エコカー戦争大予言 勝つのはFCV(燃料電池車)か、EV(電気自動車)か?を書くための記事探しをしていて、日本のエコカー技術はすごいよという話が多かったのでこのテーマでも一つ。ただ、これも前回同様に反対の意見が出ています。とりあえず、日本車が一歩リードしたのは本当らしいですが、未来がどうなるかわからないという話です。
そして、この話の流れは前回書いた液晶がプラズマに勝利の話を思い出しますね。勝利した陣営であるはずのシャープがあのざまなのですから、現在の技術で勝利することより、未来において生き残っていることの方が大事そうです。(2017/4/12)
2017/09/01:
中国のEV競争力、既に日本を追い越して世界一に
政府が介入して失敗する日本と成功する中国
2018/11/05:
EVなら日本に勝てると中国が優遇政策
●エコカー戦争では、日本車の技術が圧倒的!
2017/4/12:とりあえず、最初に目についた記事は、日本すごい系のタイトルでした。ただ、中身は前回の趣旨であるEVか、FCVかというところがメインです。
「水素vs電気」ガチ戦争の行方は? FCVもEVのバッテリー技術も日本が世界トップであることは事実 週プレNews 2015年6月21日 06時00分 (2015年7月16日 06時02分 更新)
日本EVクラブ代表にして、近著『トヨタの危機』(宝島社)でトヨタのFCV戦略について疑念を呈した舘内端(たてうち・ただし)氏はこう話す。
「水素はどこかに埋蔵されているわけではなく、何かしらの方法で作り出さなければなりません。(中略)
FCVは走行中にはCO2を一切出さないZEV(ゼロ・エミッション・ビークル=排ガスゼロ自動車)ですが、水素を作るための電力まで含めると、現在の技術では実はガソリン車よりCO2排出が多い計算になる。
EVといえば、もうすぐ第2世代のリチウムイオン・バッテリーが出てきます。(中略)
少なくとも、差し迫ったCO2問題対応車として、より現実的なのはFCVよりEVと言わざるを得ません」
タイトルの日本すごい系の話は、最後でちょこっと出ていただけ。編集がタイトルに使っただけで、そういう中身ではありませんでした。
「EVも20年前はロクなものじゃありませんでした(笑)が、そこで全否定してしまっていたら、今のEVはないでしょう。今後、水素に関する大発明がないとは限りません。いずれにしても、
FCV技術もEVのバッテリー技術も日本が世界トップであることは事実。でも、それを使いこなす思想や戦略で日本が欧米に負けてはいけない!」(舘内端さん)
●エコカー戦争で日本が圧勝という大誤解
一方、ダイヤモンド・オンラインの長期連載
エコカー大戦争!は、以下のように警笛を鳴らしていました。
"「エコカー=日本の独壇場」と思っているとすれば、それは大間違いだ。電気自動車、ハイブリッド車を巡る市場争奪戦はこれからが本番。日本は序盤戦を制したに過ぎない"
ただ、長期連載だけあって、上記のテーマにピタリとした話題ばかりではありません。というか、最近のタイトル見ると、違う話ばかりになっているようです。
最近の記事の中で、今回の投稿テーマに該当しそうなものと目星をつけたのは、
トヨタが敵わないメルセデス・ベンツ3つの強み|エコカー大戦争!|ダイヤモンド・オンライン( 桃田健史 [ジャーナリスト]【第213回】 2015年9月28日 )。タイトルだけでなく内容も、そういったもので安心しました。記者が指摘するメルセデスの強みは3つ。ちょっとわかりづらいかもしれませんが、以下のような感じにまとめます。
(1)MIRAIに注力しているトヨタと異なり、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EV、燃料電池車すべてに対応しており、フレキシブルな姿勢を取っている。
(2)世界の自動車の“車格”を変化させてしまうような事業戦略があり、「メルセデスがベンチマーク」になる。
(3)カーシェアリング事業にトヨタより積極的で、従来の自動車メーカーが行っている“新車売り切り型”ではないビジネスモデルを模索している。
●世界一だとしても持続性に疑問
もう一つ読んだ記事は、日付が不明なんですが、今は日本がリードしているものの、将来はわからないよと書いていました。
Vol.78 日本のエコカー技術、本当の実力は?│国沢光宏のホットコラム│呉工業株式会社
日本のエコカー技術は世界一だと思っている人が多い。実際、ハイブリッド車や電気自動車において世界中のメーカーから日本の技術は注目されている。プリウスに燃費で勝てるハイブリッド車を出してくるメーカーは1997年以後、全く無し。日産の電気自動車に搭載されているバッテリーの技術は、世界を3年引き離していると言われるほど。(中略)
ただ5年後に今のリードをキープ出来ているかと聞かれれば「努力次第です」と答えることにしている。
なぜか?と言うと、前回と同じ液晶テレビの例えが出てきました。
好例が液晶TV。5年前まで日本も明確なリードを持っており、世界一のシェアはシャープ。ソニーも健闘していた。しかし今や大差でサムソン(韓)にトップを奪われてしまった。自動車業界もライバルの猛追を受けていると考えていい。
ただ、自動車の話もあり、既にフォルクスワーゲンが日産自動車と遜色ない電気自動車を作っていたことを挙げていました。また、"エコカーというと、先端技術というイメージを持ってしまう"が、そうではないという話も。こちらの方が重要かもしれませんね。
日本企業の最近の失敗は、技術にこだわったというものが多い印象。消費者は技術を買うわけではないのに、「技術がー」とそこにしがみついちゃうんですね。アップルが躍進したときに、「技術的には日本でもできる」という声が出ていたましたが、そんなことを言っても負け惜しみにしかならないでしょう。
力を入れるところを間違うと、日本の自動車会社も電機メーカーの二の舞を演じるおそれがあります。
●中国のEV競争力、既に日本を追い越して世界一に
2017/09/01:米コンサルティング会社のアリックス・パートナーズは7月12日、「20年までに世界で発売が予定されている103車種のEVのうち、49車種を中国メーカーが生産する」という予測を立てました。EV市場としても、世界最大規模に拡大しています。
しかも、独コンサルティング会社、ローランド・ベルガーが四半期ごとに発表する国別のEV競争力調査では、直近の6月の発表で、中国が前回トップの日本を追い抜き初めてトップに立っています。既に中国のEVは世界一レベルに達しているようです。
(
それでも揺るがぬ覇権への野望:日経ビジネス2017年7月31日号(寺岡 篤志、山崎 良兵)より)
日本の場合、単に競争で負ける以上の危険性もあります。最近の日本は最終製品で負けることが多く自慢できないのですが、「部品や技術は日本製」というところで威張ることが多いです。現在の中国のガソリン車メーカーも技術を欧米や日本企業に依存しています。
しかし、EVが主流になれば、その心臓部の電池やモーター、インバーターなどを国産化しやすくなり、技術面でも欧米や日本勢と伍していける可能性が高まるというのです。
●政府が介入して失敗する日本と成功する中国
なお、気に食わなかったのが、このように中国でEVでうまくいっている理由。政府の補助金政策のためみたいなんですよ。EV乗用車メーカーが約40社も乱立し淘汰される見込みですが、中国政府自身、競わせながらEV産業を強化したいとの思惑があり、淘汰は織り込み済み。
みずほ銀行国際営業部の湯進主任研究員は「企業の『多産多死』は、中国の産業育成におけるいつものパターン」と指摘。苦境にあえぐ企業が増えても、「政府主導で再編が進むし、地方で根強い需要があるEVのバスやタクシーのメーカーに生まれ変わることもできる」と解説していました。
国が民間に介入するとうまく行かないことが多いと私は批判しています。実際、日本政府は東芝を倒産危機に追い込む、出資したベンチャーがことごとく失敗するなどボロクソで、国民の税金をガンガン溶かしています。
(関連:
官民ファンド産業革新機構のベンチャー投資が全損だらけ 失敗案件に追加出資してさらに税金をドブに捨てる)
ところが、中国政府はこのように結構うまくやっているんですよ。資本主義国家とはかなり性質が違うために、日本などの例は当てはめられないのかもしれません。
●EVなら日本に勝てると中国が優遇政策
2018/11/05:
EV異業種参入でトヨタに危機?ヤマダ電機・船井電機・FOMM・ダイソンなどで、中国政府が、日系企業が得意とするハイブリッド車(HEV)を除き、電気自動車(EV)などの新エネルギー車(NEV)を優遇する政策をやっているという話を追記しました。
(
中国・新興EVメーカーはテスラの夢を見るか:日経ビジネスオンライン 湯 進 2018年4月11日より)
ここでは最初の投稿時に出てきた、「エコカーというと、先端技術というイメージを持ってしまうが、そうではない」に該当する話もあります。EVは既存特許などが活用できるため参入障壁が比較的低いとされている、と説明されていたのです。
また、こちらで紹介したかったのは、新エネルギー車(NEV)の販売台数ランキングがあったため。以下のようにすでに中国系がワンツーを決めた他、ベスト10に4社入る状況になっているのです。
<2017年のNEV世界販売トップ10>(EVSalesより)
ブランド名 台数(万台)
BYD(中) 10.9
北京汽車(中) 10.3
テスラ(米) 10.3
BMW(独) 9.7
シボレー(米) 5.4
日産(日) 5.2
トヨタ(日) 5.1
栄威(中) 4.5
VW(独) 4.3
知豆(中) 4.2
中国は、9年連続で新車販売台数が世界首位の「自動車大国」であり、中国国内でしか売れていないのでは?と思うかもしれません。ただ、そうであったとしても、「日米欧の車が中心の国内市場を変える」という中国政府の狙い通りという話。日米欧メーカーにとって喜ばしくないことであることは否定できないでしょう。
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