「価格が100倍でもおいしさは100倍にならない」といった話を見かけました。実はこれ、過去の調査からも説明できる話だと思われます。今回紹介する記事では、グルメ派=理論的、味オンチ派=感情的とまとめていたものの、味オンチ側の主張の方がむしろ結構説明できそうな感じでした。
2017/3/15:
●むしろ食べ物への敬意不足?食べ物の悪口を言う=グルメではない
●価格が100倍でもおいしさは100倍未満!価格に騙される性質のため
●商品価値を見極められないアマゾンレビューより信頼できるのは?
●高い製品は辛口評価になりがち…と思う人が多いが実は真逆だった
●マズイものをおいしいと感じられる人のほうが優れている
2017/08/18:
●人間はワインの良し悪しを味だけでは判断できない…価格で誤解
●むしろ食べ物への敬意不足?食べ物の悪口を言う=グルメではない
2017/3/15:私は経済も精神も自由主義的なところを支持しており、食べ物に限らず好きなものは人それぞれでいいでしょ、という考え方です。なので、逆に言うと、正当性もないのにある好みや趣味を否定することは支持しません。
グルメであること自体は自由なのでかまわないのですが、グルメと認められない食べ物を叩きまくる行為は絶対にいけないと思います。食べ物の悪口を言う=グルメ ってことはならないですよ。むしろ食べ物への感謝を感じず、心が貧しい人たちと感じます。
今回紹介する話である
正しいのはどっち? 第一回『グルメ vs 味オンチ』討論会! - みんなのごはん( 2016-12-27)は他人の好みを否定しないという点で言うと、グルメ VS 味オンチという対決形式ですので、意図的に相手を悪く言っていますので、正直あまり気持ちの良い話ではありません。
中には、グルメ=育ちの良い人みたいな流れでもあったのですけど、他人の嗜好を全否定する人にはむしろ育ちの良さを感じません。そういうことなので、もちろん今回の話はグルメを自称する人が悪いとか、高いものを好きな人が悪いとかって話ではありませんよ。そちらを否定するのもダメです。
また、そもそもこのテーマのグルメじゃない人=味オンチというのは、変な話でもあります。何を食べてもおいしい!と喜べる「味オンチ」としていたんですが、味オンチってそういう定義じゃないですよね?
あと、私自身大体何を食べてもおいしい!と喜べるタイプなので自画自賛になっちゃうんですが、むしろ美しいことだと思います。釈然としません。ただ、たまにおもしろい言葉が出てきていたので、紹介したくなってしまいました。煽り合いでだいぶ険悪であはあるんですけど…。
●価格が100倍でもおいしさは100倍未満!価格に騙される性質のため
記事で出てきた中で共感したもののひとつのが、「値段が100倍でも味は3倍くらいにしかならない気がします」という味オンチ派の言い分。私も確かにおいしいとは思うけど、価格を考えたら他の安くて十分おいしいものがあるから「もう買わないな」ってことがよくあります。
で、これで思い出したのが、価格によるバイアスの話。もともと読んだのはアマゾンの高価格商品のレビューはあてにならないぞという内容でした。なぜかと言うと、高価格商品では自己の決定を正当化するバイアスが強く働き、実際より評価を高くしてしまいがちなためです。
検索してみたものの、私が当時読んだそのものズバリな話は見つからなかったんですが、やはりアマゾンの点数はいい加減という内容の以下の記事で、ブランドとともに価格に関わる歪みについて触れられていました。
なぜ、アマゾンの星評価はあてにならないのか | HBR.ORG翻訳マネジメント記事|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2016年09月23日 バート・デ・ランゲ,ドナルド・R・リクテンスタイン,フィル・ファーンバック
星評価では、高額な製品とプレミアムブランドが偏重される。したがってユーザーの評価は、古き良きマーケティング戦術の影響を強く受けている。すなわち、広告や価格シグナルなどだ。
我々の分析では、こんな結果が得られた。(引用者注:品質との相関性が確かめられている)『コンシューマーレポート』で同じ品質評価を得た2製品があり、一方はブランドの評判が下位10分位(例:カシオのデジタルカメラ)、他方は上位10分位(例:ソニーのデジタルカメラ)。この違いは、星評価で約0.4の差異となって表れた。
価格に関しても同様に、下位10分位の製品と上位10位の製品を比べると、その価格差は星評価で約0.2の差異に相当した。つまり星評価は、『コンシューマーレポート』よりも、ブランドイメージと価格に強く相関していたのだ。
●商品価値を見極められないアマゾンレビューより信頼できるのは?
上記で出てきた『コンシューマーレポート』が正しいと限らない、と思われるかもしれないので補足。実は、『コンシューマーレポート』が高い評価を与えた商品は中古でも高い価格で取引されるのに、アマゾンレビュアーが高評価を与えた商品は中古価格と相関していないということがわかっています。
このことから、『コンシューマーレポート』は価格やブランドに惑わされずに概ね正しい評価を下しているのに対し、アマゾンレビューは価格やブランドに大きく影響されており、本当の価値を見抜けていないのだと考えられます。
品質を表す別の伝統的な指標として、リセールバリュー(再販価値)がある。信頼性と性能に優れた製品ほど、時間が経過してもより高い価値を保持する。したがって、ユーザーによる評価の平均点が品質を客観的に反映するならば、リセールバリューと正の相関を示すはずだ。
そこで我々は、camelcamelcamel.com(価格追跡サイト)、およびusedprice.com(ディーラー調査を含む複数ソースに基づき中古価格を見積もる専門サイト)からリセールバリューを収集して、アマゾンの星評価と比較した。いずれの場合も、星評価平均点はリセールバリュー(中古価格)とはまったく相関関係になかった。それとは対照的に、『コンシューマーレポート』の評価点はリセールバリューの予測因子として有効であった。
●高い製品は辛口評価になりがち…と思う人が多いが実は真逆だった
上記のAmazonの話そのものは「価格が100倍でもおいしさは100倍にならない」ではなく、「価格が100倍でも品質は100倍にならない」などと表現した方が良いかもしれません。
しかし、この価格による評価への影響は、そのものズバリな食べ物に関する分野でもきちんと確かめられています。我々が品質以上に価格が高すぎる店や安くてもおいしい店を見つけ出すのは難しいようで、やはり価格そのものに引っ張られてしまうみたいです。
統計学者のネイト・シルバーは、ニューヨーク市のレストランに関するイェルプ(レビューサイト)の評価を分析して、同様の結果を見出している。ミシュランの星評価による影響を調整後にイェルプの星評価を分析すると、高額なレストランほど高い点数を得ていたのだ(英語記事)。
さらに言えば、人々は自分自身が価格に惑わされていることにも気づいていません。むしろ全く逆の理解をしているのです!
ただし我々の研究では、消費者はこのようなバイアスの影響を認識していないことも明らかになっている。実際、今回の実験に参加した人のほとんどは、少なくとも価格に関しては、まさに誤った直感を持っている。「ユーザーは製品が高額であることを低く評価する」と彼らは思い込んでいるのだ。しかし、事実は正反対である。
今回の話では、「コスパを『超えてくる』ものがあるんですよ。それがわからないのは、かわいそう」とグルメ派の方が嫌な言い方をしていました。
対決ものの企画なのでここらへんは仕方ないかなと思いますが、とりあえず、価格によるバイアスを考慮した場合、味オンチ派が言っていた「価格が100倍でもおいしさは100倍にならない」の方が正しそうに見えます。
●マズイものをおいしいと感じられる人のほうが優れている
紹介したい言葉があるって言ったんですが、最初に書いたような悪い例もたくさんありますね。グルメ派の「生まれてくる子も変なものしか食べられなくて可哀想」という主張なんかは、見下していて嫌な感じです。
ただ、これに関して、「マズイものをおいしいと感じられる人のほうが優れている」という反論が出てきました。こちらは共感します。
最初にも書いたように、食べ物にやたらとケチをつける人はみっともないでしょう。まずいと思ってしまうこと自体は仕方ないのですが、それよりもおいしいと感じて心から感謝して食べられる方が素晴らしいです。
まずいと思ってしまうこと自体は仕方ないと書いたように、個人差がありますのでそれはどうしようもないですし、自由なんですけどね。
日本のもったいない文化はすごい!は嘘 世界有数の食料廃棄国というのが現実でやったように、日本は食料廃棄が多い国でもありますから、もっと食べ物を大切にしてほしいとは思います。
●人間はワインの良し悪しを味だけでは判断できない…価格で誤解
2017/08/18:過去にも類似の研究があるようでしたが、価格が食べ物のおいしさに強く影響してしまうという研究を一つ紹介。
ワインの味は値段に左右されるか?(論文紹介) 西川伸一 | NPO法人オール・アバウト・サイエンスジャパン代表理事 8/18(金) 8:27で出ていたものです。
Scientific Reportsに今年掲載されたソルボンヌ大学の研究では、12ユーロと値段は同じだが種類の異なる3種類のワインを、値段が3、6、18ユーロの別のワインだと偽って、テースティングさせ、満足度の点数をつけさせました。
すると、やはり値段を知ることが、確実にワインの満足度に影響することがわかりました。「ワインの良し悪しを味だけで判断できるか?」の答えは「ノー」であり、「値段を聞くことでワインの評価が変わる」というのは確かだったと言えます。
また、特に、安い値段を聞いてしまうと、満足度の低下が激しいこともわかりました。高い価格設定にすることのアドバンテージよりも、安い価格設定による損失の方が大きいみたいですね。「安かろう悪かろう」と思う食べ物の悪さは、かなり思い込みによるものが大きいのかもしれません。
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