広島大学で教授が業績を水増ししていたことが判明しました。この件で退職者が出るに至ったのですが、辞めたのはその不正をやっていた教授ではありません。なぜかその不正を指摘した准教授の方が退職に追い込まれたという、おかしなことになっているとのこと。広島大学は最低ですね。(2017/3/13)
2018/12/24:
●広島大の別の教授が准教授らにパワハラ、事務職員は不安神経症に
●広島大学のH教授が大幅な業績の水増し
2017/3/13:この件を報じていたのは週刊金曜日。
広島大学で“大人のいじめ”1──業績水増し告発の准教授が“クビ”へ(明石 昇二郎)(2017年3月10日7:03PM)という記事です。
記事によれば、業績の改竄や水増し等の不正行為が発覚したのは、広大の原爆放射線医科学研究所(広大原医研)。週刊金曜日では名前を伏せて、「H教授」としています。
広大原医研の活動と業績は、研究所の公式記録である「年報」として毎年、300ページを超す本にまとめられています。H教授が業績水増しに利用したのが、この「年報」でした。以下のような極めて単純な手口です。
(1)他年度に発表した論文を、新たに書いたように装って使い回す。
(2)著者の順番を入れ替えて、全く別の論文であるかのように改竄する。
こうした使い回しや改竄によって、さも多数の論文を執筆しているかのように水増しされ、そのままチェックされることもなく年報に掲載されていました。
例えば、13年4月から14年3月までの1年間における広大原医研の業績をまとめた14年発行の『広島大学原爆放射線医科学研究所年報55号』。ここでは、リストにある「英文原著」24本のうち8本が、ルールに従えば次号の年報(56号)に掲載すべき別年度のもので、11本は年報54号の論文リストに掲載済みのものでした。
24本のうち、8+11=19本が不正。つまり、実際には5本しか書いていなかったのを、5倍近くまで増やしていたということになります。水増ししすぎてほぼ水ですね。原液は2割くらいしかありません。
●研究妨害された末に「研究をしていないから」という理由で退職へ
H教授の不正行為は、広大原医研に所属するQ准教授が、大学当局に通報したことで明らかになっています。しかし、広島大当局も広大原医研も、H教授の不正に対して対応せず、H教授の処分はおろか、年報の訂正さえ行なわれていないとのこと。この時点で腐っています。
ところが、広島大学の腐敗のひどさを、より感じる話がさらに別にあるのです。17年3月に任期の更新を控えていたQ准教授に対し、16年9月、広大原医研の松浦伸也所長が委員長を務める人事交流委員会からQ准教授に対し、同氏の業績評価を「C評価」(再任不可)にしたとする通告が出されました。
(
広島大学で“大人のいじめ”2──対応しない大学当局(明石 昇二郎) | 週刊金曜日ニュース 2017年3月10日7:13PMより)
これは一応不正の告発に対する報復という理由ではありません。Q准教授が「研究をしていないから」というものでした。ただ、これはQ准教授の研究室が研究資料や重要書類、実験機材を勝手に持ち出されるなどの「嫌がらせ」を受けていたためであり、本来、こちらの是正がなされていないことが問題となる案件です。
この通告よりかなり前の14年2月には、H教授や広島大学を相手取り、原状回復などを求めて広島地裁に提訴しています。つまり、何年にもわたり研究再開できない異常事態を放置しておいた癖に、「研究をしていないから」という理由で辞めさせたということになります。
これに加えて、業績水増しの報告と処分の放置がありますので、広島大学は相当悪質です。
●業績水増しの東幸仁教授の経歴
また、最初の記事によれば、H教授の業績水増しは年報だけではなく、同大の研究者総覧でも発覚しています。研究者総覧のH教授の「学術論文」リストは、かつて390本ものタイトルが記載されていました。しかし、同一論文が何度も使い回しされ、5回も繰り返し登場する論文まであったそうです。
ところが、大学当局への通報があった後の16年12月に確認すると、これがいきなり145本にまで“激減”。現在、確かめてみると、やはり145本です。
というか、この週刊金曜日のリンク先には、
東 幸仁(原爆放射線医科学研究所)というのがあり、「東幸仁」(ひがしゆきひと)ってお名前が出ちゃっていました。記事で名前伏せた意味ないじゃん!
名前が判明してしまったので、ここで経歴をやっておきましょう。広島大学一筋みたいですね。
<学歴>
広島大学医学部卒業
<職歴>
広島大学医学部附属病院内科医員(研修医)
総合病院福島生協病院循環器内科医師
広島大学医学部附属病院第一内科医員
広島大学大学院医歯薬学総合研究科創生医科学専攻探索医科学講座心臓血管生理医学助手
広島大学大学院医歯薬学総合研究科創生医科学専攻探索医科学講座心臓血管生理医学学部内講師
広島大学大学院医歯薬学総合研究科創生医科学専攻探索医科学講座心臓血管生理医学講師
広島大学大学院医歯薬学総合研究科創生医科学専攻探索医科学講座心臓血管生理医学助教授
広島大学大学院医歯薬学総合研究科創生医科学専攻探索医科学講座心臓血管生理医学准教授
広島大学大学院医歯薬学総合研究科再生医療部部長(兼任)
未来医療センター長 教授
(
わたしの紹介 | 東 幸仁先生のウェブサイトより)
●同じ論文が繰り返し登場している研究者総覧
研究者総覧での水増しの話に戻します。例えば、No.2はNo.60,73,114,265と同じだとされていました。過去のサイトが残っていたので確認してみると、以下のように、確かにそのまんま同じタイトルで何度も掲載されていることがわかります。
2.Non-dipper phenomenon in essential hypertension is related to blunted nocturnal riseand fall of sympatho-vagal nervous activity and progress in retinopathy, Autonomic Neuroscience:Basic&Clinical, 88, 181, 186, 20010401
60.Non-dipper phenomenon in essential hypertension is related to blunted nocturnal rise and fall of sympatho-vagal nervous activity and progress in retinopathy, Autonomic Neuroscience:Basic&Clinical, 88, 181, 186, 20010401
73.Non-dipper phenomenon in essential hypertension is related to blunted nocturnal rise and fall of sympatho-vagal nervous activity and progress in retinopathy, Autonomic Neuroscience: Basic & Clinical, 88, 181, 186, 20010401
114.Non-dipper phenomenon in essential hypertension is related to blunted nocturnal rise and fall of sympatho-vagal nervous activity and progress in retinopathy., Auton Neurosci, 88, 181, 186, 20010401
265.Non-dipper phenomenon in essential hypertension is related to blunted nocturnal rise and fall of sympatho-vagal nervous activity and progress in retinopathy, AUTONOMIC NEUROSCIENCE-BASIC & CLINICAL, 88, 3, 181, 186, MAY 14 2001
あまりにも工夫がない不正なので本当にミスかのかも?とも感じますが、これ以外の件は言い訳が難しいですからね。大問題なことは否定できないと思います。
●凋落が激しい日本の国立大学
また、私が問題視するのは大学側の対応です。研究不正などは大学の責任よりも個々人の問題が大きいですが、不正発覚時の対応は完全に大学側の問題です。私は不正発覚で大学をむしろ責めるべきではないと考えているものの、発覚後の対応の悪さは大いに批判されるべきだと考えています。隠蔽やもみ消し、甘い処分などが一番まずいことです。
広島大学はまさにダメなパターン。過去最悪!と言いたいところですが、同じ中国地方には堂々と不正告発を理由に報復解雇した岡山大がいますので、それよりはやや劣ります。これが過去最悪じゃないって異常ですよ、この国は…。
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岡山大が不正指摘を理由に森山芳則・榎本秀一の2教授を普通解雇(懲戒解雇ではない) 以前も書いているように、日本の大学は大学ランキングで下がりまくっていますし、実際に重要論文数も相対的に見てかなり順位低下していますし、世界最高峰の不正研究大国でもありますし…と、凋落が激しいです。
ただ、不正告発を軽視するどころか報復するといった出来事が国立大学で複数起きているというのは、他の何よりも増してマズイこと。マスコミや国民はこういったことに、一番怒るべきだと思うんですけどね。恥ずかしいと思わないんでしょうか?
●広島大の別の教授が准教授らにパワハラ、事務職員は不安神経症に
2018/12/24:広島大で新たなパワハラの報告。「本件に関する詳細情報については,被害者のプライバシーに配慮する観点から,公表を差し控えさせていただきます」というもので、名前などは不明。ただ、懲戒休職6月の処分を受けたのは、大学院国際協力研究科の50歳代・男性教授とのことで、明らかに別件であるころはわかります。
この教授は、部下であった准教授に対し、日常的に叱責を繰り返し、業務に関して始末書を複数回提出させた他、以下のようなことをやっていたとのこと。
・准教授に対し,権限がないにもかかわらず、「訓告処分通知書」を交付。
・『馬鹿者』と記載してメールで送信。
・『君の存在は「無」です』と記載してメールで送信。
・別の契約事務職員に対し,「准教授は本来ならば懲戒免職なんよ」と発言し,事務職員の雇用継続にプレッシャーをかけた。
・事務職員がこのことを他部署に相談に行ったことを強く非難。
・事務職員は,「不安神経症」と診断され,自宅療養を余儀なくされた。
(
教員の懲戒処分について | 広島大学 平成30年12月21日より)
この件で広島大が適切な対応を取ったかは不明ですが、とりあえず、加害者の処分までは行きました。当初書いていた件とは、だいぶ対応が異なりますね。
【本文中でリンクした投稿】
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