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アクセルの踏み間違い事故が起きるのは自動車が設計ミスだから ヒューマンエラーでミスした人を責めてはいけない


 全体のタイトルの順番とは逆に、「ヒューマンエラーでミスした人を責めてはいけない」という話を最初に。その後、自動車の設計ミスが、アクセルの踏み間違い事故を頻発させているということについて書いています。

 たぶんこの考え方は感情的には受け入れられない人が多いと思われますので、安全な設計の考え方の具体例も最後に挙げています。製品の設計、労働の現場などでは基本となる考え方であり、本来は突飛な考え方ではありません。


●ヒューマンエラーでミスした人を責めてはいけない

 ヒューマンエラー対策は設計から 今のエスカレーターは設計ミスと似たような話であり、最初はそちらに追記しようと思っていたのですが、"なぜなぜ分析で「ミスした人」を悪者扱いするな"という話が、ITproのメルマガでありました。

 川又 英紀・日経情報ストラテジー副編集長によると、ヒューマンエラーをなくすため、なぜなぜ分析に取り組む企業で陥る「悪しき現象」が、ミスした人を責めるような詰問のような個人攻撃です。

 しかし、なぜなぜ分析に詳しいマネジメント・ダイナミクスの小倉仁志社長によると、責めるべきはミスを誘発する現状の仕組みやルールであって、ミスを犯した当事者ではないと、強調しているそうです。

 なぜかと言えば、ミスした人はたまたまその人だったというだけだからというもの。現状の仕組みやルールそのものに問題があってミスが起きたのですから、別の人がやっていた可能性もあるわけです。特に何度も同じようなヒューマンエラーが起きている場合は、個人の問題でない可能性が高いと考えられます。

(なぜなぜ分析で「ミスした人」を悪者扱いするな/副業解禁のインパクト:ITproメール より)


●ミスした人を責めると、重大事故が起きやすくなる

 たぶんこれは納得できない人が多いでしょうから、以前書いたヒューマンエラー対策は設計から 今のエスカレーターは設計ミスの方も読んでほしいのですが、こうした個人攻撃の弊害としては、記事で指摘がなかったものもあります。

 個人が責められるとわかっていた場合、当然、ミスした人はミスを隠そうとします。そうした場合、より大きな問題になるまで判明しないといったことが起こり得ます。

 労働災害における経験則として、ハインリッヒの法則というのがあります。この法則は、1件の大きな事故・災害の裏には、29件の軽微な事故・災害、そして300件の傷害のない災害があるというもの。

 逆に言えば、重大災害を減らすには、まず小さな事故をなくすことです。そして、その小さな事故をなくすには、もう少しで事故に繋がりそうだったという、不安全行動と不安全状態をなくしていく必要があります。

 要するに、多くの場合、いきなり重大事故が起きるわけではなく、重大事故が起きる現場ではもともと安全性に問題があることが多いという話。こう言うと、何を当たり前のことを…と多くの人が思うでしょう。

 ところが、ミスした人を責めるというのは、実際にはこの当たり前のことを理解していないということになってしまいます。

 なぜなら、ミスした人がそのことを隠蔽することにより、ミスが把握されないままにミスが起き続けて、隠しきれないより重大な事故が起きてしまうことを誘発して、そこで初めて問題に気づくことないなるためです。


●アクセルの踏み間違い事故が起きるのは自動車が設計ミスだから

 で、タイトルの自動車の話。どこかで書いたかもしれませんが、アクセルの踏み間違い事故が起きるというのも、個人のミスの問題というよりも自動車が設計ミスだからだという理由が大きいと考えられます。

 これは結局、以前のエスカレーターの話と同じです。日本エレベーター協会などは「本来、エスカレーターは立ち止まって乗ることを前提に設計されています」などと訴えています。

 しかし、そもそもなぜエスカレーターで歩く人は多いのか?と言うと、エスカレーターが人間にとって歩きやすい構造になっているためです。いくらマナーを訴えたところで、ルールを守らない人というのは必ず出てくるものです。なので、最も良い対策は、そもそも人間が歩けないような設計にすること…というのが、安全な設計の考え方です。

 同様に自動車のアクセルとブレーキの設定も、考えられないほど最悪なものになっています。同じ「踏む」という動作で、アクセルとブレーキのペダルがあれば、そりゃミスする人が出てきて当然だとわかるはずです。

 この設計はおそらく歴史的な経緯なのでしょう。今「一から設計してください」となった場合、安全な設計への考え方が進んでいる現在では、このような危険なしくみを作るヘボ設計者はほとんどいないと思われます。

 なので、アクセルとブレーキの踏み間違い不可能、ナルセペダルの画期性のペダルなんかは、ブレーキが「踏む」、アクセルが「右にずらす」と、動作の方向性を変えています。

 こういった工夫をせずにアクセルとブレーキが同じ動作にしているという時点で、「どうぞ間違えてください」というものになっているのです。


●人間はミスを犯すもの…など、本質的安全設計の考え方

 ここで終わるつもりでしたが、もう少し補足。3ステップメソッド:設計の具体的方法|機械安全のための規格と法律、設計方法の紹介|一般財団法人 機械振興協会 技術研究所では、本質的安全設計の考え方が示されています。

 例えば、尖っている部分があって危険な構造の製品の安全対策。「自動車でペダルの踏み間違いをしないように注意を呼びかける」「エスカレーターを歩かないようにマナー向上をはかる」といった対策は、このケースだと、「尖っているところに当たらないように気をつけてもらう」といった感じでしょう。

 しかし、それでは根本的な解決策にならないので、最初から尖っている部分がないような構造でできないかを検討します。こうした設計が実現した場合、そもそも尖ったところが存在しないのですから、尖ったところに当たるという事故が起きようがありません。これが一番良い方法です。

 一方、今回の話に最も近いのは、「人間はミスを犯すものだと考え、使用者がまちがった使い方ができないようにする設計」という「フールプルーフ」の考え方。

 この場合は、「正しい向きにしか入らない電池 ボックス」「ドアを閉めなければ加熱できない電子レンジ」といったものが、具体例としてありました。設計においては、本来、こうした考え方が優先されるのが常識なのです。


 アクセルの踏み間違い事故において、冒頭のなぜなぜ分析の個人攻撃にあたるのは、高齢者批判でしょう。しかし、今回書いてきたように実際には自動車そのものに大きな問題があるわけですから、批判だけでは事故を防げません。

 自動車のしくみの問題が軽視されている現状は、問題解決を遅らせていますので、気がかりなところです。


【本文中でリンクした投稿】
  ■ヒューマンエラー対策は設計から 今のエスカレーターは設計ミス
  ■アクセルとブレーキの踏み間違い不可能、ナルセペダルの画期性

【その他関連投稿】
  ■免許を取り上げるべきは高齢者より若者?事故が多いのは圧倒的に10代で、次も20代
  ■テスラ自動運転車の死亡事故、運転手のせいと報告 人より40%安全とも
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