東日本大震災に限らないのですが、死んだ人の幻覚・幽霊を見ることはかなり報告されています。こういった現象が起きるのは以前から知られており、むやみに否定する風潮は良いことではありません。
ただし、幻覚を見るのがよくあることであっても、そのままで良いとは言えない場合、つまり、危険な精神状態である場合もあるそうです。
●東日本大震災の被災者らの多くが心霊現象を体験
魂でもいいから、そばにいて―3・11後の霊体験を聞く― 無料お試し版
は、"数年前から被災地で、まことしやかに囁かれてきた不思議な体験の数々"を紹介した書籍のようです。
圧倒的に多いのは、亡くなった家族が夢に現れるという現象。夢とは思えないほどリアリティに溢れ、当人と言葉を交わすようなケースも多いそうです。
その次に多いのが、「お知らせ」というもの。「お知らせ」というと何だかわかりませんが、具体的に言うと、亡くなった時間に、お別れの挨拶に来たという証言するもの。また、現代らしく、携帯電話を通しての不思議な現象も散見されたようです。
(
被災地で起きた不思議な体験が遺族に生きる力を与えた | 週末はこれを読め! from HONZ | ダイヤモンド・オンライン | ダイヤモンド社 2017.3.10 内藤 順:HONZより)
●幽霊を乗せたタクシー運転手も続出
似たようなもので、タクシー運転手が幽霊を乗せたという話を集めて卒論にまとめた人がいたことを、思い出しました。
被災地、タクシーに乗る幽霊 東北学院大生が卒論に:朝日新聞デジタル(石橋英昭 2016年1月20日11時27分)
例えば、震災後の初夏なのにコート姿の女性が、石巻駅近くで乗り込み「南浜まで」と告げました。「あそこはほとんど更地ですが構いませんか」とタクシー運転手が尋ねると、「私は死んだのですか」と震える声で答えるのに驚き、後部座席に目を向けると誰も座っていなかった…といったもの。
出来事を記した日記や、「不足金あり」と書かれた運転日報を見せてくれた人もいたそうです。
これらはよくある創作怪談のようなもので、不謹慎と感じる人もいるかもしれません。また、こういった心霊現象を肯定的に紹介するのは非科学的で問題ありと思うのか、批判もありました。
ただ、これが悪い活動だとは断定しづらいです。この学生がどういうスタンスだったか不明ではあるものの、このような証言をまとめることはちゃんと学術的に意味があると考えられます。
最初の記事では、"このような霊的体験は、阪神・淡路大震災の時にはほとんど見られなかった"として、東北には土着の宗教心や"オガミサマと呼ばれるイタコのような風習が古くから生活の一部になっていた"と説明し、東日本大震災特有の現象であるかのように書いていました。しかし、喪失感によって幻覚を見ることは以前からわかっていたことです。
にわかには信じられない話ではあるものの、批判するようなことを言って傷つけるよりは、そういった幻覚を見やすいのはむしろ当然だと肯定してしまった方が、良いかもしれません。
●死んだ人の幻覚・幽霊・心霊現象を見ることは当然
必ず死者が絡んでいるという例ではないものの、例えば、過去にやっているもので、
幽霊を見る方法が判明する! スイスの大学教授らが真面目に研究という話があります。
これは心霊現象を科学的に再現したものでしたが、身体的・感情的に高まった状態に多いことも既に知られていたという話も出ています。具体的には、登山家や冒険家、身体的症状(てんかん、偏頭痛、精神分裂症やガンを含む脳への影響)などであり、精神的に疲弊している際に幻覚を見やすいことがわかっていたのです。
また、このときにおいても、今回と同じ例である、愛する人を失った直後に深く悲しんでいるとき、というものに言及されていました。被災者らが幻覚を見ていても、全く不思議ではないのです。
●亡くなった人の姿や声の幻覚を見るのは正常
幻覚を見るのが当たり前で、むやみにその告白を否定しない方が良いというのは、心のケアに関わるアドバイスにこういった現象が言及されていることからもわかります。
例えば、内閣府の
交通事故によってご家族を亡くされた方へでは、以下のように交通事故死者の遺族が幻覚を見る場合があることを説明していました。
"亡くなって数週間の間は、亡くなった人がまだ生きているように感じたり、その姿が見えたり、声が聞こえるなどの幻覚が生じることもあります。このような幻覚は、病的なものではなく、しばしば一過性にみられるとされています"
同様に、
悲しみを乗り越える…大切な人を失った時 [メンタルヘルス] All About(中嶋 泰憲 2009年06月22日)でも、幻覚に関わる話が出ていました。
喪失体験から回復するには半年~1年はかかり、通常1~2ヶ月後、日常生活は機能し始めるそうです。しかし、その状態になるまで、気持ちの落込み、興味が湧かないなどの抑うつ症状、
亡くなった人の姿や声の幻覚、また、その人が亡くなった事をなかなか事実として認識できない事は比較的よくあり、正常範囲とみなせると説明していました。
●幻覚を見るのは当然だが、望ましい状態なわけではない
オールアバウトでは、喪失の悲しみを心に蓋をしたまま外に出さないでいると、故人に対する本当の思いや感情が見えないまま喪失を引きずり易くなるとされていました。
ただし、その人の死が思いがけ無い事で心の準備が全く出来ていないとき、その方の亡くなられた状況がショッキングなものであったとき、また、故人との関係が心の拠り所になっている場合などで、うつ病など心の病気が生じるリスクがより高くなるとも警告されていました。
そういう意味では、最初の記事はどうかと思うところがありました。例えば、"遺された人たちが生きる力を取り戻し、少しづつ心の復興が進んでいる"と、肯定的にとらえているところがあったためです。
他にも、「あの時もし、こうしていたら、家族は助かったのかもしれない」と、自分で自分を責め続けてしまうことがあると、その危険性に言及しているにも関わらず、"当人たちそれぞれの不思議な物語が、彼らを罪の意識から解放してくれる"などと書いていました。
心霊現象を見るのは当然であり否定すべきではないでしょうし、悲しみを表に出すことも否定すべきではないのですが、幻覚を見続けるのが良いことだと誤解させてしまうのはまずいと思われます。
内閣府のサイトでは、"もし、数週間経ってもこうした幻覚がずっと続くような場合には、医師に相談してください"としていました。
また、オールアバウトでも、2ヶ月以上も日常生活が機能しない状態が続くときや、"亡くなった人の声が複雑な会話を伴う"などの場合は、回復過程が正常でない可能性があるとしていました。同様のケースには「死にたい気持ちが生じる」があるのでわかるように、危険な状態です。
幻覚を見るのはおかしなことではなくよくあることであり、それを否定するのは望ましくありませんが、強い喪失感の表れである可能性がありますので、お医者さんに相談することを勧めた方が良さそうです。
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