この世の中に嘘が多いことは間違いありません。"ある有名な研究によると、人間は平均して毎日1つか2つの嘘をつく"そうです。
一方で、嘘を見破ることが難しいことも、研究ではわかっています。レスリー K. ジョン ハーバード・ビジネス・スクール准教授は、"ほとんどの人は嘘を見破るのが上手になれば、この問題を解決できると思い込んでいる"と言い、現実はそうでないということを指摘していました。
2017/3/27:
●研究で判明、嘘を見破るのは難しすぎる…という残念な真実
●嘘を見抜く方法という迷信を信じる人々…見破るより良いやり方は?
●そんな質問でいいの!?相手から嘘を言われづらい質問は存在する
●役に立つ方法だが、「肯定」を利用した詐欺があることに注意
2017/08/06:
●「嘘を見破れる」という研究は実際にあるが、それが嘘である理由
●嘘つきは目を見てわかるなど、嘘を見抜くという迷信を信じる人々
●研究で判明、嘘を見破るのは難しすぎる…という残念な真実
2017/3/27:冒頭のような話があったのは、
誰もが正直者になれる交渉術 人間特性に基づいて科学的に嘘に対処する | DHBR最新号から|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー(2017年01月17日 レスリー K. ジョン ハーバード・ビジネス・スクール准教授)という記事。
このたとえそのものは記事にあった話ではありませんが、ある発言が嘘か本当かを当てるクイズがあったとします。その場合、当てずっぽうで当たる確率は50%くらいだと考えられます。ですから、山勘ではなく本気で考えれば、嘘を見破る確率はかなり上がると普通は考えるでしょう。
ところが、"あるメタアナリシス(複数の研究を研究すること)によると、人間が嘘をついているかどうかを正確に当てる確率は54%にすぎないことがわかった"そうです。
たぶんこれは我々の嘘を見破る能力が、デタラメと大差ないってことなんでしょうね。嘘を見抜くという作戦は、あまり有望そうではありません。
●嘘を見抜く方法という迷信を信じる人々…見破るより良いやり方は?
さて、おもしろい話はこれから。実は嘘を見抜くより良い方法があるんです。「嘘をつくのを防ぐこと」に集中するならば、かなり嘘の被害を免れることがこれまた研究でわかっているとのこと。記事では「適切な質問をする」という方法を提示していました。これは「適切な」というのが大事です。
まず、人は都合の悪いことを自ら話そうとはしません。これはよくわかる話でしょう。モーリス・シュウェイツァーさんとレイチェル・クロソンさんの調査によると、"交渉の場で自分の立場を弱める情報に関して、交渉者の61%は「尋ねられたら正直に話す」と答えたが、聞かれない限りは誰も打ち明けない"としています。
じゃあ、その相手の弱みを的確に質問すると良いのか?と言うと、そうではないんですよ。"質問された交渉者の39%は、最終的に嘘をつくという結果"だったのです。4割で嘘をつかてしまうというのですから、まともに聞いたとしてもかなりの場合、嘘を言われて意味がありません。
●そんな質問でいいの!?相手から嘘を言われづらい質問は存在する
では、この場合の「適切な質問」とはどういったものなのでしょう。ジュリア・ミンソン、ニコル・ルエディ、シュウェイツァーによる調査では、楽観的な仮説に基づく質問ではなく、悲観的な想定に基づくものだと、嘘をつく可能性が低くなるとわかっています。
例えば、ある会社で使われている重要な装置を新品に取り替える必要があるが、それを打ち明けずに会社を売却しようとしている人がいるケースを考えてみます。このとき、「装置は正常に動いていますよね」というのが、楽観的な仮説に基づく良くない質問の例。こうすると、空いては嘘をつきやすくなります。
一方、「適切な質問」というのは、「もうすぐ新しい装置に取り換える必要がありますよね」のような悪いことを想定したもの。このような悲観的な想定に基づく質問dなと、嘘をつく可能性が減るのだそうです。なので、「適切な質問をする」は、「悲観的な想定に基づく質問をする」と言い換えた方がわかりやすいかもしれません。
●役に立つ方法だが、「肯定」を利用した詐欺があることに注意
なお、記事では、人間は「事実を否定する」場合より、「偽りを肯定する」場合のほうが嘘をつきやすいという言い方をしていました。
これで思い出したのが、人間は簡単な何でもないイエスを繰り返すことで、他の大事な質問にもイエスと答えやすいという心理テクニック。この心理を普通のビジネスで利用するくらいならまだいいのですけど、詐欺スレスレの悪徳商法で使われることがあるから要注意なんですよね。
この悪徳商法は催眠商法・SF商法などと呼ばれていますが、ハイを繰り返させるため別名をハイハイ商法とも言います。
さまざまな悪質商法(SF商法)(見守り情報)_国民生活センターでは、以下のような説明をしていました。
(
霊感商法・催眠療法と書いている人もいますが、「催眠商法」が正しい言い方です)
<狭い会場に人を集め、販売員が巧みな話術で場を盛り上げながら、「ハイ、ハイ」と手を上げさせるなどして、ただ同然で日用品などを配り、冷静な判断ができない高揚した雰囲気の中で高額な商品を売りつける商法です>
実際に契約してしまった人の経験談としては、以下のようなものが載っていました。「ハイ、ハイ」以外の例もあります。
・元気よく手を上げる人が物をもらえるので、とにかく「ハイ!ハイ!」と手を上げていたら、最後は高額な商品に手を上げていた。
・日用品をもらうだけで帰ろうと思い会場に行ったが、もらうことに夢中で、気がついたら前列の数人だけが残されていた。契約するしかなかった。
・膝や腰が痛いので体に良いものに興味があった。健康グッズをたくさんもらい、健康器具も今日だけ半額だと言われて、今買わないと損だと思った。
詐欺師って何でも利用して詐欺しちゃいますね。多少非難したところで彼らは改心しませんし、こういうのはもっと厳しく取り締まっていくしかないと思います。今は甘すぎです。
●「嘘を見破れる」という研究は実際にあるが、それが嘘である理由
2017/08/06:
「嘘は見破れる」はウソだった:日経ビジネスオンライン(川端 裕人 2017年7月8日)は、ほとんど上記と同じような話だったものの、嘘は見破れると信じる人々に関する話はおもしろかったです。
文京学院大学の村井潤一郎教授によると、嘘を見破れるという研究に騙される危険性について以下のように警告していました。いつも書いているように、結果が矛盾する研究というのは珍しくなく、多くの類似研究を見て判断する必要があるのです。
「いろいろな研究結果があって、ある研究では高い正答率で見破ることができたとしても、研究間で常に一貫した結果というわけではないんです。ですので、1つの研究結果だけで語ると危険です」
●嘘つきは目を見てわかるなど、嘘を見抜くという迷信を信じる人々
どうもこうした研究で特に人気があるのは、「目の動きと嘘の関係が非常に強い」というものみたいですね。一般の方はこれを固く信じているようです。
「嘘つきは目をそらすという考えは、世界中で信じられているんですよ。2006年に出た有名な研究があって、嘘に関する共通信念を調査しているんです。『人が嘘をついている時、あなたにはそれがどうやって分かりますか』という質問をして、世界58カ国の2320名から1万件以上の回答を得ています。複数回答可で答えてもらった中で、『視線をそらす』が63.66パーセントで1位。2位の『神経質』の28.15パーセントをかなり上回っています」
ただ、これは前述の警告でわかるように、誤解であり、そのような事実はありません。むしろこのような迷信を信じる人が多いことは逆手に取られてしまう可能性があり、危険かもしれませんね。
2020/06/12:同じシリーズの別記事では、「自称嘘の専門家」ならたくさんいて、嘘をめぐる「神話」のような言説は世に満ち満ちているとして、以下のような嘘を見抜くという間違った方法の例を書いていました。
<特に「嘘を見破る方法」は人気があって、軽くネット検索すると、「右利きの人は目線が左側(相手から見て右側)に行く」とか、「嘘をつくのが上手かどうかは、利き手で自分のおでこにアルファベットのQをなぞると最後のハネの流れ方で分かる」とか、「人は嘘をつくと表情が口元に集中する」といったことが、あたかもしっかりした証拠があるかのように書いてある。
しかし、根拠となる論文が併記されていることはまずない。中には科学的知見に基づくものもあるはずだが、伝言ゲーム的に拡大解釈が繰り返されておかしな結論になっていることもありそうだ>
(
第1回 いったい嘘ってなんだろう―嘘の心理学、事始め | ナショナルジオグラフィック日本版サイト(文=川端裕人)より)
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