロッパーで儲かる上に、イオン自身も出店しそこに顧客も集客できるのがイオンの強みとされていました。


●デパートは場所貸し屋だから衰退って本当?大成功イオンが実は…

 ということで、イオンが強いのは「出店料で儲けるビジネスモデル」との説明。これは当初のデパートの話であった「場所貸し屋」だと言えるでしょう。こうなると、「デパートは場所貸し屋だから衰退」という当初紹介した主張が怪しくなってきます。個人的にはイオン成功の説明の方が正しいと感じました。

 では、なぜ同じ場所貸し屋でデパートとイオンで正反対の結果になっているのか?という話。デパートとイオンではいろいろと違いがあり、一つは立地でしょう。デパートは都会でないと成立しない商売とされている一方、イオンは逆に郊外ばかり進出しています。同じ場所貸し屋でも出店地域が全く違うんですね。

 さらに、大きな違いだと思われるのは、規模の違い。イオンの方がダントツに規模がでかいんですね。デパートはそもそも都会に作るために、イオンのような大規模モール化は不可能です。デパートが規模の違いでイオンに勝てないというのは、そのままイトーヨーカドーが負ける理由で説明が可能だと思われます。

 イトーヨーカ堂側はイオンに対抗して、有力テナントの誘致によりショッピングセンター化を図るという
改革を実行中です。しかし、そもそもイトーヨーカ堂の店舗は狭いため、イオンのようなモール化はできないと指摘されていました。同様の理由でデパートもイオンのようには成功しないと思われます。


●カリスマとされるセブンイレブン鈴木敏文氏、百貨店経営では大失敗

2023/08/20まとめ:別のところで書いた話が関連するのでこちらにも転載。<西武池袋本店の建物、ヨドバシがほとんど取得か…1階などに家電量販店を出店の可能性も : 読売新聞オンライン>(2022/11/12)は、投資会社の百貨店経営手腕を疑問視する記事。しかし、鈴木敏文さんにも流れ弾が飛んでいます。記事では、そごう・西武は鈴木敏文さんが買収して失敗した事業といった説明だったのです。

<セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下の百貨店「そごう・西武」が、米ファンド傘下で新たなスタートを切ることとなった。そごう・西武を買収した(引用者注:投資会社である)「フォートレス・インベストメント・グループ」は不動産案件を強みとしているものの、百貨店の経営手腕は未知数だ>
<セブン&アイは2006年、経営不振に陥っていたそごうと西武百貨店を買収した。小売り業界で「カリスマ」と呼ばれ、セブン&アイを国内最大級の総合小売りグループに育てた鈴木敏文名誉顧問(89)が主導した。09年には両百貨店を合併させ、そごう・西武とした。
 グループ内のスーパーやコンビニと連携することで再建しようとしたが、業績は低迷したままだった>
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20221112-OYT1T50029/

 投資ファンドのフォートレスは、「西武池袋本店(東京都豊島区)を含む店舗の改装と設備投資に200億円以上を投じる予定だ」などとするコメントを発表。家電量販店大手ヨドバシHDと連携し、一部にヨドバシが出店するといいます。場所によっては、ヨドバシが建物のほとんどを取得するとみられるそうです。

 記事によれば、セブン幹部から「百貨店は中途半端な設備投資ではすぐに陳腐化し、生き残れない。資金力のあるファンドに任せた方が良い」との声が出ていたとのこと。たぶん一時的に投資して上向いてもすぐダメになり、常にお金が必要という意味でしょう。こうした見方を受けて、ファンドに任せる方針になった感じです。

 ただ、前述の通り、読売新聞は冒頭でファンドの手腕を疑問視するような書き方。本文読むと、百貨店が凋落しているためとしており、投資ファンドうんぬんの問題ではないんですけどね。個人的に可能性があると思うのは、「百貨店をやめること」。いっそのことヨドバシ化してしまった方がいいのかもしれません。

 ところが、ここらへんにも読売新聞は否定的でした。<ヨドバシにとって、今回の案件では数千億円規模の費用がかかる見通し>として、まず金額の大きさを不安視。その上で、<出店が見込まれる池袋はビックカメラやヤマダデンキがひしめく都内随一の激戦区で、思惑通りに収益をあげられるかは不透明>としていました。


●ヨドバシがすごいのはネットだけでリアルは下手…否定的な反応出る

 前述のそごう・西武買収の話が出たすぐ後、<そごう・西武の売却が延期 西武池袋本店へのヨドバシ出店の影響か>(23/1/24(火) 18:20配信 WWDJAPAN.com)という記事が出ていました。セブンとフォートレス間の問題というよりは、ヨドバシの問題じゃないかとの見方です。

<セブン&アイ・ホールディングスは、2月1日に予定していた子会社そごう・西武の米ファンドのフォートレス・インベストメント・グループへの売却を3月中に延期すると24日に発表した。(中略)
そごう・西武の売却を巡っては、フォートレスが連携する家電大手のヨドバシホールディングスが西武池袋本店などの旗艦店への出店を打ち出したものの、出店フロアなどについて調整が難航している>
https://news.yahoo.co.jp/articles/68de67ca7d86dd73b227250905ab34c4713c15f9

 素人の見方なのであてになるわけではないのですが、この記事のヤフーニュースのコメント欄ではいろいろな方向性の見方が登場。以下にいくつか紹介しておきます。いろいろな見方がある…と書いたものの、ヨドバシの出店はうまくいかないのではないか?というネガティブな見方が優勢となっている印象でした。

<ヨドバシの業績右肩はEC伸びてる結果だから、大型店の出店は意味がない。実際、量販店なんていつ行ってもガラガラですし、頻繁に買う物でもない。(中略)結論、ビックの駆逐が目的の出店なので、用が済めばヨドバシは店舗を小さくするか撤収する算段でしょう>

<ヨドバシ勢いはあるし、家電屋ではネームバリューがある。しかし、梅田のヨドバシはここに来てテナント集めに苦戦してるし、商業施設側のテナント配置が下手くそ。それに加えてヨドバシは営業時間が長く休みも少ないので、テナント側に嫌われ始めてる気がする>

<ヨドバシはネット通販や新宿などで頑張ってほしい。池袋は家電量販店は正直お腹いっぱいで、西武百貨店の1階や低層階に入るのはどうなのだろうか……。ヨドバシもそれだけの投資をするなら、ネット通販にもっと投資してアマゾンを本気で脅かすようにしたらどうだろうか?>


【本文中でリンクした投稿】
  ■衰退する商店街の活性化 お店ではなく人を集めて交流の場にせよ

【その他関連投稿】
  ■移動スーパーの何がすごいのかわからない 「とくし丸」は全国で約100台
  ■ドン・キホーテは本当に安いのか?大原孝治社長は「安く感じる」と表現
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